CGWORLDリサーチャーのますく3Dが、世界最大級のバーチャルイベント『バーチャルマーケット(Vket)』の舞台裏に潜入!Vket3から出展者として参加し、現在は大学でメタバース教育の講師や京都精華大学VR部顧問も務める筆者が、VRChatユーザー視点の鋭い質問でVketの内側に迫ります。情熱的なスタッフへのインタビューと裏舞台ツアーを通して、その創造の秘密と未来の展望、そしてVket2025 Summer&Vket発のリアルイベントVketRealの最新情報をお届けします!

記事の目次

    Vket舞台裏ツアーで解き明かす!制作スタッフインタビュー

    バーチャルマーケット(Vket)は、メタバースにおける最大のイベントの1つとして、常に注目を集めています。今回は、Vket2024 Winterの舞台裏ツアーに参加し、ディレクターのなごみさんを中心に、ワールドモデラーのももさん、倭文(しとり)さん、そしてダックさんに、制作の裏側について深く掘り下げたお話を伺いました。

    著者はCGWORLD vol.313のVRChat特集号でインタビューさせていただいたYOYOGI MORIの「imiut CHIBI」のアバターで参加しました。 

    この記事では、クリエイターの視点から、Vketのワールド制作の舞台裏を特集します。今回ご案内いただいたのは、以下の2つのワールド。

    ・パラリアルフジヤマ:富士山と日本の四季をテーマにした壮大なスケールのワールド。企業ブースや体験型コンテンツが多数用意され、各社の個性を最大限に引き出すデザインと、来場者に忘れられない思い出を提供する体験型コンテンツ、そして軽量化に配慮した設計が特徴です。

    ・SKY PARK:おしゃれなショッピングモールと遊園地を融合させた、遊び心満載のワールド。SNS風のギミックやアバター試着スペースなど、来場者同士の交流を促す仕掛けが満載で、ダミーブースで負荷を軽減し、快適な体験を実現しています。

    初めての試み:パラリアルフジヤマ

    ますく3D:今回のVketのテーマは「パラリアルフジヤマ」ですが、これは初の試みだと伺いました。

    なごみさん(以下、なごみ):はい。企業の出展会場はこれまで、ラスベガスやお台場など、実在する都市を再現していましたが、今回は初めて日本の象徴である富士山をテーマに、完全にオリジナルで制作したワールドになります。

    ますく3D:実際にワールドを巡ってみると、富士山を中心に日本の四季を体験できる、素晴らしい空間でした。

    倭文さん(以下、倭文):夏島からスタートして、春、秋と巡り、最終地点で富士山の御来光を拝むという、ストーリー性のある構成になっています。

    ますく3D:ワールド内には、アイテムを集める要素もあるようですね。

    倭文:はい、ワールドの各所に秘宝が隠されており、集めた数によって、最後のエリアでの演出が豪華になります。

    ますく3D:御来光の演出はどのようなものなんですか?

    倭文:それは、実際に体験していただいてのお楽しみです! ぜひ、すべての秘宝を集めて、最高の御来光を体験してください。

    企業ブースの開発秘話:目立ちたい!地域を盛り上げたい!

    Vketの企業ブースは、各社の個性を爆発させた、魅力的な空間です。今回のVketでは、特にサミー株式会社と静岡競輪場のブースが注目を集めました。

    ますく3D:企業ブースのデザインは、どのように決めているのですか?

    なごみ:企業さんと一緒に、どういう外観にするかを決めています。

    倭文サミーさんは、とにかく派手にしたいというオーダーがあり、派手さに振り切ったデザインになっています。

    ますく3D:静岡競輪場のブースも、富士山を背景にしたデザインが印象的でした。

    倭文:静岡競輪場さんは、富士山というテーマに合うように、静岡らしさを表現したブースになっています。

    なごみ:企業さんには、会場の中でどこに出展したいかという希望を聞いています。静岡競輪場さんは、富士山が見える場所にブースを構えたいという希望がありました。

    ますく3D:今回は地方の企業さんの出店も多いようですね。

    なごみ:そうなんです。地方の企業さんにも、Vketを通じて自社の魅力を発信していただきたいと思っています。自治体さんの出展も増えてきていますね。

    ますく3D:VR空間で競輪を体験できるのは面白い試みですね。

    倭文:VRで人称視点で見たときにコースがきれいに見えるような画角配置を、担当者が模索していました。ゲーセンの競馬ゲームのような、気軽に楽しめる体験を目指しています。

    SKY PARK:視覚的な工夫で個人ブースの魅力を引き出す

    SKY PARKは、おしゃれなショッピングモールと遊園地を融合させた、遊び心満載のワールドです。観覧車、ボート、ワールド内SNS機能など、来場者同士の交流を促す仕掛けが満載ですが、特に注目すべきは、個人ブースの配置における視覚的な工夫です。

    ますく3D:SKY PARKでは、個々のブースが密集しているにもかかわらず、それぞれの個性が際立っているように感じました。何か工夫されている点はありますか?

    なごみ:SKY PARKでは、ブース間の距離感を意識的に調整しています。視覚的な遮蔽物を効果的に配置することで、個々のブースが独立した空間として認識されるように設計しています。

    倭文:例えば、ブースの間に背の高いオブジェクトを配置したり、視線を誘導するようなライティングを施したりすることで、隣接するブースとの境界線を曖昧にしています。

    ますく3D:なるほど。それによって、来場者は個々のブースに集中しやすくなり、より深く体験できるということですね。

    ももさん(以下、もも):そうですね。また、ブース間の移動をスムーズにするために、視線を誘導するような通路設計や、インタラクティブなオブジェクトの配置など、様々な工夫を凝らしています。

    さらに、遠くのブースは、意図的に表示を遅らせたり、簡易的なモデルに切り替えたりすることで、描画負荷を軽減しています。ディスタンスLODに加え、視覚効果も合わせて近づくとブースが徐々に現れるように設計することで、没入感を高めるとともに、パフォーマンスの向上にも貢献しています。

    ますく3D:遠くのものが見えすぎない工夫によって、より近くの展示物に集中できることが実感できました。

    ワールドの容量について

    ますく3D:VRのワールドは容量制限が厳しいイメージがあります。 Vketのような大規模なメタバースワールドがどのくらいの容量で作られているのか、ぜひ教えていただきたいです。

    もも:そうですね。ワールド自体の容量は、大体420MBくらいです。ただし、これは企業ブースを含めた全体の容量です。企業ブースだけの容量は、150〜200MBくらいになるように心がけています。

    ますく3D:それはかなり軽量ですね!

    もも:Vketは多くの方が来場されるイベントなので、できるだけ多くの方に快適に体験していただくために、容量には特に気を配っています。大きなブースを受け入れるためにも、できるだけ軽量につくるように心がけています。

    ワールドの多さの秘訣:効率的なチーム体制と熱意

    ますく3D:今回のVketのために用意されたワールドは、どれくらいの数になるのでしょうか? ホームページを見たところ、多すぎて混乱してしまいました。実際に土日を使って参加しましたが、アトラクションや展示も多く、広すぎて、2日間使っても全てを回ることができませんでした。

    なごみ:ご参加いただきありがとうございます! 企業ブースが集まる「パラリアル」会場が3つ、一般クリエイターの個性的なワールドが集まるコンセプト会場が6つそれぞれに2種類の差分があり、そしてエントランスワールドがあります。

    ますく3D:すごい数ですね!Vket Summerから Winterまでたった4ヶ月という短い期間で、これだけの数のワールドを制作するのは、本当に信じられません!

    なごみ:そうなんです。特に冬のVketは準備期間が短いため、クリエイターたちはまさに寝る間も惜しんで制作に取り組んでいます。準備期間は、夏は6ヶ月くらい取れるんですが、冬は4ヶ月取れたらいいほうですね。

    ますく3D:過去のワールドを再利用することはありますか?

    なごみ:ほとんどが毎回新しくワールドをつくりますが、 過去のVketで使用したワールドをリメイクすることもあります。例えば、Vket2023 Summerで展開したラスベガスのワールドは、今回動線を一新し、新しい体験を盛り込んでリメイクしました。

    ますく3D:ワールドごとに2つの差分があるようですが、違いを教えて下さい。

    倭文:ワールドによっては、時間帯によって異なる演出を用意してアセットをフル活用しています。例えば、夜になるとイルミネーションが輝いたり、特別なイベントが開催されたりするなど、時間帯によって異なる雰囲気を楽しむことができます。

    ますく3D:これだけタイトなスケジュールで、広大なワールドをいくつもつくるなんて、ワールド制作を効率的に進めるための秘密が知りたいです。チーム体制を工夫しているのでしょうか。

    なごみ:ワールド制作は、まずコンセプトアートの作成から始まります。3Dモデラーがラフモデルをつくりながら、アート担当と相談して、同時進行で進めていきます。

    ますく3D:ワールドの制作チームは、何人ぐらいで構成されているのでしょうか?

    なごみ:富士山ワールドの場合、モデラーが4、5人、ディレクターが1人、エフェクト担当が3、4人という構成です。全体で10人くらいのチームで、1つのワールドを仕上げていきます。Vket全体では、クリエイティブに関わる人は100名前後になります。

    ますく3D:それだけの人数で 半年も無い期間で、これだけのクオリティのワールドをつくり上げるのは本当にすごいことですね!

    もも:モデリングソフトでつくったものとVRで見た時では見え方が違うことがあるので、早期にVRで確認し、チーム全体でフィードバックを素早く繰り返すことが重要なんです。

    倭文:短期間でクオリティの高いものをつくるためには、スクラップ&ビルドを恐れない柔軟性が重要です。つくったものに固執せず、駄目なら破棄して常に新しいアイデアを取り入れて、より良いものをつくり上げていく姿勢が1番大切なことだと考えています。

    空へのこだわり:VRならではの空間演出

    Vketのワールドでは、空の表現にも独自の工夫が凝らされています。特にVR体験では、視界の広がりを活かした空間演出が重要になります。

    倭文:空は広い空間になるので、パーティクルを飛ばしたり、オブジェクトを動かしたりして、賑やかさを演出しています。

    ダックさん(以下、ダック):鳥居から見たときに、サミーさんのブースと静岡競輪場さんのブース、どちらの上空オブジェクトも見えるように、上方向に派手な装飾を施しました。

    ますく3D:PCの画面で見ているだけでは気づきませんでしたが、VRで体験すると、空の表現が空間全体に奥行きを与えていることに気づきました。

    ダック:VRの視点だと、視界が狭くなるため、装飾品をたくさん入れて、同じものしか見えない状態にならないように注意しています。方向感覚を失わないように、バランスを考えながら配置しています。

    Vketを彩る情熱的なクリエイターたち、そして未来へ

    ますく3D:Vketのワールドは、社内外から集まった、情熱と才能にあふれるクリエイターたちの手によって、ひとつひとつ丁寧に生み出されているのですね。

    なごみ:はい、多くのクリエイターが、プロップモデラーやワールドモデラーなど、様々な分野で才能を発揮していただいています。それぞれの専門性を活かし、チームとして最高の作品をつくり上げていく。それがVketの強みです。

    ますく3D:以前、VRChat内でのスカウトや、Vketへの出展をきっかけにHIKKYのスタッフになったという方も少なくないと聞いたことがありますが、実際はどうなのですか?

    倭文:そうなんです。VRChatやVketは、クリエイターが自身の作品を発表し、世界中の人々と交流するための、最高の舞台。新しい才能の発掘にも力を入れています。日々のV活やVketを通じてクリエイターと知り合い、そのままお仕事に繋がることがほとんどです。

    ますく3D:HIKKYは、実際にメタバースでクリエイティブ活動をしている情熱的な仲間を求めているんですね!

    あなたもVketの仲間入り!未来を創るクリエイター募集!

    ますく3D:HIKKYでは、常に新しいことに挑戦し、メタバースの未来を一緒に創っていく、情熱的な仲間を求めていると伺いました。具体的には、どのようなクリエイターを求めているのでしょうか?

    なごみ:はい、Vketが求めるのは、こんなクリエイターです。

    ・3Dモデリング、Unity、VRChatなどのスキルをお持ちの方
    ・ワールド制作、ギミック制作、デザインなどに情熱を燃やせる方
    ・チームワークを大切に、共に目標に向かって進める方
    ・新しい技術や表現にワクワクできる方
    ・常に向上心を持ち、新しいことに挑戦し続けることができる方

    ますく3D:過去の作品やポートフォリオは、やはり重要ですか?

    もも:はい、過去の作品やポートフォリオを見せていただけると嬉しいです。Vketのクルーサーバーから、プロップモデラーとしてスタートし、今ではワールド制作の中心メンバーとして活躍している方もいます。あなたの才能を、ぜひVketで開花させてください!

    ますく3D:ketのクルーになりたい! Vketについてもっと知りたい! という方は、どうすればいいですか?

    なごみ:Vketのクルーになりたい! Vketについてもっと知りたい! という方は、今すぐVket公式サイトへアクセス!選考プロセスは、書類選考、面接、実技試験などを予定しています。あなたの熱意と才能を、ぜひ私たちにアピールしてください。

    Vketで、あなたの創造力を世界へ解き放て!

    ますく3D最後に、Vketでクリエイターとして活躍したいと考えている方々に、メッセージをお願いします。

    なごみ:Vketは、創造力を最大限に発揮できる、夢と可能性に満ちた場所。世界中の人々が集まるVketで、あなたの作品を世界に発信しませんか?
    Vketは、常に新しい仲間を求めています。あなたの応募を、心から、そして熱い想いを持ってお待ちしています!私たちと一緒に、メタバースの未来を創造しましょう!

    ますく3D:本日は、貴重なお話をありがとうございました! Vketの舞台裏を知ることができ、大変勉強になりました。

    メタバースの創造は終わらない。Vket2025 Summer、そしてVketReal 2025 Summer - 新たな熱狂がいま始まる!

    最後に、次回のVketの募集が告知されました。来たるVket 2025 Summerでは、あなたの創造性を解き放つバーチャル空間での祭典が、そして5回目の開催を迎えるVketReal 2025 Summerでは、メタバースを飛び出し、リアルで熱狂を巻き起こす場が、あなたを待っています。

    さらに、Vketをより深く楽しむための新サービスが「Avatar Maker」にて公開されました。Avatar MakerはWebブラウザで誰でも簡単に人気のアバターを購入したり、有償、無償のアイテムを利用してオリジナルアバターがつくれるサービスで、UnityPackageやVRMアバターとしてダウンロードすることも可能です。

    今回新たにAvatar MakerでカスタムしたアバターがVRChatへ直接アップロードできるようになりました。

    VRはただのゲームではなく、拡張された現実です。オリジナルのアバターで仲間たちと過ごす時間は、現実世界と同じ価値を持ちます。

    皆様もぜひオリジナルアバターをセットアップして、わたしたちとVket2025 Summerでお会いしましょう!