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    夏から秋の季節の代名詞とも言える「お祭り」。自粛ムードが続く今年は、全国的にお祭りを控えたり、様々な取り組みを試行錯誤したり、新しい世界に合わせて進んでいます。世の中が少しでも良い方向に向かいますように。

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 266(2020年10月号)からの転載となります。


    TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(画龍)
    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(CGWORLD)

    Method 1:雰囲気もの

    本連載では「お祭り」や「和」を感じさせるモチーフを何度も制作してきました。こういったモチーフを制作する際に大切なのは、モデルやシーンをつくることよりも、雰囲気や空気感をつくり出すことです。まるでその空間にいるかのようにノスタルジックな雰囲気に入り込める、そんな数値上計測できない表現も画の魅力のひとつでしょう。さて、今回のモチーフ「夏祭り」は、今年の本連載のコンセプトを「和クリエイティブ」にしようと考えていたときから決めていました。ただ、「ご時世的に3密の画は避けるべきか」という懸念を発端に、「しかしお祭りはだいたい3密」→「風情や情緒を感じる日本の奥ゆかしい美の表現をしたい」→「わびさび、夕暮れどき、橙、提灯、神社、香り、人の気配、佇み」→「最近注 目しているRTのテストもしてみたい」→「大量のオブジェクトをいかにロジカルに設計するか」などなど、社会的な側面を配慮しつつも和と美を感じさせる画づくりを目指しました。


    Method 2:提灯


    ▲まずは和の組木細工をつくっていきます。組木細工は三角を基調にした構成が多いので、ポリゴンに向いていますね。


    ▲基本的なポリゴン編集機能の組み合わせで、様々な模様を作成していきます。


    ▲最後にラインに変換して枠にします。


    ▲提灯は骨組みからつくりましょう。丸い形の提灯ではなく四角い形の提灯にしました。単なる好みの問題です(笑)


    ▲ねじれているモデリングは難しいですが、フリーハンドだとクシャッとした表現がつくりやすいです。


    ▲組木模様も入れて一丁あがり!

    Method 3:ゼネラリストの強みを活かしたシーン作成

    1:パーティクルでつくるパターン


    ▲効率的にバリエーションのある文字テクスチャを制作するにあたって、文字をとりかえてみます。氏名でよく見かける文字を選んでみました。


    ▲パーティクルでランダムに文字要素を並べて様々なパターンを作成。面白い名前もできます。


    ▲並べるとなかなか壮観ですね。少しずつでもテクスチャがちがうと、自然なランダム感が演出できます。


    ▲提灯を繫げるロープはこれです。電球の線も兼ねているので複雑に作成。


    ▲たくさんあるからこそ、少しずつずらすひと手間が活きてきます。


    ▲微妙なアングルを何度も模索。最終的には子供の目線の少し下からのアングルに。


    ▲実はリアルタイムでレンダリング。10倍以上速い......。


    ▲レンダリングしたままの明るい画像。このような「光りもの」は後から光を締めていった方が調整しやすいです。


    ▲グレアと現実色を追加。

    2:カラコレ&被写界深度


    ▲カーブでカラコレします。


    ▲最後に被写界深度を入れるとぐっと現実感が出ますね。これは参考にした写真がどれも被写界深度が綺麗でした。

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    Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 17

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    Road to Generalist ゼネラリストになりたい! 17

    CGWORLDオンラインチュートリアル『画龍点睛』

    今回は、8月から新しく始まったCGWORLDオンラインチュートリアル『画龍点睛』をご紹介します!

    誌面や講演よりも「Theme 限りなくリアル」なオンラインチュートリアル

    本連載『画龍点睛』では、制作過程で重要なポイントや表現的な部分について重点的にまとめて解説していますが、「細かいところがわからない」「同じようにならない」といったご意見をいただくことがあります。授業やセミナーでの解説も好評ではありますが、人数や回数、時間の制限がありネックとなっていました。そこで、時間や地理的な垣根を越えて、好きなときに好きなチュートリアルを好きなだけ学ぶことができる「オンラインチュートリアル」に可能性があるのではないかと考えました。


    バリエーションに富んだ作例

    CGWORLDオンラインチュートリアル『画龍点睛』の現在のラインナップは、基礎的な内容を包括する「画龍」と「果実」そして応用的な内容の「黒薔」「扇龍」「狐面」など。

    ▲サーフェスモデリングや基本的な構造の作成方法なら「画龍」。

    ▲3ds Maxの基本的な作業のおさらいには「果実」、各項目がモデリングのバリエーションを踏襲。

    ▲スタジオ的なライティングやディスプレイス、パーティクルの応用表現なら「黒薔」。

    ▲「扇龍」では、手法や複雑な構造をシンプルに修正できる手法を解説。

    ▲tyFlowを使用した応用的な制作事例「狐面」。

    制作工程を細部まで解説

    ▲実際に作品を制作する過程は3ds Maxの最新バージョンに合わせてリプレイしています。また、テクスチャやAfter Effectsでのコンポジットなど統合的な制作手順をご紹介。さらに、重要部分の3Dモデルも付いています。



    [Information]

    • 3ds Max 画龍点睛オンライン講座
      連載『画龍点睛』の誌面では語りつくせなかった詳細をオンライン形式でお届け。実践で役に立つ基本と応用を画龍点睛の作品を通して解説します。ゼラリストとしての作品づくりの考え方を身に着けて、さらなるステップアップを。
      tutorials.cgworld.jp

    • 株式会社画龍 早野海兵 監修
      3DCGベーシック講座[3ds Max]

      3ds Maxを本当にゼロからスタートする方のために作成したオンライン講座です。本講座は画づくりと技術アップの両面を重視しています。また、3ds Maxの様々な実践的な機能を動画で収録しているため、後々機能のリファレンスとしても使用可能です。ぜひ、この機会に3ds Maxを通してCGの世界に!
      online.dhw.co.jp/course/3dcg

    [プロフィール]
    早野海兵
    日本大学芸術学部卒業後、(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント、(株)リンクス、(株)ソニー・コンピューターエンタテインメントを経て、フリーランスで活動。2007年(株)画龍を設立。
    www.ga-ryu.co.jp
    www.kaihei.net
    Twitter:@Kai_ryu_Kai