CGコンテンツを扱う企業に、1.基本情報(ツールやチーム構成)、2.仕事内容(ワークフローやスキル)、3.文化(スタッフの一日の過ごし方や学び方など)の3項目について共通でインタビューを実施。連載を通じて業界、職種、企業ごとに具体的にどんな違いがあるのかを解明していく。
今回は「モーションキャプチャを中心とした映像制作により、オンラインライブの価値の最大化に挑戦する」をコンセプトに掲げるLOGIC&MAGICに同社のライブ制作や「ライブ制作ディレクター」について伺った。
<1.基本情報> LOGIC&MAGICのライブ制作
実績紹介
チーム構成
LOGIC&MAGIC ライブエンタテインメント部には、現在11名が所属。内訳は、エンジニアが5名、デザイナーが5名、残りの1名はライブイベントプロデューサー。
使用ツール
■モーションキャプチャ
自社スタジオにてモーションキャプチャの収録が可能。
アニメーションの調整はMotionBuilderを使用。
■リアルタイム系
Unityを主軸に、Unreal EngineやNotch、TouchDesignerを使用。
案件に応じて使用するツールを柔軟に選択し、日々新しいツールを検証するなど効率化に向けた研究をしている。
■DCC
主にMayaとBlender
■映像制作
Flame、Premiere Pro、DaVinci Resolve、After Effectsなど
VJ映像のみ、タイポグラフィを含めたもの、バーチャルステージなど、ライブによって求められる内容が異なるため、他ツールと合わせて適したソフトを使い分けている。
■DMX制御(照明・特効)
QLC+、MagicQ、TouchDesignerなど
■イラスト
CLIP STUDIO、Photoshop、illustrator
<2.仕事内容> ワークフローや求められるスキル
所属メンバー紹介
佐藤 浩一郎
ライブエンタテインメント部
映像ディレクション担当部長
松岡 翔吾
ライブエンタテインメント部
グループリーダー
大淵 康平
ライブエンタテインメント部
エンジニア
仕事内容・ワークフロー
LOGIC&MAGICのライブエンタテインメント部が携わる仕事の多くは、VTuberやバーチャルキャラクターのライブシーン制作だ。
同社のライブ制作は、顧客の要望によって技術面を担当することもあれば、コンセプト作りからライブ当日までの全ての工程を請け負う場合もある。案件ごとに仕事内容が大きく変わり、対応すべき技術も変わるため、それぞれの案件に適したワークフローを考案している。
ミニマムだと依頼から配信まで1ヶ月という案件もあれば、大規模なイベントの場合は半年前から準備にかかることもある。
ライブ案件は何作品も同時進行することも多い為、LOGIC&MAGICでは「ライブ制作ディレクター」という役職を導入している。
ライブ制作ディレクターは、案件の性質と個人の得意領域のバランスに応じてメンバーから選ばれ、見積りから作業工程の分解、チーム編成、さらには実作業に至るまで、幅広く対応する。
ここで重要なのはメンバー全員がライブ制作ディレクターを担当する可能性があるということだ。
<コンセプト設計から制作まで行う際の例>
(テーマと披露する曲が決定している案件の進め方)
1,クライアントと打ち合わせ
テーマやコンセプト、衣装デザインと楽曲など、クライアントのライブで実現したいイメージをヒアリングする。
2,技術分解と見積り作成
クライアントのイメージを元に、制作に必要となる技術や演出を洗い出し、作業内容と制作期間を策定。技術面の方針を固めつつ、チームメンバーと共に見積もりを作成する。
3,制作
ライブ制作ディレクターが中心となり、デザイナーチームとエンジニアチームが並行して動き出す。デザイナーチームは、バーチャルステージや演出映像、ライブ照明などのライブ全体の画的な演出を担当する。エンジニアチームは、バーチャルカメラや特殊効果といったライブ演出に合わせたシステムを構築する。
「クライアントさんからオーダーされるレンジは毎回違います。ライブのコンセプトやキーワードだけを頂き、デザイナーチームと一緒に内容を膨らませながらトータル演出をご提案させて頂くこともあれば、ライブ本番におけるキャラクターを動かすUnityのシステムやモーションキャプチャ、現場サポートなどライブの技術周りだけを担当することもあります。ロジマジでご相談頂く内容は本当に多岐に渡るので【ライブを実現する為には】という面でクライアントさんと二人三脚で制作しています」(佐藤浩一郎氏)
お客様のご要望に合わせグリーンバックでリアルタレントとバーチャルタレントが共演する案件にも対応している。
スタジオの特徴
LOGIC&MAGICライブエンタテインメント部は、一つの分野に特化した大勢のスペシャリストではなく、広い分野に横断的な知見を持つ少人数のスタッフで構成されている。
「スタジオの特徴としては、『リアルタイム描画を活用した高効率な映像制作』を行っている、ということが言えると思います」(佐藤浩一郎氏)
求められるスキル
バーチャルライブは日々変化し続けているため、新たな表現や技術を取り入れていく姿勢が必要だ。
「次々と新しい技術が登場してくるので、新しいものを吸収し続けるのが一番大事かもしれないですね。特定のソフトやスキルだけを学ぶのではなく、ゲームエンジン、映像制作ツール、DCCツールなど、様々なものに触れてスキルを伸ばしていくようにしています」(松岡翔吾氏)
<3.企業文化>スタッフたちの働き方や学び方
スタッフの働き方
LOGIC&MAGICでは個人ごとに働き方が違う。作業のしやすさを各々が考え、出社・リモートを日によって選択している。(フルリモートのスタッフもいる)
「エンジニアに限定しても、それぞれ得意なことが少しずつ違うので、スケジュールも違えばやることも違ってきます。現場が得意な人もいれば、コーディングを黙々とやるのが好きな人もいるので、それぞれの適正に合わせて得意なことをやらせてくれているところがありますね」(大淵康平氏)
「デザイナーチームは2日に1回ミーティングを行っています。エンジニアリングは仕様が決まればそのゴールに向かって進んでいきますが、デザインの場合は漠然としたゴールに向かってどう枝葉を広げていくかという進め方なので、間違った方向に進まないように話し合いの場を設けているんです」(佐藤浩一郎氏)
インプット方法
「X(旧Twitter)を見ることもありますし、個人のブログやYouTubeを見ることもあります。書店に行って本を読むこともありますし、ガジェットの展示を見に行くこともあります。入社前から関連技術の研究や開発に参加していたので、自然と情報を集めるような習慣が身に付いているのかなと思います。自分の興味に従って調べたり手を動かす時間が、一番インプットされているような気がします」(大淵康平氏)
・Unityゲーム プログラミング・バイブル 2nd Generation
・バーチャルプロダクションの教科書
・Unity公式の動画と解説
「他社さんの作っているバーチャルライブを意識的によく見るようになりました。やはり移り変わりが激しい業界なので、今どういうものが流行っているのか、どういう演出がなされているのかをチェックして、自分たちの業務に活かせないかを考えるようにしています。他にもアニメやゲームのビジュアルブックなどで、小物のデザインやキャラクターの見せ方を参考にすることもあります」(松岡翔吾氏)
・ラブライブ!スクールアイドルフェスティバル Aqours official illustration book5
・バンドリ! ガールズバンドパーティ! ビジュアルブック Vol.4&5
・初音ミク「マジカルミライ」10th Anniversary 公式ビジュアルブック
「TikTokで海外のライブや照明・特効会社のデモ映像などを見て回っています。日本の花火と海外の花火が違うように、文化の違いで照明の表現も異なるため、学ぶことが多いんです。あとはインプットだけではなく、アウトプットをしている時に、より理解が深まるのを感じますね。遊んでいる時が一番技術が伸びて定着していると思います。」(佐藤浩一郎氏)
・JCLIGHT
・china stage lighting
・Fondlites Stage Lighting
LOGIC&MAGICでは各メンバーのアウトプットの場としてブログを開設し、各メンバーの得意分野や案件で培ったスキルなど様々な情報を発信している。
TEXT_オムライス 駆
INTERVIEW__山下一貴 (CGWORLD)
EDIT_中川裕介(CGWORLD)