シリーズ世界累計3億2,500万本の販売本数を誇るFIFA(国際サッカー連盟)公認のサッカーゲーム『FIFA』シリーズ。9月30日(金)に発売された最新作『FIFA23』のスペシャルユニフォームデザインに日本のアーティスト/デザイナー、MITSUME氏が起用された。マウスのみを使用し、Adobe Illustratorの繊細なパス作業によって描かれる独創的なグラフィックを持ち味とする彼に、その創作スタイルと今回デザインされたユニフォームの創作意図を聞いた。

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    FIFA 23 | 公式ローンチトレーラー | 世界のゲーム

    ベジェ曲線の美しさに惹かれ、マウスで作品を生み出す独自のスタイルを確立

    CGWORLD(以下、CGW):MITSUMEさんのこれまでのキャリアについてお聞かせください。

    MITSUME氏(以下、MITSUME):幼い頃からずっと絵を描いていて、専門学校時代からCGを使うようになりました。デザイン学科を卒業し、デザイン事務所に就職したあと、自分にしかできないことをやりたいと思い、独立をしました。その後、様々なご縁で海外で活動をし、日本のマンガやアニメが海外で武器になることを知り、そうしたテイストの作品を描いたり、アパレル向けのデザインの展開などを行なってきました。

    MITSUME

    一度見たら忘れられない独特なスタイルが特徴のアーティスト。 全ての作品はコンピュータのマウスのみを使用し、Adobe Illustratorの繊細なパス作業によって描かれる。 ポスターやイラストなどのグラフィックデザインのみではなく、アパレルやグッズの企画からデザインまで1人で創りだす。更に、イベントではアクリル絵具やスプレーなどを使ったライブペイントや、PC1つで大画面に映し出し会場を魅了するデジタルペイントまで、テーマに応じた様々なパフォーマンスを実施。 常に見る人の心に残る作品を提供し続ける。 日本だけではなく、アメリカ、中国、フランス、韓国、リトアニア、タイ、ベトナムなど様々な国でパフォーマンスを行い、ボーダレスにワールドワイドで幅広く活動中。 単なる1デザインに留まらず、ビジュアル・空間・パフォーマンスと様々なものを創り出す。 常に新たな表現を求めるMITSUMEの作品は日々進化し、デジタルアートの可能性を広げる。

    Twitter:@3eyes_takahashi
    Instagram:@3eyestakahashi
    www.mitsume.co

    CGW:MITSUMEさんのイラストからすると、マンガやアニメから影響を受けてこられたのかなと思ったのですが、今のお話ですと必ずしも子供の頃から触れてきたというわけではなさそうですね。

    MITSUME:そうですね。どちらかというとゲームの方が好きなタイプでした。キャラクターや服のことを妄想して楽しんでいて、今になってイラストの形にしているので、そことは違うルーツなんです。

    CGW:MITSUMEさんはイラストを描くツールとしてAdobe Illustratorを使用されています。これはどんなきっかけで触れ始めたのでしょうか?

    MITSUME:専門学校時代です。最初はPhotoshopを使っていたのですが、線を拡大したときのガタガタした感じがあまり好きではないなと思っていたときに、Illustratorに出会い、そこでベジェ曲線の美しさに惹かれました。そして、自分は綺麗な曲線で作品を描きたいんだと気付かされました。浮世絵や水墨画なども綺麗な線で描かれているじゃないですか? そこに日本の文化と重なる部分も感じました。

    「おかめ旅_滝_スピードイラスト」Okame mask went to see the waterfall. Adobe Illustrator Speed Art [BGM / she]

    CGW:マウスでIllustratorを使いこなす画法だそうですが、この技術はどのように身につけていったのでしょうか?

    MITSUME:ずっと我流で続けてきました。初めて触ったときは「こんなもんで絵が描けるか!」と思いましたが(笑)。そこから描き方を模索していき、一貫して線にこだわり続けました。3年ほど使い続け、ある瞬間から急に手に馴染んで、やっと思い通りの線が描けるようになりました。ただ、これが描きにくいからこそ他のアーティストと差別化できているのかなと思います。

    正直、Illustratorをマウスで描くのは手間がかかります。ですが、自分の性格として几帳面にコツコツやっていくのは苦ではないので、それもあって体に馴染んでスタイルとして完成したのかなと思います。実際に時間はかかるので、よく頑張っているねと言われることが多いのですが、自分としては好きなことをやっているだけなので、その感覚がないんです。本当に自分に合ういいツールと出会った感じがします。

    CGW:色塗りの部分でのIllustratorの良さはどんなところに感じますか?

    MITSUME:Illustratorは写実的に陰影を変えていくのが難しいツールでして、その方向で頑張って表現しようとした時期もあったのですが、今は逆に細かい陰影が描けないからこそ、線の印象が残ったまま仕上げられると思っています。グラデーションをつけるときも円や真っ直ぐの線だけで顔の影や服の影を描いたりしています。そうすると、ちょっと冷たい印象になり、グロテスクなモチーフを描いたときにも収まりが良くなります。これは偶然発見した描き方だったのですが、その不思議なバランスが面白かったですね。

    CGW:機能としてある程度、抽象化されるっていうところと、ご自身のイマジネーションの良い交差点があったんですね。

    MITSUME:そうなんです。僕は思い通りにいきすぎないところが面白いと思っています。ライブペイントでも、描いてると絵の具が垂れてきたり線が掠れることがあります。そのときに自分の想像を遥かに超える瞬間があるんです。

    Photoshopで写実的な絵を描いていたときには、理想の形にすることはできても、それを超えられないというジレンマがありました。デジタルは時間をかけてじっくりじっくり作り上げていくんですけど、瞬間的に飛び抜けるライブイベントと両方をすることで 創作のバランスを自分の中で取っているのだと思います。今では毎回面白い発見があるので、それが楽しいし飽きないですね。

    CGW:ライブペイントを続けることを通じて創作にはどんな影響がありましたか?

    MITSUME:ライブペイントでは、子供の頃に絵の具でグリグリ紙に描いていたときの喜びとか興奮みたいなものが思い出せるんです。忘れちゃいけないものを思い出したいとか、綺麗に描きすぎることが正しいことじゃないとか、失敗してみたいとか。ライブペイントは基本的に思い通りにいかないし、思っていたのと違うものになることも多いのですが、そうすると、自分のより深いところを見られる気がするんです。自分も知らない自分がそこに現れていて、自分が何を考えて何がしたいかをライブペイントから発見して、それをデジタル作品に応用したりもします。

    ベトナムで開催されたVIETNAM-JAPAN COMIC FES 2022でのライブペイントの様子(MITSUME氏公式Instagramの投稿より)

    日本のカルチャーをモチーフに、子供にも楽しんでもらえるデザインを

    CGW:そして、今回TVゲーム『FIFA23』のスペシャルユニフォームのデザインを手がけられました。オファーを受けたときはどのような思いでしたか?

    MITSUME:ゲームに関わることは自分の中の1つの大きな夢として持っていたので、めちゃくちゃ嬉しかったですね。先方からは自分のイラストについて「独創的で、リアル志向のゲームに採り入れたら面白そうだから」とご説明を受けました。『FIFA』シリーズは本当に世界中にプレイヤーがいるので、これをきっかけにまたいろんな人が自分の絵を見てくれると思ったら鳥肌が立ちました。

    MITSUME氏がデザインを手がけた『FIFA23』スペシャルユニフォーム

    CGW:実際にどのようなコンセプトでデザインされたのかを教えていただけますか?

    MITSUME:僕が創作をするときはやはり自分にしか出せない表現を意識し、できるだけ攻めたものを作ろうとします。今回、キャラクターの顔が半々のユニフォームという他の誰もやっていないモチーフで、違和感を覚えてもらえるようなバランスのデザインにしてみました。

    あとは、子供たちが見たときに楽しんでもらえるようなデザインを念頭に置きました。子供たちがこのゲームをプレイしたときや、大人がプレイするのを横で見たときに、このユニフォームを格好良いと思ってもらえたら、それが何かしらのきっかけになるかもしれないと思って。僕のいとこも子供の頃からサッカー選手を目指していたので、どんな形でも可能性になればと考えてデザインをしました。

    CGW:「愛羅武勇」と「超喝斗毘」と、いわゆるヤンキー文化の当て字がありますが、これはどのような意図でしょうか?

    MITSUME:日本をモチーフにすると、富士山とか舞妓さんといった伝統的な形に落ち着きがちですが、それはそれとして、世界からはもっとユニークに見られているカルチャーがあるんですよね。こうした当て字に見られるヤンキー文化のデザインは、日本人からすると割と見慣れているモチーフかもしれませんが、海外の人からするととても変わったものに映ります。そういう意味で、尖った路線の表現のひとつとしてデザインに取り込んでみました。

    CGW:『東京卍リベンジャーズ』のコスプレをしている外国人ファンも大勢いますよね。

    MITSUME:そうそう。もっとカジュアルで良いと思うんですよ。マンガやアニメの分野では、制作者はアートだと思って描いている人は大勢いると思うんですけれども、受け手はそれを気軽に手に取れるのがポップカルチャーの良いところだと思います。芸術品のアートは額に飾られて美術館に置かれていてどことなく距離を感じるので、もっと近くに変わったものがあればと思っていました。

    だからこれも、サッカーに興味があって『FIFA23』をプレイしたらユニフォームが面白いと感じてもらえて、そこからグラフィックデザインに興味を持つかもしれない。ゲームは文化としてそういうところまで成熟してきたものになっているので、とても良い試みだと思います。

    CGW:デザインをする上で具体的にはどんな工夫がありましたか?

    MITSUME:ゴチャっとしすぎないように気をつけました。やっぱり画面越しになると小さくなってしまうので、遠くから見たときのインパクトを重視しました。このデザインは顔が半々に分かれていますが、そこからSNSの自分と現実の自分の二面性を考えたり、半分が鬼になっていることを深読みすることもできます。でも、まずは子供がパッと見て、感じて、考えて、面白いと思ってもらえることが一番だと思って描きました。

    CGW:実際のTシャツもあるそうですが、着た感じはどのようになりそうでしょうか。

    MITSUME:僕がデザインするものは、着るのにちょっと勇気がいるけど、着てみると意外と気持ちがよくてテンションが上がるような服が多いんです。今までも「うわ、こんなの外で着られるかな?」というくらいのデザインだけれども、実際に着てみたら楽しくてみんな着てくれています。今回も炎のモチーフが入っていて、強そうでちょっとおどろおどろしい部分があって、日本のホラー文化のエネルギーも込めつつ、怖そうだけども面白いデザインになっています。

    CGW:『FIFA23』のプレイヤーにこのユニフォームをどのように楽しんでいただきたいですか?

    MITSUME:他のユニフォームとはまたちょっと毛色の違うものだと思うので、この服からジンクスみたいなものが生まれたら最高だと思います。「以前にこれを着たら試合に勝てたので、今度の勝負はこの服で臨もう」とか、逆に「相手がこれを着てきたら警戒しよう」とか、プレイの中で強く印象に残していただければ嬉しいです。これがプレイヤーの方にとっての勝負用ユニフォームになってくれたら最高です。

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    【応募方法】
    1.CGWORLDの公式アカウント「@CGWjp」をフォローする。
    ※当選のご連絡にはTwitterのDMを使用しますので必ず「@CGWjp」をフォローしてからご応募ください
    2.規定のテキストとハッシュタグ「#CGW_FIFA23」をつぶやく。
    3.当選者にはDMにてご連絡いたします。サイズはお選びいただけません。

    【応募期間】
    2022年12月15日(木)23:59まで

    【注意事項】
    ※本キャンペーンへのご応募には、Twitterのアカウントが必要となります。
    ※規定の文章がすべて入るようツイートしてください。
    ※当選の発表は、Twitter上でのDMをもって代えさせていただきます。
    ※発送先は日本国内に限ります。
    ※応募完了の確認、当選・落選についてのご質問や、お問い合わせは受け付けておりません。
    ※当選ご連絡後7日以内にお返事がいただけない場合には当選が無効となりますのでご注意ください。

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    INTERVIEW&TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota