Blender Foundationは11月18日(火)、「Blender 5.0」を正式リリースし、公式サイトからダウンロード可能となった。UI改善からモデリング、アニメーションまで各種機能の拡充に加え、プロの映像制作パイプラインにかかわるカラーマネジメントやポスプロワークフローの進化、そしてグリースペンシルの強化まで、多岐にわたる更新が含まれている。
Blender Foundation and the online developer community proudly present Blender 5.0!
— Blender (@Blender) November 18, 2025
ACES, Adaptive Subdivision, HDR, Storyboarding, Geometry Nodes, 588 bugs fixed, and so much more.
Changelog & Download: https://t.co/vgp98zCLLW
Video Recap: https://t.co/BC87Qz1nj6 #b3d
VSEとコンポジターのシームレスな統合
VSE(Video Sequence Editor)はコンポジターとの連携が強化された。コンポジターモディファイアーにより、VSEのストリップに対して、コンポジターのノードツリーを直接モディファイアーとして適用できるようになり、高度なグレーディングやエフェクトをVSE上で直接行え、リアルタイムで結果を確認しながら編集できるようになる。Blender内でのポストプロダクションワークフローが大きく強化された。
また、ストリップのプロパティやモディファイアーが、画面右側のプロパティエディタに表示されるようになり、操作性が統一されたほか、シーケンサーがアクティブなシーンに縛られなくなり、別のシーンを割り当てて編集することが可能になった。
ビデオシーケンサーとグリースペンシルを組み合わせたストーリーボード作成ツールも搭載。Fileメニュー→「New」→「Storyboarding」から専用UIに移行し、グリースペンシルを用いた描画・編集・レイヤー管理機能を用いて絵コンテの制作が行える(下記動画)。
コンポジターに高品質なエフェクトアセットが標準搭載
Blender Studioのアーティストが作成した高品質なコンポジットエフェクト群が、ノードグループアセットとして標準搭載された。ビネットやフィルムグレイン、色収差など、現場で多用されるエフェクトを、アセットシェルフからドラッグ&ドロップするだけで手軽に利用できる。
ACESカラーマネジメントとRec.2020のネイティブサポート
映像業界標準のカラーマネジメントシステム「ACES(Academy Color Encoding System)」にネイティブ対応した。ACES 1.3および2.0のビュー変換と、プロジェクト全体で使用する「作業カラースペース(Working Space)」のACEScgによる定義をサポート。スタジオ環境や他のVFXツール間の色のちがいを吸収し、色の一貫性を保った作業が可能になる。
また、画像および動画の両方で、HDRおよび広色域カラーの表示・書き出しが可能になったほか、マテリアル、ライト、コンポジットにおいて、より広い色域(Linear Rec.2020)を使用できるようになった。
ジオメトリノードベースの強力な新モディファイアー群
ジオメトリノードベースの「配列(Array)」、「Scatter on Surface」、「カーブのチューブ化(Curve to Tube)」、「Instance on Elements」や「Randomize Instances」がモディファイアーとして追加。従来は複雑なノード設定が必要だった処理を、モディファイアーの適用だけで手軽に実行できるようになった。これらは「ジオメトリノードアセット」として提供されるため、ユーザーが中身をカスタマイズすることも可能だ。
UV同期選択の抜本的な改善
長年の課題となっていたUVエディタと3Dビューポート間の選択同期機能(UV Sync Selection)が根本的につくり直された。面ごと(Face Corner)の選択と直感的な操作感を実現し、デフォルトで有効化されている。また、UVパッキング時に特定のカスタム領域を指定して詰め込む機能なども追加され、UV編集作業の効率向上に大きく貢献する。
新コンストレイント「ジオメトリアトリビュート」
ジオメトリノードで作成したアトリビュートを読み取り、オブジェクトやボーンのトランスフォームを制御できる強力な新コンストレイント「ジオメトリアトリビュート(Geometry Attribute)」が追加。これにより、ジオメトリノードでの計算結果からリグを動かすなど、従来は不可能だった高度なプロシージャルリギングが可能となる。
グリースペンシルの強化
グリースペンシル(Grease Pencil)の更新では、グリースペンシルオブジェクトがモーションブラーレンダリングをサポート。また、ベジェ曲線のハンドル操作改善、新しい「ペンツール」による直感的なパス作成を実装したほか、ポイントごとに3種類(Round、Sharp、Flat)のコーナータイプを指定できるようになった。
スカルプト&ペイント機能の拡張
スカルプトやモデリングで使用するMatcapが刷新され、スペキュラ成分の表示オンオフが可能になった。さらに、ペイント機能にはPixel Art Brushesが追加され、レトロなドット絵スタイルのテクスチャ作成が容易になったほか、ブラシの筆圧感知カーブを個別にカスタマイズできる機能も搭載され、タブレットでの操作性が向上している。
ボリューム関連ノードが正式機能に
これまで実験的機能だったOpenVDBなどのボリュームを扱うジオメトリノード群が正式機能として統合された。SDF(符号付き距離関数)グリッドへの変換や各種演算ノードが追加され、プロシージャルなボリュームモデリングやエフェクト作成が本格的に可能になる 。
アニメーション作業を効率化する改善
指定時間だけ再生ヘッドを移動する「差分で時間をジャンプ(Jump Time by Delta)」オペレータの追加や、アニメーションエディタ内への「Playback Controls」領域の新設などが行われた。また、タイムラインエディタのUIが整理され、アドオンだった「Copy Global Transform」が標準機能化されている。
Cycles&EEVEE
Cyclesでは、長らく実験的機能だった「アダプティブ細分割(Adaptive Subdivision)」が正式機能としてSubdivision Surfaceモディファイアーに統合された。また、新しい「Unbiased Null-Scattering」アルゴリズムがデフォルトになり、重なり合うボリュームでのブロック状のノイズが解消。
サブサーフェス・スキャタリング(SSS)は新しいランダムウォーク方式により、光が複数回バウンスする計算が正確になり、不自然に暗くなる現象が軽減された。その他、以前導入された薄膜干渉(Thin Film Iridescence)効果が、金属シェーダ(Metallic BSDF)でも使用可能となっている。EEVEEについては、マテリアルコンパイルがNVIDIA/Vulkan環境において最大4倍高速化している。
その他の更新
.blendファイル保存時の圧縮がデフォルトで有効化され、ファイルサイズが最適化されるようになった。なお、Collada(.dae)のサポートは削除された。
■Blender 5.0ダウンロード
https://www.blender.org/download/
■Blender 5.0リリースノート
https://www.blender.org/download/releases/5-0/
CGWORLD関連情報
●アステカ帝国首都「テノチティトラン」デジタルアーカイブプロジェクト! Blenderのデジタルツインデータがオープンソースで公開
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https://cgworld.jp/flashnews/01-202511-Tenochtitlan.html
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https://cgworld.jp/flashnews/01-202511-ClothRipper.html
●靴ひものモデリングを補助するBlenderアドオン「Nyanneco Shoelace Tool」リリース! ジオメトリノードベースのツール+アドオン、無料版あり
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https://cgworld.jp/flashnews/01-202511-NyannecoShoelaceTool.html