ARスタートアップの株式会社OnePlanetにXR Engineerとして所属し、ARグラスの研究開発などを手掛けている徳山が執筆しています。Apple Vision Proの最新の動向から、開発情報など、Apple Vision Proの情報をピックアップして紹介していきます。

記事の目次

    徳山 禎男 氏

    SIerとして金融や飲料系など様々な大規模プロジェクトに参画後、2020年にOnePlanetに入社。ARグラスを中心とした最先端のAR技術のR&Dや、法人顧客への技術提供を担当。過去にMagic Leap 公式アンバサダーを歴任。
    twitter:https://twitter.com/tokufxug

    OnePlanet

    AR技術とクリエイティブに特化したARテックカンパニーです。ARは「目の前の現実世界に3DCG等のバーチャルな情報や体験を表示する」というSF映画のような技術です。今後大きな発展が見込まれている一方、今はまだ黎明期ゆえに取り扱いの難しさもあります。私たちはこのワクワクする未来の技術をより身近なものにすべく、様々なAR関連ソリューションを提供しています。
    https://1planet.co.jp

    はじめに

    今回は、visionOSから使用できるエンタープライズAPIの紹介と、その利用条件について説明します。

    エンタープライズAPIについて

    Apple Vision Pro向けのエンタープライズAPIは、企業向けのアプリケーションに特化した機能を提供し、業務効率の向上を目的に提供された機能群のことを指します。エンタープライズAPIが提供している機能について説明します。

    1. メインカメラアクセス

    Apple Vision Proの前面に搭載されたメインカメラから映像データを取得できます。映像データとコンピュータービジョン技術を組み合わせることで、周囲の環境をリアルタイムで解析し、空間の理解に基づいた情報提供や視覚的フィードバックを行うことが可能です。

    2. QRコードとバーコードの読み取り

    QRコードとバーコードを読み取り、その結果を取得できます。さらに、読み取ったバーコードやQRコードのポジションの情報も取得できます。

    3. スクリーンキャプチャ

    Apple Vision Proを装着したユーザーが見ている映像を取得できます。ユーザーが見ている映像をリアルタイムで配信しながら、アプリの使い方を共有したり、他のユーザーと協力してタスクを進めたりすることもできます。

    4. Apple Neural Engine

    機械学習の処理は、CPUやGPUではなくApple Neural Engineで行うことができます。例えば、工場で生産された製品の不良品を識別する際に使用できます。

    異常を検出するためのカスタム機械学習モデルをApple Neural Engine上で動かし、メインカメラアクセスを利用することで、Apple Vision Proのデバイスで直接検出できるようになります。

    5. Object trackingのパラメーター設定

    Object trackingでは、一度に追跡できる物体の最大数を変更したり、物体の認識スピードを調整できます。また、認識した物体をリアルタイムでトラッキングするために、位置検出処理の頻度を調整することも可能です。Object trackingに関する詳細は、以下の記事をご覧ください。

    https://cgworld.jp/regular/13apple-vision-pro-ar-quick-look.html

    6. パフォーマンスアップ

    通常、Apple Vision ProのCPUやGPUの処理能力は変更できませんが、この機能を使用することで調整が可能です。

    これにより、基本性能を超える高負荷な処理が実行できます。ただし、パフォーマンスを向上させると放熱が増加したり、バッテリー寿命が短くなることがあるため、その点を理解しておく必要があります。

    エンタープライズAPIの利用条件について

    エンタープライズAPIを利用するには、以下の条件を満たしている必要があります。

    Apple Developer Program for Organizations または Apple Developer Enterprise Program アカウントを所有していること。
    アプリが利用する機能に紐づくエンタイトルメントとライセンスファイルを取得していること。

    また、アプリの配布は以下に限定されます。

    企業内の従業員にのみ配布される In-House アプリ
    Apple Business Manager を通じてのプライベート配信

    App Store を通じて一般に公開するアプリの配布はできません。

    まとめ

    Apple Vision ProのvisionOS 1.xでは、プライバシー保護のためにメインカメラアクセス機能が提供されていませんでした。しかし、visionOS 2からは企業向けアプリにこの機能が追加され、QRコードやバーコードのスキャン、スクリーンキャプチャ機能も利用できるようになりました。

    これは、エンタープライズ向けアプリのニーズに応える大きな進展です。これにより、企業の業務効率が向上し、Apple Vision Proの利用範囲も広がります。今後、これらの機能がビジネスシーンでどのような革新をもたらすか、とても楽しみです。

    おしらせ

    弊社OnePlanetでは、上記のように企業のアプリケーション開発向けに提供されている「エンタープライズAPI」を活用した、法人向けのApple Vision Proアプリの開発サービスを提供しており、様々な実績を有しています。

    第96回アカデミー賞で4部門受賞した映画『哀れなるものたち』(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)の公開を記念して、2024年2月10日(土)に、渋谷PARCO 3F イベントスペースで、日本初となるApple Vision Proを活用した映画作品の世界に完全に没入できる空間体験アプリを展示しました。

    このアプリは、OnePlanetのApple Vision Pro専門開発チームが開発しました。
    https://1planet.co.jp/news/Twd0qMjt

    Apple Vision Proの情報については以下のリンク先でもまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。

    全般情報
    https://ar-marketing.jp/apple-glass-release/
    技術情報
    https://1planet.co.jp/tech-blog/category/applevisionpro