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No.09:レベルデザインで変わるゲーム体験

No.09:レベルデザインで変わるゲーム体験

完成度の高さと独創性の高さはどちらが重要か

最後に完成した内容を動画キャプチャしてもらい(Windows10付属のゲームバーに搭載された録画機能を使用)、Google Drive経由で提出してもらいました。その上で、連載第5回目で行なったのと同じマトリックス分析を行なってみました。学生の提出課題を「独創性」「完成度」で4象限に分け、分布状況をチェックするというものです。当日出席した学生は24名で、下記のように分かれました。

A:完成度が低く、独創性が低い 0件

B:完成度が高く、独創性が低い 7件

C:完成度が低く、独創性が高い 7件

D:完成度が高く、独創性が高い 10件

前回はAとCが比較的多かったのに対して、今回は「完成度が低く、独創性が低い」Aの欄に相当するものがありませんでした。相応の時間をかけた分、皆B以降の内容に進んだと考えられます。また、「完成度が高く、独創性も高い」Dの欄に達した学生が10名と最多になりました。障害物やバーなどの回転物を、効果的に活用したレベルデザインが多かった点も印象的でした。

その上で前述の上位入賞者3人のうち2人が、Cの作品群に相当した点に驚かされました。普通に考えれば「完成度が高く、独創性も高い」Dの作品群が選ばれるはずだからです。これに対してCの作品群は「一度に動かせるバーの数を増やす」「視点をFPS(一人称視点シューティング)ふうに変える」など、新しい体験の創出に意欲的でしたが、完成度の点で難がありました。背伸びをし過ぎて実力が追いつかなかったパターンです。

一方で今回は学生に投票してもらう際、特に何も制限はつけず、単純に「おもしろかったもの、上位3点」としてみました。もっとも、だからこそ、2番目、3番目にこうした「今までに見たことがないピンボールゲーム」が評価されたのかもしれません。実際、新鮮さや独創性は、エンターテインメントでは高く評価されるポイントです。授業の最後にこの点を解説できたのは、嬉しい誤算でした。

実際問題として、良くも悪くも人間は「飽きる」生き物です。だからこそ、オリジナルゲームが彗星のように現れ、ヒットする可能性がある(『荒野行動』や『PUBG』が日本でもヒットすると誰が予測できたでしょうか)。敗者復活戦が何度でも起こりえるわけです。もしかしたら今後、まったく新しい概念のピンボールゲームが登場し、ヒットするかもしれません。そこに果敢に挑戦してほしいと思います。

以上で2018年の授業は終了です。2019年は「あそびのデザイン講座」12回目以降を中心に、ランゲームのレベルデザインを自由に行なってもらい、その完成度で後期の課題提出に充ててもらう予定です。更新は3月を予定していますので、お楽しみに。

プロフィール


  • PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
  • 小野憲史
    ゲームジャーナリスト

    1971年生まれ。関西大学社会学部を卒業後、「ゲーム批評」編集長などを経て2000年よりフリーのゲームジャーナリストとして活動。CGWORLD、まんたんウェブ、Alienware zoneなどWeb媒体を中心に記事を寄稿し、海外取材や講演などもこなす。ほかにNPO法人IGDA日本名誉理事・事務局長、ゲームライターコミュニティ世話人など、コミュニティ活動にも精力的に取り組んでいる。2017年5月より東京ネットウエイブ非常勤講師に就任。

本連載のバックナンバー

No.01:「あそびのデザイン講座」活用レポート
No.02:Unityスクリプトに初挑戦
No.03:Unityアセットストアに初挑戦
No.04:新年度がスタートし、ゼロから仕切り直して授業設計
No.05:到達度のちがいをどのように捉えるか?
No.06:あそびのデザインとMDAフレームワーク
No.07:「あそびのデザイン講座」の根底に流れるデザイン思想とは?
No.08:遊んで楽しい、つくって楽しい、そして......

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