澤田友明氏と見るAMD Ryzen™・Radeon™搭載PC! クリエイターの視点でおすすめハードをご紹介 CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス イベントレポート
2025年11月23日に開催されたCGWORLD 2025 CREATIVE CONFERENCE。6年ぶりとなる”リアル会場”での開催となった今回は、展示ブースにも大きな賑わいが戻った。
本記事では、同イベント内の展示エリア『―ハードに詳しいクリエイターはAMDを選ぶ― AMD搭載PCエリア』について、CGWORLD前アドバイザリーボードメンバーとして、最新ハードウェアをレポートしていただいていた、CGアーティストの澤田友明氏にレポートを取材・執筆いただいた。
全4社のBTO PCメーカーによるAMD Ryzen™・Radeon™搭載PCの特長を、クリエイターならではの視点で澤田氏にご紹介いただく。
CGWORLD 2025 クリエイティブカンファレンス
澤田友明
株式会社コロッサス CGデザイナー。
cls-studio.co.jp
広告業界やB2B関係のCG制作で長年R&Dを担当。グローバルイルミネーションレンダラについても初期段階から様々な検証を行なってきた。現在はレンダリングのスペシャリストとして広く知られるとともに、専門学校の講師も務める。自宅ではAMD製品搭載CPUを搭載した自作PCを愛用しており、PCのハードウェアにも精通する。
CGWORLD 2025 CREATIVE CONFERENCE レポート
こんにちは、コロッサスの澤田です。2025年11月23日に開催されたクリエイティブカンファレンス2025で行われたAMD搭載PCエリアのレポートをお届けします。
カンファレンスで取り上げられるトピックは3DCGソフトの使い方から、コンテンツの制作フローの裏側まで話は多岐にわたりますが、ハードウェアに関する情報もクリエイティブには外すことはできないものです。
私自身も会社ではAMD製品搭載デスクトップPCを2台、自宅でもAMD製品搭載デスクトップPCを2台とAMD製品搭載ノートPCを2台使用しています。AMD製品を愛用する一番の理由はCG制作で24時間365日稼働させていてもトラブルがなく安定している点で、個人で購入する際にはコストパフォーマンスが優れているところも外せないポイントになりました。
今回、カンファレンスではAMD主催のもと各BTO PCメーカーによる最新のAMD搭載PCが展示されており、赤いベレー帽がトレードマークのAMD 佐藤美明氏が直接、来場者の質問に回答されていました。本記事では、このブースで展示されていた最新ハードウェアをCG制作者の目線でレポートしてみたいと思います。
メンテナンス性抜群 サードウェーブ GALLERIA XDR7A-97XT-GD・GALLERIA ZL9R-R57T-6
GALLERIA XDR7A-97XT-GD Ryzen 7 9800X3D搭載
- CPU
AMD Ryzen 7 9800X3D (4.7GHz-5.2GHz/8コア/16スレッド)
- CPUクーラー
(水冷式) ASETEK 624S-M2 (240mm/非発光)
- GPU
AMD Radeon RX 9070 XT 16GB GDDR6 (HDMI x1,DisplayPort x3)
- マザーボード
AMD B850 チップセット ATXマザーボード
- メモリ
32GB (16GBx2) (DDR5-4800)
- ストレージ
1TB SSD (M.2 NVMe Gen4 DDRキャッシュ TLC)
- 電源
1000W 電源 (80PLUS PLATINUM)
- ケース
ガレリア専用 GE-Gケース (ATX) ガンメタル x ダークグレイ
- OS
Windows 11 Home 64ビット
ドスパラで有名なサードウェーブからは2025年9月にリニューアルされた新型ケースのGALLERIA XDR7A-97XT-GDが展示されていました。これまでの経緯を引き継ぎ、前面が45度に傾斜した電源スイッチと各種ポートパネルが特徴です。
この新設計のボディではこのスイッチ・ポートパネル部分がラウンド処理されていて(電源スイッチ自体もラウンドデザインされていました!)、柔らかな優しい雰囲気となっています。デザインだけでなく大容量データの持ち運びに便利なUSB3 Type-Cのポートも用意されていて、床置きとして運用しても使い勝手が良いと感じられるケースです。
さらに特筆すべき点としては、上面及び底面のフィルターが取り外しできることに加え、吸気の要である前面ファン手前のフィルターがパネルを外すことなく横からスライドさせて取り出せる点です。
これによりメンテナンス性が格段に上がっています。サイドから見た雰囲気も適所にLEDライティングされていてクールな雰囲気も演出されていました。ごりごりのCGワークだけでなくソーシャルメディアワークなどにも似合っていると思います。
ハードウェアスペックとしてはCPUにAMD Ryzen™ 7 9800X3D、GPUにAMD Radeon™ 9070XTと申し分なく、ほどんどのCGソフトを快適に運用することができるでしょう。マザーボードにもミドルクラスのB850 Steal Legendが採用されていて耐久性が高いです。
GALLERIA ZL9R-R57T-6
- CPU
AMD Ryzen 9 9955HX (最大5.40GHz/16コア/32スレッド)
- GPU
NVIDIA GeForce RTX 5070 Ti 12GB Laptop GPU + AMD Radeon 610M
- メモリ
32GB (16GBx2) (DDR5-4800 SO-DIMM)
- ストレージ
1TB (M.2 NVMe Gen4)
- 電源
ACアダプター (240W)
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- ディスプレイ
16インチ 非光沢 WQXGA液晶 (2560×1600ドット表示) / リフレッシュレート 300Hz
もう一つ、ノートタイプのPCも展示されていました。 GALLERIA ZL9R-R57T-6は16インチの液晶を採用していますが、スリムなベゼルのおかげか、閉じた際には15インチかと思ってしまうほどのコンパクトさです。
しかし、そのスリムな見た目に反してハードウェアスペックはモンスター級で、CPUにAMD Ryzen™ 9 9955HX(16コア!)、GPUにNVIDIA GeForce RTX 5070 Ti 12GBを採用。スリムで大きなディスプレイもWQXGA液晶 (2560×1600ドット表示) / リフレッシュレート 300Hzと、UnrealEngineなどのリアルタイム系ソフトも余裕で運用することができるPCとなっています。
その分、重量は約2.4kgとやや重めなのですが、ここまでのスペックを持ち運びできるとなると、出張先などハイスペックが必要になるユーザーには良い選択肢となるでしょう。
静音×モンスタースペック TSUKUMO WE9A-A255/WB
ワークステーションモデル WE9A-A255/WB カスタマイズモデル
- CPU
AMD Ryzen Threadripper 9970X
- CPUクーラー
SilverStone製 280mm 水冷ラジエーター
- 水冷CPUファン
Noctua製 14cm 冷却ファン x2 (NF-A14 PWM)
- マザーボード
AMD TRX50 E-ATXマザーボード (ASUS Pro WS TRX50-SAGE WIFI)
- メモリ
256GB (64GB x4枚) DDR5-5600 ECC Registered※
- GPU
AMD Radeon RX 9060 XT / 16GB (HDMI 、DisplayPort x2)※
- ストレージ
2TB WD Black SN850X(M.2規格 / NVMe Gen4接続)※
- 電源ユニット
MSI製 MEG Ai1300P PCIE5(定格1300W / 80PLUS PLATINUM認証)※
- ケース
G-GEAR プレミアムミドルタワーケース (66JD)
- ケースファンオプション
フロント Noctua製 12cm 冷却ファン x3 (NF-P12 REDUX-1300PWM / 静音FAN)※
※標準構成からの変更点
詳細はこちらTSUKUMOのブースではワークステーションモデル WE9A-A255/WBカスタマイズモデルが展示されていました。モンスタースペックが必要なヘビーユーザーには大注目のモデルです。
ワークステーションでありながらケースはミドルタワー型で床面積も小さく済み、設置場所にも特に困ることはなさそうです。それでいてCPUにはAMD Ryzen™ Threadripper™ 9970X(32コア64スレッド)が搭載されているので、エフェクトシミュレーションやレンダリングなどの重い処理でも単体でこなせてしまう性能があります。
Ryzen Threadripperと共にマザーボードには18x2+3+4+4と、計47ものパワーステージを搭載したAMD TRX50を採用しているので長期運用でも安心です。
メモリは256GB(64GBx4枚) DDR5-5600 ECC Registered、電源は定格1300W / 80PLUS PLATINUM認証と土台もしっかりしています。
これらのパワーを安定運用させるためには冷却系にもこだわっているのでは? と覗いてみると、なんとSilverStone製 280mm 水冷ラジエーターに、Noctua製 14cm 冷却ファン x2というカスタムされた水冷システムでした。
水冷タイプのCPUクーラーは冷却能力が空冷と比べて高いものが多く、CPUを長時間酷使する場合でも温度上昇を抑えられます。最近のCPUはどれもCPUに余裕がある場合に動作周波数を上げて限界まで性能を引き出すタイプなので、冷却性能が高いほどパフォーマンスが高くなります。
これでRyzen Threadripperも十分に冷やせるのかと聞いてみたところ、「実際に検証を行い、冷却性能だけでなく静穏性も確保している」とのこと。ハイパフォーマンスを静かに運用できるという点は、プロダクションがワークステーションを導入する際にも特筆すべきことだと思います。
あらゆるクリエイティブ活動をカバー ユニットコム SENSE-F1B6-LCR99Z-TGX
SENSE-F1B6-LCR99Z-TGX
- CPU
AMD Ryzen 9 9950X3D
- CPUクーラー
360mm 水冷CPUクーラー
- GPU
AMD Radeon RX 9070 XT 16GB GDDR6
- マザーボード
Pro B650-S
- メモリ
DDR5 32GB(16GB×2)
- ストレージ
1TB NVMe対応 M.2 SSD
- 電源
850W 80PLUS GOLD認証 ATX電源
- ケース
ミドルタワー / ATX
- OS
Windows 11 Home [DSP版]
パソコン工房で有名なユニットコムのブースではミドルタワークリエイターPC SENSE-F1B6-LCR99Z-TGXが展示されていました。
ケース前面パネルにも描かれているiiyama PC SENSE∞(センスインフィニティ)はCGだけでなく、漫画、イラストレーション、音楽、映像などのクリエイティブ活動を具現化するためのPCブランドだそうです。
ケースはブラックで統一されており、シックな印象ですが、中身を見てみると、CPUにはコンシューマー向けとしては最上位と言える、AMD Ryzen™ 9 9950X3D、GPUにはAMD Radeon™ RX 9070 XTが搭載されていて、個人向けPCとしては最上位クラスのスペックとなっています。ブランドテーマでもあるあらゆるクリエイティブワークはもちろん、個人向けとしてはゲームなどの余暇の時間にも最高のパフォーマンスを発揮してくれるでしょう。
ケース内の拡張性も高く、極太のグラフィックスカードホルダーが装備されているので、重いグラフィックスカードを搭載してもしっかり支えてくれそうです。
また、こちらのケースは前面から吸気して背面と上面で排出するストレート構造になっています。昨今はゲーミングPCとしてガラス張りのピラーレス構造のケースも流行っていますが、吸気が前面ではなく側面になると、エアーフローが90度曲がってしまいますので、連続して重い処理をさせ続けることの多いクリエイター向けとしては、やはりこちらのようなストレート構造がおすすめです。
さらに大型のパーツを搭載するためのスペースも十分空けられているため、360mm水冷クーラーと相まって冷却性能が向上し、システムのパフォーマンスも安定しそうです。
インテリアとしても◎ 次世代ゲーミングPC インバースネット FRXAB850W/A
FRXAB850W/A
- CPU
AMD Ryzen 7 9800X3D プロセッサー
- CPUクーラー
水冷CPUクーラー(FREXAR 360 ARGB)
- GPU
AMD Radeon RX 9070 XT
- マザーボード
ASUS TUF GAMING B850M-PLUS WIFI
- メモリ
32GB(16GB*2) DDR5※
- ストレージ
2TB NVMe M.2 SSD※
- 電源
850W
- ケース
FREX∀Rケース
- OS
Windows 11 Home
※標準構成からの変更点
詳細はこちらFRONTIERでおなじみのインバースネットのブースではFREX∀R(フレクサー)シリーズのFRXAB850W/Aが展示されていました。FREX∀Rは2025年10月1日に発表されたばかりの、「異次元の楽しさと無限の可能性」をテーマに掲げた次世代ゲーミングPCブランドだそうです。見ているだけでわくわくしそうな真っ白いケースのXシリーズはコンパクトなタワー型で、背が低めに抑えられているので机の上に置いても映えそうです。
販売店などではゲーミングPCとクリエイター向けPCが明確にカテゴライズされている場合もありますが、その実、ハードウェア的には同じパーツを使用していることも多いです。
実際このXシリーズもCPUはAMD Ryzen™ 7 9800X3D、GPUはAMD Radeon™ RX 9070 XT、CPUクーラーにはFREX∀R オリジナル360mm 水冷クーラー、電源も850wとクリエイティブ用途にも十分なスペックを誇っています。
CGを勉強中の学生や趣味でCGに触れている方にとっては、クリエイティブワークからSNS、ゲームまで幅広く活用できるPCを検討する場面が多いでしょう。そうした人には、ゲーミングPC風のLEDライティングと、白くてコンパクトなケースはかなり刺さるのではないでしょうか。しっかりしたパフォーマンスは欲しいけど見た目も楽しみたいという方に、とてもフィットするPCだと思います。
クリエイター視点でAMDの魅力をおさらい AMD Radeon™ AI PRO R9700 32G
もう一つ、AMDのブースではドイツ be quiet! 社のLight Base 900というケースにAMD Ryzen™ Threadripper™とAMD Radeon™ AI PRO R9700 32Gを2枚搭載したハイエンドPCを展示していました。横置きレイアウトも可能な黒で統一されたピラーレスケースにオレンジ色のLEDがシックな雰囲気を醸し出しています。
特筆すべきはこのPCに搭載されているGPUです。AMD Radeon™ AI PRO R9700 32Gは生成AIで使用されるLLM(大規模言語モデル)の処理も行える、32GBの大容量ビデオメモリーを搭載したワークステーション向けビデオカードです。
AMD Radeon™ RX 9070 XTと同じRDNA4アーキテクチャを採用し、4096基のストリームプロセッサと128基のAIアクセラレーターを搭載。
ビデオメモリーには32GBものGDDR6を備えているため、長尺や解像度の高い生成AI処理に対応できるGPUとなっています。AMD公式サイトにはGeForce RTX 5080と比較してLLMパフォーマンスが3〜4倍に達するというデータも公開されています(詳細はこちら)。
これまで生成AIをローカル環境で使用する場合、満足のいく結果を得るには16GB以上、できれば24GB以上のビデオメモリーを搭載しているGPUが必要でしたが、それを求めようとするとメーカーによってはかなり高額なGPUを選ばざるを得ませんでした。
今後も高性能なAIモデルが登場するたび学習容量が増えて、ビデオメモリーをより消費するようになってくるでしょう。しかし、このAMD Radeon™ AI PROは32GBもの大容量ビデオメモリーを搭載してコストパフォーマンスも優れているため、AMD Radeon™用に環境が整備されれば、ハイエンドでしかできなかった生成AI環境がより身近になってくるのではないかと思います。
価格も同容量のビデオメモリーを搭載したものと比べてかなり低価格で提供されているため、最適化されたAI処理ではかなりのコストパフォーマンスを発揮できるでしょうし、マルチGPU構成も容易に構築することができるので、ローカル環境で生成AIを運用する場合の良い選択肢となります。
そのほか、大容量かつコストパフォーマンスに優れていることは、処理負荷が高いクリエイティブワークへの導入で大きなコストメリットも期待できますので、大規模なゲーム開発などでも有効な選択肢になるのではないでしょうか。
関連記事:AMD Radeon™ PRO グラフィックスの実力、現場の"本音" ――セガ・ソニックチームが明かす、ハイエンドGPU導入の舞台裏
ハイエンドからビギナーまで、選択肢は増加中
セッションの合間には多くの来場者がブースを訪れて興味深く見入っていました。クリエイティブカンファレンスには、CGソフトウェアを駆使して制作作業を行なっているプロダクションの方をはじめ、業界を目指して今まさに勉強中の学生、CGに興味があって趣味としても極めてみたい方など、さまざまな方がご来場されていましたが、それぞれ立場は異なっていても、ハードウェアに関することは共通の話題となっているようでした。
以前は、AMD製のCPUやGPUはPCパーツにこだわりのある方が選ぶイメージをお持ちの方もいらっしゃったかと思うのですが、ここ数年で大きく様変わりし、関連製品を含め様々なメーカーからマザーボードやグラフィックカードなどがリリースされています。
今回ご紹介したように、AMD製品搭載PCだけでも多種多様なラインナップがあり、そして今もなおラインナップは増加し続けています。AMD製品の搭載を前提に、スペックやコスト、見た目など皆さんのこだわりに合わせた選択肢も今回見えてきたのではないでしょうか。
選択肢が増えることによって、ハイエンドからビギナーまでそれぞれの使用用途にあったものを選ぶことができるようになりますので、AMDにはこれからもこの勢いをもって業界を盛り上げていってほしいと思っています。
TEXT&PHOTO_澤田友明
EDIT_遠藤佳乃(CGWORLD)