>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:バイトと勉強漬けの留学時代を経てゲーム会社に就職 第36回:リチャードソン・幸(Double Fine Productions / Senior Animator)
バイトと勉強漬けの留学時代を経てゲーム会社に就職 第36回:リチャードソン・幸(Double Fine Productions / Senior Animator)

バイトと勉強漬けの留学時代を経てゲーム会社に就職 第36回:リチャードソン・幸(Double Fine Productions / Senior Animator)

今回は、サンフランシスコのゲーム会社でアニメーターとして活躍中のリチャードソン・幸さんに登場いただいた。留学時に初めて海外に出たという幸さんだが、留学中は経済的な理由から米移民局に許可を申請してアルバイトをしながら学校に通ったという。そんな幸さんに、お話をうかがってみることにしよう。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

リチャードソン・幸 / Miyuki Maruyama Richardson(Double Fine Productions / Senior Animator)
東京都出身。高校卒業後、2005年にアメリカ留学、De Anza College卒業後、San Jose State UniversityのAnimation/Illustration科に編入し2012年卒業。その後、Doodle Pictures Studiosでキャリアをスタート、2014年にサンフランシスコのDouble Fine Productionsへ移籍、現職。現在は今夏発売のゲーム『RAD』で多くのアニメーションを担当する。アカデミー賞ノミネート短編『ダム・キーパー』に携わるなど、短編映画制作にも数多く参加。現在はプライベートで短編映画も製作中

<1>アニメーションに魅せられ、初海外でバイトしながら学ぶ

――日本での学生時代のお話をお聞かせください。

都立つばさ総合高校という、普通科とはちょっとちがった高校の1期生でした。新設校で先生も面白い人揃いで、CGに詳しい先生がなんと高校にMayaを導入し「『トイ・ストーリー』も、こういう技術をつかってつくってんだぞ!」と。もう大興奮で、当時英語版しかなかったMayaを、これまた英語の分厚い解説書と格闘しながら、吹奏楽部の練習の合間に勉強するという高校時代でした。

ユニークな高校で卒業研究のようなものがあり、自分の好きなことを研究して良かったんです。ちょうどその頃、日本語版の『Illusion of Life』(※ディズニーによるアニメーション技術の解説本)が出て、誕生日に買ってもらいアニメーションについて研究しました。そういう経緯があって、CGの本場でピクサーもあるアメリカで、アニメーションを学びたいと留学を決めました。

――留学を決める以前にも、海外へ行かれたことはあったのでしょうか?

いえ、留学が初海外で旅行ですら日本を出たことがありませんでした。TOEFLはクリアしていたのですが、やはり英会話が心配で語学学校に1ヵ月行った後、De Anza Collegeに入学しました。そこで2年半学び、その後、評判の良かったSan Jose State University(サンノゼ州立大学)のアニメーション学部に編入しました。

当時は貧乏学生でした(笑)。本来、留学生は学校外のアルバイトが法律で禁止されているのですが、1年以上留学していて経済状況が困難になった学生には救済措置があり、アメリカ合衆国移民局に「学校外でのバイト許可」を申請することができます。日本は経済大国なので、日本人だと許可が下りにくいとも聞いていたのですが、私はその許可が出るほどに貧乏学生でした(笑)。バイトとアニメーション学部の両立は大変で、深夜までバイト、その足で学校に向かい朝まで課題、そして授業という日々。当時は若かったのでやれていましたが、今、同じことをしろと言われても体力的に難しい気がします。

授業は本当に楽しく、先述の『Illusion of Life』なんて、教科書として指定されていたほどです。2Dと3Dを両方を学ぶカリキュラムで、幅広く勉強することができました。今も仕事は3Dですが、趣味で手描きの絵や2Dをやり続けています。ちなみに現在、制作中のショートフィルムも2Dです。また、San Jose State Universityでは有名スタジオによるセミナーが頻繁にあるなど、まさに「アニメーション天国」という感じでしたね。

この頃から就職活動を視野に入れて、毎年SIGGRAPHで学生ボランティアしたり、書籍『ハリウッドVFX業界就職の手引き』を読むなどしていました。

――海外の映像業界での就職活動について体験談をお聞かせください。

アメリカの映像業界での就職は、在学中にインターンシップが定石という感じだったので、毎年様々なスタジオに応募したのですが、見事にどこにも引っかかりませんでした(笑)。

しかしビザに関しては、私の場合、アニメーションのクラスで出会って長くお付き合いをしていた夫が米国籍だったため、彼が先に卒業したのを機に在学中に結婚し、学生ビザからグリーンカードへ切り替えの申請をすることができました。しかし夫も当時は卒業直後で、グリーンカードのスポンサーになれるほどの年収がなく、私は先述のバイトをしていたのでその収入を足すことで何とか条件をクリアしました。また、在学中のアルバイトの許可申請とグリーンカード申請は、どちらも移民局を通すもので、プロセスが似ていたのでコツもわかっていて良かったです。人生どこで何が活きてくるかわかりませんね。

卒業後、半年間は仕事が全く見つからず、やっと見つけたのが、今は閉鎖してしまったDoodle Pictures Studiosという東海岸の小さな会社での仕事でした。3ヵ月間の契約をもらい、藁にもすがる思いで26歳の新卒主婦は単身赴任をしに、東海岸へ飛びました。

仕事を気に入っていただき、契約が終わったときに「ここで正社員になるか、もしくはカリフォルニアに帰ってフリーランスという形で仕事を続けるか、好きな方を選んでいい」と言われ、カリフォルニアに戻ってしばらくの間はリモートで仕事をしていました。

そんなとき、現職のDouble Fine Productionsでポジションの募集があることを大学の同期の友人から聞き、採用されて今に至ります。大学の友達は本当に大切にした方が良いと思います。会社では募集をかけるときに、まず社内の人に「仕事を探している知人はいないか」と聞くんですね。なので今、同じ学部卒の友人が、職場に8人はいます(笑)。


お仕事中の幸さん。「楽しくてゲームアニメーターの面白みをすごく感じています」  

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<2>ユニークなゲーム会社で、アニメーターとして活躍中

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