『Fate/Grand Order』で知られるラセングルが、新規プロジェクトの制作メンバーを募集している。目指すのは、作画アニメのような動きを手付け中心でつくり込み、ゲーム上で成立させること。アニメーターがつくりたい演技を、モデルとリグはどう支えるのか。全6回連載の第1回は、アニメーション、モデリング、リギングを担う3人に話を聞く。研究開発映像「3DTech Demo」での検証から、新規プロジェクトでの職種間の連携、表現を磨くレビューや育成まで、具体的な取り組みを紹介する。
動きも含めたセルルックを、3職種で追求
CGWORLD(以下、CGW):ラセングルが新規プロジェクトで掲げる「最強のセルルック」とは、どのような表現なのでしょうか。
川嶋 聖氏(以下、川嶋):私はゲーム開発に約20年携わり、アクションゲームを中心に、コンシューマからスマホアプリまで経験してきました。現在は3Dアニメーションのリードを務めており、動きも含めたセルルックを追求しています。作画アニメでは、コマ単位で最適な表情やポーズを描けますよね。ゲームでも、モデルの形に縛られず、誇張を交えた大胆な演技を実現したいのです。
嘉数 豪氏(以下、嘉数):私はゲーム開発に約24年携わり、キャラクターや装備などの制作を経験してきました。現在は3Dキャラクターモデルのリードとして、制作の取りまとめや品質管理を担当しています。アニメーターがつくりたい誇張に応えられるモデル構造を考え、動かし方を相談しながら、最適なポリゴンの分割やジョイントの配置を提案しています。
忽 帥氏(以下、忽):私は2016年にアニメCG業界に入り、当初はゼネラリストとして、主にアニメーションを担当していました。その後、リギングからツールや制作環境の整備へと担当を広げ、2022年にラセングルへ入社しました。今はテクニカルアーティスト(以下、TA)としてリギングやパイプライン構築を担当しています。アニメはレンダリング後の画に手を加えられますが、ゲームではリアルタイムに画を生成するため、後から修正できません。作画的な"嘘"を、ゲームエンジンから出力される画の中で成立させることが、技術面での課題です。
CGW:その検証の一環でつくられたのが、「3DTech Demo」なのですね。
川嶋:はい。新規プロジェクトの映像はまだ公開できないので、開発中の技術や表現を、当社の採用や展望に関心のある方に知っていただくために制作しました。2022年版は神楽というキャラクターをイチからつくり、2024年版ではそれを更新し、アニメーションや背景を新たに制作しています。2022年以降に開発した新技術も盛り込みました。2024年版の制作後も技術開発は続けていて、現在はさらに更新が進んでいます。
神楽の演技で検証した、作画アニメ的な動きと物理シミュレーションの融合
CGW:神楽のアニメーションは、どのように考えていったのでしょうか。
川嶋:まず、どういうキャラクターなのかを理解することから始めます。神楽は普段は可愛らしく愛嬌がありますが、戦闘では力強く、様々な武器を使って闘います。その人物像から、立ち姿や歩き方を考えるんです。社内のメンバーや協力会社に制作をお願いするときも、単に動作を指定するだけでなく、キャラクターの生い立ちや性格まで記した資料を渡し、読み合わせをしています。
CGW:2022年版のバトルシーンでは、動きの付け方にも作画アニメらしさがありますね。
川嶋:リミテッドアニメーションの考え方を採り入れています。映像自体は毎秒60フレームで描画しながら、キャラクターの動きは意図的にコマを間引きました。ただ、単に間引くだけでは処理落ちのように見えてしまいます。作画アニメを研究し、どのポーズをどれくらいの時間見せると、ねらった動きになるかを検証しました。
CGW:身体と髪では、動きの印象がちがいますね。
川嶋:このバトルでは、コマを間引いた身体の動きに、物理シミュレーションで連続的に揺れる髪を組み合わせています。身体に合わせて全てを止めるのではなく、作画的な動きと、リアルタイムに生成される動きを融合できないかと考えました。進行中の新規プロジェクトでは揺れものも手付けする場合があり、そこにゲームならではの挙動をどう加えるか、引き続き検証しています。
CGW:Demoの成果は、新規プロジェクトでどのように活かされていますか。
嘉数:Demoでは、どこまで表現できるかを限界まで試しました。一方、ゲームでは同じ仕様のキャラクターを何体もつくるため、量産性や処理負荷も考えなければいけません。Demoで試した表現を目標に、実際のゲーム開発に合わせた調整を施しています。
デザイン段階から相談し、アニメーターの表現を支えられるモデルとリグへ
CGW:普段の制作では、皆さんの間でどんなやり取りをしているのでしょうか。
嘉数:新規プロジェクトでは、2Dのデザイン画をしっかり詰めてからキャラクターモデルをつくっています。全身の三面図に加え、顔は正面、斜め、真横のアップを用意し、影の入り方まで描いてもらいます。モデラー個人の解釈力に頼らず、誰が担当しても一定の品質に仕上げられるようにするためです。
川嶋:アニメーターもデザイン段階で確認します。例えば、腕を上げ下げしたときに衣装が干渉しそうなら、形を変えるのか、リグで対応できるのかを相談します。元のデザインはできるだけ活かしたいですが、動かしたときに不自然に伸びたり曲がったりしそうな部分は、早めに伝えます。また、作画アニメのように、カメラに近い手脚を大きく見せてパースを誇張したり、カメラアングルに合わせて顔のパーツの位置やシルエットを変えたりしたい場合もあります。そうした表現ができるよう、モデルやリグの調整も依頼します。
忽:私も、技術的な相談があればデザインの確定前から加わります。揺らす要素が多くても扱いやすくできるか、ある部分を動かすと別の部分も連動させられるか、といった相談が多いですね。期待されている動きを実現できるか、プロトタイプをつくって検証する場合もあります。
嘉数:モデラーが担当するのは、ボーンとジョイントを入れ、ウェイトを設定するところまでです。新規プロジェクトでは、途中のラフな状態で、いったんアニメーターに動かしてもらっています。方向性が合っているかを確認し、大きなズレがなければモデラーがさらに完成度を上げて、ウェイトも含めた最終確認をお願いしています。
忽:リガー側では、ジョイントの名前や軸など、データの仕様も確認します。名前が仕様とちがっていると、その後の自動処理にも影響しますからね。リグを組み終えたら、改めてアニメーターに確認してもらいます。リグはMayaで動けば完成というわけではありません。ジョイントを拡大・縮小したとき、Unityでは想定とちがう変形になる場合もあります。そこで嘉数と相談してジョイントの階層構造を見直し、Unity上でもねらい通りに動くよう調整したりもします。
原画となるキーポーズを起点に、キャラクターの演技をつくり込む
CGW:そうして用意したモデルとリグで、アニメーションはどのようにつくっていくのでしょうか。
川嶋:新規プロジェクトでは、まず作画アニメの原画に相当するキーポーズを担当アニメーターがつくり、現場のリーダーや私が確認します。承認後にポーズ間のキーを打ち、最後に揺れものを仕上げます。特にキーポーズに関しては、つくるだけでなく、確認と調整にも十分な時間をかけるようにしています。
CGW:最初から、その制作方法だったのですか?
川嶋:フルフレームのアニメーションをリミテッドに変換するツールを、忽につくってもらったこともあります。滑らかな動きをつくってから変換する方法と、最初から1枚ずつ作画するようにポーズをつくる方法を、量産するときの進めやすさも含めて検討しました。Demoではモーションキャプチャのデータを編集して使った場面もありますが、新規プロジェクトでは、ポーズをひとつひとつ手でつくる方法を採っています。
CGW:1人のアニメーターが担当する範囲は、どこまでですか。
川嶋:基本的には、ボディから表情、揺れものまで一貫して担当します。ただしUnity上で揺れものに物理シミュレーションを加える工程などは、別の人が担う場合もあります。カットシーンとバトルも担当を固定せず、得意分野を考慮しながら両方を経験してもらっています。
CGW:日常の芝居とバトルでは、モデルを使い分けていますか。
川嶋:基本的に同じモデルを使っています。バトルモーションから顔のアップにつながる場面もあるので、戦闘中でも表情をつくり込むケースはあります。一方、背面からしか映らない場面では、表情にそれほど手をかけないケースもあります。日常かバトルかという区分だけでは、必要な演技は決まりません。カメラがどこから何を捉えるかによって、表情までつくり込むのか、身体の動きで見せるのかを考えています。
CGW:カットシーンなどの絵コンテでは、演技や動きまで細かく決まっているのでしょうか。
川嶋:絵コンテを基に制作しますが、その描き込みの細かさは場面によって異なります。例えば、インゲーム中の攻撃はラフな場合が多いですが、必殺技など、特に力を入れたい動きは、より精度の高いものを用意してもらいます。ただ、タメ・ツメやタイミングまで決まっているわけではありません。絵コンテを参考に3D空間内で動かしながら考え、より格好良い演出があれば提案しています。
CGW:アニメ的な誇張をゲームの動きに取り入れる上で、難しいのはどんな点ですか?
川嶋:インゲームではプレイヤーがカメラを動かせるので、どの角度から見ても不自然にならないようにする必要があります。一方、カットシーンでは、決まったカメラに合わせて大胆に形を崩せます。その自由度も使って、最も魅力的に見える画を探ります。こうした画づくりは、担当アニメーターと、リードの私とで確認しながら詰めていきます。言葉だけでは修正の意図が伝わりにくいときは、私がMayaのデータを直接修正して担当者に渡し、さらに磨き込んでもらっています。
CGW:プロジェクト全体のチェック体制も教えてください。
川嶋:協力会社に制作をお願いしているものは、一定以上のスキルをもつ社内のリーダーが確認した後、私が見ます。アニメーションチーム内の最終チェックは私が担当し、その後、アートディレクターや、ゲーム全体を統括するディレクターにも確認してもらいます。アニメーションとしては問題がなくても、画としての印象や、前後のストーリーとのつながりまで考慮すると、修正が必要になる場合もあります。
手付けアニメーションを突き詰めたい人も、リードを目指したい人も歓迎
CGW:中途入社の方が、これまでと異なる制作方法に慣れるために、どんなフォローをしていますか。
川嶋:私はフルアニメーションをつくってきた期間が長かったので、今のようにポーズから画をつくり込む方法には慣れが必要でした。現在のチームには様々な業界の出身者がいて、リミテッドが得意な人もいれば、最初は戸惑う人もいます。育成は、決まったカリキュラムに沿って進めるスタイルではなく、現場で制作しながら学ぶOJTに近いですね。新卒の場合は中堅メンバーが手厚くレビューし、ひとつのモーションを時間をかけてつくり込み、スキルを伸ばしてもらっています。中途入社の方にも、これまでの経験や制作方法のちがいをふまえ、実務を通じて当社のつくり方に慣れていただけるようフォローしています。
忽:TAには、座学で学べる機会もあります。私たちが所属するエンジニア組織には新卒向けの研修があり、CGや情報工学などを体系的に学べます。知識を補いたい中途入社の人も参加でき、実際に最近TAとして入社したメンバーが受講しています。制作経験があっても、3Dの基礎知識を整理して学び直したい人には、役立つ内容だと思います。
CGW:使ってきたソフトがちがう方も、採用対象になるのでしょうか。
川嶋:当社では、3D制作にはMaya、ゲームエンジンにはUnityを使っています。ただ、Mayaの経験だけで判断していません。3ds Maxなどを使ってきた方も対象ですし、UnityよりUnreal Engineに慣れていても、不利になるわけではありません。アニメーターの場合は、アニメーションのスキルや、私たちの制作スタイルに合うかどうかを見ています。
CGW:将来、チームを率いる仕事に挑戦したい方には、どんな機会がありますか。
川嶋:リードを目指すメンバーには、協力会社への対応や、発注リスト、発注資料の作成なども経験してもらっています。新しいプロジェクトでもチームを率いていけるよう、制作以外の経験も積んでもらいたいんです。登用で重視するのは、在籍年数の長さよりも、実力や熱意です。実際に、2024年に新卒で入社したメンバーが、現在はサブディレクターを担当しています。自分の仕事で爪痕を残したいという意欲には、役割を任せることで応えていきたいですね。一方で、チームの中にはアニメーション制作に集中したい人もいるので、できるだけ本人の希望を聞いて、役割を考えています。
CGW:これから新規プロジェクトに加わる方に、どんなことを期待していますか?
嘉数:自分なりのこだわりを制作に活かしてほしいです。ゲームやアニメの好みでも、実現したい3D表現でも構いません。提案や意見をもらうことで、皆の知見が混ざり合い、より良いものをつくれます。
忽:TA志望の方には、MayaなどのDCCツールの知識を活かし、使う人の立場に立ってリグやツールをつくってほしいです。経験年数よりも、「こんなリグや機能を実現したい」という意欲を重視しています。
川嶋:新規プロジェクトは、現実には不可能なダイナミックな動きをつくる機会が多く、手付けアニメーションが中心になっています。アニメーターには、手付けが好きで、その表現をさらに突き詰めたいという意欲を期待しています。ゲーム業界だけでなく、アニメCG業界などからの転職者も歓迎します。
求人情報
詳細・応募はこちらからTEXT&EDIT_尾形美幸/Miyuki Ogata(CGWORLD)
文字起こし_大上 陽一郎/Yoichiro Oue
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