3DアーティストのDemNikoArt氏は9月9日(火)、オランダの芸術家テオ・ヤンセン(Theo Jansen)氏の動く彫刻作品『Strandbeest』の独特な動きをBlenderのリギングで再現するチュートリアルをYouTubeで公開した。Blender 4.5対応のプロジェクトファイルも用意。また、同氏Patreonには、さらに長尺バージョンのチュートリアルが公開されている。

DemNikoArt氏は本チュートリアルで、「パイプの長さが少し違うだけで全体の動きが破綻してしまう繊細なメカニズム」であるStrandbeestの複雑な脚部構造を、Blenderのリギングにより再現した。同氏はStrandbeestの構造内に「two large triangles that remain rigid throughout the entire movement」(全体の動きを通して剛性を保ち続ける、2つの大きな三角形)を発見。これにより、11本全てのパイプにボーンを入れる必要がなくなり、より少ない手数で効率的なリギングが行えたという。

Strandbeestの独特な脚の軌道は、IKとポールターゲット(関節の曲がる方向を制御)を駆使することで生み出した。また、8本の脚を効率的に作成・制御するためにリンク複製を活用。1つの脚の構造を修正しただけで残りの7本にも自動で変更が反映され、作業の大幅な簡略化に繋がったという。

■DemNikoArt(Patreon)
https://www.patreon.com/cw/DemNikoArt

『Strandbeest』とは

『Strandbeest(ストランドビースト)』は、オランダの芸術家テオ・ヤンセン(Theo Jansen)氏が制作する「砂浜を歩く生命体」のような動く彫刻(キネティック・アート)。プラスチックチューブを組み合わせてつくられており、風の力だけで、まるで生き物のように多脚で歩行する。

その独特で複雑な脚のリンク機構は、Strandbeestの脚を構成する11本のパイプの長さの比率に基づいて設計されているが、これはヤンセン氏はAtariでのプログラミングにより発見した「生物進化のアルゴリズム」に基づいた比率。クランクの単純な回転運動を動物の足のような理想的な歩行運動に変換できる、このパイプの長さの比率は「ホーリー・ナンバー(聖なる数字)」と呼ばれる。

ホーリー・ナンバーにより、Strandbeestの足は効率的な軌道を描いて進む。地面についている間は体を前に押し出すため、ほぼ水平な直線に近い動きをし、地面から離れた後は邪魔にならないように素早く持ち上がり、楕円を描いて次の接地点へ移動する。なお、Strandbeestは歩行中、胴体部分の上下動が非常に少なく、エネルギーロスが最小限に抑えられている点も特徴だ。

■テオ・ヤンセン公式サイト
https://theojansen.net/

■テオ・ヤンセン公式YouTube
https://www.youtube.com/@strandbeestfilm

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