セクションを超えた"全員当事者"なゲームづくり ―― Colorful Palette新規ゲームプロジェクト座談会
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』を手掛けるColorful Paletteが大型新作タイトルを開発中だ。大ヒットを記録し、アニメ映画化も果たした同作に次ぐプロジェクトは完全新作フル3DCGタイトルとなる予定で、現在も開発スタッフを募集している。
今回は、同社にて活躍中のクリエイターのインタビューを通じて、同社が目指す「ものづくりへのこだわり」、異業界出身者が活躍する同社の環境がどのようなものなのかをたずねた。
本記事は、アニメ業界からColorful Paletteに入社し同社で活躍する異業界出身2名へのインタビューと、彼らを含む4名での開発チーム座談会の2部構成でお届けする。
アニメ業界からの転職でも活躍できるゲーム制作現場
――では、最初にアニメ業界からカラフルパレットにご入社された3DCGチームのおふたりのお話を伺っていこうと思います。まずは軽い自己紹介からお願いできますか?
西口智哉氏(以下、西口):
アニメーションチームでディレクターとマネージャーをしています、西口です。元々はOLM Digital, Inc.という会社で『ダンボール戦機』(2011-)を始めとした複数のプロジェクトにて、3Dレイアウト、アニメーション、コンポジット、3Dディレクションなど幅広く担当していたのですが、その後転職、フリーランスを経てカラフルパレットに入社、今年で5年目になります。
若林邦甫氏(以下、若林):
カットシーンディレクターの若林です。僕も元々はアニメ業界の出身で、マッドハウスで『オーバーロード』(2015)や『カードキャプターさくら クリアカード編』(2018)などに演出として関わったあと転職、バーチャルキャラクターの3DMVや3Dライブ制作を経てカラフルパレットに入社しました。
――おふたりがいま担当されている業務について教えてください。
西口:
アニメーションディレクターなので、基本的には3DCGキャラクターが動くところの担当なのですが、これに限らず幅広いディレクションをやらせていただいています。ストーリーを描くためのカットシーンはもちろん、インゲーム部分での演出、画面の遷移に至るまで、総合的な演出をやっていますね。あと、ちょっと特徴的なところとしては、作品の世界観設定に関わるチームにも所属していたりもします。
若林:
自分がやっているのは、カットシーンのディレクションです。中でもプリレンダやリアルタイムのシネマティックシーンを主に担当しています。西口さんが3DCGのアニメーションに関わる範囲全体でのディレクションやマネジメントをしていて、僕はその中のひとつとしてカットシーンを担当している、という感じですね。
――他業種・他社から転職されてきたおふたりから見た、カラフルパレットという会社の特色や強みと感じる部分は何かありますか?
西口:
裁量の広さでしょうか。アニメ業界では、一人ひとりの役割や作業範囲がきっちり決まっており、その任されている仕事のクオリティを追求していく、というやり方も多いと思うのですが、それと比べると、カラフルパレットでは自分の関われることが遥かに多いのを感じます。
もちろん、一人ひとりのやるべきことがきちんと決まっていることの利点はあるのですが、今の「みんなで考えながら面白いと思うものをつくっていこう」という働き方が僕にとってはすごく魅力的で楽しいところだなと思いますね。
若林:
僕もそれは感じますね。「カットシーンのディレクション」というメインの仕事そのものはアニメ演出の仕事と共通する部分もあるんですが、今の職場では、その前工程である世界観設計やフィールド設計から入ることも多いです。もちろん、未経験だから苦戦することも多いんですけど、映像演出という仕事だけでは携われないような領域には新たな学びも多いので、そこは転職したから得られたやりがいですね。
――おふたりのように異業界から来られる方は多いんですか?
西口:
僕たちの紹介で入ってきた者も含めて、アニメ業界出身者は結構多いです。3Dチームのメンバーの半分以上がアニメ業界出身者という時期もありましたね。前職はゲーム業界だけど、元を辿ればアニメ・映像業界からという人も多くいますし、実写映画やMVのVFXをやっていたようなスタッフも在籍しています。異業界出身のメンバーが多く在籍するチームだと思います。
――異業界からの転職というとなにかと大変なイメージですが、苦労やトラブルはありませんでしたか?
西口:
正直、あまりないですね(笑)。そもそも映像業界でもプロジェクトによって制約や作法が違うことも多かったので、アニメからゲームに移ることに大きな壁があるという意識はありませんでした。それに、カラフルパレットのアニメーションセクションはツールの縛りや制限がほとんどないので、そういうツール面での苦労も少なく進められたのも助かりました。
若林:
僕も苦労やトラブルはあまりなくて、逆に、アニメ演出でディレクションしていた視点がかなり役に立っているなと感じます。業種は違えど、日本的なキャラクターコンテンツという時点でアニメ的な表現やカット割りや演出などを使う機会は多いんですよね。なので、ところ変われども使える引き出しは多くあります。
西口:
あと、カラフルパレットのアニメーションセクションはゲームエンジンへの組み込みの知見を持ち合わせたスタッフも複数いますので、自分自身で学んでいくのはもちろん、知見のある仲間に支えてもらいながら「ゲームづくり」に臨めるのも特長ですね。
触り心地のいいアニメーションなど、ゲーム特有のクリエイティブの範囲もあるにはあるのですが、それと同時に他分野・他業界での知識や経験が活きるところも多分にあります。
ですので、今いる業界で培った経験を活かして自分の世界を広げてみたい方には、カラフルパレットはかなりおすすめできる会社だと思います。
フル3Dの新作ゲームを開発中! 新規プロジェクト座談会
後半からは他部署から新たに2名が参加。開発中の新規プロジェクトについての話を交えながら、座談会の形でのインタビューとなった。
――ここからは若林さんと西口さんに加えて新たにおふたりに参加いただけるとのことで、まずは自己紹介をお願いします。
斉藤俊介氏(以下、斉藤):
クライアントエンジニアの斉藤です。新卒でカラフルパレットに入社して現在5年目、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』(以下、プロジェクトセカイ)ではリアルタイム通信や画面の実装の部分を担当していたのですが、新規プロジェクトではカットシーンチームのリードエンジニアとして参加しています。
伊東勇輔氏(以下、伊東):
リードエフェクトアーティストの伊東です。僕は元々実写映画やCMのVFXアーティストをやっていたのですが、そこからモバイル系のゲーム会社に転職しまして、キャリア2社目のゲーム会社としてカラフルパレットに入社しました。いまは主にゲーム内のエフェクトや、ライティング・カラーグレーディングなどを担当しています。
――ありがとうございます。ここからは新たにおふたりを交えて、新プロジェクトのことやカラフルパレット全体のことを伺っていければと思います。
セクションに囚われず、とことんユーザー目線に立って議論する
――他のゲーム系企業と比べた際に、カラフルパレットでのゲーム制作ならではの特徴や文化と感じられるものは何かありますか? 斉藤さんや伊東さんの視点で感じられるものがあれば教えてください。
斉藤:
やっぱり、フラットに意見を言い合うという社風でしょうか。最初に来たときに一番印象に残ったのは「議論が活発な会社」というイメージでした。
伊東:
僕もそれかもしれないです。転職してきて強く感じたのはセクションの壁のなさでした。
西口:
自分が入社したときも、自分の斜め前の席は近藤(近藤裕一郎氏。Colorful Palette代表取締役)でしたからね。開発メンバーのすぐそばで社長や他の役員たちも普通に仕事しているんです。もちろん、ゲームについての案出しや壁打ちも、近藤を含め役員やディレクター陣と僕らが直接行い、率直な意見をぶつけあい、より良いものになるようイテレーションを回していきます。
――場合によってはセクションや役割を飛び越えて意見を言うこともあるということですよね? 躊躇したりしませんか?
伊東:
気まずさを感じさせることもなく、もう、それが普通になっていますよね。
若林:
そうですね。開発中のものに対して、上長や役員から「こういうのはどうか」と新しい意見を提示されることも多くありますが、それに対して僕たちも「言われたからとにかく従う」のではなく、「いや、こういう考えがあって、だからこれで行きたいんです」と本音の意見を返しています。
西口:
以前あった例でいうと、会議の場で企画や仕様についてプランナーを中心に案出しをしていた時、当時プロジェクトにジョインしたばかりのエンジニアから「その案だと、遊んだときに僕はあまり面白いと感じないかも」という発言があり、会議に参加していた役員が「何が「面白い」につながると思う?」と前のめりに尋ねて、みんなで再検討が始まったということがありました。
ゲーム開発において、企画や仕様はプランナーチームが主体となって決めていくことが一般的かもしれませんが、とあるエンジニアの発言からスタートした議論が前向きに進んでいく姿を目の当たりにして「ああ、ここは本当にフラットに意見を言い合える会社なんだ」と体感しました。
伊東:
今回のプロジェクトだけでなく『プロジェクトセカイ』のほうでも同様で、バーチャルライブ中のスクリーンショット機能の開発のきっかけになったのは、当時インターンに来ていた学生のアイディアだったんですよね。インターン中の課題とは別に「あったほうがより良くなるはず」と当時の上長とこっそりスクショ機能を開発していて、インターン最終日に開発メンバーにお披露目したところ、実際に良いものだったから開発チームで引き継いで本番環境に実装したという。
実はそのインターン生こそ、斉藤なんですけどね(笑)。これも、本当にフラットな会社だと感じたエピソードの1つです。
――なるほど、象徴的なエピソードですね。ちなみに、アニメーションセクションのおふたりにもそういった体験がおありですか?
若林:
ありますね。それに、僕は世界観をつくっている側だったので、「意見をもらった経験」もあります(笑)。
たとえば、ゲーム内に登場する武器を考えるときに、攻撃力やエフェクトみたいな「ゲームの仕様」としての観点だけじゃなく、物語世界の中での設定が必要になるじゃないですか。火の精霊の祝福をうけて炎をまとっている剣、みたいな。
僕自身、たくさん頭をひねって「これでいこう!」と決めた設定を携えて会議に臨んだのですが……。
西口:
会議に同席した僕が「こんな風に少し変えてみるのはどうだろう」と調整を提案しました。もちろん、エフェクトの見た目が、とか3DCGらしい理由もあったのですが、純粋に設定をもっとよくできるんじゃないか、と思って提案して、みんなで決めていきました。
そうした世界観設定のような、ずっと上流の工程で決められる内容に、デザイナーやエンジニアをはじめとした開発現場のメンバーが意見・提案していくことはよくありますし、意見をきちんと聞いて採用するだけじゃなく、より良いものにブラッシュアップしていけるのもこの会社のいいところだと思います。
――どうしてそれが成立するのでしょう? 「自由に意見を言ってほしい」と言われても、社歴や役割で遠慮してしまうこともあるのかなと思うのですが。
斉藤:
カラフルパレットでは「最高のものづくりをしたい」という情熱がなければ、最高の作品は生まれない、という考えをもち、「ものづくりへの情熱」というバリューを掲げています。そのために、チームの垣根を超えて積極的に意見を言い合うという行動指針を大切にしているんです。
社長である近藤自身も、いちクリエイターとして「意見を交わし合っていいものを生み出していこう」という考え方や文化を大事にしていますし、会社のバリューが自然とみんなに浸透しているのでフラットに議論できているのかもしれませんね。
西口:
他には、情熱を注いで「最高のものづくり」をするためには躊躇している暇がない、というのもあります。
カラフルパレットで何よりも大切にしているのは「ユーザーさんから見た品質」なのですが、ユーザーさんに届くもの、ユーザーさんが受け取るものをより良くしていきたいと考えたとき、リリースまでにはある意味お金よりも時間の方が有限になってきます。
ですから、立場を考えて躊躇している時間すら品質向上に使える時間にしていきたいと考えています。
自分たちも「オタク」だからこそ妥協しない
――ここまではフラットに議論できる環境についてうかがってきましたが、そもそもどうして皆さんは世界観設定など「役割を超えた」ところまで意見を伝えるのでしょう?
斉藤:
みんな、オタクなんですよ。オタクなら誰しもが何か熱中した作品を持ってるじゃないですか。心の底から大好きで人生すら変わったような作品があるからこそ、逆に、期待してリリースを待っていた作品が中途半端なものだった時の落胆もわかる。
だから、そうしたものをつくるのは許せない。クリエイターとしての自分と同時に、一人のプレイヤーとしての自分や、遊んでくれるユーザーさんが納得できるものをつくりあげなければならない、って想いがあると思うんです。
実際の開発現場の例でいうと、開発中のゲームを全社でテストプレイしてもらった際、スプレッドシート上に簡単な目標リストを設けてトロフィーのような形にしてみたところ、目標リストを制覇してくれた人が数十人規模でいました。そうした熱量をもったメンバーからのフィードバックは、ユーザー目線という点でもとても参考になりますよね。
ほかにも、シナリオができたときには全社に展開されて、みんなでシナリオを読んで感想やフィードバックのコメントをします。
この"シナリオレビュー"は本当にセクション問わず、あらゆるメンバーが様々なコメントをするのが特徴的で、中にはとても熱いコメントやキャラ愛ゆえの鋭い指摘もあったりするんですよ(笑)。
リリースされた後、実際に遊んでくれる未来のユーザーさんのことを本気で考え続け、妥協せず、品質向上をし続けている会社だと思います。
西口:
弊社の社訓は「人生を彩るコンテンツをつくり続ける。」ですが、本当に遊んでくれる人たちの人生そのものにアプローチしたいんだなと感じることは多いですね。
若林:
全員が当事者意識を持つことを歓迎されている、という空気のおかげかもしれません。ともすれば「お前が言うことじゃないだろ」と一蹴されてしまうかもしれないことでも安心して言えるし、言うことを求められる、なんならとりあえずつくってしまってもいい。
――意見を言うだけでなく、つくってしまうことまであるんですか?
伊東:
はい。社内のチャットに「なんでもいって委員会」というチャンネルがあるんですけど、そこには、実際にデザイナーやエンジニアたちがお試しでつくってみたものが気軽にアップされたりしています。
その中で「これは良いね」となったものは、そのまま実装に向けた議論が始まり、専用のチームが組織されたりすることもあります。実際に「なんでもいって委員会」発でゲーム内で使えるキャラクターの表情の幅が増えるということもありました。
斉藤:
僕が実装に関わったやつですね。偶然アニメーションチームのメンバーが「なんでもいって委員会」にすごくいい表情をしたキャラクターの画像を上げていたんです。その方は「こういう表情もできるよ」というので試しにつくってチャットに貼ってくれたらしいのですが、ゲーム内のカットシーンでもこういう細やかな表現ができたほうがいいよね、じゃあつくろう、と実装に向けて動き出した事例です。
本作のカットシーンにおけるシネマティックな表現を追求していくなかで、より繊細な表現をできたほうがゲーム全体の品質もユーザー体験もグッと上げられます。
ただ、視線まで含めた絶妙な表情を毎回アニメーションチームが用意する、というのも現実的ではないですし、カットシーンチームのメンバーがUnityのタイムライン上で視線や表情を細かく調整できるよう、僕たちエンジニアチームで新規機能を開発・実装しました。
――新規機能までつくってしまうんですね。正直、大変じゃありませんか?
斉藤:たしかに、新規機能の実装に工数がかかるのは事実ですし、これが場当たり的な開発依頼だったらもっと慎重に機能の要否を議論すると思います。
ですが、今回のような「より良くするための提案」に対して、エンジニアチームが第一声で断ることはまずありません。ゲームがより良くなるのであれば、なんとかして実現したいと思っているので、より良くするための機能開発はエンジニア的にも大歓迎です。
アニメーションセクションのメンバーを募集中
――特徴的なエピソードも多かったですが、そんなカラフルパレットで、アニメーションセクションの一員として募集するメンバーに向けたコメントをお願いします。
西口:
ポジティブで明るくて、ものづくりに執着がある方、コンテンツに人生を救われたことがあるオタク、そんな方に来てもらえたら嬉しいです。
自分の意見を言葉にするのが苦手とか、逆にグイグイ行き過ぎてしまうとか、人によって得手不得手はあるとは思うんですけど、相手にリスペクトを持ってディスカッションができる人なら大丈夫です。
若林:
そうですね。それに、広い裁量でなんでもやらせてもらえる会社なので、良いものをつくりつつ成長していくこともできます。決められた仕事や、指示された作業をこなすだけではなく、とにかくみんなで良いものをつくりたいという人には楽しんでもらえる会社だと思います。
採用情報
募集職種
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【新規開発】クライアントエンジニア 他
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TEXT_稲庭 淳
PHOTO_弘田 充
EDIT_遠藤佳乃(CGWORLD)