記事の目次

    ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回はいつもと少し趣向を変え、日本の妖怪「牛鬼」をモチーフとした和のテイストのクリーチャーを造形します。

    TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



    日本の妖怪をモチーフに

    今回のモチーフに選んだものは、日本の妖怪の「牛鬼」です。「牛鬼」とは、西日本に伝わる妖怪で、牛の顔と蜘蛛のような体をもちます。この牛鬼を顔を鬼らしく少しアレンジし、日本の雰囲気をより感じさせるようなデザインを意識してみました。

    主要な制作アプリケーション
    ・ZBrush 2019
    ・Adobe Photoshop CC 2018
    ・KeyShot 8
    ・Procreate 4.0.10

    STEP 01:デザイン画の準備

    まずiPadでざっくりとラフ画を描きます。スカルプトしながらデザインを詰めていくため、どんなものを作るのか雰囲気がわかる感じで描きます。


    STEP 02:顔のモデルを作成する

    Sphereからまず頭部を作成します。今回はまず顔の雰囲気を決めたかったので、全体より先に顔の印象を詰めました。


    • 【1】Sphereを出します

    • 【2】ざっくり面取りしていきます


    • 【3】顔の凹凸を作り、彫り込んでいきます

    • 【4】彫り込みを深くしていきます


    • 【5】顔の形状を整えます

    • 【6】少しずつディテールを加えます


    • 【7】表情筋を盛っていきます

    • 【8】荒々しく、迫力が出るように彫っていきます


    • 【9】口元を作成します

    • 【10】側面からみた形状も整えていきます


    • 【11】顎や頬の形状を作っていきます

    • 【11】鼻周りを整えます

    STEP 03:顔のモデルの詳細を詰める

    特徴的な飛び出した眉をはじめ、顔にディテールを加えていきます。


    • 【1】眉を追加します

    • 【2】眉を伸ばし、彫り込んでいきます


    • 【3】ディテールを足していきます

    • 【4】側面からも確認します


    • 【5】頬のあたりのディテールを足します

    • 【6】側面のディテールを追加します


    • 【7】全体をみながらディテールを調整します

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    STEP 04:脚以外の体を作成する

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    STEP 04:脚以外の体と角を作成する

    顔のモデルがある程度まで出来上がったら、続いて体と角を作成していきます。牛鬼は顔に対して体がとても大きいため、スケールのバランスに注意しながら進めましょう。


    • 【1】顔にSphereをつなぎ、体の大まかな形状を作成します

    • 【2】首回りからディテールを足していきます


    • 【3】脚との接続部分を作成します

    • 【4】バランスをみながらディテールを加えていきます


    • 【5】続いて、背中周りもディテールを加えます

    • 【6】頭とのつながりも意識します


    • 【7】腹部のディテールをつけていきます

    • 【8】下側も忘れず彫り込んでいきましょう


    • 【9】側面のディテールを下側の彫り込みに合わせて足します

    • 【10】一度シルエットを確認します


    • 【11】次に、頭部にSphereを2つつなぎ、角を作成していきます

    • 【12】角の太さを調整します


    【13】全体のバランスを確認します


    • 【14】様々な方向から確認します

    • 【15】迫力があるかどうか、という点も意識して確認しましょう

    STEP 05:脚と手を作成する

    脚は1つ手前のを作成して、複製で配置し、少しずつバランスを調整します。上半身から出ている手はゴツゴツした手ではなく、不気味さが出るようにツルッとした造形にしています。


    • 【1】先ほど作成した体の接続部分にSphereを配置し、脚を作成します

    • 【2】上からバランスを整えます


    • 【3】脚の付け根のディテールを足します

    • 【4】人の手を造形します


    • 【5】腕の曲がり具合を検証します

    • 【6】あまり作り込まず、あっさりめに造形します


    • 【7】丸みを帯びた腕にしていきます

    • 【8】バランスをみながら、もう少し丸みを足します

    STEP 06:能面を作成する

    和っぽく鬼の顔の額に能面を作成します。真顔の能面かで迷いましたが、少し気持ち悪さが出るように笑っている能面にしました。


    • 【1】額にアタリの面を作成します

    • 【2】ざっくりと顔の形状を彫ります


    • 【3】形状をシャープに整えます

    • 【4】目元を整えます


    • 【5】表情を調整します

    • 【6】全体的にエッジを利かせます


    • 【7】髭や髪を加筆していきます

    • 【8】顎髭を追加します


    【9】全体を表示して雰囲気を確認します

    次ページ:
    STEP 07:全体にディテールを加える

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    STEP 07:全体にディテールを加える

    全体の要素が揃ったので各パーツに細かいディテールを加えていきます。

    ●頭部


    • 【1】顔のディテールを詰めます

    • 【2】牙や口元を細かく彫り込みます


    • 【3】眉のながれなどを細かくつけていきます

    • 【4】横顔のシルエットをみながら彫り込みます


    【5】全体的に加筆します

    ●角


    • 【6】角のディテールを入れます

    • 【7】パキッとした印象にしていきます


    • 【8】階段状になるように形状を整えていきます

    ●体


    • 【9】背中にも硬さを感じさせるようディテールを加えます

    ●毛


    • 【10】顔周りの毛を作成します

    • 【11】毛に動きを付けます

    ●服・装飾品


    • 【12】マスクを抽出してボロボロの服を作成します

    • 【13】あまり主張しすぎないくらいに調整します


    • 【14】背中にSubToolで装飾品を追加します

    STEP 08:ポーズを付ける&仕上げ

    スカルプトが概ね終わったところでTranspose Masterでポーズを付け、そこからさらに最後の仕上げをしていきます。


    • 【1】Transpose Masterでポーズを付けます

    • 【2】上からのバランスも確認しながらポージングします


    • 【3】装飾品の追加パーツをつけます

    • 【4】大体完成したところで全体を確認します


    • 【5】少し物足りなかったので、ディテールを足します

    • 【6】背中に毛を追加します


    【7】これでスカルプトは完成です

    STEP 09:色づけ&レンダリング

    モデルのスカルプトが完成したら、今回はポリペイントで色を付けてからKeyShotでレンダリングをします。


    【1】ポリペイントで色をつけます。さし色に赤を入れます


    【2】最終的な色味はこのようになりました

    完成




    今回はちょっと面白いモチーフだったので、新鮮な気持ちで制作することができました。これを機に妖怪シリーズを作ってみても楽しいかもしれませんね。

    Profile.

    • 岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
      デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
      www.artstation.com/artist/yuzuki
      www.villard.co.jp