昨日から短期企画として掲載している『GW直前スキルアップ応援特別企画』。
本日は『カラー&ライト リアリズムのための色彩と光の描き方』より"スカイブルー"を掲載します。

  • カラー&ライト
    リアリズムのための色彩と光の描き方
    著者:ジェームス・ガーニー(James Gurney)
    翻訳:株式会社Bスプラウト
    ISBN:978-4-86246-153-7
    サイズ:A4変形(229 × 267 mm)
    総頁数:224頁(カラー)
    発行・発売:株式会社ボーンデジタル
    価格:4,104 円(税込)
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空の色は、単調で均一な青ではありません。昼間の空では、2種類のカラーグラデーションが重なりあっています。1 つが「太陽のグレア」によるグラデーションで、太陽からの距離によって変化します。もう1つは「地平線のグロー」によるグラデーションで、地平線からの角度に応じて変化します。

空が青い理由

空が青い理由はたいていの人が知っています。青く見えるのは、レイリー散乱という現象によるものです。大気中の小さな粒子が、光のスペクトルのうち長波長の赤よりも、波長の短い紫や青を大量に屈折させ、光を散乱させます。青い光があらゆる方向に跳ね返ることによって、空は特徴的な青い色になります。一方、あまり影響を受けない赤やオレンジの光線は、空気中をそのまま直線的に進む長旅を続けることになります。

アーティストである私たちは、もう少し多くのことを知らなくてはなりません。見る方向によって、青い空の色はどのように変化するでしょうか?青が最も濃くなる場所(彩度が最も高い場所)はどこでしょうか?

太陽に向かう、太陽に背を向ける

▲図1:太陽の方向を見る

▲図2:同じ時刻に太陽を背にして空を見る

図1と図2 の写真は、どちらも2008 年4月12日の午後4 時10 分にニューヨーク州ジャーマンタウンで撮影しました。図1 は太陽のある方向を向いて撮影し、図2 は数秒後に太陽を背にして撮影しました。

両者を見比べると、雲はまったく違って見えます。太陽の近くでは、雲は中央部が暗く、エッジが明るくなっています。一方、図2 の場合、太陽は撮影者の背後から照っています。このとき、雲は上部と中央部が最も明るく、端と底面は暗くなります。また、小さな雲は大きな雲ほど白くありません。これは、光を反射させる蒸気の量が少ないからです。

空の色も異なります。図1 の太陽の近辺には暖色のグレア(輝き)があり、それが純粋な青と混じり合うことで、どちらかというとくすんだ灰緑になっています。太陽を背にして見上げると、青は彩度が高くなるだけでなく、色相も変化して、少し紫寄りになっています。

このとき、私たちがカメラにだまされていないことを確かめる方法はあるでしょうか? こうした観察を確かめる別の方法はないものでしょうか?

シアノメーターを作る

DIY ショップにある青の塗料の色見本は、とても便利な道具になります。簡易のシアノメーター(青度計)として利用し、空の色に合わせれば、色を計測できます。

▲図3:図5のサンプルを撮影しているところ

▲図4:太陽を背にしてみると、色はAに一致

▲図5:太陽の方向を見る

図4 は、太陽に背を向けた状態で、塗料の色見本と空を見比べたところです。色見本の1 つ(A)は、隣接する空の領域によく一致しています。

空に顔を向けた状態で空とサンプルの比較写真を撮影するのは難しい作業でした。なぜなら、どんな角度に傾けても、サンプルが太陽に直接照らされるようにはならないからです。結局、車のフロントガラスに鏡を置いて、光を色見本に反射させることにしました(図3)。

しかし、この比較を完全に信用することはできません。というのも、地面や私のTシャツから上に跳ね返った暖色の光がここに写っている色見本に影響しているからです。このサンプルが本来の色よりも少し暖色気味に見えるのは、おそらくそれが理由でしょう。

太陽のグレア

▲図6:太陽のグレアの影響によるグラデーション

図6を見ると、太陽に近いほど空の色が明るくなることが分かります。1 枚の色見本を真ん中で2 つに切り分けると、空色の色見本のペアができあがります。これを間隔を空けて配置すると、空の色の比較ができます。空と厳密に一致する色はありません。色相や彩度は異なるものの、明度に注目すると、近い場所が2 か所あります。

太陽から離れるように視線を水平に移動させていくと、空の明度が暗くなっていくのがはっきりと分かります。左の矢印(太陽により近い)の場所では、最も明るいサンプルの明度と一致します。一方、右の矢印(太陽からやや遠い)の場所では、2 段階暗いサンプルと一致します。鏡は空のもっと上の方を反射していますが、そこでも左側より右側の方が暗くなっています。

地平線のグロー

▲図7:地平線のグローの影響によるグラデーション

シアノメーターを垂直に配置すると分かりますが、空の色の明度は天頂から地平線までの間でも遷移します(図7)。(A)では、彩度は異なるものの、最も暗い色見本と遠くの空で明度がほぼ一致します。高い空では、同じ色見本の(B)が周囲の空よりもずっと明るく見えます。

鏡の反射を見ると、撮影者の背後にあたる、太陽のある側の領域の空を同時に比較できます。

私たちの背後にある、鏡に映った空の領域全体は、直接目に見える空の部分よりもずっと明度が高くなっています。

まとめ

ここまでの観察を基に、要点をまとめておきましょう。

1. 空の色には2 種類のグラデーションがあり、明度、色相、彩度ともに変化しています。この2 つのグラデーションは相互に影響し合うので、空のどの部分を切り取ってみても、2方向で同時に変化していきます。

2. 天頂から地平線へと視線を移動していくと、空は全体的に明るくなっていきます。これは、より厚い空気の層を見ることになるからです。地平線の近くでは、時間帯や見る方向に応じて、空の色は薄いセルリアン、ウォームグレー、くすんだオレンジなどに変化します。しかし、高度が下がるほど明るくなることに、変わりはありません。

3. 太陽に近づくにつれ、空の色は明るくなると同時に暖色寄りになります。これは、空気中の大きめの粒子が、大量の白い光を浅い角度で拡散するためです。建物の影に立ち、影の端、太陽が屋根の輪郭の向こう側にちょうど隠れる位置から空を見上げると、この現象を最も確認しやすくなります。また太陽の真向かいの対日点(たいじつてん、観測者を中心に180 度反対側)でも、太陽の周囲ほどではないにせよ、同様に明るくなる現象を確認できます。

4. 最も暗く深い青色になるポイントは「空の井戸(well of the sky)」と呼ばれます。これは日の出や日没のときにだけ、天頂に現れます。正確に言えば、空の井戸は沈む夕日から天頂を過ぎた95 度の角度のところにあります。日中の他の時間帯では、太陽から約65 度に位置しています。


青い空を描く色を用意するときには、こうしたさまざまな現象を考慮します。つまり、垂直方向と水平方向の両方で色調を変えていかなければならないのです。このためには、晴天の青空を描こうとしたら、少なくとも4 つの基本色をプレミックスとして用意することになります。

書籍情報

  • カラー&ライト
    リアリズムのための色彩と光の描き方
    著者:ジェームス・ガーニー(James Gurney)
    翻訳:株式会社Bスプラウト
    ISBN:978-4-86246-153-7
    サイズ:A4変形(229 × 267 mm)
    総頁数:224頁(カラー)
    発行・発売:株式会社ボーンデジタル
    価格:4,104 円(税込)
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