2019年9月に発売予定の書籍『ゲームグラフィックス 2019』。CGWORLDに掲載されたゲームグラフィックス関連記事をまとめたアーカイブ本だ。今回は特別にその掲載内容の一部を先行公開する。今回はスクウェア・エニックスより、「HD-2D」と銘打ったドット絵で人気の『OCTOPATH TRAVELER』の解説を公開。

※本記事は2019年9月発売予定の書籍『ゲームグラフィックス 2019』の一部先行公開となります。
※制作状況に応じて、書籍の掲載内容は変更する場合がございます。

TEXT_谷川ハジメ(トリニティゲームスタジオ)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
© 2018, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

発売:スクウェア・エニックス
開発:アクワイア
発売日:発売中
価格:7,344円(パッケージ版/ダウンロード版)
対応ハード:Nintendo Switch / PC
ジャンル:RPG
www.jp.square-enix.com/octopathtraveler
© 2018, 2019 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

「HD-2D」を的確に具現化した「ドット絵」キャラクター

スクウェア・エニックスアクワイアの協業により生み出された現世代の「ドット絵」表現。まずはキャラクター制作のながれとアニメーション付けについて紹介しよう。

「ドット絵」化を意識したキャラクターデザイン

キャラクターデザインはスクウェア・エニックスの生島直樹氏が担当している。この段階では、イラストレーターの自由な発想で登場するキャラクターそれぞれに、個性的な魅力を盛り込むと共に、「ドット絵」に起こしても印象的な意匠を付与することに注力している

【左上】は盗賊のテリオンで、【右上】は薬師のアーフェン。8人の主人公たちにはディテールの指定が多く見られ、それぞれにふさわしい魅力あるキャラクターに仕上がっている【下】

完成した「ドット絵」キャラクター

何度も調整をくり返しながら、最終的に完成した「ドット絵」キャラクターたち。キャラクターの基本サイズは18×32となっており、子供、男性、大柄男性で幅と高さが数ピクセル変わっている。アニメーションの矩形範囲としては最大128×128だが、テクスチャパッキングする際に詰められている。スーパーファミコンからプレイステーション世代のハードでは、画面全体がSD解像度であったこともあり、16×16や16×32が当たり前だったが、走査方式が変わり、画面解像度が向上した現世代では、色のにじみがなく、かなりギュッと引き締まった見た目になるため、同じドット絵といっても勘どころはかなり異なっている

Photoshopの活用で効率化されたアニメパターン作成

キャラクターたちをアニメーションさせるのに、ひとつひとつドット絵を作成していたのでは大変な手間がかかるため、Photoshopのパペットワープ機能を活用して異なる意匠のキャラクターに対しても、アニメパターンを瞬時に割り付ける現代的な制作手法が採られている

まず、前項で紹介した3方向の基本ポーズのドット絵【A】を、可動範囲の大きい「関節」で分割してパーツ化【B】をする。続いて「素体」にパペットワープの機能によって変形で付けられたアニメパターン【C】に対して、イメージ部分レイヤーを差し替える。すると、パペットワープのレイヤー効果がイメージに適用され【D】、キャラクターのポーズがつくられる。パペットワープ機能で変形させるという、効率的な手法が採られているわけだ。なお、これはあくまでラフな状態で、この後、変形による歪みなどを丁寧に修正して完成させている。基になるポーズドット絵【E】はスクウェア・エニックスから提供されており、そのポーズをアクワイア側でパペットワープデータ化するという段取りで進められた【F】

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『OCTOPATH TRAVELER』の詳しいメイキングは2019年9月発売予定の書籍『ゲームグラフィックス 2019』で掲載いたします。

  • 『ゲームグラフィックス 2019』
    定価:3,888円(税込)
    判型:A4変型/オールカラー
    総ページ数:352(予定)
    発売日:2019年9月22日
    ISBN :978-4-86246-452-1

    詳しくはこちら。
    https://www.amazon.co.jp/dp/4862464521