>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加 第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)
独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加  第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)

独学でDCCツールを習得し、ハリウッド映画のプロジェクトに参加 第45回:山下慶輔(Rodeo FX / Senior Compositor)

<2>カナダで、ハリウッドの大作映画プロジェクトに携わる

――現在の勤務先は、どのような会社でしょうか。

Rodeo FXは、2006年にモントリオールで創立されたスタジオで、現在はケベックシティ、ミュンヘン、LAにもスタジオを構えていて、約600名が所属しています。アカデミー賞やエミー賞、VESアワードなどを受賞した『ブレードランナー2049』『ゲーム・オブ・スローンズ』『ストレンジャー・シングス』『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』などのプロジェクトの制作に携わっています。

この規模のスタジオとしては、唯一のモントリオール発祥スタジオだけあり、フレンチ色が強くユニークなスタジオです。モントリオールはフランス語圏ですが、仕事上のコミュニケーションは英語です。日常的にフランス語の壁を感じることもあります。ただ、ここが地元の彼らがフランス語を使うことはごく自然なことなので、英語のみを扱うスタジオよりも、「自分がさらに強くコミュニケーションの一歩を踏み出せば良いだけ」なのだと学びました。職場で自分の居場所をつくるのも、大事な仕事の1つですからね。

今年でカナダ5年目、スタジオは4社目となりますが、上記のことも踏まえた上でRodeo FXは一番自分に合っていると感じています。配属されたチームは皆、経験豊富で適度な距離感で、プロダクションも積極的に意見に耳を傾けてくれるので風通しの良さも感じています。

納期2~3週間前までは全く残業もありません。以前別のスタジオで一緒のチームだったリードやスーパーバイザー、プロデューサーなども多くいるので、居心地が良いです。過去の積み重ねが、ようやく実って来ている様に感じたので契約更新のタイミングでの正雇用のオファーも喜んでお受けしました。

プロダクション作業でのこぼれ話はたくさんありますが、言えないことが多過ぎるのが残念です(笑)。

この記事が公開されるころには、今年夏公開の『ジャングル・クルーズ』を製作を終え、新たなシーズンを迎えるシリーズのリードとして汗をかいている頃だと思います。

――現在のポジションの面白いところは何でしょうか。

ライティングやエフェクトなどの上流部署から集まった全ての素材が、日々、1つの画になっていくところです。グレーディングを除けば、合成は世に出る前のほぼ最終工程なので、必然的にクライアントのチェックも厳しくなりますが、そこが面白い所でもあります。

最後の10%は本当に小さな積み重ねなので、しんどいときは過去のバージョンから見返してみて「格好良くなってきてるじゃん!」と自らを鼓舞します(笑)。

同じショットを一緒に担当した上流部署のアーティスト達や、作業モニターを見た通りすがりアーティストから褒められると素直に嬉しいです。ルックデヴやヒーローショットをまかされたり、緊急を要するショットを頼まれたときはプレッシャーも感じますが、ワクワクもします。何より信頼してくれている証だと思うので頑張り甲斐があります。

――英語や英会話の習得はどのようにされましたか?

親の仕事の都合で小学校から高校1年までアメリカで過ごしたので、その中で自然と習得していきました。当時はかなり苦戦した記憶がありますが、海外生活を経ていなかったら今の生活には辿りついていないと思うので、その機会に恵まれたことにとても感謝しています。

高校で帰国してから約15年ほど日本にいたので、色々と忘れかけていましたが、カナダに来たことでまた思い出したのと、社会人としてのコミュニケーション方法は日々アップデートしています。

――将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。

まずは、動き始めてしまえば良いと思います。仕事面だけでなく、異国に住むとなると言語やインフラ、その土地の文化などもあるので、事前にリサーチをどれだけしたつもりでも、実際に経験しないと分からないことがたくさんあります。

準備の段階、もしくは実際に来てみてからも楽しめるようならそれで良し、無理だと感じたらやめたって良いわけです。その経験をどう活かすかだと思うので。働く場所が日本か海外かは良し悪しではなく、選択の問題に過ぎません。

僕も日本で海外を目指している中で腐す人がいたり、海外に来てからもクレジットに載らないことが続いたり、英語ができる故に愚痴が耳に入りやすかったり、社内政治に巻き込まれてしまったり、色々ありました。ただ何があろうと自分の経験だけは誰にも奪えないので、それを糧に続けてきた結果、今の環境に辿りつくことができました。

熟考と無謀のバランスが難しいと感じるかもしれませんが、最後は自分のやりたい事を周りの評価に左右されずに実行できて、失敗も笑って話せる人が強いと思っています。


映画『イントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり』チーム集合写真

【ビザ取得のキーワード】

①高校1年までをアメリカで過ごす
②大学中退後、独学でフリーランスとしてNHKなどの国内スタジオで経験を積む
③ワーキング・ホリデー制度を利用してカナダのMPCモントリオールへ
④以降は就労ビザT52(CPTPP)を取得

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