7月15日(火)、Blender 4.5 LTSが正式にリリースされ、公式サイトからダウンロード可能となった。VulkanグラフィックAPIの本格サポートによる描画性能向上、ジオメトリノードの機能拡張、新しいブーリアンアルゴリズムとManifoldソルバの導入、CyclesとEeveeのレンダリング品質とスピード向上、グリースペンシルのコンポジターへの統合、VSE(ビデオ編集)の高速化、UI改善など、更新は多岐にわたる。

今回リリースされた「LTS(Long Term Support)」は、リリースから2年間は仕様と互換性を維持し、バグフィックスのみ適用できる特別なバージョン。長期にわたるプロジェクトにおいて、互換性を保ちつつ安定した制作環境を提供する目的でBlenderが用意したものだ(LTSについて詳しくはこちら)。Blender 4.5 LTSは2027年7月までメンテナンスされる。

Vulkanの正式サポート

VulkanグラフィックAPIがBlenderで本格的にサポート。OpenGLと同等の機能が提供され、ビューポートの描画速度と応答性が向上し、複雑なシーンにおいてもよりスムーズな作業が可能になるという。デフォルトで「プリファレンス」→「システム」→「グラフィックス表示:バックエンド」は「OpenGL」になっているため、これを「Vulkan」にすることで利用できる。

ジオメトリノードの拡張

ジオメトリノードは、新たにOBJやCSV、STL、VDB、PLYとカスタムテキストファイルのインポートに対応。ファイルのドラッグ&ドロップによるインポート機能も強化された。

▲各種ファイルのインポートに対応
▲ドラッグ&ドロップでインポート

また、カスタムメッシュ法線(Custom mesh normals)の編集対応、グリースペンシルのカラー・深度・柔らかさに関する新しいノードが追加され、カスタムノードツールと折りたたみ可能なパネルをサポート。

▲カスタムメッシュ法線(Custom mesh normals)の編集に対応
▲グリースペンシルの新しいジオメトリノード

さらに、「Camera Info(カメラ情報)」、「Instance Bounds(インスタンス境界)」、「Match String(文字列一致)」、「Bit Math(ビット演算)」、「Field Average(フィールド平均)」、「Field Variance(フィールド分散)」、「Field Min & Max(フィールド最小/最大)」など、データアクセスと文字列処理に特化した新ノードが追加された。

▲データアクセスと文字列処理に特化した新ノードを追加

また、アトリビュートドメイン補間の高速化により、ジオメトリノードの全体的なパフォーマンスが向上している。

パフォーマンス向上とレンダラの改善

Blender 4.5 LTSでは、テクスチャ読み込みの高速化、起動時間の短縮、マルチスレッドシェーダコンパイルによるパフォーマンスの向上が図られている。

Eeveeには、Cyclesと同様、セルフシャドウイングのアーティファクトを排除する新しいshadow terminator bias(シャドウターミネーターバイアス)が導入され、リアルタイムビューポートの表示がより正確になった。

その他、デプスバッファアーティファクトのためのReverse-Z、選択の改善、ライトリーク問題の修正が含まれている。

コンポジター

シェーダとジオメトリノードの全プロシージャルテクスチャノード(Brick、Checker、Gabor、Gradient、Magic、Noise、Voronoi、Wave、White Noise)がコンポジターで利用可能になった。また、Vector Math、Mix、Clamp、Float Curveなどの共通ノードも利用できるようになり、Image Info、Relative to Pixel、Image Coordinatesなどの新しいノードも追加された。

▲プロシージャルテクスチャノード「White Noise」をコンポジターで使用

グリースペンシル

グリースペンシルはストロークと塗りつぶしの新しいレンダーパスを通じてコンポジターと統合された。ジオメトリノードツールがサポートされ、新しいスーパーサンプリングアンチエイリアシング(SSAA)によりラインの品質が向上した。

どのモードでも全オブジェクトのUVを表示可能に

UV編集については、編集モードだけでなく、任意モードでアクティブまたは選択された全オブジェクトのUVを表示できるようになった。

ポイントクラウドオブジェクト

半径や位置、色などのプロパティを定義するアトリビュートを使ってデータを格納する新しいオブジェクトタイプ「ポイントクラウド」が導入された。「追加」メニューから直接ポイントクラウドオブジェクトを3Dビューポートに追加したり、ジオメトリノードを使用してプロシージャルに生成することが可能。今後のアップデートにおいて、パーティクルシミュレーションシステムへの対応も示唆されている。

モデリング・ペイント・スカルプト

Grid Fillは穴を埋めるだけでなく、既存のジオメトリを置き換えたり修正したりできるようになった。

▲Grid Fill

スカルプト、頂点ペイント、テクスチャペイントモードでのペイントは、色相・彩度・明度のランダム化をサポート。

▲新しい「Randomize Color」と「Jitter」を組み合わせた例

スカルプトモードでは、新しい「Manifold(マニフォールド、多様体、多面体)」ソルバーにより、多様体メッシュでのトリムツールが大幅に高速化した。

▲スカルプトモードでのマニフォールドメッシュのトリミングが高速化

UIの更新

Blender 4.5 LTSのノードエディタは、ノードフレーム設定が簡単になり、プロパティエディタでは使用しないタブの非表示に対応。アセットブラウザとファイルブラウザは、2行ラベルの折り返しや水平リストモードなどを搭載した。また、画面から直接アセットプレビューをキャプチャできるようになった。

▲ノードフレーム設定が簡単に行えるようになったノードエディタ
▲アセットブラウザとファイルブラウザに2行ラベルの折り返しや水平リストモードなどが搭載され視認性が向上
▲アセットプレビューは画面から直接キャプチャできるようになった

その他、全更新内容とダウンロードはこちら。

■Blender 4.5 LTS ダウンロード
https://www.blender.org/download/releases/4-5/

■Blender 4.5 LTS リリースノート
https://developer.blender.org/docs/release_notes/4.5/

CGWORLD関連情報

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