宇都宮大学とJVCケンウッドからなる研究グループは、インタラクティブな体積映像を描画できるボリュメトリックディスプレイシステムを開発。カナダ・デンバーで7月28日(日)から開催中のSIGGRAPH 2024内の最先端技術展示デモ「Emerging Technologies」にて展示発表されている。
ボリュメトリックディスプレイとは、画素を実世界に体積的に生成することで映像を描画する技術。XRのヘッドマウントディスプレイデバイスなどを装着せずとも360°どこからでも、複数人が3D映像を見ることができる。
研究グループでは過去に、フェムト秒レーザーによって生成された画素と空間光位相変調デバイス(LCOS-SLM)を利用したホログラフィックレーザー描画法を提案。それを用いたボリュメトリックディスプレイを開発してきたが、映像サイズの大型化に課題が残っていた。
今回展示発表する研究では、2つのレーザー描画を連携動作するディスプレイシステムとJVCケンウッドのLCOSデバイスを採用した描画法を開発することにより、高い画素密度と手のひらサイズの体積映像を実現。さらに、外界の動きを認識して体積映像描画に反映させるシステムを構築することで、体積映像をユーザーがリアルタイムに操作できるインタラクションを可能にした。
研究グループが構築したボリュメトリックディスプレイシステムは、2つのホログラフィックレーザー描画光学系から構成される。
各光学系は、ガルバノスキャナーと可変焦点距離レンズで構成される3次元ビーム走査システムを有することにより、下図(a)のように10×10×10cmの体積中に発光点を3次元的に生成できる。下図(b)は2つのレーザー描画光路を用いて描かれた球の体積映像。描画パターンをシステムに入力することにより、任意のパターンを描くことができる。
SIGGRAPH 2024 Emerging Technologiesの来場者は、このような体積映像コンテンツの鑑賞と、手の動きによる映像のインタラクティブ操作を体験できる。
研究グループは今後、ビーム走査と空間光変調器による集光点設計の連携描画を、ハードウェア改良およびアルゴリズム開発の両面から推し進め、より複雑な形状の物体を体積映像として表現できるボリュメトリックディスプレイシステムの実現を目指すという。
研究は論文「Volumetric Display with Dual-Path Holographic Laser Rendering」として発表されており、著者は宇都宮大学オプティクス教育研究センター助教・熊谷幸汰氏、株式会社JVCケンウッド 未来創造研究所の岡 尚志氏、堀切一輝氏、鈴木鉄二氏、そして宇都宮大学オプティクス教育研究センター教授・早崎芳夫氏の5名。
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