SIGGRAPH 2026が、7月19日(日)から23日(木)までLAコンベンションセンターで開催された。本稿ではSIGGRAPHの数あるプログラムの中でも一際注目度の高いElectronic Theater(以下、エレクトロニック・シアター)について、紹介する。

記事の目次

    15作品に厳選された、今年のエレクトロニック・シアター

    エレクトロニック・シアターでは、世界中から応募された膨大な作品の中から、審査員によって選び抜かれた作品が一挙に上映される。全世界のVFX・アニメ・ゲームなど各分野における「過去1年間のハイライト作品」を楽しめる場だ

    さらにこのエレクトロニック・シアターは、アカデミー賞でお馴染み米国映画芸術科学アカデミー(AMPAS) より「アカデミー賞 短編アニメーション部門ノミネート作品の選考対象となるフィルム・フェスティバルの1つ」として認可されており、1999年以降、このエレクトロニック・シアターで上映された数々の作品が、アカデミー賞の短編アニメーション部門でノミネート、もしくは受賞を果たしている。

    今年のエレクトロニック・シアターは7月20日(月)と22日(水)の2日間、上映が行われた。会場はLAコンベンションセンターのHall Kだ。

    ▲会場の前で入場を待つ参加者たち

    昔から「エレクトロニック・シアターは、初日が一番盛り上がる」という都市伝説(?)があり、筆者もその慣習に従って、初日の20日(月)夜に鑑賞した。

    今回のSIGGRAPHは3年ぶりにロサンゼルスでの開催となったこともあり、エレクトロニック・シアター冒頭では“映画の都”としてのハリウッド史が紹介された。「西部開拓時代を経て、何もないロサンゼルスの荒野でいかにして映画産業が発展していったか」というなかなか興味深い内容だったが、この講義の分だけシアター終演が当初アナウンスされていた20時半から大幅に遅れ、実際に終わって外へ出たのは21時過ぎとなった(この後にパーティへの参加を予定していた筆者は、受付時間に間に合うかどうか、ハラハラものであった)。

    では、SIGGRAPH 2026のエレクトロニック・シアターでの上映作品の傾向を、筆者独自の視点から分析してみよう。

    主催者の発表によれば、今年は世界中から431作品もの応募があり、その中からコンピューターアニメーション・フェスティバルに43作品が選ばれ、さらにその中から15作品がエレクトロニック・シアターに厳選された

    ここ数年、エレクトロニック・シアターの上映作品数は減少傾向にあり、2023年は22作品、2024年が21作品、2025年は17作品、そして今年は……15作品である。この15という作品数は、筆者の知る限り、歴代のエレクトロニック・シアターの中で最も少ない。

    エレクトロニック・シアターは18時半開演で終演が21時近くという2時間半弱の上映時間であり、例年と比べて、シアター全体の上映時間が短くなったというわけではない。つまり、今年の入選作品には尺が長い短編が多く、それを調整するために入選作品の本数をあえて減らしたのではないかと推察できる。個人的には1作あたりの上映時間を短くして、もっと多くの作品を観たかったという気がしないでもないが……このあたりは、個人の好みによるのかもしれない。

    さて、今年の入選作品を国別に見ていこう。共同制作などで、2つ以上の国でクレジットされている作品は、公式サイトなどで最初に記載されている国でカウントしている。

    国別入選作品

    アメリカ

    6(7)

    フランス

    4(3)

    イギリス

    2(1)

    ギリシャ

    1(0)

    南アフリカ

    1(0)

    アイルランド

    1(0)

    日本

    0(0)

    ※()内は昨年度の本数

    今年も強豪国アメリカからの入選が6作品と、昨年同様に第1位だ。次いで優秀な学生が多いフランスからは昨年より1つ多く4作品が入選している。また、今年は南アフリカ、ギリシャ、そしてアイルランドなど、例年ではあまり入選していない国も健闘している。

    昨年、バンクーバーで開催されたSIGGRAPH 2025では開催国カナダからは2作品が入選したが、今年は0となっている。また、今年は日本からの入選がなかったのが残念だったが、こちらは来年のアナハイムに期待である。

    さて、入選作品をジャンル別に比較してみると、今年の傾向が見てとれる。

    ジャンル別入選作品

    短編アニメーション

    6(6)

    短編アニメーション(学生作品)

    5(5)

    サイエンティフィック・ビジュアライゼーション

    1(1)

    ゲームシネマティック/トレイラー

    1(1)

    ハリウッド映画VFX

    1(0)

    ミュージックビデオ

    1(0)

    コマーシャル/キャンペーン

    0(3)

    長編アニメーション

    0(0)

    短編アニメーション(リアルタイム)

    0(0)

    ※()内は昨年度の本数

    エレクトロニック・シアターは、冒頭でも紹介した「アカデミー賞 短編アニメーション部門ノミネート作品の選考対象となる」という理由から、短編アニメーション作品が多い。今年は昨年と同じ数で、プロと学生による11本の短編が上映された。

    学生作品は今年もSIGGRAPH常連校からの出展が目立つ。短編作品全体では、ストーリーテリングに長けた作品が多かったのも、特色と言えるだろう。また、前述のように尺が長い短編作品が多かったことも印象的だ。

    ハリウッド映画のVFXリールからの入選は、今年は1本のみ。昨年から今年にかけて、優れたVFXを含む作品は何本も公開されており、個人的にはILMWētā FXFramestoreDigital Domainなど活躍が目立った大手VFXスタジオの集大成VFXリールを、もっと観たかった。

    長編アニメーションからの入選は、昨年に続き今年も0本だ。軽く思い返すだけでも『トイ・ストーリー5』『私がビーバーになる時』『ミニオンズ&モンスターズ』などの人気作品があるにも関わらず、である。特に前者2作品は今年のプロダクション・セッションでもメイキング講演が行われていたので、せっかくならエレクトロニック・シアターと連動して上映すればよいのに、と少々残念に感じた。

    また、今年はTVコマーシャル・キャンペーン映像が1つも入選しておらず、やや物足りなさを感じた。

    ゲームエンジンによるリアルタイムの短編は、今年も0。しかしながらゲームシネマティック/トレイラーは1作品が入選し、さらにゲーム作品をベースにしたMVが1作品、入選していた。

    サイエンティフィック・ビジュアライゼーションは、昨年と同じ1作品。

    以上を鑑みると、今年のエレクトロニック・シアターは、ラインナップ的には少々アンバランスで、個人的には食い足りない印象ではあった。しかしながら、全体にストーリーテリングに長けた作品が多く、観終わった後の印象としては、それなりに「満腹感」が残る、良い作品が多かった点は付け加えておきたい。

    特別賞受賞作品

    エレクトロニック・シアターには特別賞が設けられている。最優秀作品に贈られる「Best in Show Award」、審査員特別賞の「Jury's Choice Award」、優れた学生作品に贈られる「Best Student Project Award」、そして観客のオンライン投票によって選出される「Audience Choice Award」だ。

    エレクトロニック・シアター初日となった20日の上映前には、今年の特別賞のうち3作品(※Audience Choiceは観客の投票によって、23日に発表されたため)の授与が行われた。

    最優秀作品賞:Best in Show

    『Apart』

    審査委員特別賞:Jury’s Choice

    『18 Months』

    学生作品賞:Best Student Project

    『Beyond Words』

    観客賞:Audience Choice

    『Saba』

    ▲開演前の会場。満席だ

    SIGGRAPH 2026上映作品全15本を紹介

    では、今年のエレクトロニック・シアターの上映作品を、筆者のひとことコメントを添えて紹介していこう。

    本稿では上映された映像のリンクを可能な限り紹介しているが、映像が公開されていない作品については、類似したクリップのリンク、もしくは関連リンクを掲載している(※リンクは2026年8月現在のもの。日数が経過するとリンク切れが発生する場合もある)。

    『Apart』Pola Maneli(南アフリカ・アメリカ共同制作)

    【最優秀作品賞:Best in Show】
    アパルトヘイト時代の南アフリカが舞台。人種が異なる仲良し少年コンビが、ある命を救う出来事をきっかけに、社会に根付く人種隔離政策や憎しみという現実と向き合うことに……というストーリー。脚本は映画監督のスパイク・リーが手がけている。
    www.apartanimatedshort.com

    『18 Months』 Paulo Garcia、Natalia Gouvea(アメリカ)

    【審査員特別賞:Jury’s Choice】
    地下鉄の駅に捨てられていた新生児を見つけた同性カップルのダニーとピート。その子供を養子として迎えるまでを描いた、実話に基づいたストーリーだ。養子に至るまでの長いプロセスを、伝統的な「妊娠」の各段階になぞらえ、「妊娠18ヵ月」という比喩的な題名で表現しているのだそう。

    ストップモーションによる、繊細なアニメーション表現が印象的な作品だ。
    18monthsfilm.com

    『Beyond Words』Creative Seeds(フランス)

    【学生作品賞:Best Student Project】
    11名から成る共同チームによる、フランスの学生作品。バイキング時代を舞台に、父親を失った少女と、戦いへ赴く母親との離別を描いた物語。母親が遠く離れていることによる少女の不安や感情が、神秘的なオオカミの出現と重ね合わせて表現されている。

    CREATIVE SEEDS | AU-DELA DES MOTS | Trailer

    『The Lost Bus』Cinesite(イギリス)

    Apple Original Filmsの映画『The Lost Bus』より、ロンドンのCinesiteによるVFXリール。2018年11月にカリフォルニア州パラダイス(Paradise)で発生した大規模な山火事の中、炎に包まれた街からスクールバスで子供たちを救出した実在の運転手と、教師の決死の脱出劇を描いた実話ベースの作品。

    今年唯一入選していたVFXリールだ。

    The Lost Bus - VFX Breakdown by Cinesite

    『Why we Fight // Ego』Brunch Studio(フランス)

    フランスのBrunch Studioによる、ゲーム『ヴァロラント』(Riot Games)の5周年を記念したMV。

    エレクトロニック・シアターで鑑賞した際は「シネマティックかな?」と思ったのだが、後で調べてみると、カテゴリ的にはシネマティックとMVの両方を兼ね備えているそうで、その斬新さからあえてMVに分類した。

    シノプシスには、「愛のために。家族のために。贖罪のために。追悼のために。命のために。なぜ戦うのか。フェニックスの妹、メアリ・アディによる"EGO"のパフォーマンスとともに、その答えを探そう。」と記されていた。

    WHY WE FIGHT // EGO ft.Qing Madi // Year 5 ミュージックビデオ - VALORANT

    『SWOT Mission Unlocks a New View of Our Waterways』NASA(アメリカ)

    今年、唯一入選していたサイエンティフィック・ビジュアライゼーションでNASAの作品。

    NASAの衛星ミッション「Surface Water and Ocean Topography (SWOT)」による観測データを可視化した映像で、ミシシッピ川、アマゾン川など世界各地の河川の流れや水量変化を、最新の衛星データを使って表現している。

    SWOTミッションが水路の新たな視点を切り開く

    『Untitled John Wick Game - Reveal Trailer』Saber Interactive(アメリカ)

    今年2月、映画スタジオのLionsgateとゲームパブリッシャーのSaber Interactiveは、世界的ヒット映画シリーズ『ジョン・ウィック』を題材にした新作AAAタイトルの制作を発表した。その予告編である。

    映画『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキ監督と、主演のキアヌ・リーヴスも制作に参加しており、リーブスは象徴的なキャラクターのビジュアルやボイスなどを担当した。キアヌ・リーヴスの、「Yeah」と言うキメ台詞に、会場からはグフグフと低い笑いが広がっていたのが印象的だった。

    saber.games/blog/2026/02/12/johnwickvideogame

    "Untitled John Wick Game" Reveal Trailer

    『Blooky: The Book Who Wanted to be Read』USC(アメリカ)

    南カリフォルニア大学(USC)の学生作品。本のキャラクター「Blooky」は、図書館の片隅に置かれたまま長い間、誰にも読んでもらっていない。そこでBlookyは読んでくれる読者を探すため冒険に出る。しかし、図書館の中の様々なコーナーへ移動するごとに、いろいろな目にあって……というお話。

    本のキャラクターをコミカルに描いた、ほのぼの作品。

    『Blooky: The Book Who Wanted to be Read』予告編

    『Ocean Futurisms: M.A.N.A』Inferstudio(イギリス)

    未来の科学を想像するフィクション(Speculative Science Fiction)の短編アニメーション作品。

    主人公は、未来の島嶼国連合の海洋騒音データ・アナリスト。気候危機に直面した未来で、船舶や海洋開発による海洋騒音が、クジラ類の行動や生態に与える影響を観察し、海洋ガバナンスの再定義に取り組む姿が描かれる。
    inferstudio.com/ocean-futurisms

    『The Left-Handed Snail』Ecole MoPA(フランス)

    実のカタツムリは大半が右巻きで、左巻きは非常に稀とされる。殻の向きが逆であることから右巻きのカタツムリと交尾しにくく、自然界では孤立しやすい。

    この作品は、その生物学的な事実をモチーフに、「孤独の中でも自分らしく生きる」というテーマを、美しい色彩、柔らかいライティング、自然のスケール感を活かした演出、そしてセリフに頼らない映像中心のストーリーテリングで魅せていく。
    www.ecole-mopa.fr/en/3-d-animation-movies-achievement/animation-movie-lescargot-gaucher

    『The Left-Handed Snail』予告編

    『Saba』Liron Topaz(アメリカ)

    【観客賞:Audience Choice】
    「Saba」はヘブライ語で「祖父」の意味だという。天地が逆さまの不思議な世界で、祖父と孫が、ロープで支えられた家で暮らしている。祖父は孫にこの世界で生きる術を教え、2人は深い絆で結ばれている。しかし、激しい嵐によって家を支えるロープが切れ、祖父は孫のもとを去ることになる。この出来事をきっかけに孫は、祖父との思い出を抱えながら、喪失を受け入れて心の旅に出る……というストーリー。

    セリフのない9分間の短編アニメーションを通じて、人生、喪失、そして大切な人との別れをどう受け入れるかを象徴的に描いた作品だ。

    'Saba' Short Film Trailer

    『Right Hand Man』Ringling College of Art and Design(アメリカ)

    SIGGRAPH常連校、Ringling College of Art and Designの学生作品。主人公のLucasの右手は、意思をもつパペットCadeである。しかもLucasとCadeは双子の兄弟で……というユニークな設定。

    Lucasはガールフレンドとの初デートで、Cadeの存在を隠そうと奮闘する。しかしCadeは恋愛や交流に参加したくてたまらない。その結果、様々な騒動が起こり、さぁ大変、というお話である。

    「ありのままの自分を隠すことは、良い関係の土台にならない」というテーマを、コメディタッチで描いた作品。
    www.therookies.co/entries/36596

    Right Hand Man Trailer

    『Cursed』ESMA(フランス)

    どこかディズニー作品のような雰囲気が漂う洗練されたデザインと、美しい色彩が非常に印象的なこの作品は、フランスのESMA(École Supérieure des Métiers Artistiques)の学生作品。

    ある予言により、「娘は闇の存在によって命を落とす」と告げられたHederaは、娘を守るために孤島へ隔離して娘を育てる。しかし成長したPaveraは自由を求めるようになる。

    ある夜、流れ星を追って外へ出たPaveraは、黒い衣をまとった妖精Ophrysと出会う。そこへHederaが現れ、予言の「闇の存在」だと思い込みOphrysを攻撃。Paveraが2人の間に割って入った結果、母親自身の最後の一撃で娘とOphrysを死なせてしまう。

    Hederaは、予言で恐れていた「闇の存在」とは実は自分自身だったことに気付く。美しい映像とは裏腹に、ダークなストーリー展開だった。

    Cursed - Teaser 2025

    『Metachess: The Genesis』Alexandros Kesisoglou(ギリシャ)

    シノプシスには、「Metachessはチェスを多次元的な体験へと変貌させ、そこでは戦略が“選択の彫刻”となります。1つひとつの手は時空に痕跡を残し、思考や意思決定の推移を捉えた、絶えず進化する構造体を形成していきます……」と記されている。

    チェスの駒の軌跡を3D空間上でトレースしたような、不思議な印象を与える作品。

    『Addicted To It』Nigel Tierney(アメリカ)

    Blenderで制作された短編アニメーションである。

    主人公のDaceは、「スマートフォンを持たずに公園を歩く」ことにチャレンジする。しかし、彼のスマートフォンが「Phoney Bunny」というキャラクターとなって命をもち執拗にDaceを追い回す。スマホ依存症を「恋人に振られた相手がしつこく復縁を迫る」ような、コミカルな追跡劇として描いたコメディ作品。
    www.festivalformula.com/theslate/addicted-to-it

    以上、今年上映された全15作品を駆け足で紹介した。各作品の詳細情報は、こちらのページで見ることができるので、興味のある方はチェックしてほしい。

    このレポートで、エレクトロニック・シアターの今年の傾向、楽しさや雰囲気などを、少しでもお伝えできれば幸いである。

    TEXT_鍋 潤太郎 / Juntaro Nabe
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada