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No.09:レベルデザインで変わるゲーム体験

No.09:レベルデザインで変わるゲーム体験

トラブル続きの試遊会開催

さて、こんなふうに座学と演習を繰り返しながら、ようやく試遊会までたどり着きました。ただ、ここにいたるまでにも、様々な細かいトラブルがありました。一番困ったのがUnityのバージョンにまつわるトラブルです。最新版のUnity2018.3xでフォルダ構造のあり方などが変更になり、データの互換性で支障が生まれたんですね。

典型例が「試遊会までに制作が間に合わない」→「家のPCにUnityをインストールして継続制作」→「持参したデータが学校のUnityでうまく開かない」というものでした。授業ではまだUnity2017.1xを使用していますので、2017.1xから2018.3xへのデータインポートは問題なくても、その逆でトラブルがみられたのです。自分も言われて初めて気が付いて、頭を抱えました。

まあ、幸いにも自分のノートPCにUnity2018.3xがインストールされていたため、そちらを使ったところ、無事データが開いて助かりました。一応授業でも「自宅と教室でバージョンを合わせる」ように注意しておいたのですが、念押しをしていなかった自分のミスでもあります。一方、今後は「あそびのデザイン講座」についても、使用したUnityのバージョン表記などが求められそうです。

また、自宅でつくったサンプルデータを学校のPCで開いたところ、スコアやタイムなどがGameビューで表示されない事態が発生し、少々あわてました。理由は単純で、自宅と学校のPCでモニタの解像度がちがっていたからです。Unityにはディスプレイのサイズに応じて自動的にUIオブジェクトのサイズを調整する「UI Scale Mode」という機能がありますので、資料上で補足説明があっても良かったかもしれません。

内容面でも学生たちは悪戦苦闘をしていたようです。特に今回は複数のシーンファイルを(今回はスタート画面・ステージ1・ステージ2の3つ)切り替えながら作業を行う必要があるため、それぞれで混乱しがちなように感じられました。実際、自分も資料を見ながら自宅でサンプルデータをつくっていて、うっかり間違えることがありましたので、もう少し手順を分解して説明するなど、資料面でも対応があると良さそうです。

もっとも、この頃になると学生も要領をつかんできたようで、試遊会には結構な数のゲームが並びました。中にはUnityのバージョンちがいでデータが開けなかったものの、サンプルデータをもとに30分程度で、とりあえず遊べる形に仕上げた学生もいたほどです。そこで全員でゲームを一通り遊んだ上で、おもしろかったものを投票してもらい、上位3位を選出。簡単な表彰式を行いました。

▲上位3名のデモプレイ


発表の内容は多岐にわたり、同じメカニクスでもレベルデザインで、これだけのちがいが生まれるのかと、改めて驚かされました。上から水槽を覗き込むようなスタイルあり、自機を複数のポリゴンで簡易形成したものあり、床がくるくる回転して穴が開いたり、閉じたりするものあり......。ほかにも、視点やボールの反射角を工夫して立体的な体験を演出したり、効果音を工夫して壁打ちテニスのような内容に仕上げたりしたものもありました。

もっとも、振り返ってみれば、6月22日から都合18回分の授業(90分×18回=1,620分=27時間)をピンボール演習に費やしたわけで、ちょっとのんびりしすぎたかもしれません。ただ、サンプルデータを2回に1回配布したり、PDF資料をクラウドで共有してスマートフォン上で参照可能にしたりと、手探りで授業を進めたのも事実。今後はこれをもとに、より効率的な授業にブラッシュアップしていければと考えています。

また、連載第6回でも書きましたが、ピンボール篇は「メカニクスの追加でゲーム体験がどのように変わるか」「その上で、どのようなレベルデザインが求められるか」という、MDAフレームワークを意識させる内容になっています。そのため、はじめに異なるメカニクスのステージを切り替えながら遊ばせ、その上で個々に最適なレベルデザインをつくり上げていく、などの進め方もあると感じました。これも来年度の課題になりそうです。

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