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オンラインへの移行はCEDECの認知度を高めるチャンス ~CEDEC 2020運営委員会に聞くコロナ禍のカンファレンス

オンラインへの移行はCEDECの認知度を高めるチャンス ~CEDEC 2020運営委員会に聞くコロナ禍のカンファレンス

コロナ禍に伴いイベントのオンライン開催が続いている。開催延期や規模縮小を余儀なくされたケースも少なくない。2020年9月2日(水)~4日(金)に開催が予定されているゲーム開発者会議「CEDEC(コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス)2020」もまた、オンライン開催に移行したカンファレンスのひとつだ。今年のCEDECはどのように開催されるのか、見どころは何か、運営委員会に話を聞いた。

TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

新委員長の下で開催される初のオンラインカンファレンス

CGWORLD(以下、CGW):お暑い中、お集まりいただきありがとうございました。奇しくも今年から運営委員長が代替わりされましたよね。CEDECがこれまで続いてきた中で、変わってきたものもあれば、変わらないで続いてきたものもある。そうした新陳代謝やこれからの抱負みたいなものも含めて、お伺いできればと思います。まず、新委員長から自己紹介をどうぞ。

  • 齊藤康幸/Yasuyuki Saito
    株式会社ヘキサドライブ
    CEDEC運営委員会・委員長
    hexadrive.jp

齊藤康幸氏(以下、齊藤):CEDEC 2020からCEDECの運営委員長をあずかりました、齊藤と申します。大阪に本社がある、ゲーム開発会社ヘキサドライブの取締役をしています。もともとプログラマー出身で、プロジェクトマネージャも歴任させていただきました。今は東京支社長として、東京支社の統括をしています。

CGW:昨年までは副委員長をされていましたね。

齊藤:はい、副委員長兼セッションWG(ワーキンググループ)のリーダーをしていました。CEDECの委員長は数年単位で代替わりしてきまして、後任として白羽の矢を立てていただきました。前任の委員長を務められたセガの中村樹之さんが、僕と同じくセッションWGのリーダーから委員長になられたこともあり、CEDEC全体を統括する中で適任だろうと。これは個人的な考えですが、CEDECの大型化に伴い、セッション全体を取り仕切ることができる人が、全体を見るのが良かろうと......そんな理由もあったのかなと思っています。

CGW:続いて副委員長の皆さんも自己紹介をお願いします。3人いらっしゃるんですよね。

粉川貴至氏(以下、粉川):副委員長のセガの粉川です。あわせてセッションWGのリーダーもさせていただいています。

  • 粉川貴至/Takashi Kokawa
    株式会社セガ
    CEDEC運営委員会・副委員長
    www.sega.co.jp

CGW:おお、ということは次の委員長ですか?

粉川:いや、どうなんでしょうか。まったくの未定です(笑)。ちなみに、昨年まではセッションWGのグループアシスタントとして、リーダーだった齊藤さんをサポートしていました。その関係がそのまま、委員長と副委員長になった。そして、セッションWGを引っ張ることになった......そんなイメージです。

CGW:会社でのお仕事は何ですか?

粉川:ビルドエンジニアです。ちょっと前まで知る人ぞ知る職種でしたが、最近ようやく日の光が当たってきて、説明しやすくなりました。そのため、CEDECでも長くプロダクション分野の運営に関わることが多かったですね。

河本健太郎氏(以下、河本):バンダイナムコスタジオの河本です。CEDECではインタラクティブWGのグループリーダー兼、セッションWGのサブリーダーとして、主に招待セッションのとりまとめをしています。

  • 河本健太郎/Kentaro Kawamoto
    株式会社バンダイナムコスタジオ
    CEDEC運営委員会・副委員長
    www.bandainamcostudios.com

CGW:河本さんはアーティスト出身ですよね。

河本:はい。もともと背景アーティスト出身で、『テイルズ オブ』シリーズの開発などに携わりました。今は社内でTAの部署を見ています。弊社ではテックと呼ばれるエンジニア系TAの部署とアーティスト系TAの部署があり、それぞれが個別に起ち上がった経緯がありまして、今年からその両者をみるようなポジションになりました。

藤村幹雄氏(以下、藤村):ディー・エヌ・エーの藤村です。副委員長兼、広報WG&イベントWGのグループリーダーとスポンサーシップWGを担当しています。昨年まではセッションWGで粉川さんとアシスタントを担当していましたが、今年から体制が変わる中で、セッションから外れて、広報&イベント&スポンサー分野を担当することになりました。

  • 藤村幹雄/Mikio Fujimura
    株式会社ディー・エヌ・エー
    CEDEC運営委員会・副委員長
    dena.com/jp

CGW:社内では何をされているんですか?

藤村:何になるんでしょうね(笑)。開発職ではないので、社内の開発者のサポートだったり、イベントを開催したり、管理部門に近いところで開発者の支援をしています。

CGW:はじめにCEDECの立ち位置を改めて確認させてください。GDCなどのように企業が主催するものではなく、SIGGRAPHのように学会が主催するものでもなく、業界団体のCESA(コンピュータエンターテインメント協会)が主催するもので、現場のゲーム開発者の皆さんが運営されているカンファレンスなんですよね。

齊藤:そうですね。ゲーム開発の第一線で活躍されている皆さんが集まって運営委員会を構成して、開発者にとって一番価値のあるカンファレンスになるように、議論しながら運営を進めています。

CEDEC 2019基調講演(中島秀之氏/公立大学法人札幌市立大学)

CGW:その上で、準備についてふり返っていただきたいのですが、今年から本当は会場が新しくなるはずだったんですよね。

齊藤:そうなんですよ。昨年まで会場だったパシフィコ横浜の国際会議場は、年々参加者数が増加していることもあり、キャパシティが限界に近づいていました。セッション間の待機列で通路がふさがったり、そもそもセッション会場に入りきらなかったりという問題があり、何とか解決したかったんですが、物理的にどうしようもない、というところに来ていました。

それが今年から「パシフィコ横浜ノース(以下、ノース)」という新しい会議棟ができたことで、そこに会場を移して、物理的な狭さを解消しようと考えていました。

CGW:今までと同じように、大中小のセミナールームがあり、講演などが行われるというイメージでしょうか?

齊藤:そうですね。それに加えて1階が巨大な展示会場になっていて、そこがメインホールの代わりになったり、広いスペースでイベントができたり、というかたちになっています。

CGW:一方でCEDEC 2017からタイムシフト配信も始まりました。

齊藤:会場混雑緩和の一環として、また全国の皆様にオンラインで講演を視聴いただけるように、配信体制を整えました。その一方で、会場まで足を運んでいただく参加者の数は減らないどころか、もっと増えていきました。講演を聴くだけでなく、講演者の方に直接質問したり、参加者同士で交流していただいたり、インタラクティブセッションや企業の展示ブースを見たり、様々なメリットがありますからね。そのため、より広い会場に移るしかない、と決断しました。

スポンサーセッションの内容はYouTubeのCEDECチャンネルで現在も視聴できる)

CGW:昨年度の参加者はどれくらいでしたか?

齊藤:タイムシフトで視聴される方を含めて、3日間で約9,700人です。そのうち実際に会場に足を運ばれる方が約6,000人ですね。もっとも、タイムシフトパスの購入者は、あまり多くありません。というのも、3日間有効なレギュラーパスに、タイムシフト配信の視聴権が含まれているからです。

一方で会場では一度に見られるセッション数が限られますよね。他にスポンサーブースを回ったり、インタラクティブセッションを見たり、といった方もいらっしゃいます。そのため、レギュラーパスで会場を回って、その上でご自宅などでタイムシフト配信を使い、セッションも見るという方が多いようです。

セッション規模は例年並みを維持し、無料セッションも実施

CGW:その一方で、今年はコロナ禍でCEDEC自体がオンラインに完全移行することになりました。この決定はいつごろ行われましたか?

齊藤:国の緊急事態宣言が4月の頭に出ましたが、その前からそうした雰囲気はありました。とはいえ、なかなか踏ん切りがつかなかったのも事実です。それまでノースで開催する予定で、いろいろな準備を進めていましたからね。一方で状況はどんどん悪くなっていって。CEDECの規模を考えると、そろそろ決断しないと難しいだろうと。そうした議論が4月に行われて、ゴールデンウィークで決定して、対外的に正式発表したのが連休明けとなります。

CGW:毎月行われている運営委員会がオンラインに移行したのは、いつごろでしたか?

齊藤:3月が移行期で、4月は完全オンラインになりました。

CGW:オンラインに移行する上で、スポンサー周りの調整が大変だったのではないですか?

藤村:ノースのレイアウトを基に会場配置などを考えて、プログラムもほぼほぼ決まっていました。それがオンラインになるということで、いったん白紙になりました。その上でオンラインでできる協賛プログラムの設定を進めていきました。そのため、ぎりぎりまで各社様にご連絡できなかった......といったことはありました。募集は7月末で締め切りまして、現在は最終調整をしています。オンラインになったことで、当然変動はありましたが、まずまずの状況になったと思います。

CGW:今年はGDCをはじめ、多くのカンファレンスがオンラインに移行しました。何か参考にされたものはありますか?

齊藤:特に参考にしたものはありません。ただ、学校の授業がオンラインになったり、他のオンラインカンファレンスに参加されていた委員の皆様のご意見を聞いたりして、CEDECの運営でも取り込んでいきました。

GDC Summerセッションページ

CGW:セッションはライブで行われるのですか? それとも、事前に録画しておいた講演動画を順次配信していく方式ですか?

粉川:講演者の皆様には、原則としてパシフィコ横浜のライブ会場を行うエリアに来ていただきます。そこからセッションを行う予定です。講演者の皆様のご自宅などから配信するかたちにすると、通信環境や設備でトラブルが発生する可能性がありますからね。ただ、それが難しいという講演者の方には、事前にご用意いただいた録画ビデオを配信するかたちでも構いません、とお伝えしています。また、複数講演者がいるセッションで、一部の講演者だけリモートで講演する、といったものもあります。

CGW:事前に録画されたビデオを配信されるのかと思っていました。GDC Summerはそのスタイルでしたよね。

粉川:そうですね。ただ、その方式だとライブ感に乏しいだとか、動画を制作する負荷が高いといった意見がありました。そのため、大半のセッションはライブになっています。

CGW:ひとくちにオンラインカンファレンスといっても、様々な視聴形態がありますが、CEDECの場合はどうなりますか? 動画ビューアがブラウザに埋め込まれていて、ワンクリックで再生できるといったものになるのでしょうか?

粉川:はい、その予定です。公式サイトのセッションタイムテーブルから直接リンクで飛べるようなかたちを想定しています。いま急ピッチで準備しています。

藤村:公式サイトにある「CEDECの歩き方」というページに、準備ができ次第キャプチャなどを掲載して、視聴方法のご案内を差し上げる予定です。

CEDECの歩き方(公式サイトより)

CGW:オンラインだからできることと、できないことがあります。メリットとデメリットをどのように考えられていますか?

齊藤:世界中どこにいても、またどんな状況でも参加できるのは大きなメリットですよね。そのため参加者の裾野が広がることを期待しています。タイムシフト配信もここ数年続けていますが、まだまだCEDECを知らない人の方が多いんですよね。東京近郊の方であれば積極的に参加しようと思っていただける方もいらっしゃいますが、地方になると認知度が下がります。一方で今年は全セッションがオンラインになるので、全国に認知度を広げるチャンスだと思っています。

デメリットとしては、物理的に直接集まることができないので、コミュニティとしての機能が下がってしまうことですね。セッションに参加された方が、終了後にセッション内容で盛り上がって......といったことが難しくなります。昨年まではCEDEC最終日の夜に、様々な分野の方々の有志懇親会が開催されていましたが、そうしたことも困難です。そういった盛り上がりを損なわないようにしたいと思いつつ、この状況下なので、なかなか難しいのが事実です。

CGW:インタラクティブセッションやブース展示などがなくなってしまうのも残念ですね。

齊藤:そうですね。他にラウンドテーブルやワークショップも、オンライン開催だと難しいと言うことで、今年は見送りました。

粉川:いずれも公募をいただいていましたが、オンライン開催に伴い、申し訳ありませんが......とご説明して、お断りさせていただいた経緯があります。

ラウンドテーブル(左上)、ワークショップ(右上)、インタラクティブセッション(左下、右下)/CEDEC 2019より

CGW:今年の公募数はいかがでしたか?

粉川:具体的な数は公表していませんが、昨年と比べてやや少ない程度です。個人的な感覚としては、もっと少ないだろうと思っていました。実際「コロナで大変なのに、CEDECに応募が来るのかな」と思っていたくらいですから。それから思えば、例年並みの公募が来たというのは、嬉しい誤算でした。同時に例年並みの準備が必要だなと腹をくくりました。

CGW:最終的なセッション数はどうなりましたか?

粉川:前述の通り、インタラクティブセッション、ラウンドテーブル、ワークショップはなくなりましたが、もともとセッション数が多い分野ではないので、全体的なセッション数は例年並みですね。

CGW:招待セッションの数も同じですか?

粉川:基本的には同じかたちで臨みました。ただ、コロナ禍で話が上手く進まなかったものもあり、こちらは少し減っています。

CGW:毎年、公募内容の審査を行うために合宿形式で審査をされているかと思いますが、これはどうやって行われたのですか?

齊藤:オンラインでやりましたね。セッション数が例年とほぼ同じ中で、全てオンラインで審査するのは、けっこう大変でした。

河本:公募そのものもそうですし、公募が通ったあとも、辞退者がもっと出ると思っていたんですよ。ところが、ありがたいことに、ほとんど辞退者がなくて。

齊藤:ただ、これから何が起きるかわかりませんよね。9月に入ったタイミングで、県をまたいだ移動は自粛してほしい、となったときにどうなるか......。いずれにせよ、今の段階ではオンラインといえども、例年並みの規模感で準備を進めています。

CGW:そうなんですね。いろいろと驚きました。でもこの盛り上がっていない感じは何なんでしょう。

粉川:そこはオンラインカンファレンス全体の課題ではないでしょうか? 他の技術系カンファレンスなどでも、気がつかないまま開催が終わっていた......といったものがありました。リアルなカンファレンスだと、参加準備をしたり、海外のものだと渡航準備をしたりと、受講者側の行動にも影響を与えますよね。オンラインカンファレンスだと、そういったことがないぶん、ちがってくるのかなと。

CGW:確かに、リアルイベントならではの「お祭り感」は減ってしまいますよね。

齊藤:なので、この記事が少しでもプラスに働けばいいなと思っています。

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「TA」、「働き方改革」関連のセッションが増加

Profileプロフィール

左から、河本健太郎氏(株式会社バンダイナムコスタジオ、CEDEC運営委員会・副委員長)、粉川貴至氏(株式会社セガ、CEDEC運営委員会・副委員長)、齊藤康幸氏(株式会社ヘキサドライブ、CEDEC運営委員会・委員長)、藤村幹雄氏(株式会社ディー・エヌ・エー、CEDEC運営委員会・副委員長)

スペシャルインタビュー