OpenAI社は9月30日(火)、動画生成AI「Sora 2」と、Sora 2を利用して動画を生成し共有できるiOS用SNSアプリ「Sora」をローンチした。翌日からは日本でも利用が可能となり話題を呼んだ一方で、日本のIPが学習元と推測される動画が多数生成・共有され、波紋を呼んでいる。

▲日本時間10/1 午前2時過ぎにOpenAI公式Xアカウントが投稿したポスト。リポストは1万を超え、大きな話題を呼んだ
▲OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏によるSora 2ローンチについてのポスト

OpenAI公式サイトの「Sora 2 が公開」ページでは、2024年2月発表の初代Soraから物理的な精度や現実性、制御性を大幅に進化させた動画・音声生成モデルとしてSora 2を紹介している。物理法則の遵守、制御性の向上、同期された音声生成、そしてユーザーを含む人物や動物、物体をAIが生成した任意のシーンに登場させることが可能な「カメオ(Cameo)」機能を主要機能として紹介。そしてこれらは、iOSアプリ「Sora」の中心的な機能として搭載されているとする。

▲iOSアプリ「Sora」
▲OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏によるアプリ「Sora」ローンチについてのポスト

なお、Sora 2では多層的な安全対策として、10代のユーザーに対するペアレンタルコントロール機能の提供、カメオ機能における肖像権の管理に対応すると表明。

Sora 2はiOSアプリ「Sora」、有料サブスクリプションユーザー向けのWebアクセス(招待制)と実験的モデル「Sora 2 Pro」、API公開(現在はまだ一部開発者向け先行アクセスのみ)を介して提供されている。

■Sora 2 が公開(OpenAI)
https://openai.com/ja-JP/index/sora-2/

▲iOSアプリ「Sora」(App Storeプレビュー

しかし、日本でも利用可能になった10月1日以降、日本の人気IPをかなり忠実に再現した生成動画が多数投稿され、著作権侵害を懸念する声が広がった。自民党・塩崎あきひさ衆議院議員は自身のXで日本のIP保護のため政府の対応を示唆するポストを投稿している。

■「ドラゴンボール」「NARUTO」もそっくり再現 Sora 2使った日本のアニメ風動画がXに続々 自民・塩崎衆院議員は「重大な問題」と指摘(ITmedia NEWS、10/2)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2510/02/news089.html

こうした著作権侵害を容認するかのような仕様に加え、Sora 2のリアルすぎる動画生成能力に起因する有害コンテンツやディープフェイクなどが原因となり、「AI Slop」という軽蔑的な言葉でSora 2を批判する動きも強くなった。AI Slopとは、AIにより大量生成される、低品質で反復的、かつ中身のないコンテンツの氾濫のことだ。

OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏自身もSora 2ローンチ時のブログでAI Slopに言及。AI動画生成の行き着く先として「ユーザーを夢中にさせることだけが最適化された、中身のないコンテンツの無限ループ(RL-optimized slop feed)」に陥る危険性を認め、Sora 2ではそうした事態を避けたいと記している 。   

■Sora 2(Sam Altmanブログ、英語)
https://blog.samaltman.com/sora-2

10月3日(金)には、SoraアプリがApp Storeで1位を獲得。サム・アルトマン氏はブログで「Sora update #1」を発表した。ブログでは、著作権を持つ権利者に対し、キャラクターの生成に関するより詳細な(granular)制御権を提供することを約束した。Sora 2リリース当初は「オプトアウト(権利者が拒否を申請しない限り利用可能)」方式で進めていたところを、権利者の意思を尊重する方針へ大きく転換した。   

また、動画生成の収益化と、その収益を権利者と分配する仕組みを検討していることも明らかにしたほか、特に日本について言及していることから、日本のIPに関する問題が今回の方針転換の大きな要因だったことを示唆している。

■Sora update #1(Sam Altmanブログ、英語)
https://blog.samaltman.com/sora-update-number-1

▲塩崎議員も自身のXでSora 2の修正について言及

しかし著作権にまつわる混乱はその後も続く。ハリウッドの主要スタジオを代表する業界団体である全米映画協会(Motion Picture Association、MPA)は10月6日(月)、声明を発表。サム・アルトマン氏が上記ブログで「権利者により詳細な制御権を与える」と約束したことに対し、それでは不十分であり、侵害を防ぐための「即座かつ断固たる行動」を取るよう要求したほか、侵害を防ぐ責任がOpenAIにあること、そして既存の法規制遵守を求めた。

最も問題視されたのは「オプトアウト」方式。著作権は基本原則として「オプトイン」方式、つまり使用には事前の許諾が必要となるところ、Sora 2では著作権で保護されたキャラクターがデフォルトで使用可能な状態になっている。使用を拒否するには、権利者が自らOpenAIに申請をしなければならない仕組みで、この点を特にMPAは非難した。

■MPA Issues Statement on OpenAI’s Recent Release of Sora 2(Motion Picture Association NEWS、英語)
https://www.motionpictures.org/press/mpa-issues-statement-on-openais-recent-release-of-sora-2/

10月7日(火)には、平 将明・デジタル大臣が記者会見で「政府としても、私自身としても問題意識を持っている」と述べ、OpenAIに対して「日本のルールに合うよう調整してもらう必要があるだろう。ビッグテックの自主的な対応を強く求めたい」と発言した。

■日本政府、OpenAIに「著作権侵害行為」を行わないよう要請 Sora 2での“アニメ風動画”問題を受け(ITmedia NEWS、10/2)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2510/10/news115_2.html

そして城内 実・知的財産担当大臣は10月10日(金)の閣議後記者会見で、10月6日(月)に日本政府が内閣府・知的財産戦略推進事務局を通じて、OpenAIに対し権利者の懸念に対処するよう正式に要請を行っていたことを明かした。

■著作権の侵害が指摘される動画生成AI「sora2」に政府が侵害行為の中止を要請 オープンAI側見直し図る考え(FNNプライムオンライン、10/10)
https://www.fnn.jp/articles/-/943841

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