>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:ハンガリーでゲームシネマティックの制作に携わる 第50回:高橋達也(DIGIC Pictures / Senior Lighting & Composite Artist)
ハンガリーでゲームシネマティックの制作に携わる 第50回:高橋達也(DIGIC Pictures / Senior Lighting & Composite Artist)

ハンガリーでゲームシネマティックの制作に携わる 第50回:高橋達也(DIGIC Pictures / Senior Lighting & Composite Artist)

海外での就職活動は時間がかかるものである。応募しても全く返事がなかったり、連絡が来るのに数ヵ月以上かかることも珍しくない。今回、登場いただいた高橋氏も、活動のなかでそういった様々なルールを学んでいったという。そんな高橋氏は「就活は、時の運。どんどん応募した方が良いです」と語る。それでは、さっそく高橋氏に話を伺ってみることにしよう。

TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

高橋達也 / Takahashi Tatsuya(DIGIC Pictures / シニア ライティング&コンポジット・アーティスト)
東京都出身。2003年にWAOクリエイティブカレッジ 東京校を卒業後、フリーランスとして活動を開始。2008年に株式会社アニマに入社し、9年間勤務。2018年にハンガリーのDIGIC Picturesにシニア ライティング&コンポジット・アーティストとして入社、現職

<1>専門学校卒業後アニマで9年間働き、スキルアップ

――日本での学生時代の話をお聞かせください。

高校生の頃に3Dソフトで遊んでいたのですが、友人が「Mayaが映画・映像業界ではスタンダードらしいぞ」と、教えてくれたんです。そこでMayaに触ってみたんですが、Sphereを画面に出したはいいが、さて一体どうすればいいのか全く分からず......。すぐに学校で学ぼうと思い、専門学校を探して1年のコースを受講しました。

また、その頃にデジカメを購入しました。FUJIFILMの薄いやつです(懐かしい......)。撮った写真に考察を加えたアルバムをつくって専門学校の事務局に見せたりと、積極的に意欲をアピールして、受講料を少し割り引いてもらいました。そのお金で学生版のMayaを購入して、朝から晩まで毎日CG漬けでした。

授業ではしっかりと基本から教えてもらえたので、Mayaに関しては基礎スキルが完璧に身についていると思います。ただ、表現力があったとか、絵づくりが得意だったというわけではなく、ソフトウェアを仕組みから探求するのが楽しくて、それでスキルを伸ばした感じでした。

今にして思えば、この頃にしっかりと美術の基礎力も身につけて、表現力を磨いておけば良かったと痛感しています。

――日本でお仕事をされていた頃の話をお聞かせください。

卒業して数年間はテクニカルアーティストをしながらフリーランスとして仕事をしていました。その折、ちょうど『CAT SHIT ONE -THE ANIMATED SERIES-』を自社企画としてつくっていたアニマに魅力を感じて入社しました。その後、9年間勤めたので、日本での経験はほとんどがアニマの仕事です。

その頃は、主に遊戯機の仕事が会社の柱で、数多くのプロジェクトに携わりました。たまにアニメーションやオリジナル作品の案件もあって、少しづつスキルアップし、ライトコンポの重要なポジションも任されるようになりました。ちょうど自分が入社した頃に、アニマでも分業化が進んでいたようで、入社当時は社員みんながアニメーションからコンポジットまでを手がけていました。

自分はもともとオリジナル作品をやりたい人間でしたので、希望もあり、その後ディレクターとしても数件の仕事に関わらせていただき、貴重な経験をさせてもらえました。 しかし徐々に自分のスキルアップが難しく感じ始めてもいたんです。

そんな中で、トンコハウスさんの『ダム・キーパー』の映画化に向けてのパイロットムービー制作に関わる機会に恵まれました。このときにカリフォルニアまで出張して、海外のスタジオで活躍されている方々と会って強く影響を受けました。

プロジェクトはものすごく大変でしたが、自分のスキルアップの方向性を見つけて先へ進むことができたので、本当に幸運だったと思います。

――海外での就職活動はいかがでしたか?

アニマでは、その後も映画『KINGSGLAIVE FINAL FANTASY XV』など、海外へアピールできる作品に関わることができ、なんとかデモリールを完成させました。ただ、8年くらい前の作品もリールに入れていたので、本当なら自主制作作品などがあれば、さらに良かったかもしれません。

レジュメも人に見てもらい、修正を重ねながら、わかりやすくシンプルなフォーマットにしました。

自分はワーキングホリデーが使えない年齢だったので、ビザのサポート前提で応募しましたが、そのおかげでオファーを得られる機会が減っていたと感じます。とにかくフルCGをつくっている会社に送ったのですが、反応は全くありませんでした。

数ヵ月後、ありがたくDIGIC Pictures(以下、DIGIC)から返答をいただき、Skype面接をして、ほぼその場で決まったと記憶しています。後日正式にオファーされ、給料の交渉をして、ビザがなかったので仮の契約を書類で結びました。ハンガリーは日本よりも物価が安く、お互いの折衷案で合意できた点は良かったです。2度ほど額を提示したのですが、2週間返事が来なくなったときは断られてしまうかもと不安になりました。

その後、ビザ取得のために日本で手続きを進めていたのですが、ビザ申請に必要な書類が送られて来ず、これは予定日に間に合わないとなったのですが、結局ビザなしでハンガリーに行き、現地移民局で人事の方に付き添ってもらってビザ申請をしました。シュンゲン協定に助けられた形です。

後に聞いた話では、書類が送られてこなかった理由は、手続きをお願いしていた弁護士さんが音信不通になってしまったからだそうです。早々に気を引き締められる事件でした。

こういう事務手続きは、とくに海外と日本の感覚で大きく異なるな、と感じた点です。自分からアピールしていかないと、意思が感じられずに=問題ない、と忘れられてしまいます。


毎年全員で行くddayというイベントで、借りるカヌーを待ちながら

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<2>ハンガリーの実力派CG企業で活躍

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