>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加 第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)
独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加  第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)

独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加 第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)

今回はカナダのモントリオールからお届けしよう。DCCツールの習得は、デジタル・アーティストであれば誰もが通る道だろう。学校で学ぶ人もいれば、独学で学んだ人も少なくない。今回、ご登場いただく山下氏は後者である。映像業界とは無縁の環境の中で独学でツールを学び、最終的にハリウッドのプロジェクトに参加するまでに至った経緯を伺ってみることにしよう。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

山下慶輔 / Yamashita Keisuke(Rodeo FX / Senior Compositor)
東京都県出身。小学校から高校1年までをアメリカで過ごし、2000年に帰国。国際基督教大学中退後、独学で映像業界に飛び込む。フリーランスとしてモーショングラフィックスを主軸として活動後、VFXに転向。NHKにて大河ドラマ『軍師官兵衛』 、『真田丸』、NHKスペシャル『生命大躍進』に参加。2016年に拠点をカナダに移す。MPCZoic Studios、Atomic Fiction(現 Method Studios Montreal)を経て現職。「ジシン カミナリ カジ ブログ」という万年放置中のブログも運営中

<1>学生時代はダンス漬け、未経験から映像制作を目指す

――日本での学生時代のお話をお聞かせください。

高校時代は全国大会に出場するほどのダンス漬けの日々で、映像制作とは無縁でした。大学で出会った友人とのふとしたキッカケで「こういう自己表現もあるのか」と映像に興味をもちました。

当時はネット環境やサイトなど現在とは比べ物にならない状況でしたが、幸いにも高校まで海外生活を経ていたお陰で、英語の情報源を辿ることが苦ではなく、調べていく中でAfter Effectsのことも知り、アカデミック版を購入したことで、映像制作にのめり込んでいきました。

大学を中退して独学でモーショングラフィックスを学び、フリーランスとして働いていましたが、幼い頃から父親に映画館に連れていってもらうほど映画が好きだったことや、「将来的に海外のスタジオで働いてみたい。映画のクレジットに自分の名前が載るのを見たい!」という想いから、2014年にVFXに転向しました。

NUKEに関する知識はゼロだったので、前述の如く情報を検索しては、片っ端から目を通すようにしていました。当時は期限付きのNUKE体験版はありましたが、PLE版はまだ存在していなかったので、公開されている最も古いバージョンの体験版から順番に、自習用に使っていきました。

――日本でお仕事をされていた頃の話をお聞かせください。

VFX転向当初は、「何とか印象付けて、仕事に繋がらないものか」と業界の飲み会に手書きの名詞を持参したこともありましたが、当然の如く惨敗でした(笑) 。

そんな中、NUKE業務未経験の僕を最初に使ってくださったNHKの松永さんと兼沢さんのお陰で、大河ドラマ『軍師官兵衛』や、NHKスペシャル『生命大躍進』に携わることができました。仕事でご一緒する機会のあったMTの森さん、フリーで活躍されている稲垣さんと吉川さんのNUKEスクリプトを夜な夜な開いて勉強しながら、海外スタジオを目指していました。

――海外の映像業界での就活は如何でしたか?

まずは、国籍を問わず実際に現地で働かれている方々から海外スタジオの事情を伺いたかったので、LinkedInArtist Side、海外スタジオの日本講演に出向いたり、この「海外で働く日本人アーティスト」の連載記事や、エンドクレジットで記憶した名前で検索してヒットした個人のWebサイトなどを通してメッセージを送りました。

70通ほど送って7人から返事をいただけました。そのうちの1人は後に一緒に働くことになるVFXスーパーバイザーでした。今思えば、無茶で不遜なメッセージとやり方でしたので、その7名の方には本当に感謝しています。

その後、ショットが溜まった後のデモリール構成は、ダンスの作品づくりと同じだと感じていたので、悩まずつくることができました。先輩方からもフィードバックをいただきましたが、肯定的な意見が多く、特に大きな変更もなくそのまま進めて完成させました。

レジュメの方が苦手意識があったので、ここぞとばかりに大学時代の優秀な友人達に頼み込んで、チェックして貰いました(笑)。その雛形は今でもありがたく使用させてもらっています。

インタビューは、リールに含まれているショットにどうアプローチしたのかを事前にさらっておいて、普段の軽口が出せる様に「砕け過ぎず、緊張し過ぎず、嘘をつかずに話す」を意識して臨んでいます。

カナダのビザの発給は、国境/空港で当日担当してくださる入国審査官によって進行具合が全く異なります。1時間で済んだこともあれば8時間かかったこともあるので、予め書類の内容を把握して、自分がどの種類のビザを申請するのか、就労予定スタジオのビザ担当者と通常時間外でも連絡がつく電話番号などは、すぐに分かる様にしておくことをお勧めします。


お仕事中の山下氏

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<2>カナダで、ハリウッドの大作映画プロジェクトに携わる

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