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第14回:池田 亘(EA Digital Illusions CE / VFX Artist)

第14回:池田 亘(EA Digital Illusions CE / VFX Artist)

今回は、スウェーデンのゲーム・スタジオで活躍している日本人アーティストを紹介しよう。学生時代からアルバイトでゲーム制作現場に参加し、そのままプロになったという池田 亘氏。日本で経験を重ねてスキルを磨き、海外にチャレンジした経験から「海外就活は日頃から準備を行うことが大切」と語る。それでは、その貴重な体験談をスウェーデンでの生活情報も織り交ぜながら紹介していこう。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

池田 亘/Wataru Ikeda(EA Digital Illusions CE / VFX Artist)
学生時代からアルバイトでスクウェア(現スクウェア・エニックス)にて背景アーティストとして参加し、そのまま同社に入社。プリレンダリングの背景制作や『ファイナルファンタジーXI』の背景モデラーなどを経験後、カプコンへエフェクト・デザイナーとして移籍。『ロストプラネット2』でリードVFXデザイナーを務めたほか、テクニカル・アーティストとしてツール開発や技術研究を行う。2016年にスウェーデンのEA DICEヘ移籍し、現職。『バトルフィールド1』ではVFXアーティストとして貢献した。

<1>学生時代からゲーム会社で働き始める

ーー学生時代の話をお聞かせください。

池田 亘氏(以下、池田):大学2回生のときにPerformaという比較的安価なMacを買い、Strata 3Dというアプリで3DCGに目覚め、毎日、夢中で何かをつくっていました。やがてそれだけでは物足りなくなって、WindowsPCとLightWaveを買って、大学の課題制作として3DCGの動画を制作していました。3回生の夏休みに、大阪のIMAGICAウェストでアルバイトとして『バイオハザード2』のオープニングムービーの仕事に携わり、これが私にとって初めてゲーム業界に関わる仕事となりました。バイト代は全て3DCG制作のためのPCパーツに消えましたが(笑)。4回生になり、今度はスクウェア・エニックスでアルバイトを始めました。学生の頃からお金を貰いながら3DCGの勉強ができて、制作現場に入れたことは、とても幸運でしたね。

ーー日本で仕事をしていた頃の話を教えてください。

池田:アルバイトがきっかけで入社したスクウェア・エニックスではもともと背景の担当でしたが、プリレンダーのムービー制作でVFXにも携わったことから、エフェクトに興味をもち始めました。その後、移籍したカプコンではVFXデザイナーとして『ロストプラネット』などのエフェクト制作に携わり、リードVFXデザイナーを経験後はアーティストの環境向上や技術推進のためにテクニカル・アーティストになりました。内製ゲームエンジンのエフェクトツール開発や技術開発、シェーダをアーティストに教えるといったことが業務の中心で、この頃にワークフロー構築やプログラミングに関する知識、経験を積みました。社外のUXデザインワークショップにも参加し、そこで学んだことをツール改善に役立てる、といったこともありました。

ーーその後、海外に渡られたわけですが、海外での就職活動で重要なのはどんなことだと思いましたか?

池田:日頃から準備しておくことがとても大切です。なのでデモリールは常に最新にしておくことをおすすめします。また、面接を受けるタイミングも重要です。事実、私はEA DICE(以降、DICE)の求人へ2回、応募しています。1回目はすでに誰かに決まっていたため書類選考止まりでしたが、2回目に応募した際に、私のことを覚えてくれていたようで、すぐに面接に進むことができました。一度で諦めず、よいタイミングで応募できるように準備をしておいて良かったと思っています。

ーー実際にはどのような経緯でDICEへの就職が決まったのでしょうか。

まずはLinkedinという就活のコミュニティ・サイトに参加して海外の知り合いを増やし、デモリール作成の際にアドバイスをいただいたりしていました。DICEでの面接は、1次がSkypeを使ったものでした。モニター越しに6人くらいに囲まれて、スウェーデンやDICEについて知ってることは? 家族と移住しても大丈夫? など一般的な質問がほとんどで、テクニカルな内容ではなく人柄チェックとコミュニケーション力の確認という印象でした。

その後、実技テストを受けることになり、2週間という期間で仕事をしながら作品を制作するというハードな状況の中、極度の睡眠不足になりながらも何とかテスト作品を仕上げました。幸いにも作品を気に入ってもらえ、最終面接に呼ばれてスウェーデンへ。ほぼオファーが決まっていたのか、その際に現地のリロケーション・グループの方にストックホルム案内や現地のアパートを見せてもらい、移住後のイメージをしっかりともつことができました。

VISAに関しては、必要書類(英訳の戸籍謄本や、家族全員分のパスポートコピーなど)と委任状をPDFで送信したあとはほとんどまかせきりで、DICEが手厚くサポートしてくれました。書類がスウェーデン語の場合も、リロケーションのエージェントが英語に訳して伝えてくれましたので、困ることはありませんでした。2ヶ月もしないうちに就労ビザをもらうことができたと思います。


仕事中の池田氏

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