今回は、テレビアニメ『ポケットモンスター』(2023~)に登場する飛行船「ブレイブアサギ号」のメイキングと、3D背景の使用に伴って必要となった3Dレイアウトの制作プロセスについて、全3回にわたり紹介していきたい。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 329(2026年1月号)からの転載となります。
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テレ東系にて毎週金曜よる6時55分から好評放送中! ※一部地域では放送日時が異なります
www.tv-tokyo.co.jp/anime/pocketmonster2023
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ブレイブアサギ号のモデリングとウイングデッキやコックピットなどの複雑なギミック
ブレイブアサギ号は変形ギミックも多く、挙動や隠れている部分の整合性などの調整が非常に難しかったという。「全体的にギミックの多い飛行船なので、まずはパーツだけ作成して、動きのイメージを確かめながら詳細なデザインを詰めていきました。最初の設定画からアームの部分を動きやすいようにデザインを変えさせてもらったり、カメラが寄る場所やキャラクターが何回も行き交うような部分はハイディテールになるようにモデリングしています。モデリング期間は1ヶ月ほど。全てのギミックを、整合性をとりながらつくっていくという作業がなかなか大変でした」と、トゥーンモデル・スーパーバイザーの高橋 峻氏は話す。
取材協力_CGIディレクター・川崎崇由氏、トゥーンモデルスーパーバイザー・高橋 峻氏、リギングスーパーバイザー・矢伏勇貴氏、CGIプロダクションマネージャー・谷﨑咲織氏、CGIプロデューサー・芦田徳之氏(以上、OLM Digital)
3D美術・髙尾克己氏(ARED)
実際にモデリングをしていくと、作業途中で整合性がとれない部分が発覚することも多く、その度に確認をとったり、アイデアを出し合いながらモデリング作業を進めていったという。なお、ブレイブアサギ号はストーリーの途中で改修されるが、その後、隠されていた新しいギミックが登場するという展開になるため、そうした隠し要素をいかに自然に表現できるよう実装するのかがとても重要だったという。
ブレイブアサギ号のモデル
変形後のブレイブアサギ号のモデル。ブレイブアサギ号はMayaでモデリングやリグの作業が行われている。
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▲モデルのワイヤフレーム。全体で、約28万5千ポリゴンで作成されている。設定画から3Dモデルを作成する際、設定画にはデザインの詳細が記されていない部分もあり、そのような部分は髙尾氏の方でデザインを膨らませている -
▲「詳細のない部分のデザインは子供たちが観て楽しい方が良いと思い、遊び心でつくっていきました」(髙尾氏)
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▲この床の部分は昇降機構が設定されており、変形の機構を考えつつ、モデリング時に相談しながら辻褄が合うようにデザインされた -
▲展望室は美術背景としても使われることが多いため、階段や手すりなどにディテールが施されている
後部エンジンの展開
後部エンジンの展開機構のギミック。後部エンジンはバルコニー部分がせり上がって船体からエンジンが展開するという設定なので、バルコニーが稼働しても違和感がないように溝パーツの追加や、パーツのめり込みなどが発生しないようにモデルを切り詰めるなど、モデリング時にデザイン的な工夫が新たに付け加えられている。
ウイングデッキの開閉
船尾にあるウイングデッキの展開ギミック。ウイングデッキはモデルの形状としてはデザイン画通りに合わせることができたが、展開時に干渉が起きてしまう部分があったため、関節構造の追加やウイングデッキのデザインの微調整をしているという。
「ウイングデッキ展開の動きを付ける作業がアニメーターにとって煩雑にならないように、アームの展開やウイングデッキの動きごとにアトリビュートを設定し、値の調整のみで開閉ギミックが付けられるようにしつつ、各パーツに微調整用のコントローラを設定しています」(リギングスーパーバイザー・矢伏勇貴氏)。
コックピットの変形
船首にあるコックピットの変形ギミックの例。ブレイブアサギ号のギミックの中で特に難しかったのが、この変形ギミックだという。中間動作のデザインが存在しなかったため、変形を違和感なく見せるための嘘のつきどころが非常に難しく、どうしても物理的に干渉してしまう部分があったため、演出時に特定のアングルを避けてもらうように演出サイドに依頼したという。
「先端にあるパーツが一度左右に分かれてからコックピットが上昇し、パーツが再び合わさるという動きが必要なのですが、アニメーターからはひとつのアトリビュートを使って0.0から1.0の範囲で全体を制御したいという要望があったので、レールとの接地面が離れないように注意しながら、各パーツのタイミングを微調整しています」(矢伏氏)。
ジェットエンジンの展開
船体側面のジェットエンジンの展開ギミックの例。ジェットエンジン部分は通常隠れており、高速飛行に移るときに船体側面を移動してその後エンジンが展開するというギミックになっている。デザインでは展開前後の設定しかないため、どのタイミングで展開すると格好良いのかを考えながらギミックの調整を行なっていったという。
これらブレイブアサギ号変形後のギミックのリギングは約1週間かけて調整が行われた。ブレイブアサギ号のリギングでは、スキンウエイトを使ったリグはほとんどなく、ジョイントを使っていかに動かすかという点に時間をかけたという
No.3に続く。
CGWORLD 2026年1月号 vol.329
特集:映画『果てしなきスカーレット』
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2025年12月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_大河原浩一(ビット プランクス)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada