本作は現在TV放送中の『わんだふるぷりきゅあ!』の劇場版作品で、9月13日(金)より上映中。観客動員数が80万人を突破した人気作だ(※10月時点)。今回はメイキングに加えて、宮原直樹監督と若手アニメーターとの対談から本作のCGパートの魅力を紹介していきたい。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 316(2024年12月号)からの転載となります。また、2025年11月末までの期間限定公開となります。

    3DCGの特性を活かしつつプリキュアらしいアニメーションに

    2024年9月13日(金)より公開中の『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー! ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』。プリキュアシリーズの21作目として2024年2月から放送されているTVアニメ『わんだふるぷりきゅあ!』の劇場版となっているが、本作の見どころはゲーム世界へ入ったプリキュアたちの活躍を3DCGで描いている点だ。

    『わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!ドキドキ♡ゲームの世界で大冒険!』
    劇場公開日:2024年9月13日(金)
    原作:東堂いづみ/監督:宮原直樹
    脚本:加藤陽一/配給:東映
    2024.precure-movie.com
    ©2024 わんだふるぷりきゅあ!ざ・むーびー!製作委員会

    物語は人気ゲーム「ドキドキタヌキングダム」で遊ぶため集まったこむぎたちがみんなで仲良くゲームで遊んでいたところに、突然あやしいタヌキが現れゲームの世界に吸い込まれてしまうことから大きく話が動き出す。ゲーム世界でみんなと離れ離れになってしまったこむぎは、いろはに会うために様々なゲーム対決に挑むことになる。このゲーム世界をプリキュアらしく描くことが3DCGの役割であった。

    「企画部のプロデューサーから本作のプリキュアを作画と3DCGのハイブリッドでやりたいと話がありました。 ゲーム世界を3DCGで描くことになったので、まずは宮原(直樹)監督にアイデア出しを始めてもらいました」(CGプロデューサー・直宮秀樹氏)。通常のフローだと、作画チームがデザインやコンセプトを担当することが多いが、本作ではCGチーム主導で宮原監督が描いたラフデザインなどを基に作業が進められた。

    プリキュアをはじめとした各キャラクターたちはゲーム世界ではデフォルメされた低頭身で描かれているが、この表現もCGチームによって決められたという。本編では3DCGの特性を活かしつつもプリキュアらしさを損なわないアニメーションが楽しめる。「本作では新人アニメーターも多く参加していますが、期待以上のクオリティを出してくれました」(宮原氏)。

    本稿ではゲーム世界に関わるプリプロ制作と、監督と新人アニメーターたちとの対談から、アニメーション制作の裏側を紹介していく。

    監督とCGチームとでつくり上げたゲーム世界

    プリキュアらしさを損なわないゲームの世界観を構築

    「宮原監督のラフイメージを基に、コンセプトアートとカラースクリプトはゴキンジョさんに依頼して制作していただきました。以前からご一緒したいと思っていましたが、本作にフィットするだろうという確信があったんです。キャラクターデザインは最初に宮原監督にラフを描いていただいたのですが、それがすごくはっきりしたイメージだったので、それを基にモデリングスーパーバイザーがモデルに起こしていきました」(直宮氏)。

    なお、制作のおおまかなフローは、宮原監督を中心に絵コンテを作成後、プリビズを行い、レイアウト、アニメーション、エフェクト制作、ライティングからコンポジットへと進められた。「今回イレギュラーだったのは、群衆が結構多かったこと。そこは数名のクラウドアーティストが担当しています」(直宮氏)。

    • 宮原直樹監督
    • 直宮秀樹氏/CGプロデューサー

    当初、問題となったのがゲームの世界観をどう表現するかという点であった。「ゲーム世界ということで、目いっぱいチャレンジした場合、デフォルメした上でさらにアウトラインもないとか、アニメーションもリミテッドでなくてフルコマにするとか、そういったところから検討をスタートしました」(CGディレクター・中沢大樹氏)。そうした議論の上、プリキュアそのものが線ありのセルシェーディングでデザインされたものであるため、 線ありであることが統一感を生むと結論づけられた。

    • 中沢大樹氏/CGディレクター
    • 三枝勇太氏/CGプロダクションマネージャー

    その上で、背景に関してはゲーム的、CG的な情報量が多いものになるため、そこに馴染むキャラクターのルックを精査し、線はあるものの、完全にセルアニメ調ではなく、若干の質感が付いているといった表現に落とし込まれた。ゲーム世界といえど、ギラギラした電脳世界ではなく、プリキュアとして作画パートとつながった一体感のある世界観とキャラクターづくりが求められたとのことだ。

    プリキュアならではのゲーム世界観

    特に検討されたのがキャラクターの質感。「ゲーム世界といえど、作画のプリキュアとテイストがかけ離れたものでファンの期待を裏切ってはいけないという部分もありました」(直宮氏)。ゲーム世界的に情報量を増やした背景との馴染みも考慮し、線ありで若干の質感があるものに落とし込まれた。

    • ▲宮原監督によるこむぎと……
    • ▲フレンディのイメージ
    ▲こむぎのルックデヴの一例
    • ▲完成ルックのこむぎと……
    • ▲プリキュアたち

    ラフデザインとコンセプトアート

    • ▲宮原監督によるラフデザインの一例
    • ▲同じく、宮原監督によるラフデザインの一例
    • ▲ゲーム内ステージのコンセプトアートの一例
    • ▲同じく、ゲーム内ステージのコンセプトアートの一例
    • ▲カラースクリプト。これらコンセプトアートとカラースクリプトはゴキンジョが担当
    • カラースクリプトの一例。ゲーム的かつプリキュアらしいビジュアルが生み出された

    (2)に続く。

    CGWORLD 2024年12月号 vol.316

    特集:ガンダムCGの変遷と最前線
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2024年11月9日
    価格:1,540 円(税込)

    詳細・ご購入はこちら

    TEXT_渡邊英樹 / Hideki Watanabe
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada