筑波大学の近藤成哉氏浅野祐人氏落合陽一氏は10月22日(水)、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のシグネチャーパビリオン「null²(ヌルヌル)」で使用された3Dリアルアバター技術「Instant Skinned Gaussian Avatars」を、オープンソース(MITライセンス)で公開した。デモサイトも用意されている。

「Instant Skinned Gaussian Avatars」は、スマートフォンの3Dスキャン(Scaniverseなどから取得したPLYデータ)から、わずか数分(アバター生成自体は約30秒)で高品質な3Dアバターを生成し、WebブラウザやVRデバイス上でリアルタイムに動作させることを可能にする技術。高精細な3D Gaussian Splatting(3DGS)データを用いてリアルタイムで変形(スキニング)させることにより、3DGSならではの高いビジュアル忠実性(フィデリティ)を保ったアバターアニメーションを実現する。

アバターの骨格部分には標準的なVRMメッシュを使用し、メッシュの頂点の動きに追従するよう、膨大な数の3DGSの位置をリアルタイムで並列に計算する。この処理はシェーダ言語のGLSLレベルで最適化されており、WebGLを用いたブラウザ上でも高いパフォーマンスを得られる。

プロジェクトページより

GitHubで公開されているプロジェクト「Gaussian-VRM」は、本技術のthree.js(Web向け3Dライブラリ)実装。深層学習モデルやライセンスに制約のあるメッシュオプティマイザなどは使用していないことから、商用・非商用を問わず利用できる。

■Instant Skinned Gaussian Avatars for Web, Mobile and VR Applications(プロジェクトページ、英語)
https://gaussian-vrm.github.io/

■Instant Skinned Gaussian Avatars(GitHub)
https://github.com/naruya/gaussian-vrm

■Instant Skinned Gaussian Avatarsデモサイト
https://naruya.github.io/gaussian-vrm/

null²(ヌルヌル)とは

null²」は、落合陽一氏が「いのちを磨く」をテーマにプロデュースする、大阪・関西万博のシグネチャーパビリオンのひとつ。パビリオンの名称は、プログラミングで何もないことを示す「null」と、仏教における実体がないことを示す「空(くう)」の概念を掛け合わせたものに由来する。パビリオンは、落合氏が提唱する、人間・自然・テクノロジー・データがシームレスに接続され、境界が溶け合った新しいビジョン「デジタルネイチャー(計算機自然)」を具現化する場として設計されている。

内部は「ミラーシアター」と呼ばれる鏡張りの空間となっており、来場者は自らの姿がスキャンされ、リアルタイムで生成されるデジタルアバター「Mirrored Body」と対峙する。今回オープンソースで公開された「Instant Skinned Gaussian Avatars」は、この未知の体験を実現するための基幹技術として採用されたもの。


万博終了後は、本パビリオンを別の場所に移設・再構築するためのクラウドファンディングが実施され、第一目標の1億円、第2目標の2億円をすでに突破。現在は第3目標の3億円を目指して資金を募っている。

■大阪・関西万博シグネチャーパビリオン「null²」公式サイト
https://expo2025.digitalnatureandarts.or.jp/

■ぬるぬるのお引越|万博・落合陽一 null²パビリオン次なる場所へ(クラウドファンディングREADYFOR)
https://readyfor.jp/projects/null2_2025

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