スペックの向上にともない、ノートPCでもさまざまなCG制作が可能になった昨今。CGを学ぶ学生にもそのニーズが高まっている。ただし、経験の少ない学生では「どんなノートPCを購入すれば良いのか?」と迷っているケースもあるだろう。
そこで今回は、CGプロダクションのコロッサスに所属し、近年は専門学校で講師も務める澤田友明氏が、教育現場におけるPC環境の現状や課題、学生の意識などを解説。さらに、マウスコンピューターのクリエイター向けノートPC「DAIV 6H」と「DAIV 6P-RT」を検証してもらった。
最新情報や現場のノウハウなどを教えることが講師の重要な役割
CGWORLD(以下、CGW):始めに、コロッサスでの役職や仕事内容などを教えてください。
澤田友明氏(以下、澤田):特別な役職はなく、職種としてはCGデザイナーになるでしょうか。また、Arnoldが普及し出したときにさまざまな情報発信を行なったので、その流れもあって「レンダリングのスペシャリスト」という立ち位置でもあったりしますが、モデリングやアニメーションにも携わりますし、R&Dや撮影、現地取材などをやることもあります。そういった意味では、ジェネラリストとも言えますね。
仕事内容としては、社内の制作業務を担当することもあれば、新人教育を担当することもあります。また、個人指名の特別案件などを任されることもあります。最近では、Netflixのドラマ『バイオハザード: インフィニット ダークネス』の制作においてレンダリング周りを担当。実務作業をこなしつつ、アドバイザーのような役割も果たしました。
株式会社コロッサス
CGW:そのような現状にあって、どのような経緯で教育機関の講師をやることになったのでしょうか。
澤田:これまでに社内での新人教育以外にも、さまざまなセミナーで講師を務めてきました。幸い、その評判が意外と良かったこともあってか、専門学校から非常勤講師の依頼がきたわけです。タイミング的にはコロナ禍の直前だったのですが、社内業務にちょうど余裕があったのでチャレンジしてみました。
CGW:セミナーでの経験が活きているというのは興味深い話ですが、セミナーと専門学校の講義との違いは何でしょうか。
澤田:一般のセミナーの参加者は基本的に目的意識がはっきりしていますし、求める情報なども共通しています。一方、専門学校の学生は将来のビジョンが見えている人ばかりではないので、必ずしも明確な目的意識を持っているとは限りません。そのため、学生間でレベルの違いが出てしまいますし、積極性のない学生も存在するというのは、自分にとっても小さくない学びでした。
澤田友明氏
制作会社コロッサスのCGデザイナーで、現在は日本電子専門学校の講師も務める。さらに、レンダリングのスペシャリストとしても広く知られ、多くのセミナーやイベントなどに登壇している
CGW:20歳前後の学生が集まる専門学校というのは、一般のセミナーとは大きく異なるということですね。そのような背景を踏まえて、専門学校の講師には、どのような役割が求められるのでしょうか。
澤田:学生に積極性をもたせるというのも、役目の1つかもしれません。個人的に重要だと感じているのは、現役のCGデザイナーとして「現場で求められる知識やスキルを伝えること」です。CG業界は移り変わりが早いので、5年前のことをやってもあまり意味がありません。いま何が流行っていて、それで何ができるようになるのかを教えてあげる必要があります。昨今であれば「AI」や「USD」などが挙げられるでしょうか。
さらに、仕事のやり方や厳しさなど、現実に即した内容も教えています。例えば、仕事にはやり直しすることもありますが、待っているだけでは誰もそのリカバリー方法を教えてくれません。ですから「どうやってリカバリーすればいいのかに頭を回転させよう」とアドバイスすることもあります。また、仕事内容のバランス感覚も大切で、「品質」「スピード」「予算」という3つの視点から「ベストの落としどころを考えながらやることも大事だ」と伝えています。
CGW:CG制作の技術や情報だけでなく、ノウハウや考え方なども意識させることが、実務経験のある現役CGデザイナーが教鞭を取る意義だと言えますね。
澤田:モデリングやアニメーションのTipsなどはWeb上にたくさんあるので、そのあたりは学生が自ら吸収してくれます。Webでの情報収集能力は若者の方が長けているので、むしろ学生の方がよく知っているケースもあるくらいです。しかし、実際の現場でのノウハウや考え方については、Webだけではなかなか得られません。だからこそ、足りない部分を補ってあげることが、講師の大きな役割でしょう。
コスパに優れた20万円台を購入して残りの予算でアセット購入が有益
CGW:専門学校のPC環境はどんな状況でしょうか?
澤田:学校によって違うので一概には言えませんが、例えば学生数の多い学校だと、学生の数に対して学校のデスクトップPCの台数が足りていないというケースがあります。そのような学校では当然、学校のPCを利用できない学生がいるため、学生はノートPCを購入し、それを持って通学する必要があります。
また、専門学校では基本的に高性能なデスクトップPCを教室に導入しますが、そのPCを4~5年利用し続けることもあります。例えば、現在であれば専門学校のデスクトップPCには「16コアのCPU」「32GBのメモリ」「GeForce RTX 3070以上のGPU」といったレベルのスペックは必要だと感じていますが、このPCでも4年経てばパフォーマンス不足は否めません。そうなると、学生の実力以外の部分で学業の足を引っ張る可能性が出てしまうだけに、せめて3年に1回は買い換える必要があると考えています。実際、年数の経った旧モデルのPCしかない教室では快適に作業できないことも多く、学生によっては高性能なノートPCを購入し、それを持参して授業に臨むケースもあるのです。
CGW:専門学校におけるPC環境の課題が、そのままノートPCのニーズにつながっている印象ですが、学生はどのような基準でノートPCを選んでいるのでしょうか。
澤田:最も重視するのはやはり「パフォーマンス」です。そのため、これまでは必然的にハイスペックが売りのゲーミング用ノートPCが選ばれていました。ただ、17インチのゲーミングPCは重量が3kgを超えるような製品もあり、ACアダプタまで含めると、通学の持ち運びに適しているとは言えません。さらに言えば、光るイルミネーション機能や全体のデザインは好みが大きく分かれるところ。そのため、パフォーマンスを最優先するとはいえ、重量は軽い方が当然いいですし、デザインもスタイリッシュな方がいいという声はありました。
CGW:もし学生がノートPCを購入するとしたら、どのようなアドバイスをしますか。
澤田:まずは「時限式」だということを伝えます。最新モデルを購入しても10年はさすがに使えず、3~4年が目途で、それを踏まえたうえで重要となるのが「コストパフォーマンス」です。例えば、40~50万円を費やせば超ハイスペックな1台は手に入りますが、そのようなPCは得てしてコスパには優れていません。個人的にちょうど良いと感じているのは「20万円前半」。30万円でもいいのですが、その金額を出せるのであれば、たとえば20万円台のPCを購入し、残った予算を別のモノに使った方がいいでしょう。
例えば、最近ではオンデマンドサービスが充実しているので、さまざまなアセットデータを入手できるサービスに予算を使うのがお勧めです。作品の1~10までをすべて自分で作るのではなく、もしCGの世界観を構築することが好きなのであれば、モデリング作業はモデルデータを購入することで効率化し、自分のやりたい作業だけに注力すると良いでしょう。その方が最終的な作品のクオリティが上がり、見栄えも良くなるので総合評価も高くなる。そういった予算のかけ方が有益だと、学生にはアドバイスしますね。
パフォーマンス重視ならDAIV 6H、コスパ重視ならDAIV 6P-RTがお勧め
CGW:今回は専門学校の講師目線で、マウスコンピューターのクリエイター向けノートPC「DAIV 6H」と「DAIV 6P-RT」を検証してもらいました。率直な感想は?
澤田:どちらのモデルも高いパフォーマンスを発揮してくれたと感じました。「パフォーマンス」を重視する学生も十分に納得できる内容で、しかもコストパフォーマンスにも優れていたので、DAIVシリーズはゲーミング用ノートPCに代わる新しい選択肢になり得ると実感します。
また、使用するソフトウェアや処理内容によってCPUやGPUの実力を存分に発揮できるケースとできないケースがあることもわかりました。検証の詳細は後述しますが、その点はPC選びの参考にしてもらえれば幸いです。
例えば、第12世代のインテルCPUはシミュレーションやレンダリングといった大きな負荷のかかる処理ではその優れた性能をしっかり出し切ってくれましたが、写真の現像や動画の編集といった領域では出し切れていない印象でした。この点については明確な原因がわからなかったので考察の域を出ませんが、ソフトウェア側で最適化されていない可能性もあると考えられます。GPUも、GPUのメモリ不足が処理速度に少なからず影響していただけに、「GeForce RTX 3060以上を選ぶべきか」といった点は作業内容によって熟慮する必要があるでしょう。
CGW:デザイン面についてはどうでしょうか。
澤田:スリムかつシンプルなデザインで、しかも1.6kg前後という軽さは、非常に魅力的でした。軽い方が毎日の持ち運びには有利です。ゲーミング用ノートPCではまかないきれないニーズをクリアしているという意味でも、DAIVは優れた製品だと思います。実際、学生に見せたときも評判が良かったですし、自分としてもお勧めです。
CGW:そのほか、気になった点はありますか?
澤田:まず、かなり小型化されたACアダプタはとても気に入りました。ゲーミング用ノートPCを筆頭に、GPU搭載のハイスペックなノートPCはACアダプタが大きくなりがちなため、持ち運びには不向きです。その点、通常のノートPCに引けを取らないサイズ感のACアダプタは、毎日持ち運ぶ学生にとってはとても貴重でしょう。また、キーボードもキーピッチが広いうえにテンキーも装備しているので、CG制作を快適にこなせるという意味では嬉しいポイントです。
澤田:さらに、排熱の仕組みがとても優秀だと感じました。例えば、ディスプレイを開いたときに背面から出てくる排熱がディスプレイの前面に当たるタイプや、側面から排熱されて本体横でマウス操作をする手に排熱が当たるタイプがあります。一方、今回の2モデルは背面から排出するタイプですが、ディスプレイを開いたときに画面下の隙間から上手く排熱する仕組みになっていました。加えて、底面にある吸気用のスリットもデザイン的に整理されているなど、筐体の外観はスリムな点も含めてかなり仕上げられていると感じましたね。
CGW:性能とデザインともに好印象という感じですが、今回の2機種はどんな人にお勧めですか。
澤田:上位モデルの「DAIV 6H」は、パフォーマンス重視でGPUを使ったレンダリングもバリバリやりたい人向けでしょう。下位モデルの「DAIV 6P-RT」は、GPUのレンダリングはそこまでやらないが、CPUのパフォーマンスはしっかりと欲しいほか、コストパフォーマンスも重視したい人向けかなと思いました。
ちなみに、自分のニーズとしてはDAIV 6P-RTの方が合っている印象です。なぜかというと、ノートPCで何日もレンダリングするようなことはしないですし、激重のレンダリングはデスクトップPCでやった方が現実的だからです。逆に、出張の際やカフェなどでくつろぎなら作業をしたり作品を作ったりするような用途であれば、DAIV 6P-RTでもまったく問題ありません。見た目のデザインは変わらないので、コストパフォーマンスの点からもDAIV 6P-RTかなと思いました。
検証機「DAIV 6H」と「DAIV 6P-RT」の概要とポイント
今回は、マウスコンピューターの「DAIV 6H」と「DAIV 6P-RT」の性能を、澤田氏が用意した2台の旧型ノートPC(以下、旧モデル1と旧モデル2とする)と比較。合計4台のノートPCを使用し、さまざまなソフトウェアで多角的に検証してもらった。
DAIV 6Hは、第12世代インテル Core プロセッサーのノートPC向けCPUとしては最上位クラスの性能を持つ「Core i9-12900H」を採用。GPUにも上位モデルの「GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU」を搭載し、メモリは32GB、ストレージはNVMe Gen4×4 接続の1TB SSDとするなど、デスクトップPCにも引けを取らないパフォーマンスを発揮する上位モデルとなる。
DAIV 6P-RT(プレミアムモデル)は、第12世代インテル Core プロセッサーの「Core i7-12700H」を採用。動作周波数はCore i9-12900H に劣るものの、コア数はまったく同じとなるため優れたパフォーマンスを有している。GPUには「GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU」を、メモリは32GB、ストレージはNVMe接続の1TB SSDを搭載。DAIV 6Hと比べれば下位モデルとなるが、コストパフォーマンスが非常に優れている点はとても魅力的だ。
一方、澤田氏が用意した旧モデル1は、1つ前の第11世代インテル Core プロセッサーで最上位クラスのCPUとなる「Core i9-11950H」やプロ向けのGPU「NVIDIA RTX A4000」、さらには64GBメモリなどを搭載。現状でも、かなり高いパフォーマンスを発揮できるモデルだ。逆に、旧モデル2はやや古めの第9世代インテル Core プロセッサー「Core i9-9980HK」やGPU「GeForce RTX 2070」を搭載。メモリこそ32GBだが、最新モデルと比べると見劣りする構成となっている。
DAIV 6H
- 価格
369,800円(税込)
- CPU
インテル Core i9-12900H プロセッサー(14コア【Pコア 6、Eコア 8】 / 20スレッド / Pコア 2.50GHz、Eコア 1.80GHz / TB時最大5.00GHz【Pコア 5.00GHz、Eコア 3.80GHz】 / 24MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3070 Ti Laptop GPU
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe Gen4×4接続1TB SSD
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- ディスプレイ
16型 液晶パネル(ノングレア / Dolby Vision対応)
- 無線
インテル® Wi-Fi 6+Bluetooth 5モジュール内蔵
- 本体重量
約1.65kg
DAIV 6P-RT(プレミアムモデル)
- 価格
269,800円(税込)
- CPU
インテル Core i7-12700H プロセッサー(14コア【Pコア 6、Eコア 8】 / 20スレッド / Pコア 2.30GHz、Eコア 1.70GHz / TB時最大4.70GHz【Pコア 4.70GHz、Eコア 3.50GHz】 / 24MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3050 Ti Laptop GPU
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
NVMe接続1TB SSD
- OS
Windows 11 Home 64ビット
- ディスプレイ
16型 液晶パネル(ノングレア / Dolby Vision対応)
- 無線
インテル® Wi-Fi 6+Bluetooth 5モジュール内蔵
- 本体重量
約1.55kg
旧モデル1
- CPU
インテル Core i9-11950H プロセッサー(8コア / 16スレッド / 2.60GHz / TB時最大5.00GHz / 24MBキャッシュ)
- GPU
NVIDIA RTX A4000(8GB GDDR6)
- メモリ
64GB(32GB×2)
- ストレージ
NVMe接続2TB SSD
旧モデル2
- CPU
インテル Core i9-9980HK プロセッサー(8コア / 16スレッド / 2.40GHz / TB時最大5.00GHz / 16MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 2070
- メモリ
32GB(16GB×2)
- ストレージ
1TB SSD
検証1:Mayaでのシミュレーション時間
CPUへの負荷を想定し、Maya 2023 Bifrostを使った爆発シミュレーションを実施。その処理時間を計測したところ、DAIVの2台はDAIV 6Hが「7分59秒」、DAIV 6P-RTが「9分19秒」と10分を切る一方で、旧モデルの2台は旧モデル1が「14分」、旧モデル2が「19分」となった。これについて澤田氏は、「CPUのパフォーマンスが順当に現れる結果となった」と分析。第12世代のCPUは高性能な「Pコア」と電力効率に優れた「Eコア」という2種類のコアを組み合わせたハイブリッド・アーキテクチャが採用されており、実質のコア数も増えていることから、世代的な進化とともに「そのコア数に応じて処理速度が速くなった」と補足した。
なお、ノートPCの電源設定には電力効率を重視する「バランスモード」と性能を重視する「パフォーマンスモード」があるため、ここではDAIVの2機種でそれぞれのモードを検証してみた。すると、どちらのモードでも結果は大きく変わらなかったため、これ以降の検証ではすべてバランスモードで検証を行なった。
検証2:Blenderでのレンダリング時間
CPUとGPUのパフォーマンスをチェックするため、BlenderとCyclesの組み合わせでレンダリングを実施。Blenderの公式ベンチマークソフトのBMWとBarBerShopのシーンを使用し、「CPU」「GPU」「CPU+GPU」の3パターンでレンダリング時間を計測した。
それぞれの時間を見ると、CPUでのレンダリングではMayaと同じ傾向で差がついたが、GPUとCPU+GPUについては、DAIV 6P-RTのみが大きく後れを取る結果に。これについて澤田氏は「GPUのメモリ不足」を指摘。DAIV 6P-RTが搭載するGeForce RTX 3050 Ti Laptop GPUはメモリ容量が4GBなのに対し、残りの3モデルのGPUは8GBとなるため、「その点がボトルネックとなって結果に反映された」と解説する。さらに、処理の重いBarBerShopの検証時にDAIV 6P-RTは「GPUのメモリ不足で画面がリロードしてしまうこともあった」(澤田氏)そうだ。
検証3:Cinebenchでの動作周波数とCPU温度の推移
CPUの定番ベンチマークソフト「Cinebench」(最新バージョンの Cinebench R23)を使用し、DAIV 6Hの動作周波数とCPU温度の変化を調べた。Cinebench 1Passによる短時間のベンチマークテストでは、スタート時にターボブーストによって動作周波数が最大(Pコア:4.6GHz、Eコア:3.7GHz)にまで跳ね上がったが、CPU温度が80度に達した段階ですぐにPコアは3.1GHz、Eコアは2.6GHzへと下落。これにより、CPU温度も65度付近まで下がった。
さらに、10分間のテストでは時々ターボブーストがフルにかかるものの、その時間はごくわずか。実質的な動作周波数はPコアが3.1GHz、Eコアが2.6GHz辺りとなっていたほか、CPU温度も80度を上限としていることが分かった。
この結果から、DAIV 6Hは「CPU温度が80度を超えないように制御されているのではないか」と澤田氏は考察。その優秀な冷却性能に注目する一方で、長時間のレンダリングを実行するようなケースだと「パフォーマンスとしての“最高動作周波数”は時と場合によるが、ほぼ意味がない」と指摘した。
検証4:RealityCaptureでの3Dモデル生成
複数枚の写真データから3Dモデルを自動生成するソフトウェア「RealityCapture」を使用し、データ量の異なる3つの素材それぞれの3Dモデル生成時間を計測した。この検証ではCPUだけではなくGPUのCUDAエンジンも多用するため、CPUとGPUの総合的なパフォーマンスを確認した。
しかし、今回の検証ではなぜか旧モデルの方が優れたパフォーマンスを発揮する結果となった。確証を得られる原因が特定できなかったので考察の域を出ないが、第12世代と第11世代のCPUの比較において澤田氏は、「高効率のEコアを上手く活用できていないのではないか」と推測。また、旧モデル2が圧倒的なパフォーマンスを見せた点については、CUDAエンジンも多用するという点を踏まえて「ソフトウェア側がGeForce RTX 2000シリーズに最適化されていたという可能性は考えられる」と語った。
検証5:Capture Oneでの写真データ処理
プロユースも多い写真編集ソフトウェア「Capture One」で、画像編集での使い勝手を検証。313枚のRAWデータを使用し、「取り込み時のプレビュー作成時間」「全バリアントオート調整を行った際の処理時間」「JPEGへエクスポートした際の処理時間」を計測した。なお、検証にあたっては、USB Type-Cで接続したSSD内に保存してあるRAWデータに処理を実行した。
処理においては、RAWデータの読み込みや書き出し性能も大きく影響するため、CPUやGPUだけでなくインターフェースやストレージの転送速度なども結果に影響する。そのため、より総合的なパフォーマンスを判断できると言えるわけだが、DAIVの2モデルと旧モデル1が同じようなパフォーマンスで、旧モデル2を圧倒する結果となった。DAIVと旧モデル1で差が出なかった点について澤田氏は、「やはりEコアをしっかり使い切れていないからではないか」と考察。また、DAIV 6HとDAIV 6P-RTでも大きな差が出なかったことから、RAWデータの編集作業であれば「DAIV 6P-RTでも十分いける」と付け足した。
なお、ここで澤田氏が注意点として挙げたのは、DAIV 6HとDAIV 6P-RTのSDカードリーダーの仕様について。より高速なデータ転送が可能な「UHS-II」ではなく「UHS-I」対応となるため、UHS-II対応SDカードを挿入すると「カード本来の性能が発揮できず、転送速度が落ちてしまう」と指摘。UHS-II対応SDカードを使用するのであれば、「UHS-II対応のUSB接続のカードリーダー等を利用するのがベスト」とアドバイスした。
検証6:DaVinci Resolveでのレンダリング
動画編集ソフト「DaVinci Resolve 18」を使用し、3Dコンポジットのデリバリー処理にかかった時間を計測。3Dコンポジットは一般的な2Dコンポジットより負荷が高く、ストレージからのデータ読み込み量も多いので、ここでもPC全体のパフォーマンスをチェックした。
CPUとGPUだけでなく総合的なパフォーマンスという点を踏まえると、検証結果は概ね順当といえる。ただ、DAIV 6Hと旧モデル1であまり差が出なかったのは、ここでも「高効率のEコアのパフォーマンスが上がらなかったのが原因」と澤田氏は判断。また、DAIV 6P-RTに関しても「GPUのメモリ不足が足を引っ張ってしまった」と考察した。
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)