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2021年3月に優秀賞が発表されたCGWORLD主催の学生CGトライアル「WHO'S NEXT?」2021年第1弾。「WHO'S NEXT?」2021年第1弾)。ハイレベルな作品がしのぎを削るなか、多くの審査員から高評価を受けた『THE SPARK : BLACK WOLF』が1位を獲得した。今回は、その作者にCG制作の学習法や作品づくりのポイントなどを聞くとともに、賞品であるマウスコンピューターのクリエイター向けノートPC 「DAIV 5N」の性能を検証してもらった。

● DAIV 5N

TEXT_近藤寿成(スプール)
EDIT_池田大樹 / Hiroki Ikeda(CGWORLD)

動画チュートリアルを活用してCG三昧の日々で技術を習得した

難易度の高いフォトリアルなキャラクターを見事に描き切り、栄えある1位を獲得した『THE SPARK : BLACK WOLF』の作者である鄒 沛樺(スウ・ハイカ)さん。台湾出身の鄒さんは、高校時代にグラフィックデザインに興味を持ったことがCGを始めたきっかけだったという。そこから「アニメーションにも触れてみたい」という思いや担任の先生の勧めもあり、出身校の姉妹校である京都精華大学への進学を決め、2017年に来日した。

このような経緯から、京都精華大学では「マンガ学部アニメーション学科 アニメーションコース」を専攻した鄒さんだが、最初の授業でまさかの事実が発覚。これまでは「原画を描けば、あとはPCが自動で動画(=アニメーション)にしてくれる」と考えていたため、それが完全に思い違いだったことを知ったのだった。以前から画力にはあまり自信がなく「手書きではたぶん他の人に勝てない」と感じていた鄒さんは、この事実を踏まえてすぐに将来の方向性を再考。そして大学1年生の後半に、3DCGの道を志す決意を固めたそうだ。

そこから3DCGについて学び始め、実質3年足らずで『THE SPARK : BLACK WOLF』を完成させるレベルにまで到達した鄒さん。その短期間でZBrushやMarvelous Designer、MARI、Substance Painter、XGen、Maya、Photoshopといった幅広いツールを使いこなしている点も何気に驚きだが、その技術力を高めた秘訣は「有料の3Dチュートリアルです」と断言する。 もちろんYouTubeなどで無料のチュートリアルもかなり勉強にはなるが、有料の方が内容のまとまりがよく、説明も詳細な場合があり、勉強効率がかなり向上するのだそうだ。
一方で、「自分は天才気質ではない」と謙遜する鄒さんにとって、学生時代の地道な努力は大切な要素の1つ。一度作業に没頭するとのめり込んでしまう性格のようで、週末であれば6~8時間、平日も数時間はCG制作に励んだという。まさに「CG三昧の日々だった」と苦笑するが、それでも「上手くなりたかったのでとにかく頑張った」と当時を振り返る。

実際、鄒さんが2019年に制作したテイストの近い作品『THE SILENCER』と今回の受賞作品を比べてみると、その完成度の差は一目瞭然だ。全体の造形や肌の質感、生え際、目の周りの違和感などがしっかり改善されており、飛躍的に成長していることが見て取れる。ただし、なぜそれができるようになったのかは「上手く説明できない」とやや困惑気味の鄒さん。とはいえ、感覚的に「何かは理解した」という確かな手応えはあるようで、「練習を積み重ねれば上手くなるのは間違いない」と語ってくれた。



「あの空気感」を生み出す、肌や髪の制作のコツを一挙紹介

大学の卒業制作として生み出された『THE SPARK : BLACK WOLF』は、鄒さんのこだわりがふんだんに詰まっている。例えば、作品の時代設定はサイバーパンクな近未来だが、主人公の人間らしさを出すために「顔の部分は改造人間の要素を入れすぎず、血と傷で生身の人間であることをアピールした」という。さらに、SFテイストの映画やゲームでは「主人公キャラの大半が欧米人」であることを踏まえ、あえてアジア人をベースにカッコいい主人公キャラに挑戦してみたのだという。 技術的にこだわった点としては「頭の造形」「肌の質感」「髪の毛」を挙げる。奇しくも、審査員が高く評価した点と共通するのはなかなかに興味深い。

頭の造形については、欧米人と違って顔の凹凸がはっきりしていないアジア人は「構造を意識しないとプラスチック人間のようになってしまう」(鄒さん)ことから、微妙な表現には気を使ったとのこと。また、初心者が1から骨格を作るのはかなり大変であるため、鄒さんは実在する有名人のさまざまな写真やWebで購入できる3Dスキャンデータ(関連URL:https://www.3dscanstore.com/3d-head-models/male-head-3d-models/male-018-head-scan-cleaned)などを参考にしてモデリングを行ったそうだ。

1 視線誘導にこだわった画づくり

ほぼ全てのオブジェクトのシェイプから、背景のライトに至るまで、キャラクターの目に集中していくように制作されている。とはいえ、最初からそう設計して作ったわけではなく、制作過程でその方が魅力的な画になると気づいたのだという。

2 ディテールにこだわった皮膚表現

皮膚を作るにあたって、特に痣、赤い斑点、毛細血管のディテール、SSSのマテリアルの表現にこだわったという。フォーカスアップしても綺麗に見える作品を目指したため、購入したテクスチャをそのまま利用するのではなく、Organic BrushやBasic Brushで、毛細血管と痣など肌の表現を追加。痣もつけることで、自然な肌を追求している(下図参照)。

「MARIでペイントする時のポイントとしては、1レイヤーだけではなく、少なくとも2レイヤーでつくることが重要です。例えば、人の痣でも、濃い部分と薄い部分があるので、そういった人肌の色を意識してレイヤーを増やして作らないと、自然な見た目は実現できません。現実世界では写真を撮った後にBeauty modeのフィルターをかけて、肌の痣や赤い斑点などを隠しますが、CGを作る時は逆にそういった所を作り出すことで、自然さな雰囲気になりますね。」

マテリアルについてもかなりの時間をかけて調整したとのこと。特にSSS Density Scaleとスペキュラマップは結果の影響が大きく、二つのマップを使い反射を抑制したとのことだ。

3 XGenを用いて、生え際を含め違和感のないヘアーを実現

髪の毛はMayaのXGenを使って作成しているが、ここでのポイントは「コレクションの活用」、「Guideの配置」、「Clumpingの密度」、「髪色のバリエーション」である。例えば、実際の髪型は場所によって長さや流れが極端に違うケースもあるため、コレクションを分けて作ることが重要だ。もちろん、すべての髪を1つのコレクションで作り、領域マップで調整することも不可能ではないが、それでは「とても時間かかり、きれいに作るのが難しい」(鄒さん)。また、髪の毛の色は単色ではないので、鄒さんは「Rampマップを使って色のバリエーションを増やすことでリアリティを上げた」そうだ。

コレクションの活用

「一つの髪型の中でも、長さや流れが極端に違う所があるので、コレクションを分けて作ることが重要です。もちろん全ての髪を一つのコレクションとして作って、領域マップで調整するという方法でも良いのですが、とても時間がかかり綺麗にも作れないと思います。 今回の作品では、ツーブロックの髪型なので、私は三つのコレクションにしました。中央の長い所、サイドの短い所、そして生え際(画像下)にそれぞれの長さが全然違うので、分けて作ったほうが簡単で、繋ぎ目も調整しやすいです。」

なお、髪の生え際など、細部の所まで観察したい人にはリファレンスサイトとして「Robophot」がオススメだそう。高解像度でのリファレンスが何倍もアップして髪や皮膚を観ることができる。



ガイドの活用

XgenはGuideに沿って生やす仕組みになっているため、Guideを適当に配置するだけだと、綺麗な形にならない。下記は鄒さんが勉強のためにまとめたGuide使用時の注意点 だ。



Clumpingの密度コントロール

髪型を作る際には、基本的にはモディファイヤ Clumping 、Noise、Coil、Cutの4つを利用している。本作品もこの四つのモディファヤイのみを利用。その中でもClumpingは一番最初に掛けるモディファイヤなので中心的な役割を果たしている。

「Guideの配置ができたら、一気にたくさんのモディファイヤをかけるのではなく、Clumpingだけかけて、効果を見ながら、Guideの形とClumpingの数値を調整するのがコツです Clumping中の「束マップの生成」も重要で、これによって束の密度(束の数)が決まります。この仕組みを分かれば、髭やまつげなどの毛も簡単に作成できます。 一つの黄色い線に一つの束ができますよ。」

「その他、二つ目以上のClumpingを使う時に、「束マップの生成」の密度は前のより3倍以上に増やした方が綺麗な束ができます。例えば、三つのClumpingを作成して、一つ目の密度は1の場合、二つ目は3以上、三つ目は9以上。私の場合、最初はガイドに沿って生成したので、最初の一つ目は1、二つ目は5、三つ目は18でした。この密度の数値は決まりがないので、とりあえず、少なくでも3倍以上、というとを意識して、その後は効果を見ながら、調整すればいいと思います」。





このように、絶え間ない努力やさまざまなこだわりの甲斐もあり、見事にコンテストで1位を獲得した鄒さん。今回はその賞品として贈呈されたマウスコンピューターのノートPC「DAIV 5N」を使用し、『THE SPARK : BLACK WOLF』の制作を踏まえた性能テストを実施。作品制作時に使用したデスクトップPCと比較することで、その実力を探った。
デジタルヒューマンのような、ハイエンドCG制作に求められるスペックはいかほどか!? 次ページよりチェックしてもらいたい。

次ページ:
ハイエンドCG制作に求められるスペックは? GeForce RTX 3060搭載 DAIV 5Nを検証!!

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優勝作品をベースに
RTX3060搭載マウスコンピューター DAIV 5Nを検証!

今回は、賞品のクリエイター向けノートPCDAIV 5N」と、鄒さんが自宅で使用する現行機(デスクトップPC)を用意。『THE SPARK : BLACK WOLF』での使用した素材やツールを使い、作業工程を想定したテストで検証した。

DAIV 5Nは、8コア/16スレッドのCPU「インテル Core i7-10870H プロセッサー」やリアルタイムレイトレーシングに対応する最新GPU「NVIDIA GeForce RTX 3060 Laptop GPU」などを搭載。高性能パーツと15.6型ディスプレイでクリエイティブな作業も快適にこなせるモデルだ。さらに、約1.73kgの軽さでモバイル性も兼ね備えている点が大きな特徴となる。

鄒さんのデスクトップPCは、3DCGへの挑戦を決めた2018年3月に約22万円で購入したもの。6コアCPUの「インテル Core i7-7800X プロセッサー」やGPUの「NVIDIA Quadro P2000」などは購入時のままだが、当時としてもなかなか高性能なパーツが選ばれている。また、メモリが64GBにアップグレードされているほか、ストレージも複数のSSD+HDDに強化されている。

DAIV 5N 

  • 価格
  • 19万7780円(税込)
  • OS
  • Windows 10 Home 64ビット
  • CPU
  • インテル Core i7-10870H プロセッサー(8コア / 16スレッド / 2.2GHz /ターボブースト利用時5.0GHz / キャッシュ16MB)
  • GPU
  • GeForce RTX 3060 Laptop GPU
  • メモリ
  • 16GB
  • ストレージ
  • 512GB(M.2 SSD、NVMe対応)
  • ディスプレイ
  • 15.6型WQHDノングレア(LEDバックライト)
  • 無線
  • インテルWi-Fi 6 AX201(最大2.4Gbps/ IEEE802.11ax/ac/a/b/g/n)+Bluetooth 5モジュール内蔵
  • 動作時間
  • 約7.5時間(標準バッテリー使用時最大)
  • 本体重量
  • 約1.73kg

鄒 沛樺さんの現行機(デスクトップPC)

  • 価格
  • 約22万円
  • OS
  • Windows 10 Home 64ビット
  • CPU
  • インテル Core i7-7800X プロセッサー(6コア / 12スレッド / 3.5GHz /ターボブースト利用時4.0GHz / キャッシュ8.25MB)
  • GPU
  • NVIDIA Quadro P2000
  • メモリ
  • 64GB
  • ストレージ
  • 256GB(M.2 SSD、NVMe対応)+1TB(M.2 SSD、NVMe対応)+1TB HDD

CASE 01
V-Ray 5でのCPUレンダリング時間

V-Ray 5の検証では、『THE SPARK : BLACK WOLF』のデータの一部を使用し、CPUレンダリングにおいてレンダリング解像度が2Kと4Kの2パターンで処理時間を計測した。テストシーンの情報は頂点が53751、エッジが107258、フェースが53516、三角形が107032、UVが55130、XGenが15万本、テクスチャが8K(複数)となる。

検証結果では、DAIV 5Nが2Kで6分9秒、4Kで16分9秒、現行機が2Kで3分37秒、4Kで16分9秒となりDAIV 5Nに大きな差を付けて勝利することとなった。DAIV 5N搭載のCPUは8コア16スレッドと6コアの現行機のマシンよりも高性能だが、メモリ16GBであるために、パフォーマンスを最大限引き出すことができなかったと類推される。DAIV 5Nは最大64GBまでカスタマイズ可能なので、ハイエンドCG向けには最低でも32GB、できれば64GBまでメモリ増量したほうがよいだろう。

V-Ray 5でのCPUレンダリング時間の結果

  • 現行機 
  • 2K:3分37秒 4K:16分9秒
  • DAIV 5N
  • 2K:6分9秒 4K:28分23秒

CASE 02
Substance Painterでのベイク処理時間

Substance Painterの検証では、『THE SPARK : BLACK WOLF』の制作工程のデータを使用し、ベイク処理に要する時間を測定した。テストシーンの情報はポリゴン数が6,154mil>6,054、Resolution.が4K、Subsample.が4×4、UDIM.が2枚UV、Map.が14枚(7×2)となる。

Substance Painterのベイク処理はGPUの性能が反映されるため、検証結果も最新のGeForce RTX 3060 Laptop GPUを搭載するDAIV 5Nが現行機を圧倒した。ただ、現行機の25分15秒に対してDAIV 5Nは3分5秒と、デスクトップPCとノートPCで約8倍もの性能差が出たことは鄒さんも想定外だったようだ。さらに、Substance Painterのペイント作業においても「4Kテクスチャでもスムーズに作業できた」(鄒さん)ことから、ノートPCとは思えないその実力の高さに感心しきりだった。

Substance Painterでのベイク処理時間の結果

  • 現行機
  • 25分15秒
  • DAIV 5N
  • 3分5秒

CASE 03
その他のツールでの使い勝手の検証

V-Ray 5やSubstance Painter以外のツールにおける作業の快適性も、『THE SPARK : BLACK WOLF』の制作工程に基づいて検証した。

Marvelous Designerの作業では、現行機とそん色なく「普通に利用できた」(鄒さん)とのこと。Particle Distanceの設定を5mmまで上げると10~15秒程度止まることもあったが、20mmの軽い設定であれば「ほとんど止まることなく、スムーズに作業できた」(鄒さん)そうだ。

MARIでは、Texturing xyzで販売されている16Kの高品質なテクスチャを使用したところ、最初こそ少しだけ固まるタイミングもあったが、その後は「スムーズにペイントできた」(鄒さん)。またZBrushのスカルプトにおいても、ポリゴン数が600万でもまったく問題なく「すべての作業が快適にできた」(鄒さん)という。

検証を終えて

ネガティブだったノートPCの印象が一新
価格も踏まえて学生には魅力的なモデル

今回の検証を通じて、DAIV 5Nは現行機のデスクトップPCとほぼそん色ない性能を持っているだけでなく、非常に優れたGPU性能を有していることがわかった。一方で、V-Ray 5の検証ではCPUの性能を存分に発揮することはできなかったが、メモリを32GBや64GBの増設すれば、現行機に迫る性能が引き出せる可能性もある。その意味では、パーツのアップグレード次第でさらに利便性が向上するモデルといえるだろう。

ちなみに、鄒さんは大学の入学当初、3Dを勉強するためにノートPCを購入したものの、MARIやSubstance Painterなどのツールがまともに動作しなかったうえに筐体が重かったことから、ノートPCには「あまり良い印象がなかった」という。しかし今回、快適動作かつ軽量なDAIV 5Nに触れたことで、その印象は「一新された」そうだ。

そのため、20万円を切る価格も踏まえると、ノートPCを頻繁に持ち運ぶ学生にとってはDAIV 5Nは「とても魅力的なモデルになるはず」と、鄒さんはお勧めする。またそうでない学生でも、学校の先生などから随時アドバイスをもらいたいと思っているのであれば、DAIV 5Nなら「場所を選ばず作品を見てもらえる」とその活用法をアドバイスした。

問い合わせ

株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6833-1041(平日:9~12時/13時~17時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6833-1010(9時~20時)
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