>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:ワーホリを利用しカナダへ、面白い仕事を求めて4年間で7回も引っ越し! 第49回:大畑高平(Framestore Montreal / Animator)
ワーホリを利用しカナダへ、面白い仕事を求めて4年間で7回も引っ越し! 第49回:大畑高平(Framestore Montreal / Animator)

ワーホリを利用しカナダへ、面白い仕事を求めて4年間で7回も引っ越し! 第49回:大畑高平(Framestore Montreal / Animator)

筆者は定期的に「ハリウッドVFX業界就職セミナー」を国内外で実施させていただいているが、こうして長年開催していると、受講された方が後に、見事ハリウッドでのポジションを獲得されるケースも少なくない。今回、紹介する大畑高平氏も、その1人である。 ハリウッドの人気職種の1つであるアニメーターとして、現在カナダのモントリオールで活躍中の大畑氏に話を伺った。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

##

Artist's Profile

大畑高平 / Ohata Kohei(Framestore Montreal / Animator)
愛知県名古屋市出身。県内の工業大学を卒業後、ポリゴン・ピクチュアズでアニメーターとしてキャリアをスタート。その後AnimationCafeを経て、2016年にカナダのMPCモントリオールへ。CinesiteモントリオールやバンクーバーのSony Pictures Imageworksなどのスタジオを経て、現在はFramestoreモントリオールに所属。過去4年間でモントリオールとバンクーバー間の引越しを7回経験した
www.framestore.com

<1>小学生からのパソコン好きが高じ、3DCGにも興味をもつ

――日本での学生時代の話をお聞かせください。

兄の影響で、小学生の頃から家庭用ゲームだけでなく、パソコンでオンラインゲームをするのが好きで、ゲームの情報サイトのソースを見て、自分でHPを真似てつくったりしていました。バスケットボールなど運動も好きだったのですが、パソコンをずっと使える仕事がしたいと思い、情報科がある高校に入学し、3DCGに加えて広告やWebなどの2Dデザイン、プログラミングなどを学び始めました。

ある日、授業でピクサーの映画『レミーのおいしいレストラン』を観て感動し、「いま勉強していることを続ければ、将来こういう映画をつくれるようになるよ」と先生に言われたこともキッカケとなり、3DCGの勉強に一番力を入れるようになりました。

高校卒業後に上京して進学することを考えた時期もありましたが、併設の工業大学に情報科学部がつくられたこともあり、そこへ進学しました。 カリキュラムができたばかりで授業自体は手探りの状態でしたが、夜まで使えるラボなど環境は良かったです。

当時は情報発信でTwitterが広く使われるようになっていた頃で、CGを勉強している同年代の学生や、すでに業界で働いている方と簡単にやり取りをすることができました。鍋 潤太郎氏と溝口稔和氏による「ハリウッドVFX業界就職セミナー」に初めて参加したのも在学中でした。このときのセミナーには米岡 馨氏(現:ステルスワーク代表)や、この連載でも登場された傘木博文氏も参加されていたのを覚えています。この頃から1、2ヵ月に一度はCG関連のセミナーのために東京へ行き、夜行バスですぐに帰るということを繰り返していました。

――日本でお仕事をされていた頃の話をお聞かせください。

卒業後は 第一志望だった東京のポリゴン・ピクチュアズで働き始めることができましたが、新卒5、6人の中で一番下手だとアニメーショングループのリーダーに言われていました。働き始めてすぐ、シンガポールのVFXスタジオで働いている小島淳嗣氏がオンラインでアニメーションワークショップを開催してくださり、本来は学生向けだったのですが直接連絡してお願いし、受講させてもらうことができました。働きながら課題をこなすのは大変でしたが、13週間のワークショップで教わったことは、今でも自分の核になっています。

その後はAnimationCafeに転職し、特撮ドラマのVFXやCM、ゲームなど幅広いジャンルのアニメーションに関わりました。ここでVFXアニメーションの面白さを知ることができ、担当したショットもカナダでの就職活動の際に役立ちました。

――海外の映像業界での就職活動は、いかがでしたか?

日本に居たときから世界中のスタジオへ応募していましたが、返事が来ることはほとんどありませんでした。そこでまずはワーキング・ホリデー(※)が使えて、映画の仕事も増えていたカナダのバンクーバーへ行き、語学学校に通いながら就職の準備を進めました。

※ワーキング・ホリデー:イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの国で実施されており、旅行しながら合法的に就労できるプログラム。カナダの場合は、18歳~30歳までの日本国籍をもつ人が対象で、カナダ国内に最長一年間滞在し、就労、就学、観光を通じて海外経験をすることができる。詳細は在日カナダ大使館のWebサイトにて

前年に設立されたオンラインスクール「Animation Aid」で藤原淳雄氏とEarl Brawley氏のクラスを受講しデモリールを更新し続けたおかげもあり、ワーキング・ホリデー・ビザに切り替えてすぐにMPCモントリオールからオファーをもらうことができました。電話面接だったのですが、「ハリウッドVFX業界就職セミナー」の「面接の注意点」で教わったものと同じ質問内容が多かったこともあり、英語力に不安がありながらも、事前に用意していた回答も使いなんとか乗り切ることができました。

3社目のSony Pictures Imageworksに移る際に、初めて会社から就労ビザをサポートしてもらったのですが、当時はバンクーバーのあるブリティッシュコロンビア州のビザ取得に必要な経験年数や年収の基準が低く、必要書類を集めるだけであまり苦労はしませんでした。現在ではその基準が高くなっているため、もし1年でも遅ければ就労ビザのサポートを受けることは難しかったかもしれません。

ただ2019年に発効された環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)のおかげで、日本人は一定の条件を満たせば最短2~3週間程でカナダの就労ビザの取得が可能(2020年5月時点)なため、他の多くの国の人よりも有利と言えます。これは強みになるので、カナダの会社へ応募する際には、このこともひと言添えておくと良いと思います。

――バンクーバーとモントリオール間のお引っ越しを、7回経験されたそうですが......。

現在、勤務しているFramestoreとSony Pictures Imageworks、MPCでそれぞれ2回づつ働いたのですが、私の場合は「絶対にこの会社が良い」という強いこだわりがありませんでした。身軽に動けるのも今のうちだけだと思い、引越しの手間暇は考えずに、自分のスキルを評価してくれる会社や面白そうな仕事がある会社を転々としている内に、北米大陸の端から端の引越しを4年間で7回も経験することになってしまいました。

上限はありますが引越し代は会社が負担してくれますし、初めの数週間はホテルなどを用意してくれることが普通なので、引越しで金銭面の心配をする必要はありませんでした。またカナダでは、合意があれば引越しの際に前の住人の家具を残してもらって使うことがごく一般的に行われており、引越しと言ってもスーツケース数個だけで済んだりします。

ビザ申請資格に関しては、ブリティッシュコロンビア州とケベック州で必要書類はほとんど同じでした。学校の卒業証明や場合によっては過去に在籍した会社からの在籍証明が必要になりますが、一度用意してしまえばその後も使い回せる書類は多いです。取得に時間が掛かる書類もあるため、オファーをもらう前から少しずつ用意しておくのも良いと思います。

近年の業界の動向として、バンクーバーに支社をもついくつかのVFXスタジオがモントリオールにも進出してきました。これにはクオリティを保ちつつ予算を抑えるために、映画産業に対する税制優遇措置がより盛んなモントリオールのスタジオでの作業量を増やしたいというクライアント側の意向も関係しているようです。

仕事の量や質の向上に伴い、これまではジュニア、ミドルクラスのアーティストが多い印象だったモントリオールにもシニア、リードクラスのアーティストが他の都市から多くながれ込んできているのを実感しています。また、VFXスタジオだけでなく長編アニメーション映画を制作するスタジオも増えています。

冬は-30℃にもなる極寒ですが、バンクーバーよりモントリオールでの生活の方が気に入っていますし、いまの会社での仕事はやりがいもあって勉強になることもとても多いので、できればもう引越しはしたくないですね。


映画『スモールフット』(2018)でEarl Brawley氏が率いたチームのメンバーと

次ページ:
<2>アニメーターとして最新映画のキャラクター制作に携わる

その他の連載