>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:教職課程を専攻後デジタルハリウッドの門を叩き、気が付けばアニメ業界で15年 第54回:佐藤英美(The Monk Studios / Senior Animator)
教職課程を専攻後デジタルハリウッドの門を叩き、気が付けばアニメ業界で15年 第54回:佐藤英美(The Monk Studios / Senior Animator)

教職課程を専攻後デジタルハリウッドの門を叩き、気が付けばアニメ業界で15年 第54回:佐藤英美(The Monk Studios / Senior Animator)

今回はバンコクからお届けしよう。アニメーターとして日本、カナダ、そしてタイで経験を重ねてきた佐藤英美氏。様々な人種やカルチャーを超えた中でのお仕事だが、「話す言葉や文化はちがっても、アニメーターはみんな同じ」と語る。そんな佐藤氏に、彼女がこれまでにたどってきた貴重な経験を伺った。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE

Artist's Profile

佐藤英美 / Sato Emi(The Monk Studios / Senior Animator)
東京都出身。文化女子大学 造形学部生活造形学科(現・文化学園大学 造形学部デザイン・造形学科)にて平面造形を専攻、卒業後にデジタルハリウッド本科でCGを学ぶ。卒業後は株式会社ミルキーカートゥーンでCGデザイナーとしてのキャリアをスタート。その後、株式会社ポリゴン・ピクチュアズを経てカナダ・バンクーバーへ渡りRainmaker / Mainframe Studiosでアニメーターとして活躍。その後、タイのバンコクに渡りThe Monk Studiosに移籍し、現職。

<1>デモリール審査後の面接。その重要度はスタジオによって異なる

――日本での学生時代のお話をお聞かせください。

子供の頃から絵を描くのが好きだったことに加え、両祖母が教師だった影響を受け、大学では美術および工芸の教員免許を取るため教職課程を学びました。

しかし大学4年の教育実習中に、「やっぱり自分自身の作品をつくりたい」と考えるようになり、卒業後はWebデザイナーとして就職しました。その後、さらにクリエイティブな仕事を求めてデジタルハリウッドの門を叩き、それから15年以上、アニメーションのお仕事に従事しています。一見遠回りをしたように思えますが、アニメーターになる上で美術やWebデザインに関する知識・経験が活きているので、無駄ではなかったと思います。

――日本でお仕事をされていた頃のお話をお聞かせください。

ポリゴン・ピクチュアズでは北米のクライアントのプロジェクトに関わることが多く、また外国人アーティストの同僚が多数所属していた関係で、日頃から英語に触れる機会に恵まれた環境でした。

日常的に使う会話は語学学校で学べても、アニメーション業界ならではの用語や言い回しは、やはり現場でなければ触れる機会がないので、日本で事前に身に着けておくことができた点はとても大きかったと思います。

もし将来海外で働きたいと考えている方は、日本でそういった経験が積める環境であることを加味して職場選びをすると良いかもしれません。実は私自身、当初は「海外で仕事したい」という希望はなかったのですが、大の旅行好きで締め切りに追われて長期休暇がなかなか取れない中、「海外で仕事をすれば、旅行も同時にできて効率が良いのでは?」と思いつき現在にいたります。

――そういったいきさつで語学留学を決意されたわけですね。

気候や治安が良く、またCGの学校やスタジオが多く集まるバンクーバーで3ヶ月間ESL(語学学校)に通いました。バンクーバーは日本、韓国、台湾などのアジア圏、ブラジルやチリなど南米からの留学生が多いのですが、南米の生徒は「文法の間違いに臆することなく、マシンガンのように話す」一方で、アジア圏の学生は「いったん頭の中で整理してから話す」という傾向を感じました。

これは文化のちがいによるもので、アジアでは「思慮深い」というポジティブな印象があっても、北米での「沈黙」はネガティブなイメージを与えてしまいます。就職面接でも同じで、いかにパッと回答するかが大切です。

相手が話して2秒以上の間を空けないということをルールとして、「それは良い質問ですね! 人によって意見が分かれると思いますが......」といった感じで、考える時間を稼ぐためのつなぎになるフレーズがすぐに言えるようにしておくと、様々な場面で役に立つと思います。

――海外の映像業界での就活はいかがでしたか?

デモリール審査の後に面接があるのですが、その重要度はスタジオによってバラバラで。複数回に渡って長時間行う会社もあれば、面接が一切なかったという話も聞いたことがあります。もし希望のスタジオに知り合いがいたら、質問内容などあらかじめ尋ねておきましょう。

私の場合、現在の勤務先であるThe Monk Studiosでの面接は「顔見せ」という感じで、10分もかからないあっさりしたものでしたが、バンクーバー時代のRainmakerではまず人事の担当者と電話面接があり、続いてオフィスでスーパーバイザーとの直接面接と合計して1時間以上行いました。

英語の拙さを熱意でカバーするべく「御社の『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』は私にとって最初に好きになったCG作品なんです!」と思い出を語ったところ、面接官が「当時いたアーティストの○○さんがまだ在籍しているよ!」と盛り上がりました。基本的なことですが、そのスタジオの作品がいかに好きかを伝えることが大切だと思います。

就労ビザに関しては、カナダに比べてタイは手間と時間がかかりました。働くために必要な「ノンイミグラントB-ビザ」と「ワークパーミット(労働許可証)」の2つを取得するに、「大学で専攻した学科に関連する職業での2年以上の経験があること」を証明しなければなりません。そのために、学歴、職歴、推薦状(基本的に過去に在籍していたスタジオ全て)の英文書類を用意する必要があります。

それらが揃ったら審査です。在日本タイ大使館に申請と受領で少なくとも2回は行かなくてはなりません。さらに、入館するためには何週間も前から予約が必要であることを知らず、カナダでSkype面接を受けた1か月後に就業開始予定に設定してしまい、短い帰国期間はとても慌ただしかったです。ビザが取得できたのは、出国日の数日前とギリギリでしたね。万が一、書類の不備でやり直す場合も考慮して、2ヶ月くらいの余裕のあるスケジュールを組んだ方が良いようです。


▲お仕事中:スタジオで飼っている猫のリアムがアニメーションルームの前の廊下を歩いている様子

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<2>いつでも行動に移せるように準備を!

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