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近年、AMD製CPUが目覚ましい進化を遂げているが、実際の性能はどれほどのものか。CG制作や映像編集などを手掛ける企業とともに、その実力を検証。AMDの異なるCPUを搭載した2台のPCと、その企業で実際に使われている社内PCを含めた3台で、実務作業ベースでのパフォーマンスを比較してもらった。

TEXT _近藤寿成(スプール) PHOTO_弘田 充



  • AMD

    50年以上の歴史を持つアメリカの半導体製造会社。「Athlon」や「Ryzen」シリーズなどを展開するCPUとともに、「Radeon」シリーズによるGPUの両方を開発する。さらに、CPUとGPUを1つに統合したAPUなども手掛けている。
    https://www.amd.com/ja

AMD Ryzen Threadripper 3970X搭載機、AMD Ryzen 9 3900X搭載機、 Intel Xeon Gold 6132 (×2)搭載機を徹底比較!



今回の比較検証企画に協力してもらったのは、自動車をはじめとする工業製品のビジュアライゼーションを手掛けるeg+ worldwide。シニアテクニカルスーパーバイザーの今野亮成氏とシニアプロダクションコーディネーターの安村幸将氏に、業務内容を踏まえたパフォーマンスの検証作業を行ってもらった。

例えば、同社の主要業務の1つに「自動車のカタログ制作」があり、A4サイズのカタログの見開きを飾るような3D画像を制作する場合には、「解像度が横1万ピクセルを超えるケースもある」(今野氏)。当然、このようなデータをレンダリングする場合、CPUには大きな負荷がかかる。また、このような3D画像をレンダリングする場合には1枚2時間を1つの目安としているそうだが、「走行シーンでタイヤを回す、あるいはヘッドライトを点灯させるといったエフェクトを加えれば、時間はさらにプラスαされる」(安村氏)ことになる。






  • 安村幸将氏


    eg+ worldwide
    シニアプロダクションコーディネーター

さらに、ライティングなどの設定が1回で完結することはなく、「部品によってライティングを細やかに調整することで、さらなる品質の向上をはかっている」(今野氏)。そのため、試行錯誤をしていくなかでレンダリングの回数も増えていき、その回数は「メインを飾るような画像であれば、100回を超えることもある」(安村氏)そうだ。

また、「自動車のWebコンフィグレーション」も主要業務の1つで、基本としては360度のアングルを10度ずつ回転させるため、36枚の画像が1セットとなる。ただし、同じ車体でもカラーや車種のグレードなどが異なるものをすべて出すため、時には「数千枚の画像を最終的にNukeで出すことになる」(今野氏)という。






  • 今野亮成氏


    eg+ worldwide
    シニアテクニカルスーパーバイザー

これらの作業に加えて、eg+ worldwideの3Dアーティストは「車両データを制作する」といったレンダリングとは関係のない作業も手掛けており、「ジェネラリスト的な立場で幅広い作業に従事している」(今野氏)とのこと。そのため、同社ではさまざまなコンテンツ制作にしっかりと対応できるハイスペックなPCを各アーティストのために用意し、ストレスなく快適に作業してもらえるような環境づくりを心掛けている。そういったなかで、今回は同社の主要業務に応じたテストを実施し、AMD製CPUのパフォーマンスを探ってみた。

検証ハードウェアについて

今回は、AMDが提供する2機種のPCに、eg+ worldwideで各アーティストが利用するIntel CPU搭載の現行機を加えた3台で検証した。 AMDの検証機1は、AMDのハイエンドデスクトップ向けCPU「Ryzen Threadripper 3970X」を搭載し、GPUに「Radeon RX 5700 XT」を備えた「Ryzen Threadripper 3970Xモデル」。32コア64スレッドのRyzen Threadripper 3970Xは、基本クロックが3.7GHz、最大ブースト・クロックが4.5GHzという性能だ。また、メモリーは64GB、ストレージはPCIExpress4.0に対応した1TBのSSD「CSSD-M2B1TPG3VNF」となっている。

検証機2は、AMDのメインストリーム向けCPUで最上位クラスに属する「Ryzen 9 3900X」を採用した「Ryzen 9 3900Xモデル」。Ryzen 9 3900Xは12コア24スレッドながら、クロック数だけ見ればRyzen Threadripper 3970Xに見劣りしないスペックを持っている。なお、マザーボードや電源、CPUクーラーなどは異なるが、パフォーマンスに大きくかかわってくるGPUやメモリー、ストレージは検証機1と共通となる。



これに対してeg+ worldwideの現行機は、CPUにIntelの「Intel Xeon Gold 6132」を2基搭載するともに、GPUには「Nvidia Quadro RTX 5000」を採用した超ハイエンドPC。Xeon Gold 6132は単体で14コア28スレッド、2基の合計28コア56スレッドとなるほか、メモリーは128GBまで強化された充実の構成だ。「CPUやGPUは、性能をさらに上げようと思えば上げられるが、ギリギリのコストパフォーマンスを狙った。ウルトラハイエンドの一歩手前をイメージしている」(今野氏)。

Point1:Ryzen Threadripper 3970Xの実力とは?


  • 2019年11月に発売された第3世代Ryzen Threadripperの上位モデルで、Ryzen 3000シリーズなどの第3世代Ryzenプロセッサーと同世代の高性能x86コア「Zen 2」アーキテクチャーを採用。CPUソケットが「Socket sTRX4」に変更され、チップセットも「AMD TRX40」が採用された点が大きなポイントだ。第1世代や第2世代のSocket TR4と互換性がないことから、使用の際には対応マザーボードが必要となる。第2世代の上位モデル 2970WXと比較すると、コア数が1.25倍に増加した上、クロック数も3.0GHzから3.7GHzに向上したほか、L3 キャッシュも64MBから128MBに増加。さらに、メモリーは4チャネルでDDR4-3200までに対応し、PCIe 4.0などもサポートするようになった。

Point2:Ryzen 9 3900Xの実力とは?

  • 2019年7月に発売された第3世代Ryzenの上位モデルで、CPUソケットは「Socket AM4」に対応。基本クロックで3.80GHz、最大ブースト・クロックで4.6GHzという優れた性能が魅力だ。7nmプロセスの「Zen 2」アーキテクチャーを採用しており、第2世代の「Zen+」と比較してIPC(Instructions Per Clock:1クロックで処理できる命令数)が最大で22%向上し、浮動小数点演算性能も2倍になった。メモリーは2チャネルでDDR4-3200までに対応し、PCIe4.0もサポートする。そのほか、LED照明付きのCPUクーラー「AMD Wraith Prism クーラー」が標準で付属する。

Case 1:「V-Ray Benchmark」でのベンチマークとCPUの発熱

検証条件:V-Rayレンダリングシステムを使ったベンチマークソフト「V-Ray Benchmark」を使用し、「CPU」のベンチマークを測定。さらに、「HWiNFO」を使用して「CPUの発熱」についても確認した。

単純にCPUのコア数/スレッド数を比較すると、現行機を100%(28コア/56スレッド)とした場合、検証機1は114%(32コア/64スレッド)、検証機2は43%(12コア/24スレッド)となるため、CPUのベンチマークが「検証機1>現行機>検証機2」という結果は妥当といえる。ただ、スコアで比較すると、現行機を100%として検証機1は141%、検証機2は60%となるため、AMDの2つのCPUはコア数/スレッド数以上のパフォーマンスを出していることがわかる。CPUの発熱効率については、CPUクーラーが異なるため純粋には比較できないが、現行機よりもコア数/スレッド数が多い検証機1がもっとも発熱温度が低かったことから、非常に優秀なワットパフォーマンスがうかがえた。

Case 2:Mayaでのレンダリング時間

検証条件:「自動車のカタログ製作」を念頭に、実践的なベンチマークとしてMaya(+V-Ray)でのレンダリング時間を計測した。画像素材のポリゴン数は10,864,335 、解像度は5000×3333ピクセル、V-Rayのレンダリング設定はSampler type : Bucket、Threshold : 0.010、GI( Primary) : Irradiance map、GI( Secondary) : Light cacheとなる。



レンダリングの設定としてはやや軽めとなるが、レンダリング時間は検証機1が36分39秒と最速で、現行機は43分58秒だった。現行機の時間を作業スピードを100%とした場合、検証機1は120%、検証機材2は64%となる。検証1と同様に、各機材のCPUのコア数/スレッド数の割合との比較を行うと、検証機1だけでなく検証機2も、コア数/スレッド数以上の性能を発揮していることがわかった。

Case 3:Nukeでのレンダリング時間

検証条件:「自動車のWebコンフィグレーション」を念頭に、大量の画像シーケンスを同時にレンダリングするというケースを想定し、Nukeでのレンダリング時間を計測した。画像素材の解像度は4000×2800ピクセル、レンダリングの画像数は50枚となる。



Mayaでのレンダリング時間と同様に、この検証でも検証機1が7分11秒と最速で、現行機は9分2秒だったほか、検証機2も9分21秒と現行機に迫る結果となった。ここでも現行機の結果を100%とすると、優れたパフォーマンスが見て取れる。この検証機2の躍進についても要因は不透明だが、今野氏は「レンダリングのカスタム設定が影響しているのではないか」と推測。1スレッドごとに1画像を分散してレンダリングする仕組みによって、Mayaとは異なる結果につながったと分析する。

AMD製CPUは純粋な性能とともにコスパの高さも魅力

今回はすべての検証において、検証機1が現行機の結果を上回るとともに、コア数/スレッド数以上のパフォーマンスを発揮する結果となった。AMD製CPUの純粋な性能の高さが明確にわかったわけだが、今野氏がさらに注目したのは「コスト面の優位性」。現行機に搭載される「Intel Xeon Gold 6132」×2は市場価格が約760,000円(1CPUあたり約380,000円)となる一方で、検証機1の「Ryzen Threadripper 3970X」は約260,000円、検証機2の「Ryzen 9 3900X」は約64,000円となることから、「とくにRyzen Threadripper 3970Xは、半額以下のコストで現行機を上回る優れたパフォーマンスを出している。その点が最大のメリットだ」と語る。

さらに、現行機は1台で約150万円かかっているが、Ryzen Threadripper 3970Xを含む構成なら「1台100万円で収まる試算もできた」とのこと。40人のアーティストを抱えるeg+ worldwideとしてはトータルコストに大きく影響するため、今後数年はCGスタジオにとって「AMD製CPUがベストな選択肢」と今回の検証を総括した。

01:AMDのCPUはコア数/スレッド数以上のパフォーマンスを発揮
02:CPUの発熱(ワットパフォーマンス)も優秀
03:圧倒的なコストパフォーマンスはCGスタジオにとって、ベストな選択肢のひとつになる


問い合わせ先
日本AMD株式会社
www.amd.com/ja