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第8回:田中 眞(Framestore / Senior Technical Artist)

第8回:田中 眞(Framestore / Senior Technical Artist)

世界的VRブームの中、大手VFXスタジオもVRに着目しており専門部門を新設する会社も少なくない。そこで今回は、ロンドンのFramestoreにてVR開発に携わっている田中 眞氏にお話をうかがった。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

田中 眞/Makoto Tanaka(Framestore:Senior Technical Artist)
東京都出身。1993年自由学園卒業。デジタルハリウッドにて3DCGを学ぶ。ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、エレクトロニック・アーツ(EA)などのゲーム会社を経て、2003年に渡英。2010年にVFX業界へ転職し、2016年までロンドンのDouble NegativeにLighting & Rendering Supervisorとして勤めた後、FramestoreのVR部門へ転職し現在へ至る。

<1>ゲーム開発からVFX制作、そしてVRへ

ーーまずは日本での学生時代について教えてください。

田中 眞氏(以下、田中):建築家のフランク・ロイド・ライト氏が設計した明日館でも有名な、東京にある自由学園で幼稚園から大学部まで学びました。この学校の教育理念は「生活即教育」というもので、机の上の勉強だけでなく実生活のあらゆる事が学びの機会となっていました。この自由学園での生活を通して養われた「柔軟な発想力」や「考える力」は、今、私がクリエイティブ業界で仕事をする上での土台となっているように思います。また、新しいもの好きな父のおかげで初代Macintoshが身近にあり、中学生の頃に英和辞書を片手に外国のゲームやVideoWorks(Adobe Directorの前身)で遊んだことが、コンピュータに興味をもつきっかけになりました。大学部では経済を専攻し、勉強よりも部活動のバスケットボールに多くの時間を費やしていたりと、現在の仕事とはまったく無縁の学生生活を送りました。卒業後、日本ユニシスに就職しましたが、銀座のイエナ書店で輸入版Cinefexに出会ったことで3DCGに興味をもち、会社を辞めて設立されたばかりのデジタルハリウッドに通うことにしました。

ーー日本でお仕事をされていた頃のお話をお聞かせください。

田中:日本では、ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(現:ソニー・インタラクティブエンタテインメント)エレクトロニック・アーツ(以下、EA)などのゲーム会社で働きました。ソニーでゲームのムービー制作を手がけた後、EAに移ってからは日韓ワールドカップ開催にあわせて発売されたサッカーゲームの開発に携わりました。実際にスタジアムを見学したり、日本代表の試合を観戦したりと、サッカーゲームの開発ならではの経験ができましたね。ゲーム発売後に、日韓ワールドカップのイングランド対ブラジル戦を観戦できたのも良い思い出です。また、EA在籍中から独学でプログラミングの勉強を始め、開発を効率化するためアーティストが使うツールをつくることもありました。ゲーム開発を通して得た技術的な知識や経験は、その後、Double Negativeで関わったVFXの制作や、FramestoreでのVRコンテンツ制作にも役立っています。


Oculus Riftを装着し、コンテンツの立体感をチェック中の田中氏

ーー海外で働くために、どのような活動をしましたか?

田中:2003年に、当時勤めていたEAジャパンの開発スタジオが閉鎖されたため、英国にあるエレクトロニック・アーツUK(以下、EAUK)への転籍を希望しました。まず現地スタッフと簡単な面接があり、その後、海外出張という形で1ヵ月ほど現地での仕事を経験した上で転籍となりました。会社都合での転籍、かつ外資系企業ということもあり、会社のサポートが非常に手厚かったように思います。英国では5年間就労すると永住権を申請することができるので、EAUK在籍中に永住権を取得しました。EAUKには2010年まで勤め、その後、Double Negativeへ転職しました。その時はVFX制作の経験がなかったので、面接では主にゲーム制作に関するテクニカルなことを聞かれました。Double NegativeではLighting TD(ライティング・テクニカルディレクター)として、いくつかの映画のショットライティングを経験した後、Lighting & Rendering Supervisor(ライティング&レンダリング スーパーバイザー)としてVFX制作に携わりました。現在、所属するFramestoreへ転職した際は、Webサイトに求人広告が出ていなかったので、LinkedInを利用して自分からリクルーターに「VRに興味があるので、もし採用枠があれば教えてほしい」とメールしたことがきっかけで、運良く面接のチャンスを得ることができました。


Framestore VR部門の同僚と。左よりOmar Mohamed Ali Mudhir、Michael Cable、Alex Perry、William Arterton、Karl Woolley、Kent Rausch、Jonathan Forder(敬称略)

ーー英語や英会話のスキル習得はどのようにされましたか?

田中:学生時代から英語が得意科目だったこともありますが、社会人になってから英会話スクールに通ったり、EA在籍中に仕事で英語を使う機会が多くあったため、様々な方法で英語力を身につけてきました。英語のスキルアップにはヒアリング力の向上が一番重要だと思います。渡英した直後は米国と英国のアクセントの違いに戸惑いましたが、巻き舌の少ない英国のアクセントはカタカナ読みに近いので、慣れてしまえば日本人には聞き取りやすいと思います。英語を勉強中の人の中には発音について悩む人も多いかもしれませんが、要はコミュニケーションが取れれば良いので、私はネイティブのように発音できなくてもあまり気にしません。むしろ、会話の中で咄嗟に様々な言い回しができるよう、日頃からネイティブが使う語彙や言い回しを良く聞いて、英語の引き出しが多くなるように心がけています。

ーーロンドンでの生活は、いかがですか?

田中:私が住んでいるWokingという町は、ロンドンから見て南西のサリー州にあり、かつて小説家H・G・ウェルズが住んでいたことでも知られています。彼の小説『宇宙戦争』で火星人最初の下降地となり、町の中心には火星人の戦闘機械「トリポッド」のオブジェがあるなど、VFXとの縁を感じますね。



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