今回はTVアニメ『鎧真伝サムライトルーパー』のCGメイキングを紹介する。本作は分割2クールの放送・配信で、2026年7月に第2クールの放送が控えている。基本的には作画中心の作品だが、ヨロイギアを纏ったサムライトルーパーなどで3DCGが活用されている。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 332(2026年4月号)に一部、加筆修正を加えた転載となります。
作画と3DCGの有効活用で、旧作の雰囲気を活かしつつよりリッチな映像に
TVアニメ『鎧真伝サムライトルーパー』は1988年に放映されたTVアニメ『鎧伝サムライトルーパー』の正統続編となる作品だ。分割2クールでの放送で、2026年1〜3月に第1クールが放映・配信された。
作画中心の作品だが、ヨロイギアを纏ったサムライトルーパーや、妖邪界の十勇士などが3DCGで表現されているほか、要塞列車内の背景の一部もCGアセットが活用されている。これらのCG制作を担当したのがFelixFilmだ。
第2クール 2026年7月放送・配信決定!
原作:矢立 肇/監督:藤田陽一/シリーズ構成・脚本:武藤将吾/アニメーション制作:サンライズ/製作:「鎧真伝サムライトルーパー」製作委員会
www.samurai-trooper.net
ⒸSUNRISE
「CG制作にあたって、旧作の雰囲気を活かしながら、現在の技術を使ってよりリッチな映像に仕上げることが目標でした。監督からは、一般的なアニメーションのルックや動きを踏襲しながら、作画だと崩れやすい鎧を着た状態のアクションシーンを派手に格好良く仕上げることを求められていました。前作からのファンが多い作品なので、世界観を崩さずに現代的な表現力を活かしていくことに注力しています。また、毎話数でバトルシーンがあるので、その圧倒的な物量をどうこなしていくかも大きな課題でした」とCGディレクターの鈴木雅臣氏は話す。
写真掲載なし、CGディレクター・髙橋圭佑氏、CGモデリングディレクター・島野達也氏、CGラインプロデューサー・伊藤仁美氏(以上、FelixFilm)
モデル制作は2023年8月頃から開始されたが、キャラクターの動かし方や3DCGによるキャラクター表現の許容範囲などを探るプロセスに非常に多くの時間が費やされ、R&Dには約半年の期間が割かれたという。しかし、一度表現のルールが確立された後は、量産体制もスムーズになった。
「スタッフやご協力いただいた会社の方々の尽力もあって良い画に仕上げられたと思います。前作のファンの方も、新規の視聴者も楽しめる見応えのある作品ですので、ぜひ楽しんでご覧いただけたら嬉しいです」と鈴木氏はふり返る。現在、第2クールの放送・配信が控えているので、次クールにも期待したい。それではヨロイギアなどの表現を中心にCGメイキングの解説をしてこう。
サムライトルーパーたちをはじめとする多数のキャラクターたちを3DCGで表現
サムライトルーパー5人がヨロイギアを装着した状態と、敵キャラクターの十勇士の10人は3DCGで表現されている。キャラクターのモデル制作はボディとモーフターゲット込みの顔のモデリングで約2ヶ月を要しているという。
「監督からの要望で、戦闘シーンではフルCG、序盤の日常芝居ではボディは3DCGで、顔は作画を合成したいということだったので、なるべく3DCGの質感を削って、作画と合わせたときの違和感が生じにくいルックになるように調整しています。そうすることで出力する素材数も削減でき、結果的にアニメーション付けや撮影といった後工程でも工数を削減できました。また、ベースモデルのポリゴン数を必要最低限に抑えることで、制御しやすくなり、ほかのサムライトルーパーへの流用や加工をスムーズに行うこともできました」とCGモデリングディレクターの小伊豆玲衣氏。
また、十勇士のセイカイニュードーとイサニュードーのモデル制作では、設定画だけではなく資料用の立体造形も用意され、凹凸感などの把握に役立ったという。モデル作成の際にはデザイナーとのフィードバックをくり返し、詰めていった。
サムライトルーパー・灼熱のガイのモデル
サムライトルーパーで、主人公である灼熱のガイ、こと凱の3Dモデル。設定画をベースに作画のイメージを崩さずに、ポリゴン数を極力整理し、レンダリング時間やリグによる制御がしやすい構造にされており、ほかのサムライトルーパー4体へのモデル流用も考慮されている。ルックについては、本作はアウトラインが太い特徴的な作画ルックであるため、3Dモデルのルックも作画に合わせている。
灼熱のガイのレンダーエレメント
作画に寄せたルックを実現する際に、当初は顔とボディで別々に画像パスを出力する予定だったが、結果として顔とボディをひとつにまとめ、出力される画像パスを5つの要素に集約することで、後工程での工数削減とコストダウンが実現されている。マテリアルとラインの生成には3ds MaxのPencil+を使用し、スキャンラインレンダラのレンダーエレメントを使って各要素が出力された。
十勇士の1人であるイサニュードーのモデル
敵キャラクターである十勇士の1人、イサニュードーは特にボディの造形に力を入れたキャラクターだという。イサニュードーは2D設定画のほかに、頭部の立体造形資料が提供され、立体のディテールの把握に役立てられている。ラフモデルがアップされた時点で、兄であるセイカイニュードーとの共通点を増やしたいということになり、デザイン変更が発生したため、その対応も必要だった。
イサニュードーはマントに髪の毛がかかっているデザインのため、マントの脱着時に横髪が干渉してしまう。この問題については、マント表示状態での横髪形状のモーフターゲットを作成し、モーフを使って回避している。
怪物化した織田龍成のモデル
第5話に登場する織田龍成が怪物化した状態の3Dモデル。ラフ状態の設定画からモデリングをスタートしたキャラクターなので、設定画に描かれたキャラクターにある線の取捨選択を意識しながらシルエットのバランスをとっていったという。
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▲Take1のモデルに対するデザイナーからのフィードバック。肩幅や足の長さ、胸板の厚みなど、シルエットに関するフィードバックが細かく指示されている。初期段階でデザイナーとの方向性の確認を細かくすることで、作業の効率化が図られた -
▲左画像の赤枠内の拡大
影やハイライトの設定
モデルの形状によっては、シーンライトで発生するマテリアルハイライトや影ではコントロールが難しく、ハイライトや影が悪目立ちしてしまうことが課題になった。そのため、本作ではライティングが決まった段階で、テクスチャのRGBチャンネルにハイライトや影をベイクする手法と、シーンのライティングを利用するハイブリッドな手法が用いられている。ハイブリッドにすることで、影やハイライトのデザイン性やルックの安定性を高めつつコストも削減することができたという。
実際にベイクマスクを作成する際の手順。
After Effectsで調整するラインの設定
本作のキャラクタールックの特徴でもあるラインの描画は、3D側で太さを調整する手間や、バラつきをなくすために、Pencil+から出力されたライン素材をAfter Effects(以下、AE)のチョークエフェクトを使って加工するというポストプロセス処理でラインの統一を図っている。この手法を採用することで、作画と3DCG間双方で、統一感のあるルックを表現することが可能になった。
No.2に続く。
CGWORLD 2026年4月号 vol.332
特集:「にじさんじ」を支えるANYCOLORの技術
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2026年3月10日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_大河原浩一(ビットプランクス)/ Hirokazu Okawara
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada