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    MVN STUDIOでプレビューまたは撮影したモーションデータはAutodesk MotionBuilderへリアルタイムにモーションを流し込んだり(要オプション)、Maya, Max, SoftImageなど各種3DCGソフト上で簡単に開くためのエクスポート機能を搭載しているため、楽に運用できるだろう。実際のデータを見てみるとかなりの高い精度で撮影のままの動きが再現されているのが分かる。特にその場での動きに関してはほぼ完璧と言ってもいいレベルだろう。ただし、移動量の多いモーションや特殊な撮影の際には多少の誤差が発生するが、そういう場合には適切な対処をしてやれば問題無く再現することができる。以下の項目で、それらの技術な改善方法を解説していく。

    モーションデータの編集の流れ

    ここでは、MVNでとられたモーションキャプチャデータをアニメーション制作のフローの中での運用性を、実作業の観点から見ていきたい。作業の流れは以下の通りだ。

    モーションデータの編集の流れ①

    ①MVNSTUDIO上で撮影した生データ(.mvn、二人撮影の場合は.mvns)をMVNStudio上でFBX形式で書き出し、MotionBuilder上でMVNに付属するPhythonスクリプトMVN_FBX_importをアセットブラウザー上から開き、撮影データを流し込むためのアクターの元データを用意

    デモーションデータの編集の流れ②

    ②Importで各々の頂点情報のみのデータをMVNStudio上で書き出したFBXファイルから読み込む。

    モーションデータの編集の流れ③

    ③MKMVN01.pyをアセットブラウザーから選択した状態でショートカットのF10 を押すとPythonEditorにあるExcute ActiveWork Areaを実行する。するとMVN_FBX_importで配置されたアクターデータに撮影したモーションデータが流し込まれる。

    モーションデータの編集の流れ④ モーションデータの編集の流れ④

    ⑤このモーションデータを実際に使用するキャラクターにインポートすれば完成。

    なお、このデータはコントロールリグとして保存されているため、プロットする前の段階として大まかなアニメーションの調整が容易であると言える。さらに、そこからプロットすれば、それぞれのすべてのキーが打たれたデータが作成されるため、キーリダクション等の作業や細かいモーション調整が可能になる。今回弊社では実際に撮影を行なって検証したのだが、全200テイク程の膨大な撮影データになってしまったため、自社で作成したPythonスクリプトを使用することで、上記のインポート作業をすべて自動化してヒューマンエラーの回避と共に、大幅な作業時間の短縮を実現できた。

    検証:走る人間のモーションキャプチャデータの運用

    実際にダッシュを行なったモーションの撮影データを読み込んだところ、撮影の精度としては体の各パーツはほぼ完全にキャプチャできているが、やはり腰の高さ情報の甘さと多少のノイズ、またゴール地点の位置が本来の位置とズレが生じるという誤差が発生した。そういった箇所についてはMotionBuilder上で調整を行うのだが、腰の高さは本来の高さよりも多少足らない印象になることが多く、rootとなるオブジェクトの高さ情報のモーションカーブを下位置を基準に拡大スケールさせれば、ほぼ本来の動きと同じ印象になった。また、最終位置がずれてしまう点に関しては、モーションレイヤーを追加し、走り出しの位置にキーを作成し、ゴール地点で本来の位置に合わせれば問題無くほぼ撮影したままのモーションを再現することができた。 本来、歩きや走りといったモーションは本来ループモーションを作成して対応するのだが、MVNを使用すれば撮影範囲が非常に広いのでデータ削減やゲーム等への実機組み込み等の必要が無ければ撮影したデータをそのまま使用して完成させることも可能だ。 プロップを掛けた後のデータに関してはほぼノイズのないデータではあるが細かい調整が必要な場合、フィルターのKeysonFlameを使用して小数点以下の場所に置かれたキーを指定したフレームレート上に配置し直し、Resampleを使用することでフレームとフレームの間に不要なキーを削除することができる。そこから更にKeyReducingを使用すればアニメーションカーブを維持したままキーを減らすことができるのだが、自動的に残されたキーの位置が修正しづらい場所になってしまうため、基本的には手作業でキーの削減をしてあげた方が時間は掛かるが結果更に良いモーションにできると言えるだろう。

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    rootとなるオブジェクトの高さ情報のモーションカーブを下位置を基準に拡大スケールさせれば、ほぼ本来の動きと同じ印象になった。

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    フィルターのKeysonFlameを使用して小数点以下の場所に置かれたキーを指定したフレームレート上に配置し直し、Resampleを使用することでフレームとフレームの間に不要なキーを削除することができる。

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    検証:アクションカット撮影での運用度

    アクションカットを撮影する場合、トランポリンや吊りを使用することがあるが、MVNは光学式とは違い、カメラの配置等を意識する必要が無いため、何のストレスも無く撮影を開始することができる。ただし、トランポリンの使用時等はセンサーが非常に硬質なため、腰や、手のセンサーには保護できる道具を用意しておくと良いだろう。また吊りの撮影時には一度Tスタンスを取る必要があるため、地面に下ろせる準備やリポーズ用の高台を用意しておくと撮影が円滑に進むだろう。また、本来の設定のままでは地面の位置を自動的に探してしまうため、撮影中、体の位置がガクガクとノイズの様にブレてしまい、ただしくプレビューする事ができない。宙づりの撮影を行う際は腰をすべての中心位置にすることで、腰がきちんと固定され、綺麗で精細な撮影データを撮ることができる。(ちなみにこれはMVN Studioの中にあるData Fusionメニューから、撮影のシナリオをPelvis fixed に変更してやる事で撮影後でも変更可能だ)MotionBuilderでデータを確認してみるとトランポリンのデータはやはり、トランポリンに埋まった状態とそこから大きくジャンプした高さ情報がうまく撮ることができていないため、その位置のみ微調整すれば、ほぼ撮影データと同様の結果をすることができるだろう。吊りの撮影に対しては腰の動きが完全に固定された状態のデータになるため、基本的には後から手付けで調整してやる必要がある。撮影時にビデオカメラでも撮影しておくことで、ロトスコープも行える準備しておくと良いだろう。 この様に特殊なモーションの場合、MVNでは多少撮影時に気を付けなければならないポイントもあるが、そこさえきちんと押さえてしまえばどんな撮影でも、場所や空間を選ばず、容易に撮影が開始できるのは非常に有効と言える。

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    トランポリンに埋まった状態とそこから大きくジャンプした高さ情報がうまく撮ることができていないため、その位置のみ微調整すれば、ほぼ撮影データと同様の結果をすることができるだろう

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    吊りの撮影に対しては腰の動きが完全に固定された状態のデータになるため、基本的には後から手付けで調整してやる必要がある

    まとめ:CGプロダクションから見た有用性

    MVNを使用するメリットとしては撮影場所を選ばず、非常に広いスペースでも撮影できるところにあるが、それ以上に日本のCGプロダクションにとって重要なのは、撮影専用の空間を用意せずとも、スタジオの空いたスペースや会議室の使用していない時間を使用して撮影可能な融通の効く撮影に対する自由度の高さにあるのではないか。MVNは金属さえ近くになければどんな狭い空間でも撮影が可能であるし、スーツを着るのにも難しい設定が必要無い、そのため、慣れた人間であれば15分から20分前後で撮影を開始することができる。これまでのモーションキャプチャに対してのイメージといえば、しっかりとした専用のスタジオで入念に準備を行なった上で撮影を行う物だったが、MVNを使用すればかなり気軽に、かつコンパクトに撮影を進めることができる。実際の運営方法としては、社内の空いたスペースでの撮影はもちろん、広い空間が必要な場合には各公共施設で貸し出されている学校の体育館や、公民館等の広めの会議室であれば一時間2,000円程度でも借りられるのでお勧めだ。カメラの位置を探しキャリブレーション作業等の準備の必要が無いMVNであればそういった場所でも問題が無いのも魅力の一つだ。撮影の際に必要なスタッフだが、簡単な撮影であればアクターの人数とMVNをオペレーションをする人間だけでも撮影することは可能だ。1日何テイクも大規模に撮影する場合は、撮影データを記録するスクリプター用の人間も用意しておけば後からデータの混乱を防ぐことができる。撮影データは撮影順に自動的に名前が付けられるのだが、撮影後、別のHDDにバックアップを取った上ですぐにファイル名をスクリプターと照らし合わせ変更するようにすれば問題無い。

    メーカー担当からの言葉

    「弊社は以前より測定器のセンサーを開発してきました。その流れでエンターテイメント業界で活用できる計測器およびセンサーとして慣性式モーションキャプチャMVNが開発されました」と語るのはXSENS社のアジアセールス担当のThomas van Els氏。「センサーに関しては新たなものの開発が進められていますが、その中で大きなテーマとなるのが、広い測定距離を高い精度で行うこと、そして小型化となります。その点でMVNもそうしたテーマから、広いキャプチャエリアを実現し、さらにスーツに内蔵してもアクターの動きの邪魔にならないという大きな利点を生み出しました」とプロダクトマネージャのHein Beute氏。その点は、これまでのレビューを通して、読者の方にも理解していただけただろう。今後もまたさらなる小型化、高精度化、キャプチャエリアの広範囲化を計る方針とのことで、よりその製品の個性、利点が増すことになるだろう。

    XSENS

    左から、Hein BeuteThomas van Els(ともにXSENS社)

    MVN機材一式

    MVNシステム構成

    ■MOCAPスーツ、センサ、バッテリ

    小型慣性センサは標準で17個(オプションにて、1台のMVNで最大20個まで同時使用可能)。センサとPC間はワイヤレスで通信し、スーツは動きやすい伸縮自由なライクラ素材を使用。各センサ間のケーブルは埋め込み配線となっており、激しい動きにも対応する。また、ソフトウェアを上位版の「MVN STUDIO Pro」にすれば、1台のPCで最大4人までの同時キャプチャが可能。スーツのサイズは、S/M/L/XL/XXLから選択

    ■MVN STUDIO ソフトウェア

    MVNに付属するキャプチャデータを簡単な操作で記録/出力できるソフトウェア。リアルタイムにデータを表示し、23ボーンの出力が可能となっている。再生、編集、キャリブレーションもこのアプリケーションで行い、汎用ファイル形式 BVH、FBX、MPG、AVIムービー形式(MVN STUDIO ProではC3D形式も可)など多彩な出力をサポートしている。またオプションにて、Autodesk MotionBuilderプラグインにも対応、CGキャラクターのリアルタイムプレビューも可能

    対応OS:Windows XP/Vista/7
    CPU:デュアルコア以上
    グラフィックスボード:DirectX 9対応のボード
    入出力端子:USB2.0×2ポートまたはハブ

    ゼロシーセブン公式サイト

    「MVN」に関するお問い合わせ

    ゼロシーセブン株式会社
    TEL:03-3560-7747(担当:池田)
    FAX : 03-3560-7748
    e-mail:info@0c7.co.jp

    iiko Experienceコンテスト

    iiko Experienceコンテスト(受付2011/9/30まで)

    最後に、Autodesk社が開催しているiiko Experienceコンテスト(受付2011/9/30まで)のアニメーターエントリー部門では、このXsens MVNで収録したモーションデータを作品制作のための素材として自由にダウンロード可能となっている。ぜひこの機会に、MVNデータをご自身で検証されてみてはしてみてはいかがだろうか?

    http://iiko.autodesk.com/index.php/ja