長編映画の制作に長けたマーザ・アニメーションプラネット(以下、マーザ)が手がける、人気漫画を原作としたフル3DCGアニメーションによるTVシリーズ『こねこのチー ポンポンらー大冒険(以下、こねこのチー)』。世界展開も視野に入れたアート、世代を越えて届く演出、かわいいキャラクターアニメーションなど、魅力的な作品を制作する秘訣に迫る。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 225(2017年5月号)からの転載となります
TEXT_野澤 慧
EDIT_斉藤美絵 / Mie Saito(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
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『こねこのチー ポンポンらー大冒険』
原作:『チーズスイートホーム』(講談社『モーニング』刊)
原作者:こなみかなた
チーフ・プロデューサー:北本かおり/監督:草野公紀/副監督:沓名健一/キャラクターデザイン:鴻巣 智、皆川恵美里/アートディレクター:梅田年哉 アニメーション制作:マーザ・アニメーションプラネット
テレビ東京系列6局ほかにて毎週日曜日あさ7:00~放送、テレビ信州 毎週水曜日25:59~放送(一部、放送時間の異なる場合があります)
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©こなみかなた・講談社/こねこのチー製作委員会
<TOPIC 1>1年間のTVシリーズをつくりきる制作体制
長編映画からTVシリーズへ世界展開も視野に入れた制作体制
絶賛放送中のTVアニメ『こねこのチー』は、マーザ制作のフル3DCGアニメーションだ。長編映画制作に特化したマーザにとって、意外にも初監督作品かつ初のTVシリーズとなる。
左から、内田治宏プロデューサー、草野公紀監督、沓名健一副監督、福井俊介演出補佐、中川雄介演出補佐
本作の話が出たのは2015年夏。原作漫画『チーズスイートホーム』は世界中で愛されている作品のため、海外を視野に入れた3DCG作品にしたいという版元・講談社の北本かおりチーフ・プロデューサーの意向を受け、内田治宏プロデューサーが手を挙げた。実制作開始は2016年3月で「1年間持続可能でローコストな漫画的表現を3DCG作品に採り入れるための試行錯誤を重ねました」と沓名健一副監督は語る。制作は1話(120~150ショット)あたり脚本1ヶ月→絵コンテ1ヶ月→ビデオコンテ1週間→アフレコ&レイアウト&アニメーション1ヶ月→ライティング&コンポジット3週間。絵コンテは手描き(紙と鉛筆)とPhotoshopを、ビデオコンテはAnimateを、3DCG作業はMayaを、コンポジットはNUKEを使用している。「これまで使用してきたツールを引き継ぎ、改造してTVシリーズに対応しました」とは中川雄介演出補佐。「プリプロの段階でカッティングもアフレコも行い、ベースをカッチリ決めることがポイントです」と福井俊介演出補佐も語る。さらに「プリプロのフローは作画のTVシリーズをベースに調整しました。絵コンテやビデオコンテは2D出身の沓名さんが、脚本と本編の制作は3DCG出身の私が重点的にみて、子どもたちにとってわかりやすく面白くすることに全リソースをつぎ込んでいます」と草野公紀監督は話す。
左から、山内拓人ライティング&コンポジットアーティスト、梅田年哉アートディレクター、小堀 剛テクニカルディレクター
マーザ社内のスタッフ構成は、キャラクター2名、BG&プロップ1名、リガー1名、アニメーター2名、ライティング&コンポジット1名を含む13名を中心に、ディベロップメント期間も含めると総勢70名程度が参加したという。社外チームも加わるため、社内外共通のパイプライン構築も必要となった。「社外チームでの作業環境構築の負担軽減のために、社内のものを簡略化して共通パイプラインとしました」と小堀 剛テクニカルディレクターは話す。
左から、千葉隆司チーフ・プロダクションマネージャー、森永健太プロダクションアシスタント
世界観
梅田年哉アートディレクターが作成した、リビングのコンセプトアート【画像左】と、公園のキービジュアル【画像右】。「シンプルな造形でありながら高級感のあるデザインやライティングで、原作のもつ雰囲気を最大限表現することを意識しました」(梅田氏)。また配色は原作の欧風な色調を活かしてほしいという、北本氏の意向から、フランスのクレヨンや写真を参考にハイセンスなものが志向された。梅田氏と草野監督やCGチームで打ち合わせを重ね、3DCG化した際にも無理のない、明るく軽やかな気持ちの良い世界観に仕上げられている
室内のライティング安定した画を量産できるシンプルなコンポジットツリー。暗部にも色が入っており、豊かな仕上がりの画となるように意識された
ライトの配置は実際の光源の位置に基づいている。本来昼間の室内の光源は太陽光だけだが、外光だけでは薄暗くなってしまう。ライトをステージへ仕込むことで柔らかな光を表現した。「温かみのある画づくりを目指して、ライティングは光の回り込みを意識し、コンポジットで暗部にも色を乗せています」と山内拓人ライティング&コンポジットアーティストは工夫を語る
Shotgunをはじめとするツール
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アニメーションチェック用のムービー。ショット名やレンズのミリ数、フレーム情報なども表示されている
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Shotgunに提出された各ショットの最新の素材から、日々機械的に編集される「オートエディット」ムービー。ひとつながりのエピソードの完成形としての最新状態を、いつでも確認できる大きなメリットがある
Shotgunのアニメーションチェックページ。監督から担当者へコメントを送ったり、過去のコメントの閲覧もでき、ペイントした画像やQuickTimeムービーを添付して指示することも可能。ショットごとにステイタス管理ができ、進捗状況やリテイクの優先順位の判断も容易だ。このページだけでこれだけの機能が使え、全スタッフとリアルタイムに共有できる。「Shotgun導入以前と比較すると管理の手間が大幅に削減できました。社内外のショットワークを一元的に管理するためにShotgunは欠かせません」と千葉隆司チーフ・プロダクションマネージャー
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<TOPIC 2>シンプルながらも工夫して作成された3Dモデル
<TOPIC 2>シンプルながらも工夫して作成された3Dモデル
ツールを多用して効率化しクオリティアップにつなげる
作成されたキャラクターモデルは59体。人型はメインのヨウヘイ、お父さん、お母さんの3体とモブが12体。猫型はメインのチー、クロいのをはじめとする6体とモブが十数体、そこに鳥や犬などが加わる。BGは大きく屋外と屋内に分けられ、ステージは43個、プロップは161個で、クルマなども含めると230個ほど。今後キャラクター等も含めたモデル総数は300個くらいまで増える予定だという。多くの3Dモデルを扱う工夫について天野 洋BG&プロップスーパーバイザーは「プロップに関してはレンダリングモデルとアニメーションモデルを分けず、テクスチャの解像度を低くしたりカラー表示だけにしたりしています」と語る。
キャラクターモデルは人型も猫型もそれぞれ同じトポロジーを使い、テクスチャなどでバリエーションを増やしている。「レンダリングモデルにアニメーション用のテクスチャも入っており、ひとつのアセットで済むように設計しました」と語るのは鴻巣 智キャラクタースーパーバイザー。皆川恵美里キャラクターモデラーの「ポリゴンの割りも軽めにつくっています。原作の優しいテイストを再現するために髪の毛をクレイっぽくし、ディテールよりも色と形で表現しています」という言葉通り、シンプルな造形でありながら原作のかわいらしさがあふれている。テクスチャ制作はMARIを使用し、最終的に後の修正などで汎用性の高いPSDファイルにまとめられた。チーは一見シンプルだが、寄ってみると色の境目は毛が生えているようにギザギザさせているそうだ。
ステージはレンダリングモデルとレイアウトモデルが作成され、レンダリング時にこれらのモデルを差し替えられるツールをつくることで利便性が高められた。ステージのシーンは分かれているが、読み込むだけで自動的に配置されるようになっている。例えば山田家の庭は、リビングと庭の3Dモデルを読み込むと自動的にくっついて配置され、手間が省ける。さらに「解像度の大きなテクスチャはアニメーション作業時にMayaの動作が遅くなってしまうため、ツールで解像度256~512pixelくらいまで落としたシーンを作成しました。ほかにも、もともと使っていたV-RayのマテリアルをMayaの標準シェーダへ変えるツールも作成してもらっています」と天野氏。手間やコストを抑えながら工夫することで、高いクオリティを維持しているのだ。
左から、鴻巣 智キャラクタースーパーバイザー、皆川恵美里キャラクターモデラー、天野 洋BG&プロップスーパーバイザー
初期のマケットモデリングの初期では、ZBrushを用いて時間をかけずにマケットを作成し、テストされた。ZBrushは修正しつつ提案できるため、短期間でのトライ&エラーが可能だったという
服飾デザインのバリエーションの一例
本作のこだわりのひとつとして、フランスでもセンス良く見られるような服装が意識された。キャラクターの服装のデザインは、外部のアパレル業界で活躍するコーディネーターの石原有子氏がスタイリングを考え、それを基に梅田氏を含めたアートチームが3Dモデルに落とし込んでいる。服のシワはリアルにしすぎず、あえてデフォルメして記号的に表現することで、作風に合ったお洒落でかわいいものとなった
鼻の造形
ヨウヘイの鼻なしモデルと鼻ありモデルの比較。原作の画では鼻が描かれているときと描かれていないときがあるが、3Dモデルで起こすと様々な角度から映されるため、鼻がないと違和感が生まれてしまい、最終的に鼻ありモデルが採用された
完成モデルメインキャラクターであるお母さん、お父さん、ヨウヘイ、チー、コッチ、クロいのの最終的なプロダクションモデル。ZBrushで作成したマケットから原作の静止画にすり合わせていった。正面画は原作の画にしっかり合うように精度を高め、原作「らしさ」を実現している。原作の優しいテイストを出すために、髪の毛はクレイっぽさを出し、目や眉毛は左右対称ではなく微妙に歪ませているとのこと。原作ではアイキャッチはないが、アニメでは表情によってアイキャッチや目の線を入れることでアニメとしての感情表現を豊かにしている
首の付き方
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大人の猫と子どもの猫の首の付き方の比較画像。チーをはじめとする子どもの猫はダイナミックな動きを可能にするために体と頭部が分けられている。対して、クロいのをはじめとする大人の猫は、子どもの猫ほどダイナミックな表現がないため首は繋がっている
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いろいろな角度に顔が向くときに、繋がっている部分が多少浮いても途切れて見えないように造形されている。また、このような差をつけることで、大人と子どもの差別化を図っているとのこと
キャラクターは目の形などが異なるように見えても、同じトポロジーを使ってテクスチャの差などで多くのバリエーションをつくっている。そのためターゲットシェイプのウェイトを使いまわすことも可能だ
上の画像はアン【画像内、左】とコッチ【画像内、右】をそれぞれブレンドシェイプで50%ずつチー【画像内、真ん中】へ適用した例。このように、メインキャラクターからモブを作成することで効率化が図られている
アニメーターに共有しているチーの表情のポーズ集
原作漫画から感情ごとにチーの表情をマッピングした表情集を作成し、表情のポーズがつくられた【画像左】。この感情(喜怒哀楽など)の最大値の表情を破綻させずにつくることが重要だという。エレメントシェルフ【画像右】に登録されている表情を使用することで、表情のばらつき防止対策にもなっているそうだ。話数が進むにつれ、新規でポーズを登録してアップデートが重ねられている
チーの目の表現チーの頭の3Dモデル。大人の猫の目は眼球をモデリングしているが、チーはフラットなプレーン(板)を使用し、その上を目が動くようにすることで原作のチーらしさのあるルックを実現した。白目部分はNURBS、アイリスは平らなポリゴンで表現し、メッシュを白目に沿わせている。なるべく広い角度から見ても耐えられるように、白目の曲面を調整して目が飛び出して見えないように工夫された
手描き感のある背景
お父さんの部屋のリファレンスアート【画像左】とステージとプロップのレンダリング画像【画像右】。3DCGは直線や配置がキッチリしすぎており、硬く冷たい雰囲気となってしまう。本作では温かみのある手描きっぽさを演出するために、意図的に直線を歪ませたり、配置をずらしたりしている。本棚やコルクボード、コピー機などの歪みがわかりやすいだろう
レイアウトモデルとレンダリングモデル
レイアウトモデル【画像左】では、レンダリングモデル【画像右】で雑草が生えている箇所など植物関係がラフに切り抜いた簡易モデルに変更され、シェーダもレイアウト用に軽いものにされた。レイアウト時には、カメラが雑草にめり込まない範囲の目安になる。テクスチャはそれぞれのモデル用に2種類が用意され、人工物はレンダリングモデルがそのまま使われた。さらに解像度の縮小とシェーダの変換、テクスチャパスの付け替えまでを手間なくできるツールも作成されている
レイアウトモデルからレンダリングモデルへの入れ替え
ツールによって、木のレイアウトモデルが置かれているシーン【画像左】から、中心にある木をレンダリングモデルへ差し替えると、このシーンに置かれている全ての木がレンダリングモデルへと差し替わる【画像右】。たくさんのステージがある中で、この入れ替え作業をひとつひとつ行うのは非常に手間となる。こうしたツールの工夫によって現場はストレスなく作業ができるそうだ。ハイペースなTVシリーズでも無理なくクオリティを維持することができる秘訣だろう
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<TOPIC 3>リアルさとアニメらしさを併せもつアニメーション
<TOPIC 3>リアルさとアニメらしさを併せもつアニメーション
これまでの資産を活用し観ている人に刺さる作品をつくる
アニメは「映像言語」だと草野監督は語る。脚本段階では面白いアイデアが入っていることを優先し、絵コンテでそのアイデアを動きとしてふくらませる。ビデオコンテはひと目で芝居がわかるクオリティにし、その素材を編集して尺を決め込むことで、アニメーターは何をすべきかすぐにわかり、タイムシートも不要となったそうだ。「アイデアを重視し、話数ごとにテイストが異なった、バラエティに飛んだ作品に仕上がっています」と福井氏は本作の魅力を語る。
作品の中心となるチーのアニメーションの方向性は、3DCGの良さであるリアルな動きとコメディチックなアニメ的な動きを両立すること。そのために「アニメーターたちと意見交換をくり返してリグを作成しました」と赤木達也リギングスーパーバイザーは話す。映画『キャプテンハーロック』(2013)で用いられたリギングシステム「eST」を採用することで、チーの動きを他の猫に入れたり、リグを四足動物と他の動物で共有したりして、コストカットしているという。ただし、難しい動きは全フレームスカルプトしているものもあるそうで「クロいのはだんだんアクションがゴージャスになり、良い意味で苦労しています」と田中 剛アニメーションスーパーバイザー。赤木氏は「ポンポンらーはリグ的にも大変でした」と話してくれた。
基本的な歩きや走りのサイクルモーションは、四足歩行の動物を参考にしたという。「3DCGはリアルな動きが得意です。猫の動きをリファレンスに、作中に多く出てきそうなモーションをライブラリに登録しています」と杉山由里子アニメーションスーパーバイザー。チーだけでも28のモーションが登録されており、それらを組み合わせれば誰でもチーらしい歩様が付けられ、効率・品質の両面で効果的だ。
効率化を図りつつ見ごたえある作品にするには演出の妙もあり「奇抜なカメラワークは使わず、流背や止メ、集中線など古めの作画アニメ的な手法を採り入れています」と沓名副監督。原作のフラットな感じの表現にも効果的だという。草野監督は「作画量を抑えて過度なCGディテールへのこだわりも捨てて、現場の負担はなるべく減らしながら、観ている人に刺さる面白いものをつくりたい。そのためにまずは現場の人間が楽しんでつくれることを心がけています。その楽しいエネルギーが子どもたちにも伝わると良いですね」と楽しそうに話してくれた。
左から、赤木達也リギングスーパーバイザー、杉山由里子アニメーションスーパーバイザー、田中 剛アニメーションスーパーバイザー
猫のリグ本作のリグについて、チーを例に紹介する。画像はチーのアニメーション用リグとコントローラGUI。伸びをしたり、しゃがんだりできる。リガーとアニメーター間のやり取りをくり返し、チーらしさを再現できるリグを構築していった。「リグのオーダーでは原作に出てくる目や口の形状の表現についてくり返し要求を出しました。体も、座らせたときに後ろ足が猫らしくぽっこりするようにとか、二足で立ったときにも破綻しないようになどをお願いしています」と杉山氏。作中ではヨガなど通常の猫ではしない動きをすることも多いチーだが、ほとんどの場面はリグの操作で対応できるという。リグとしては難所だったというポンポンらーのかわいらしい動きにも注目だ
舌の形の工夫
舌の形ひとつとっても原作を忠実に再現しようとこだわっている。原作では舌は丸く簡略化されて描かれることもあるため、リアルな舌では印象が変わってしまう。しかし球形であれば横から映されるカットでも見た目の印象を崩すことはない。ただし、舌でなめるといったときはリアルな舌を使っているという。表現面と効率面の双方に利点がある素晴らしいアイデアだ
特別なアイライン目をつむったときのアニメ的な表現を紹介する。目を開いた状態では輪郭線が黒く塗られていないため、ただ目をつむらせただけでは画像のような黒い太線にはならない。そこで、目を閉じたときのみ、まぶたの上下からメッシュが生成され、隙間を埋めるように設定することで、漫画・アニメ的な目の表現を実現した。さらに目をきつくつむったときに目が「><」のように二股に分かれる表現は、閉じている目の上にアニメーターが黒いオブジェクトを乗せて調整しているという。この他にも眉間のシワなどもオブジェクトを乗せて表現しているそうだ
逆立つ毛の表現
【画像左】原作でも特徴的な驚いて背中の毛が逆立つような表現を3DCGでいかにして実現するかは、今回のプロジェクトでも肝となる部分だったという。制作期間が短く予算も限られてくるTVシリーズでは、動物に毛を生やすことは難しい。最終的には、まずジオメトリで表示した3DモデルのメッシュをPoke Faceで三角化し、バーテックスの中心として引き出す(画の右から左へ)。そこにテクスチャ デフォーマをかけることでノイズ的に動かして再現したという。こうして【画像右】のように原作に忠実で躍動感あふれるコミカルな画が完成した
アニメーションツールツール例。通常、Trax Editor【画像上】を使用してアニメーションをクリップ化して利用する場合、CharacterSetをつくらなければならない。しかしその工程を自動化し、所定のウインドウから利用したいクリップを選択するだけで、キャラクターに適用できるように改良された。【画像上】のように、立ち上がり→歩き始め→走りに移行→走りから歩きに移行→立ち止まり→座りから伏せ、と並べるだけで動きが自動でつなげられる。このままではまっすぐ動かすことしかできないが、モーションデフォーマ【画像下】を使うことで、移動の軌道を自在に調整することが可能となる。軌道はNURBSカーブを使って自由にデザインでき、足の接地は維持したままカーブに沿ってキャラクターを移動させられる。NURBSカーブのCV数の調整や、アニメーションのタイムワープの使用もできるため、意図した軌道の再現のほか、動き自体のスピード感なども好きなように設計することが可能だ。もちろん四足歩行の動物だけでなく二足歩行の人間にも使用できる
原作特有の「ダララ」表現を探る原作に登場する特有の動き「ダララ」の制作過程
アニメーションさせるために用意されたプロップ
チーのキャラクターリグだけでは「ダララ」の動きは再現できなかった。そこで作画のような足の残像のプロップをつくり、それらのオブジェクトをチーに組み合わせて配置し、作画アニメの「オバケ効果」を表現している。その他にも原作特有の「ひたひた」や「ぴょんこ」といった動きも力を入れて再現したという。どのような動きで表現されているのか、ぜひアニメを観て確認してほしい
こだわりの演出絵コンテ
ビデオコンテ
通常のビデオコンテはコンテ撮のようなものが多いが、本作では2Dアニメーターの山下清悟氏がビデオコンテを担当し、作画アニメでいう原撮のように細かな動きまで付けられた。それを素材として編集を行い、尺を決め込んだものがカッティングムービーとなり、このムービーを参考にアニメーターは動きを付ける。またCGレイアウトとちがいキャラクターの表情もよくわかるため、アフレコ時に声優へ芝居のニュアンスを的確に伝えることができるという
完成画
監督・演出の意図が伝わる絵コンテ&ビデオコンテをアニメーターら3DCGスタッフが昇華し、完成画にしっかり落とし込んでいる