グローバルグループ「ENHYPEN」の楽曲世界に飛び込んだかのような体験を提供する、没入型楽曲体感ミュージアム「House of Vampire~Dive into ENHYPEN Chronicle~」が、2月5日(木)から3月16日(月)まで新宿住友ホールで開催された。

本プロジェクトは、HYBE JAPANIMAGICA EEXヒビノという異なる専門性を持つ3社の協業体制で制作されたものだ。本記事では、プロジェクトの制作体制、三社協業に至った経緯、そしてロケーションベースエンターテインメントという新たな表現領域における今後の展望まで、様々な視点から取材をおこなった。

記事の目次

    デビュー5周年、距離を越えてファンと繋がるために

    ENHYPENは2020年、日韓同時放送された超大型プロジェクト『I-LAND』でデビューしたグローバルグループであり、以来、ヴァンパイアをモチーフにしたダークなコンセプトと、重厚なストーリーを伴う完成度の高い楽曲によって、日韓の若者をはじめ、数多くのファンを魅了してきた。しかし、グローバルに活躍するアーティストであるがゆえに、日本でファンの前に直接姿を見せられる機会は限られている。そこで、デビュー5周年という重要な節目にあたって、この物理的な距離の制約を越え、アーティストの存在感や楽曲の世界をファンがいつでも肌で感じられる場所を作りたい、単なる展示会やポップアップストアの枠組みを越え、テーマパークのハイエンドなアトラクションに匹敵する極上の没入体験を提供したい、という思いが起点となり、プロジェクトが始動したのだ。

    この構想を実現するため、本プロジェクトについて企画・制作・主催するHYBE JAPANは、それぞれの領域における優れたパートナー企業を求めた。結果、協業企業として参画することになったのが、空間演出と体験設計において卓越した実績を持つIMAGICA EEXと、映像・音響・照明の最先端技術と優れたシステム構築力を誇るヒビノである。この3社の経験と技術が合わさることで、ENHYPENの辿ってきた5年間の軌跡を、本展示のために企画・演出されたストーリーとともに、体験的な「空間」へと再構築することが可能になった。

    (左)から、ヒビノ ヒビノビジュアル Div.事業戦略担当 部長 Hibino VFX Studio プロデューサー 東田高典氏、HYBE JAPAN 音楽・映像事業本部 代表 イ・スヒョン氏、IMAGICA EEX CDO クリエイティブ&テクノロジー局 局長 古谷憲史氏

    "本物がそこにいる"感覚を、技術で再現する

    「House of Vampire~Dive into ENHYPEN Chronicle~」は、「ヴァンパイアが棲む館」をモチーフとして制作された各部屋を巡ることで、ENHYPENがデビュー以来の5年間で紡いできたクロニクル(年代記)を、音楽と映像で追体験することができる、没入型楽曲体感ミュージアムだ。

    舞台となるイベントホールは、複数エリアに分かれた1,100㎡を超える広大な空間だ。来場者は「同じ血族」としてヴァンパイアの館に足を踏み入れ、ENHYPENのデビュー作『BORDER : DAY ONE』から2nd Studio Repackage Album『ROMANCE : UNTOLD -daydream-』に至るENHYPENの音楽とストーリーをテーマにした7つの部屋を巡ることで、ENHYPENの綴ってきた物語の一部を、その中に入り込んだ登場人物となったかのように追体験することができる。

    本展示には、入場時のコウモリへの「変身」を促す演出をはじめとした、ストーリーへの没入感を高めるための仕掛けが随所に施されており、さらに展示の終盤には来場者自身の選択によって最終的なエピローグが変化する「インタラクティブエンディング」が待ち受けるなど、随所に五感を刺激し、物語への没入を深める仕掛けが施されている。

    本展示のために企画・演出されたストーリーと多層的な演出、そして、全編「完全撮り下ろし」×「新作衣装」によるビジュアル表現が見どころとなっている。そんな本プロジェクトにおいて表現の核となったのは「実写によるアーティストの映像」を用いたことによる圧倒的な実在感の創出だ。

    この実写映像による没入体験を成立させるため、ヒビノの研究開発拠点であるHibino Immersive Entertainment Labにおいて、綿密な検証プロセスが実施された。撮影前の段階から、ラボに常設されたLEDシステムを用いて視覚効果や見え方をシミュレーションし、最適な演出アプローチが模索された。

    結果的にヒビノは、3D対応LEDディスプレイ「Immersive LED System」49㎡、1.5mmピッチの超高精細LEDディスプレイROE Visual「Ruby1.5F」161㎡、レーザープロジェクターなどの映像機器18台、スピーカー39台、照明225台を組み合わせ、各エリア毎の没入感を最大化するためのシステムをつくり上げた。

    空間と映像が溶け合う"第五章:告白の中庭"

    中でもハイライトとなるのが、「第五章:告白の中庭」だ。このエリアでは、専用の3Dグラスを着用することで、画面の手前にある現実の空間装飾と、8Kの高画質で撮影された立体映像がシームレスに繋がり、まるで空間と映像が一体化したような没入感がもたらされる。

    展示において実際に上映された映像は、IMAGICA EEXが、ソニーのハイエンドシネマカメラ「VENICE 2」と、カメラヘッド延長システム「VENICEエクステンションシステムMini」を2セット用いてステレオ撮影で制作。人間の平均的な瞳孔間距離(約64mm)に近い配置で小型カメラヘッドを配置し、8Kという超高画質でステレオ撮影を行うことで、不自然な歪みのない、極めて臨場感の高い立体映像が生み出された。さらに、撮影後も3D効果の調整・管理を継続的におこない、映像の完成後も実機での調整が重ねられた。

    この新感覚の体験を実現させたのが、ヒビノが運用に関する技術ライセンスを持つ米Liminal Space社の三次元LED技術「Ghost Tile」を搭載した、幅×高さ4.8m、総面積49㎡にも及ぶ巨大な3D対応LEDディスプレイ・システム「Immersive LED System」である。

    このようにヒビノが構築したハイエンド機材群が、IMAGICA EEXの空間演出・体験設計のもとで運用されることで、来場者の感覚を完全にジャックし、ENHYPENの楽曲世界へと没入させる空間が完成した。

    「Japan to Global」日本発の輸出モデルへ

    「House of Vampire~Dive into ENHYPEN Chronicle~」が示したのは、グローバルに活動し、世界的に影響力を持つアーティストIPと、IMAGICA EEXの空間演出力、そしてヒビノのハイエンドな最先端テクノロジーを融合させた、新しいエンターテインメントビジネスのかたちである。

    そして、その根底にあるのは、HYBE JAPANが掲げるスローガンである「Japan to Global」という構想だ。本事例のように、特定の「場所」が持つ特性を活かし、「物語」と「先端技術」を掛け合わせて、その場でしか味わえない特別な没入体験を提供する事業モデルは「ロケーションベースエンターテインメント(LBE)」と呼ばれ、現在世界のエンターテインメント市場において、高い注目をあつめ、発展が期待されているジャンルの1つである。

    だが、今回のように高度な技術を用いてつくり出された高品質なイマーシブ体験であれば、世界中のあらゆる場所へ展開し、現地のファンに同等の感動を届けることが可能となる。

    「今回のプロジェクトは、弊社としても初めての経験でしたし、世界的にも、これまでこのようなミュージアムはなかったのではないでしょうか。今回来場されたファンの方々の反応次第というところもありますが、我々としては今回だけで終わらせるつもりはありません。"Japan to Global"を掲げ、今後も日本の技術を用いてつくられたものをストーリーにして、グローバルに展開していきたいと考えています。ENHYPENだけでなく、弊社の他アーティスト、またHYBEでない他社のアーティストまで、グローバルに展開する時の1つの手法としてこうした体験型の企画を活用していただけるように、まずは日本でしっかりと事業化させていきたいと考えています」と、HYBE JAPANのイ・スヒョン氏は語った。

    CGWORLD関連情報

    ヒビノ、楽曲体感ミュージアム「House of Vampire」の映像・音響・照明を担当-ENHYPENの世界観を没入体験へ

    ヒビノが、HYBE JAPANが2月5日(木)より新宿住友ホールで開催する、7人組グローバルグループ「ENHYPEN」の没入型楽曲体感ミュージアム「House of Vampire ~Dive into ENHYPEN Chronicle~」において、映像・音響・照明システムを担当したことを紹介した記事。

    cgworld.jp/flashnews/02-2602-hibino-enhypen.html

    TEXT_オムライス駆
    EDIT_中川裕介(CGWORLD)