<2>Framestore VR部門での仕事について
ーー現在の勤務先は、どのようなスタジオでしょうか。
田中:Framestoreには様々な分野からアーティスト、技術者、ビジョナリーが集まっていて、創造的なプロセスにテクノロジーを融合させ、数々の映像やコンテンツを生み出しています。1986年にわずか5人のチームで創立されたFramestoreですが、現在はロンドン、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、モントリオールに拠点を置く1,000人以上の企業に成長し、これまで映画『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(2008)や、『ゼロ・グラビティ』(2014)などの作品で、アカデミー賞の視覚効果部門を始めとする様々な賞を受賞しています。また、Framestoreのビジネスは時代とともに進化していて、VFX制作から始まり、TV、VR、データの視覚化などの優れたコンテンツ制作へ派生し先進的なコンテンツを生み出しています。広告代理店のMcCann NYと共同制作したLockheed Martin(米国の航空機・宇宙船の開発会社)のVR作品『The field trip to mars』はまさにその代表的な例と言えるでしょう。
『How to Take a Field Trip to Mars』
ーー現在、携わっているお仕事で面白いと感じるのはどんな点でしょうか。
田中:VRのコンテンツ制作はまだまだ黎明期にあり、ターゲットとなるデバイスもスマートフォンからハイエンドPCまで多岐に渡っているので試行錯誤の連続です。テクニカル・アーティストはアーティストとエンジニア両方の知識や経験が求められ、パイプラインの構築からアセットのインプリメントまで様々な作業を行います。人手が足りなければ実際にアセットの制作をすることもありますし、コードを書くこともあります。あらゆる知識やこれまでの経験を活かしつつ、柔軟な発想で問題を解決することがテクニカル・アーティストとしての醍醐味ですね。また、前述した『The field trip to mars』を見ていただいてもわかるように、新しいことにチャレンジする精神をもった優秀な同僚たちと働ける点も大きな魅力です。最近制作したGoogle Daydream向けのVRコンテンツ、『Fantastic Beasts and Where to Find Them VR』では社内の3DCG部門と協力して、スマートフォンとは思えないほどクオリティの高いVR立体視を実現しました。
『Fantastic Beasts and Where To Find Them: VR Experience Extended Trailer』
ーー最後に、将来、海外で働きたい人へのアドバイスをお願いします。
田中:近年、英国のVFX業界では人材不足が続いていて就労ビザが取得しやすい状況なので、英国は狙い目です。海外では新卒採用という制度はありませんし、転職はごく当たり前のことですので、人材の流動性が高く、急募の求人が突発的に起こりがちです。日本から応募するよりも、留学やワーキングホリデーを利用して、その地で暮らしながら就職活動をした方が可能性が広がると思います。またLinkedInの利用が活発ですので、ぜひ有効活用しましょう。まずは英文プロフィールを書いて、自分の経歴やスキルを最大限にアピールすること。デモリールがあればリンクすることもできます。その次にリクルーターとのコネクションを広げてみてください。もしかしたら、あなたのプロフィールに興味をもったリクルーターからすぐに連絡がくるかもしれません。そのためにも面接で困らない程度の英会話力を今から身につけておくとよいと思います。
【ビザ取得のキーワード】
1.デジタルハリウッドにてCGを学ぶ
2.EAのジャパン・スタジオに勤務
3.EAUKへの転籍に伴い渡英
4.渡英後5年で永住権を取得
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