こんばんは、サンジゲン のまみやです。絶賛放送中の 『ブラック★ロックシューター』(以下『B★RS』) 。たった今、第 7 話のフジテレビ O.A. を会社でスタッフと一緒に観終えて、自席に戻ったところです(※この原稿は、2012 年 3 月15日の深夜に執筆されました)。ついに来週は最終話! その第 8 話の大詰め作業で、制作現場はいつにも増してせわしない空気です。
さて、第 5 話 あたりからアクションが増えて来た 『B★RS』 の裏世界ですが、皆さんご覧頂いておりますでしょうか? 今回も引き続き、アクションシーン満載の 第 6 話「あるはすもないあの時の希望」 から アクションシーンを 2 カットご紹介します!
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第 6 話「あるはずもないあの時の希望」(その1)
【CUT 91】〜移動をさせずに"移動"を表現〜
(アニメーター/櫻木優平)
このカットでは 第 3 回の記事 と同様、2D データ上で素材をスライドさせることで移動を表現する手法を使っています。キャラクター等は、その場でバウンドするアニメーションを付けています。横長の静止画でレンダリングした BG をスライドさせることでカメラワークを付け、さらにそれぞれの素材を個別でスライドさせることで、移動幅の差を出しています。
2D データ上で移動を表現することで、3D 素材を出し直すことなく移動距離の調整が可能になるので、効率的に作業が行えました。また、3DCG で作成した素材を 2D データとして処理することでより作画に近い表現ができたと思います。
6 話の絵コンテが上がった段階で、インセインブラックロックシューター(IBRS ※暴走したBRS) と ブラックゴールドソー(BGS) はカット担当者たちが共有で使える腕がちぎれたモデルが必要ということになり、カット制作に入る前に急遽 「腕ちぎれモデル」 が用意されました。このカットではそのモデルを使用しています。『B★RS』 は全てのキャラクター、おデコが露出できるように制作しています。ずっとデコを出したいと思っていたのでここぞとばかりに露出しました。レアなデコ出しカットです!
第 6 話【CUT 91】ショットブレイク。(左上)絵コンテ、(右上)アニマティクス、(左下)3DCG完成、(右下)撮影処理を施した完成形
このカットは、本編のムービーチェック時だけでなく、今回の記事のためにも 100回以上 観ているのですが、何度観ても BGS が "その場のアニメーション" に見えません......! 櫻木さんは、第 3 回 でもカット解説を書かれていますが、その時にもキャラをその場歩きさせていると書いていて驚嘆したばかりです。キャラが移動しているものだと思い込んでいる私にとっては、背景を引くことで移動を表現する、という発想自体が斬新で、神業だと思います。モデルに関しても、臨機応変に対応しているようですね。おでこのエピソードを読んで、思わずコマ送りで観てしまいました(笑)(まみや)
第 6 話「あるはずもないあの時の希望」(その2)
【CUT 288】〜フルコマとリミテッドの使い分け〜
(アニメーター/三村厚史)
『B★RS』 のキャラクターアニメーションは基本リミテッドで動かしていますが、このカットではカメラの回り込みに対して、BG をフルコマで動かしています。
そのため、キャラクターの動きをリミテッドで動かしてしまうと、BG に対してキャラクターの位置がずれてしまうため、最初はキャラクターもフルコマで動かしています。
途中、カメラの前をブロックがナメこんできたあたりから、キャラクターの動きをリミテッドにしていますが、これは、ブロックによってキャラクターの接地面が隠れたため、BG とのズレが気にならなくなったことと、カメラが寄ったときのキャラクターの動きを作画的に違和感なく見せるためです。
最後のカメラが横位置で IBRS と ストレングス が向かい合うところの表情を、頂いた加筆に合わせて 3D で修正しています。
リミテッドアニメーションであれば、使わないコマの調整は基本的にはしないので、その分作業量は少なくなりますが、今回のように、フルコマで見せなければならないところでは、普段より気を使います。3DCG のアニメーションの作業として考えれば普通のことですが、日本のアニメ作品の作業として考えると、とても手間がかかることで、手描きでも CG でもそれは同じことではないでしょうか。また、3DCG ではカメラに対してオブジェクトの形状が正確に出てしまうため、手描きのような感覚的な良い表情を作るのはとても難しいです。
第 6 話【CUT 288】ショットブレイク。(左上)絵コンテ、(右上)アニマティクス、(左下)3DCG完成、(右下)撮影処理を施した完成形
私はまだ、アニメーションを見ただけでフルコマかリミテッドかを判別するることはできないのですが、基本はリミテッドでも、時にはフルコマを使うことによって違和感のない動きを表現しているのですね。まずはその "違和感" を見抜いて、より良い表現になるように画づくりをしていく。アニメーターには、美的感覚と、技術を応用していく力が必要なのだと、皆さんのコメントを読んでいると痛感します。また、前回 の記事にも出てきた 「加筆修正」 を三村さんもされていましたね。3DCG で作画のような表情を作ることが、いかに難しいかが伝わってきます。作画に負けないような "良い表情づくり" は 3DCG にとって今後の課題となりそうです(まみや)
次回は、第 7 話「闇を駆ける星に願いを」から。ぜひ、お楽しみにお待ちください!
TEXT_間宮 舞(サンジゲン)
TVシリーズ『ブラック★ロックシューター』
2012 年 2 月 2 日より、フジテレビ"ノイタミナ"ほかにて全 8 話絶賛放送中!
原作:BRSプロジェクト
キャラクター原案:huke
監督:吉岡 忍
CG 特技監督:今石洋之
シリーズ構成・脚本:岡田麿里
総作画監督・キャラクターデザイン:芳垣裕介
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