今回は夏らしく大海原の大航海です。そもそも"帆"は誰が考えたのでしょうか? 改めて思いを馳せると、人類の英知の歴史もまだまだわからないことばかりですね。
※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 253(2019年9月号)からの転載となります。
TEXT_KAI(GARYU)
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada
Method 1:海洋シーンについて思う
▲映画の帆船などの戦闘シーンはとても好きです。重量感のあるモチーフが互いに交差しながら大海原を疾走していく海戦シーンにはモデリング、アニメーション、エフェクト、シミュレーションと、ありとあらゆるCG要素が詰まっています。
Method 2:イメージを固める
▲毎度おなじみのイメージを固めるまでのながれです。頭の中の考えを文章化したものなので、たどたどしいですが、今回はこうしてテーマを決めました。
Method 3:作業の計画
▲ゼネラリスト的にシーンを分解してみます。シーンの中には様々な要素あります。それをひとつずつ書きだして作業の順番に並べてみると、頭の中が整理されて工程が見えてきます。特に時間のないときや、複数人で制作する場合、いつもこのように考えておくと、チーフになったときも采配しやすいです。
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Method 4:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成
Method 4:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成
1:船のモデリングとディテール
▲ベースの形はスプラインとサーフェスでCAD制作のような感じで作成していきます。スプラインベースなのは後から使用するためです。
▲いったんメッシュにして、さらにスプラインにしてオブジェクト化。板を張り合わせたような外観のデザインにしました。
▲船首など、デリケートな部分はフリーハンドで作成していきます。
▲ゴシック調の装飾はキットバッシュを使用します。様々な模様のオブジェクトを用意。
▲面をなぞるように配置したり、スプラインに沿って配置したり、とにかく面を埋めます。
▲原型が見えないくらいディテールを付けてみました。
2:海の作成
▲海の作成は今回、Phoenix FDを使用しています(次のページでも詳しく解説します)。
▲ちょっとシミュレーションが重かったので一晩ほったらかしにしておいたら、翌日できていました。
▲計算時間はかかりますが、作業時間はかからないので、ある意味で自動化と言えるかもしれません。
3:配置 ~ver.2020~
▲シーンに帆船を配置していきます。
▲当初、3ds Max 2018で作業していましたが、試しに2020で作業してみたら、これが非常に軽い! 倍くらいの体感で作業ができたので、帆船も予定の倍に増やしました。
Method 5:カラーコレクション
▲レンダリングした画像をAfter Effectsで読み込みます。V-Ray上でフレアはすでに乗せています。
▲Lumetriカラーを使用して、カラコレを行います。
▲最終的に煙などで加工して完成です。
[[SplitPage]]Generalist Style 08
ゼネラリスト向けの情報を掲載する「Generalist Style」コーナー。3DCGソフト以外の連携で使えるソフトやプラグインなどの情報をご紹介します。ゼネラリストは様々な仕事ができないといけません。あらゆる方法で楽しみながら作品のクオリティアップをしていきましょう!
背景① ~海篇~
ゼネラリストというとシーンの背景制作の仕事が多いですね。背景はまさにゼネラリストの醍醐味です。今回はその中でも海のシーンを考えてみたいと思います。
1.ノイズによる方法
▲海に限らず、自然な背景を3DCGで作成する試みはかなり昔から様々な方法が採られてきました。しかしながら、昔は今のような流体のシミュレーションなどはなく、画像のようなプロシージャルノイズを平面にディスプレイスで適用して海っぽくするという、ある意味で"匠の技"に頼った作成方法が主流でした。ちなみに、ノイズモディファイヤを使用した海面の作成方法はネットで「3ds Max ocean」と検索すると結構でてきます。
2.景観ソフト
▲次にでてきたのが、スタンドアローンの景観ソフトですね。これらは背景のみを作成する専用ソフトです。海も数クリックで作成できてしまう優れものです。有名どころでは比較的値段がお手頃な「Bryce」(www.bryce3d.co.uk)。これは筆者が学生のころからあるソフトです。
▲「Terragen」(planetside.co.uk)。よりリアルさを追及した景観ソフトです。サンプル画像もうっとりしてしまうほど美しいです。
▲そのほか「Vue」(info.e-onsoftware.com)も非常に有名ですね、直感的な独自の操作方法とハリウッド映画でも使用されているハイクオリティのソフトです。ただ、こういった景観ソフトは外部のレンダラを頼らなければいけません。「Vue xStream」のように連携するものもありますが、基本的にはカメラをやりとりする手間がかかります。このほか、「RealFlow」(www.nextlimit.com/realflow)のような流体専門のソフトで作成する場合もありますね。
3.3ds Maxとプラグイン
▲3ds Max内部で海をつくる方法としては、無料のオーシャンシェーダがあります。ただ、これはMental Rayに付属していたもので、現在のバージョンでは使用できません。
▲次に景観プラグインの「DreamScape」(www.afterworks.com/DreamScape.asp)。発売当時は画期的でしたが、その後まったく機能的なバージョンアップがなく現在に至っています。
▲そう考えていくと、3ds Max内で作業ができ、なおかつ飛沫や水泡なども表現できるのは「Phoenix FD」(www.chaosgroup.com/phoenix-fd/3ds-max)1択となります。シミュレーションなので、時間とメモリ量はかかりますが、初心者でもかなりのクオリティのものが作成できます。また、Chaos Groupの製品なので、V-Rayとも相性が良いです。
▲最後におまけで紹介。フリープラグインの「Houdini Ocean」(www.guillaumeplourde.com)。モディファイヤプラグインで波の動きを作成することができます。昔のノイズで作成していた方法の上位版みたいな感じでしょうか。
4.まとめ
[Information]
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株式会社画龍 早野海兵 監修
3DCGベーシック講座[3ds Max]
3ds Maxを本当にゼロからスタートする方のために作成したオンライン講座です。本講座は画づくりと技術アップの両面を重視しています。また、3ds Maxの様々な実践的な機能を動画で収録しているため、後々機能のリファレンスとしても使用可能です。ぜひ、この機会に3ds Maxを通してCGの世界に!
online.dhw.co.jp/course/3dcg
[プロフィール]
早野海兵(はやのかいへい)
日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)リンクス、(株)ソニー・コンピューターエンタテインメントを経て、フリーランスで活動。2007年(株)画龍を設立。
www.ga‒ryu.co.jp
www.kaihei.net
Twitter:@Kai_ryu_Kai