>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:『ゴジラ』の美術制作からILMのゼネラリストへ 第24回:谷 雅彦/Masahiko Tani(Industrial Light & Magic / Senior Generalist)
『ゴジラ』の美術制作からILMのゼネラリストへ 第24回:谷 雅彦/Masahiko Tani(Industrial Light & Magic / Senior Generalist)

『ゴジラ』の美術制作からILMのゼネラリストへ 第24回:谷 雅彦/Masahiko Tani(Industrial Light & Magic / Senior Generalist)

6月29日(金)から、日本でも公開される『スター・ウォーズ』シリーズの最新作『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』。この作品にゼネラリストとして参加しているのが、ILMの谷 雅彦氏である。日本で活躍していた頃から一貫して特撮&VFX作品に携わり続けてきた谷氏に、サンフランシスコでインタビューを行なった。

TEXT_鍋 潤太郎 / Juntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

Artist's Profile

谷 雅彦/Masahiko Tani(Industrial Light & Magic / Senior Generalist)
岡山県出身。1989年からフリーランスでレインボウ造型、マーブリング、円谷プロ、東宝映像美術、ヌーヴェルヴァーグなどの会社と契約し、TVCM、映画『ガメラ』、『ゴジラ』シリーズなどの特撮、本編美術を担当。1996年SpFX STUDIOに入社。2000年に渡米し、2001年よりILMにてゼネラリストとしてマットペイントを担当。第1回VESアワードで団体受賞、その後2回ノミネートされる。2012年写真集『Silent Force』を出版し、映画制作の傍ら写真家としての活動も続ける。マットペイントを担当した最新参加作品に、映画『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』(6月29日公開予定)がある。

『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
6月29日(金)公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html
©2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

<1>大道具からCGまで、美術制作に関する様々な経験を積みながらマットペインターを目指す

――日本での学生時代のお話を教えてください。

私は映画が好きで、高校3年生の頃にはすでに映画の世界で働こうと決めていました。高校卒業後は、東京映像芸術学院 特撮クリエーター科(現在は廃校)に入学しました。そこで撮影、照明、美術、演出、特殊造型、スペシャルメイクアップなどを学び、どの分野に自分の興味があるのかを考えましたが、すぐに結論が出なかったため、まずはひと通りのことを勉強しました。

卒業制作の際にミニチュア用のホリゾント(※)に背景画を描く機会があったのですが、そのときは時間や飲食を忘れて夢中になって描きました。それを機に「マットペインターになる」と決め、働きながらチャンスをうかがっていました。

※ホリゾント:背景用の幕や壁のこと

――日本でお仕事をされていた頃のことを聞かせてください。

19歳の頃から映画、CMの現場でアルバイトをして、現場の人たちと知り合いになりながら、次の仕事へとつなげていました。日本で担当した仕事の多くは、特撮や本編(※)を中心とした美術制作です。その当時から技術者が少なかった石膏でミニチュアをつくる技術を習得し、映画『ゴジラ』や『ガメラ』シリーズの特撮現場で、様々なミニチュアをつくり、ディテールを足す飾り付けをしていました。

※本編:メカや怪獣が登場する特撮シーンに対して、俳優が演技をするシーンのこと

しかし特撮映画の製作は年間に1、2本と少なく、コンスタントに仕事を続けるのが難しい現場でした。そのため映画の仕事がないときは造形会社に行き、ラテックスやFRPなどを扱った着ぐるみや、甲冑などの特殊造形を制作する仕事をしたり、東映から手描きのマットペイントの仕事をいただいていました。東宝映像美術ヌーヴェルヴァーグ(現NVC)に所属していた頃は、東京ディズニーランドのパレードカーの制作や、CM、映画ではスタジオマンやセット付きの大道具の仕事もしていました。その頃から、徐々にCGの技術が日本の映像界に導入される様になり、SpFX STUDIOに入社し、初めてCGでマットペイントを中心としたVFXの仕事ができるようになりました。

――海外の映像業界への就活はどのようにされたのですか?

日本で3年半ほどCG制作をした経験を基にデモリールをつくり、いくつかのハリウッドのポストプロダクションに送りました。運良く、映画『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(2002)の制作が始まるタイミングでILMからオファーをいただき、当時、働いていたハワイのSQUARE USAから転職しました。

就労ビザについては、E-2ビザ(※)からH-1Bビザに変更する手続きが大変だったことを覚えています。そのときに支援してくださった方々には本当にお世話になりました。現在はグリーンカードを取得し、就労ビザの心配をすることなく働くことができています。

※E-2ビザ:投資駐在員(E-2)ビザ。日米両国間で締結されている通商条約に基づいて承認される。申請者は日本の国籍があること、勤務先で投資がすでに行われているか、投資過程であること、投資は実態のある企業へのものでなければならないなどの規定がある。申請者が投資家本人でない場合は、管理職または役員、あるいは「その会社に必要不可欠な知識を要する職種」として雇用される必要がある。H-1Bなどの就労ビザは、配偶者の就労が認められていないが、Eビザの場合は配偶者にも労働資格が与えられる。詳細は移民弁護士に確認を

――英会話のスキル習得は、どのように取り組まれたのでしょうか?

ILMに入社して2年目に、会社の協力もあって平日の昼間に3時間ほど近くの大学で英語の授業を受けることができました。ですが私の英語のスキルは低く、今でも苦労しています(苦笑)。毎日が練習で勉強だと思い「間違っても良いから、積極的に話をしてみよう」という意気込みでがんばっています。同僚たちの優しさのおかげもありますが、私の英語力でもなんとか言いたいことを伝えることができていますね。これから海外で仕事をするには英語のスキルは必須です。仕事のスキルと同時に、鍛えておくべきスキルではないでしょうか。


作業中の谷氏

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