2024年1月に劇場公開された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。数あるガンダムシリーズ劇場公開作品の中でNo.1の興行収入を達成し、ファンの間でも盛り上がりを見せている。
今回はバンダイナムコフィルムワークスのCGチームに取材。ここではアニメーション&エフェクトを紹介していきたい。
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踏襲ではなく進化を志向するアニメーション&エフェクト
高いクリエイティビティが求められた本作スタッフ。CGアニメーターは絵コンテからレイアウトを起こす際、作画ガイドを参考にしつつも、自ら考えて動きをつくった。その際、「SEEDっぽく」という考え方は思考停止につながるため避けたという。CGリードアニメーションのSaha Jirayudul/サハ ジラーユデュン氏は「最初は子供の頃に僕らが観ていたようなイメージでつくりました。そしたら『同じようなものはいらない』と。福田監督も重田さんも、20年後の進化した映像を求めていたんです」と語る。
エフェクトも同様だ。CGアニメーション/CGエフェクト リードアーティストの吉田 元氏は「シミュレーションだけには頼らず、あくまで作画的表現を目指しました」と、今回の挑戦について語る。ビームや煙などテンプレートは15種類以上用意したが、「一部のカットでは煙や火花・スパークを手で描き足すなど工夫を施しました。エフェクトは特に、担当者の『どう見せたいか』という考えが画面に表れますから」と話す。苦労の甲斐あって、重田氏からは「CGでここまでできるんだ」という言葉をかけてもらい、手応えを感じることができたという。
ストーリーの関係性を意識したアニメーションの演出
カット0075。作品の冒頭、襲撃される市民を救うべく、ライジングフリーダムガンダムらが駆け付けるシーン。初期テイクでは目が光り、機体が回転し、翼を広げて加速するといった、ケレン味のある演出が提案されていた。しかし福田監督から「ここは序盤で戦場のリアリティを見せる場面なので抑え目に」とリテイク指示。サハ氏は「ストーリーのテンポ感と芝居付けの関係性の勉強になりました」と語る。
以下は、重田氏による動きの修正指示の一例。レイアウトとタイミングの指示、タイムシートの書き方など、作画アニメーターに対するそれと変わりない。動きとしては「画面の奥と手前を意識してタメツメでスピード感を出すことを意識」したというサハ氏。アニメーション作業後に途中のコマを抜き、さらにスピード感を演出している
下の画像は完成ショット。
強い意志を感じるマイティーストライクフリーダムガンダムのポージング
カット2323。終盤でマイティーストライクフリーダムガンダムが無数のミサイルをロックオンするカット。このアップの画が映るのはわずか2コマで、たちまちズームアウトしてしまうため、こちらでこのポージングの妙をしっかりと確認してほしい。
迫力抜群のビームエフェクト「アグニビーム」
ライジングフリーダムが持つ大型ビーム砲などの発射時に発生する、ケレン味あふれるエフェクトが通称「アグニビーム」だ。作中に登場する赤と青の2色ビームがそう呼ばれており、『SEED』を代表する演出である。「当初は簡素につくっていましたが、福田監督から『カットで見せたときのイメージがつきづらい』という指摘があって、ショックコマや撃った直後の白飛びなど、演出の要素をエフェクトに足しました」(吉田氏)。
Houdiniによるリアルタッチの水飛沫エフェクト
着水シーンの水飛沫は例外的にHoudiniで作成したリアルタッチのエフェクトを使用。Flat Tank(平坦なタンクのFLIP流体)シミュレーションをベースに、ポスト処理でカラーやアルファ、pscaleなどで細かい調整を行なっている。着水時に真後ろに飛び上がる飛沫はシミュレーションでは発生しなかったため、飛沫を立てるためのオブジェクトを別途用意した。
3DCGに手描きの素材も加えた爆発表現
「単にシミュレーションに頼るのではなく、作画の爆発をしっかりと観察した上で、作画的な爆発表現を目指すのが今回の挑戦でした」と語る吉田氏。エフェクトアニメーターが個性を発揮できるよう、素材の使い方については特にルールを定めなかったという。「どのように見せたらより魅力的な爆発を表現できるか、各担当者たちが考えた上で使っています」(吉田氏)。
CGWORLD 2024年4月号 vol.308
特集:アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年3月8日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada