近年、CGプロダクションやデジタルアーティストが商業ベースのオリジナル企画にとりくむケースが増えてきた。そうしたなか福岡の雄、KOO-KIが、オリジナルの短編CGアニメーションシリーズ『SUSHI POLICE』を展開中だ。いわゆる受託制作とは似て非なる面をもつオリジナル作品の商業制作について、木綿達史監督をはじめとする中核スタッフたちにその取り組みと率直な思いを全3回にわたってインタビューしていく。

<1>アニメの門外漢ならではの作風とPR展開

2016年1月6日(水)からTOKYO MX開局20周年記念番組として放送が開始した、『SUSHI POLICE』。実際に起きた「スシポリス事件」(※1に着想を得た短編3DCGアニメーションシリーズだが、そのハイセンスな世界観やアニメーション表現は、企画の段階から海外展開を見込んでいたことが存分に伝わってくる。

※1:スシポリス事件 2006年、海外での間違った日本食の蔓延を危惧した⽇本政府が正しい⽇本食店を認証する制度「海外⽇本⾷レストラン認証制度」の 創設を発表したところ、「スシポリスがやって来る!」と揶揄して海外メディアが⼀⻫にバッシングを展開、日本政府は実施を見送った。(引用元:『SUSHI POLICE』公式サイト

『SUSHI POLICE』トレイラー
TOKYO MXにて毎週水曜日25:00から放送中!
Google Play™、Amazonプライムビデオほか各種ネット配信中(詳しくは公式サイトへ)
『SUSHI POLICE』第1話無料視聴キャンペーン実施中

監督:木綿達史/脚本:楠野一郎、安藤康太郎/企画:中沢敏明/プロデューサー:厨子健介、河原幸治/プロダクションマネージャー:中石賢悟/キャラクターデザイン:塗壁、イチノミヤモトヒロ、TOBI TOREBURUYA/美術:オカモト、河村翔太/音楽:稲岡 健、高木公知/編集:U2/制作:セディックインターナショナル、KOO-KI/製作:"SUSHI POLICE" Project Partners

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また、第1話のTV放送の翌日(2016年1月7日(木))からは、Google Play™ やニコニコチャンネルなど18配信サービス(※さらに追加予定とのこと)にてネット配信がスタート、主題歌はOK Go × Perfumeコラボ楽曲『I Don't Understand You』、109シネマズにおける幕間上映や各種コラボグッズの展開といった、矢継ぎ早のプロモーション戦略も目を見張るものがある。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース
  • 『SUSHI POLICE』の主題歌『I Don't Understand You』は、テクノポップユニットPerfumeとアメリカのロックバンドOK Goによるコラボ楽曲。Perfumeにとって、他アーティストとの初めてのコラボレーションとのこと


そんな本作の仕掛け人が、セディックインターナショナル(以下、セディック)とKOO-KI(空気)だ。セディックは、第81回アカデミー賞「外国語映画賞」を受賞した『おくりびと』(2008)や『SPACE BATTLE SHIP ヤマト』(2010)、『十三人の刺客』(2010)などのヒット作で知られる独立系映画製作会社。一方のKOO-KIは幾度にもわたるカンヌ国際広告祭(現カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル)における受賞、最近では2020年 東京五輪招致PRフィルムを手がけたことから海外でも名高いクリエイティブ・スタジオである。つまり、一般的なアニメ作品ではまずみられない座組みだが、だからこそ上述したような既成概念にとらわれない展開が行えているわけだ。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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<2>どこか憎めないアンチヒーローで、海外の人からみたステレオタイプな日本人像とは

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<2>どこか憎めないアンチヒーローで、海外の人からみたステレオタイプな日本人像とは

両社の出会いは、KOO―KIがセディックのモーションロゴ制作を担当したことだったという。「お互いにオリジナルのアニメーション製作に興味があったことから意気投合しました。セディックさんが『SUSHI POLICE』の企画をおもちで、海外の見本市などで商談相手から『その企画は何?』と高確率で聞かれるほど引きが良かったそうなのですが、まだ文字資料の状態であることを知り、ぜひパイロット版を制作させてほしいと志願したんです」と、木綿達史監督(KOO-KI代表取締役社長)は企画の経緯をふりかえる。

2013年末からプリプロダクションがスタート。「種はセディックさんが、それをどのように花開かせていくのかが自分たちの役まわりでした。実のところ劇場作品でもTVシリーズでもアウトプットは何でも良くて、とにかくオリジナルコンテンツの実績がほしかった、というのがそのときの本音でした(笑)。万が一、企画が難航した場合でも質の高いパイロット映像をつくることさえできていれば次のチャンスがやってくるだろうと。おかげさまで、こうしてテレビ放送開始までこぎ着けたのですが、今はまた別の苦しみの只中にあります(苦笑)」(木綿監督)。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

(後列左から)告畑 綾コンポジター、河原幸治プロデューサー、木綿達史監督、中石賢悟プロダクションマネージャー兼コンポジター/(前列左から)山内香里デザイナー、阿部晋之介コンポジター、川越洋輝プロダクションアシスタント、小堤 愛プロダクションアシスタント。以上、KOO-KI

具体的なデベロップメントについて。KOO-KI社内でまずは『スシポリスって、どういった人たちなのか?』というブレストを行い、キャラクター設定や世界観などにまとめ上げていったという。「大元の企画書は文字のみだったので、ほぼゼロからのスタートでしたが、それがかえって自由度も高くスムーズにプランをまとめることができました。具体的には、公務員のような融通のきかなさ、生真面目な日本人気質によって『日本の食文化を守ろう』という意識が暴走してしまい余計なトラブルを巻き起こす奴ら、つまりアンチヒーローとして描くという路線に定まりました」(木綿監督)。

海外展開を考え世界でも通用する日本人キャラクターを目指し、ホンダ、スズキ、カワサキという3名のアンチヒーローが生まれ、その主要キャラクターのデザイン的には、海外からみたステレオタイプな日本人はどんなだろう? というリファレンスを探していくなかで、海外のアーティストに依頼することにしたとのこと。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

メインキャラクター「スシポリス」の3人。右から順に、スズキ(データ分析官)、ホンダ(リーダー)、カワサキ(アンドロイド捜査官)。「社内でブレストするなかで、キャラクター名は世界にも通じる日本的な名前というアイデアが出てきました。当初は、ホンダ、カトウ、タナカだったのですが、より世界に通じる名前ということで、ホンダ、スズキ、カワサキに決定しました」(木綿監督)

「KOO-KIには、VITO(ビト)というドイツ生まれのイタリア人ディレクターが在籍しているのですが、以前に彼からトビ君(TOBI TOREBURUYA氏)を紹介してもらったことがあり、その素晴らしいセンスから一緒に仕事をしたいと前々から思っていたんです。そこでトビ君にスシポリス3人のデザインをお願いしました。眼鏡やスーツ姿といった外国人が思い描くステレオタイプな日本人をモチーフにデザインを固めていきました」(木綿監督)。

スシポリス以外のメインキャラクターのうち、サラとマダム・フジという女性(メス猫)キャラは福岡を拠点に活躍するイチノミヤモトヒロ氏が担当。その他のサブキャラクターならびにプロダクションデザイン(美術)については、福岡の新興プロダクションTriF studioに在籍する塗壁氏オカモト氏が担当。両氏は背景から小道具までデザインに関わるほぼ全てを手がけているそうだ。「お二人とも本当にものすっっっっっごく優秀で、今回の影の功労者です。世界観の大部分を担ってくれました」(木綿監督)。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

サラ(中央)。横暴な取り締まりを続けるスシポリスを糾弾しようと躍起になっている。サラとWFCO(World Food-culture Conservation Organization、世界食文化保存機関)事務局長の秘書であるマダム・フジという女性(メス猫)キャラについては、マーチャンダイズをねらうべく日本人の感性に訴えられるキャラクターが描ける日本人イラストレーターということでイチノミヤモトヒロ氏に白羽の矢が立てられた

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<3>3DCGへの強いこだわり

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<3>3DCGへの強いこだわり

実はキャラ設定や世界観があらかたまとまった時点で、パイロット版だけでなく本編の制作も決定したのだか。そこで、パイロットは作品の方向性だけでなく本制作に向けたワークフローの検証に約半年が費やされることになった。そこでポイントになったのが、「絶対に3DCGアニメーションで描く」というセディックの強い意向であった。

工数や予算との兼ね合いから、KOO-KIとしては2Dアニメーションという選択肢も視野に入れていたそうだが、「アニメーションにおける世界の主流は3DCG」というセディックの考えはゆるぎないものだったという(※2)。

※2:ひとつの根拠として、近年のアカデミー賞「長編アニメーション賞(Academy Award for Best Animated Feature)」では、第79回(2006年度)の『ハッピーフィート』から第87回(2014年度)の『ベイマックス』まで、全て3DCGアニメーション作品が受賞していることが挙げられる

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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「自分たちとしてはストーリー重視で考えていたので、その表現技法については柔軟に考えていました。最終的に3DCGベースで描くことが決まったわけですが、シリーズ作品ということでアセットが蓄積してくほど効率化が期待できるので今は正しい判断だったと思っています。とは言え、フルCGというのは予算的にも無理なので費用対効果を精査しながら2Dと3Dの使い分けを行なっています」(木綿監督)。

  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース
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先述のとおりビジュアル面はとんとん拍子に進んだそうだが、逆にシナリオ開発は正に生みの苦しみだったという。キックオフ時は編集プロダクションの「shortcut8」に協力してもらいながらプロットを書き起こし、その後はシナリオライターの安藤康太郎氏、そして楠野一郎氏へと引き継がれながらブラッシュアップがくり返された。

「プロデューサーの厨子健介さんは、元々シナリオライターでいらっしゃるのでとても造詣が深いんです。そして、なによりもオリジナル企画ということで、スシポリスの設立背景、時代設定、キャラクター設定などなど、半年以上あーでもないこーでもないとやりとりを重ねました。途中、険悪なムードになることもありましたが(苦笑)、良い作品をつくるためには意見がぶつかることが大事だと思っています。とにかく、今のところシナリオづくりが最大の山場でしたね。細かいトラブルは挙げたらキリがありませんが(汗)」(木綿監督)。

また、海外展開を念頭においたストーリーテリングについては当初はダジャレや日本の文化特有の表現などのさじ加減がわからず戸惑いもあったそうだが、別案件で海外スタジオのクリエイティブスタッフと交流をかさねた際に根本的に面白いと思うものは万国共通であるという結論に達したとのこと。「世界中でヒットしたハリウッド映画が典型ですが、考えすぎる必要はないのだと実感しました。当然と言えば、当然なんですけどね(笑)」と、木綿監督。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

『SUSHI POLICE』のカテゴリ設定図(左側のオレンジでハイライトされた領域)。近年は、コアなアニメファン向けの短編アニメシリーズも増えてきたが、一般的に短尺アニメと言えばシュールな会話劇のFLASHアニメーションを想起する人が多いのではないだろうか。『SUSHI POLICE』では、そうした従来型の短編アニメとは異なる切り口として、CGアニメーションの特性を活かした派手なアクションも描かれるより幅広い層をターゲットとしたエンターテインメントを目指している。なによりも世界で最も有名な日本食である"SUSHI"を、それを過激に取り締まる(名ばかりの)"POLICE"という非常に明快でキャッチーな題材は、2020年の東京五輪に向けた今だからこそ威力を発揮するのだと思う

「限られた予算のなかで最大限のクオリティを追求する。その上で現実的なかたちでリクープも目指すという戦略から、3分×13話という構成にまとまりました。また、全エピソードをつなげれば(再構成すれば)30〜40分の中編コンテンツに仕立てられるので、また別の価値を生み出すことも視野にいれています。とは言え、こうした算段が実際に機能するかはこれから試されるわけですが......」と、木綿監督。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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本短期連載のテーマでもあるオリジナル企画ということで、KOO-KIは製作委員会にも名を連ねている。ちなみに『SUSHI POLICE』製作委員会は、セディックインターナショナル、電通、三共プランニング、TOKYO MX、KOO-KI、東急レクリエーション、そしてアミューズという7社で構成されている。
プロデュースも含めてコンテンツ制作だと以前から思っているので本作では製作委員会に参加させてもらいました。作品の売り方や展開の仕方などを学ぶこともできていることで作品に対する思い入れも強くなり、とても良い経験ができています」(木綿監督)。

基本的なプロデュースワークは、委員会メンバーで構成されたチームが計画し進めている。決して大きな規模のプロジェクトではないそうだが、その分、委員会のメンバー同士の意思疎通はしっかりととれているとのこと。「各々の得意分野を活かしながら上手く連携できていると思います。自分たちもアニメーション制作実務と並行して、プロモーション面のクリエイティブにも、かなりの時間を費やしています」(木綿監督)。

実際に、KOO-KIが制作したティザーポスターは、昨年5月下旬に開催された「第68回 カンヌ国際映画祭」におけるフィルムマーケット連動企画として米「THE HOLLYWOOD REPORTER(THR)」誌が実施したTHE 2015 CANNES POSTER AWARDS※3)というコンペを受賞した。

※3:THRが無償配布している特別編集版THRデイリーレポート(1日目)pdfの12ページ目で紹介されている

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  • 「THE 2015 CANNES POSTER AWARDS」を受賞した、『SUSHI POLICE』ティザーポスター(ポスターデザイン:松尾紀之)。プリプロ段階から、海外マーケットを前提とした展開が行えているのは、世界で通用するKOO-KIのクリエイティビティに加え、セディックの国際映画祭への参加を通じた強固なネットワークの賜物だろう

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<4>福岡を中心としたオールジャパンで挑む

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<4>福岡を中心としたオールジャパンで挑む

最後に、本作のワークフローとスタッフ編成について紹介しよう。
まずは完成シナリオを下に木綿監督が絵コンテを描き起こしていくのだが、絵コンテは演出をスタッフに理解してもらうことが役割であり、カット割りやアニメーションなどの具体的な指示は書き込まれておらず、アニメ業界で言うところの絵コンテというよりはCM業界における演出コンテにちかい仕様となっている。

「ひとえに自分がCMやPV演出を中心にキャリアをかさねてきたことが大きいですね。ですので、絵コンテではなく、ラフコンテと表現しています。僕が描いたラフコンテを下に、TriF studioさんにコンテ用イラストを清書していただき、仮音を乗せてビデオコンテを作成します。そのビデオコンテを下に、TriFさんにレイアウト作業と2D/3Dアセットを制作していただき、アニメーション制作はTriFさんに加えて8社のCGプロダクションさん(後述)にご協力いただいています」(木綿監督)。

なお、CGアニメーション制作効率化の手立てとしてモーションキャプチャの利用も検討したそうだが、収録後の手作業による調整が必須であること、シナリオを詰めていく中で生っぽい動きよりもカートゥーン調の動きの方が作風にマッチしているとの判断から、最終的に全て手付け(キーフレーム)アニメーションで制作しているとのこと。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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さらに、放送規格の29.97fpsではなく24fpsで作成(これはアニメ業界の慣習にならったとも言えそうだ)、ショットはハーフHD(720p)で仕上げたものを最終的にフルHD(1080p)へアップコンバートするというワークフローを構築することで、協力プロダクションのアニメーション制作負荷を少しでも軽減させることを心がけているそうだ。
3DCGソフトは、パイロットフィルム制作をリードしていたビト氏と、TriFのどちらも3ds Maxをメインツールにしていたことから自然と3ds Maxベースになったという。そのほかアセット制作ではモデリングの工数を減らすねらいも込めて背景は2Dマットペイントをベースにしているとのこと。

協力会社さんにはアニメーション作業に集中してもらうべく、ライティングについてもコンポジット工程で対応するようにしています。3DCGベースでライティングを行えばさらにリッチなルックが得られるはずですが台所事情がゆるさないので(苦笑)、After Effects用フリープラグイン「Normality」AE上でノーマルパスを直接扱うことである程度のリライティング作業を可能にするもの)を活用しています。結果的に本作独特の画づくりが実現できたと自負しています」(木綿監督)。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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上述のとおり、予算や期間、参加できるスタッフ数などを考えると、早い段階からKOO-KIのスタッフだけで品質を担保するのが難しいことがわかっていたため、演出とコンポジット(最終的なルック)はKOO-KIが一手に引き受け、アセットやアニメーションは、TriFをはじめとしたKOO-KIがこれまでにコラボレーションしたことがある優秀で熱意あるCGプロダクションさんに協力をあおいだという。

「当初は4班体制ぐらいで対応できないかと考えていたのですが、シナリオのFIXが遅れてしまったこともあり(苦笑)、9社さんにご協力いただいています(※2016年1月上旬時点)。東京などの大手プロダクションにも相談してみたのですが、結果的にほぼオール福岡という布陣になりました。CVも大半が福岡で活躍されている役者さんなんですよ。福岡発のコンテンツ実績としては、『めんたいぴりり』があるのですが、今回はアニメでそれを実践していきたいと思っています」とは、プロデューサーとして木綿監督をささえる河原幸治氏(KOO-KI)。

『SUSHI POLICE』参加プロダクション一覧

  • プロダクション名
  • 担当
  • KOO-KI
  • 企画演出、コンポジット、制作進行
  • TriF studio
  • キャラクターデザイン、ストーリーボード、背景美術、モデリング、キャラクターアニメーション
  • U2
  • アフレコ収録、編集

「つくり手の熱意に大きく依存している業界の現状には危機感を抱いていますが、とは言え熱意がないと何事もはじまらないというのも事実ですよね。今回はオリジナル企画ということで、協力会社の皆さんにはなにかとご迷惑をおかけしてしまっているので(苦笑)、ぜひ第2、第3の展開へとつなげて恩返しをしたいです」(木綿監督)

ポスターやトレイラーなど、プロモーション関連の制作では広告案件で培ったノウハウが大いに役立っており、『SUSHI POLICE』の魅力を上手く伝えられているようで反応も良く手応えを感じているという。
SUSHI × POLICEという、企画のインパクトに加え、事前のPR展開が功を奏したことから海外でのセールスも順調のようです。本編が未完成にも関わらずヨーロッパやアジア諸国での放送が決まるというのは極めて異例のようでして(※4)、絶賛制作中の身としては心地良いプレッシャーを感じています。今後も驚くような企画を準備中なのでぜひご期待ください!」と、河原氏。

※4:海外展開について 中国・台湾・香港・マカオで展開している中国・大手動画共有サイト「bilibili」(ビリビリ動画)での日本と同時タイミングでのネット配信が決定、また、タイとフィリピンでのテレビ放映が大筋決定している他、ヨーロッパにおけるセールスは北野武監督作品や三池崇史監督作品などを手がけてきたフランスの大手セールスカンパニーのセルロイドドリームス社と契約締結、アメリカ・メキシコなどからもオファー・問い合わせが届いております。(引用元:2015年12月25日付セディックインターナショナルのプレスリリース

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

昨年後半から現在まで、さらにその先の展開案。2016年1月から宅配寿司サービス「銀のさら」とのコラボレーションキャンペーンがスタートしたが、寿司という題材は食品産業とのコラボが好相性なのは言うまでもない。ユニークなものでは、2007/2/14号において実際の「寿司ポリス事件」を特集したNewsweek日本版2015/10/20号では「食文化とどう向き合うべきか あの"スシポリス"がアニメ化」と題して、本作が取り上げられた

「今までは製作委員会の役割について正直わからなかったのですが、コンテンツが完成する前からセールス交渉を行い、その展開案を計画・手配するといった制作実務以外の仕事が存在することを実感しています。まだ上手く言葉にできないのですが、コンテンツだけが世界観をつくるのではないのだと。魅力的なコンテンツであることが大前提ですが、売り方やPR方法も含めて作品の世界観が構築されていくんですよね」(木綿監督)。

ただし、出資者は収益に応じて利益を得られる一方で、自身もクリエイターである木綿監督としては、あらかじめ定められた予算以外の収入が見込めないという、厳しい状況下にある協力パートナーも恩恵が得られるような新たな制作方式を考える必要があるのではないかとも感じているそうだ。
ご存知のとおり、ハリウッド映画を中心としたVFX産業も同様の問題を抱えている(しかもより大きなスケールで)。それだけ根深いテーマであるが、自分たちも作品に出資をして、コンテンツをプロデュースする側と直接関わりをもつことで解決の糸口を探ろうというKOO-KIの姿勢は理に適っているのではないだろうか。

短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース

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「とにかくシリーズ化の筋道がつけられたら制作費の増額が期待できるので、まずは目下の制作に全力投球していきます。『SUSHI POLICE』は表現としても制作スタイルとしても確立されたアニメーション制作メソッドから逸脱した作品に仕上がると思います。確信犯と言えば聞こえはいいのですが、アニメ制作の経験がないためやむを得ず(笑)。アニメにかぎらず何か面白いものを求めている人にはぜひ観てほしいですね」と、木綿監督は読者へのメッセージをよせてくれた。

TEXT_村上 浩(夢幻PICTURES) / Hiroshi Murakami(MUGENPICTURES
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)



  • 短編シリーズ『SUSHI POLICE』第1回:企画&プロデュース
  • 『SUSHI POLICE』
    TOKYO MXにて毎週水曜日25:00から放送中!
    『SUSHI POLICE』第1話無料視聴キャンペーン実施中
    各種配信サービスでも視聴可能(詳しくは公式サイトへ)

    ホンダ:山下 晶/スズキ:イフマサカ/カワサキ:岡本ヒロミツ/サラ:菊地由美

    監督:木綿達史/脚本:楠野一郎、安藤康太郎
    制作:セディックインターナショナル、KOO-KI
    製作:"SUSHI POLICE" Project Partners
    © "SUSHI POLICE" Project Partners

    sushi-police.com