テクニカルディレクターのAlexander Richter氏らは1月21日(火)、Foundry社と共同でライブイベント「TD Meetup 13」を開催した。同イベントのテーマは、昨年12月にオープンベータとして公開されたコンポジティングツール「Nuke 16.0」に搭載されるマルチショットワークフロー。本稿では、Vishal Patel氏によるイベントブログから重要な内容を抜粋してお伝えする。

NukeをはじめとするNukeファミリー(Nuke、NukeX、Nuke Studio)では、バージョン16.0において、ユーザーがカスタムシーン変数を作成し、NormalノードとMultishotノード内でエクスプレッションとして使用できる新機能が追加される。

これにより、従来は複数ショット間の一貫性を保つために複数のNukeスクリプトをやりくりする手間がかかっていたところ、Nuke 16.0ではスクリプト内でシーケンス全体を構築しながらショーやシーケンス情報の追加・切り替えが行えるようになる。


つまり、Pythonなどスクリプト言語を利用することで、作業効率アップと品質の一貫性維持を実現するのが、Nuke 16.0がネイティブでサポートするマルチショットワークフロー、となる。

複数ショットの複数の調整を迅速化&効率化

イベントでMultishotノードの使用例として紹介されたのは、複数のショットがあるシーケンスにおいて、ショットごとにGainを上げるためにGradeノードに異なる調整を行うケース。

ここでは、各ショットのGainを手動調整するのではなく、Multishotノードを使用して、ショットごとに変化する単一の変数(ここではshot_brightness)を使用した。


そして、各ショットに異なる値を設定するだけで(ショット01はshot_brightness=1.2、ショット02はshot_brightness=0.8)、Gainノードがショットに応じて自動調整された。Multishotノードにより、複数のショットにわたる複数の調整を迅速かつ効率的に行うことができるという例だ。

GradeノードにVariable Switchノードを接続して、Gainの自動調整を実現

Multishotノードの主機能:Graph Scope変数

Multishotの主な機能であるGraph Scope変数では、Nukeスクリプトの特定のセクションにのみ影響する変数を作成できる。 そのため、ひとつのショットに変更を加えても、他が書き換わることはない。


そしてそれに付随するのが、Pythonでカスタマイズ可能な変数(Variables)パネル。Nukeスクリプト内を参照して、アーティストがアクセスする変数だけを抜き出して表示し、編集可能にできる。

これらの機能を活用するために、下記ノードが用意されている。

■Variable Switchノード

変数の値に基づいてNukeスクリプトの異なるセクション間を切り替える。スクリプト間のコピー&ペーストを削減するのに役立ち、 例えば、読み込むショットによって異なる色補正を適用するようNukeに指示できる。

▲Variable Switchの活用例。ボディカラー、ボディタイプ(セダンん、SUVなど)、ライトのオンオフ、ホイールタイプ、ビュー、背景などをドロップダウンから選択して適用できる

■Variable Groupノード

変数を小さなグループにまとめることができ、Nukeスクリプトの様々な部分に分離された環境を作成するのに役立つ。 Variable Groupで定義された変数は自動的に親グループから継承され、オーバーライドを設定できるため、変更を加える際に探す手間がなくなる。

■GSVコマンドラインレンダラ

コマンドラインインターフェイスにおいてGraph Scope Variablesを指定可能になる予定。これにより、各ショットの個別レンダリングではなく、全てのバッチレンダリングが可能になる。

Multishotの有効活用にはPythonの知識を備えたTA/TDが必要

マルチショットワークフローを最大限に活用するためには、Pythonとテクニカルアーティストまたはテクニカルディレクターが必要となる。Pythonに精通したTA/TDであれば、Multishotのノードや変数と相互作用するカスタムスクリプトを作成することで自動化やカスタマイズが実装できる。

■Nuke Multishot | TD Meetup 13
https://www.alexanderrichtertd.com/post/nuke-multishot-td-meetup

CGWORLD関連情報

●Nuke内で3D Gaussian Splatsを扱えるプラグイン「Gaussian Splatting for Nuke」リリース! 読み込みから調整、レンダリングまで対応

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https://cgworld.jp/flashnews/Nuke-Gaussian-splatting.html

●Nuke 15.1リリース! パイプラインのオープン化対応、機械学習機能の性能向上、レビューツールの利便性向上など

FoundryがコンポジットツールNuke 15.1をリリース。OpenTimelineIOやOpenAssetIO、カスタムUSDといったパイプラインのオープン化対応をはじめ、アーティストの作業を効率化するCopyCat(機械学習機能)の性能向上、レビュー機能の改善など、機能強化が図られている。
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●VFX&コンポジットツール「Autograph 2025.1」リリース! DaVinci Resolve用のライブリンクプラグイン、After Effectsプロジェクトインポーター搭載

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https://cgworld.jp/flashnews/202501-Autograph20251.html