今年4月にグループを統合して様々な分野のクリエイターの協力関係を強化し「総合クリエイティブカンパニー」として更なる飛躍を目指す株式会社スパイス。
既存のモーションキャプチャシステム販売事業を推進するなかで、本社と同じビルに移転後には2つの撮影用スタジオを用意したほか、3Dフェイシャルスキャン事業も新たにスタートした。創業40年を迎えてますます勢いに乗る同社に、マウスコンピューター製デスクトップPC「DAIV」シリーズを導入した経緯やその使い勝手などを語ってもらった。
「総合クリエイティブカンパニー」として更なる飛躍を目指す
CGWORLD(以下、CGW):始めに、会社の概要を教えてください。
喜藤 健介 氏(以下、喜藤):CG業界では、スパイスのことを「モーションキャプチャを得意とするCGプロダクション」と認識している人もいるようですが、実際は少し違います。というのも、弊社は広告制作プロダクションとしてスタートした経緯があるからです。
そこからWebや動画、CGなどへと業務を拡大し、子会社化なども進めながらスパイスグループとしてモーションキャプチャなどの活動にも取り組んできました。そのため、CGやモーションキャプチャは、「複数ある部署の1つ」という位置づけになります。
一方で、数年前からグループ内の子会社を徐々に統合しており、今年4月にはすべてが統合される予定です。その背景には、これまで横のつながりが弱く、やり取りも決してスムーズではないという課題があったからです。
グループを1つの会社に統合し、様々な知見をもったクリエイターの協力関係をより強固にすることで、あらゆるリクエストに対応可能な「総合クリエイティブカンパニー」としての総合力を高めていく考えです。
さらに、このような動きに合わせて、2021年2月には本社が現在の赤坂に移転。CGを担当する我々の第四制作室も、2022年末に同じ場所へと移転しました。また、モーションキャプチャ事業に関してはこの移転を機に、これまで1つだった撮影スタジオを2つに増強しました。
株式会社スパイス
1984年にグラフィック制作プロダクションとして創業し、デジタルの進化と顧客のニーズに対応することで、Webや動画、CG、XR開発などへと業務領域を拡大。現在はモーションキャプチャにも力を入れており、3Dフェイシャルスキャナーのサービスも開始した。
・スパイスグループのHP
https://spice-group.jp/
・モーションキャプチャのHP
https://mocap.jp
CGW:「総合クリエイティブカンパニー」とのことですが、部署としてはどういったものがあるのでしょうか。
阿閉 進之介 氏(以下、阿閉):制作室は第一から第八まであり、例えば我々の第四制作室は3DCGやデジタルヒューマンを、第五制作室は動画やAR・VRをメインに担当するといった感じで分かれています。さらに、研究開発や企画営業、モーションキャプチャ、Web、グラフィック、撮影、コピーライトなどの部門があります。
モーションキャプチャの需要としてはリアルタイムレンダリング関連の案件が増加中
CGW:皆さんが所属する第四制作室について簡単に教えてください。
山田 翔 氏(以下、山田):会社としてモーションキャプチャの機材を販売するとともに専用スタジオも構えているので、基本的にはモーションキャプチャに関連したキャプチャ業務やCGアニメーション制作の仕事がメインです。ただ、制作するコンテンツのジャンルとしては、ゲーム、アニメ、Web、映画などさまざまです。
以前はエンタメ系のお仕事や、自動車などの工業系CGなどプリレンダー系の仕事を多く手掛けていたのですが最近は減りつつあり、キャラクターアニメーションが主流になっていますね。さらに、最近の流行りとして「VTuberやデジタルヒューマンなどをリアルタイムで動かしたい」といった需要も多くなっているので、そういったゲームエンジンを使用したリアルタイムレンダリング関係の案件も必然的に増えています。
それに伴って、モーションキャプチャ収録のご相談も多くなってきており、このたび収録スタジオも2部屋に増設したという流れになります。
また、部署の社員は基本的にゼネラリストなので、CGアニメーションに関わる業務以外でもひと通り対応可能です。そのほか、今年から新規事業として「3Dフェイシャルスキャナー」のサービスをスタートさせたので、それに関連した案件にも対応しています。
三村 郁未 氏(以下、三村):私はCGアニメーションの実務作業をすることが多いのですが、自社にモーションキャプチャスタジオがあるということで、キャプチャデータの修正作業を担当することが多いです。キャラクターのモデルのめり込み等を直していく、といった作業になります。
また最近は、UE5を使用したデジタルヒューマン案件に関わることもあり、モーション作業を通じて幅広いジャンルのお仕事をさせていただいてます。
「3Dフェイシャルスキャナー」を使った新規事業もスタート
CGW:3Dフェイシャルスキャナーの概要を教えてください。
阿閉:弊社は昨年末から、タイのLumio3D社が開発した卓上サイズの3D顔スキャナー「H3 Face Scanner」の取り扱いを始めました。従来の場合、人の顔を高解像度でスキャンするためには、撮影ルームを使って大掛かりに行う必要がありました。しかし、H3 Face Scannerは持ち運び可能な卓上サイズでありながら、かなりの高解像度で顔をスキャンできるという点が大きな特徴です。
さらに、全身をスキャンする機器のなかには、スキャンしてから3Dデータ化するまでの時間が12時間ほどかかるものもありますが、H3 Face Scannerの場合は「3~5分程度」というのもアピールポイントの1つとして挙げられます。この圧倒的なスピード感と持ち運びの容易さは、H3 Face Scannerのもつ魅力です。
山田:このようなH3 Face Scannerの特徴を踏まえ、外部への出張も含めた3D顔スキャンの撮影サービスに対応しました。これまでに培ったCG制作技術を駆使して、UE5(MetaHuman)を使ったデジタルヒューマンへの落としこみやリメッシュ対応、データ活用サポートも行なっています。
また、総合クリエイティブカンパニーの観点からいくと、将来的には企画やプロデュースなども含めたビジネス提案まで実現していきたい考えです。
>>3Dフェイシャルスキャンサービスについての詳細はこちらから
DAIVを選んだ理由は「高コスパ」、持ち運びに便利なデザインも魅力的
CGW:作業環境について教えてください。まず、使用しているDCCツールは?
山田:基本はMaya、MotionBuilder、Unity、Unreal Engine、Adobe系になります。また、3Dフェイシャルスキャンの際には、スキャンデータを高速でラッピングできるR3DS(Russian3DScanner)社のソフトウェア「Wrap」などを利用しています。そのほかにも、目についたソフトをどんどん導入していく体制になっています。
CGW:新しいソフトも積極的に導入し、業務効率をアップさせているイメージでしょうか?
喜藤:そうですね。例えば、弊社では基本的にGoogle系のサービスをベースとして使用しているので、クラウドストレージとの同期にはGoogleドライブをよく使っています。ただ、一方で弊社はMicrosoftとも契約しているので、OneDriveを使用している社員もいるほか、編集系の作業を担当する社員はSynology Driveを利用しています。
これはなぜかというと、実際に試してみるとそれぞれにメリットとデメリットがあったからです。そこで、会社としては複数の選択肢を用意し、それぞれで最適なものをフレキシブルに選んでもらうことで、効率の最大化をはかっています。
CGW:次に、導入しているPCで重視している点は何でしょうか。
喜藤:まず、スペックで重視するのはGPUです。最近はデジタルヒューマンなどをUnreal Engineで制作することも多いのですが、普通に動くというだけでなく、各種の表示設定をある程度上げた状態でも問題なく動かせるようなレベルにしたいので、GPUはできれば高性能なモデルを選びたいと思っています。
ただ、最新の上位モデルはやはり高価なので、世代を1つ落とすなどしてコストパフォーマンスにもこだわるようにしています。
阿閉:あと、リモートワークではローカルPCのストレージにデータを保存して作業することも多いので、M.2の高速SSDは必須。またメモリも、作業効率を考えると少なくとも64GBは欲しいですね。
CGW:導入しているWindows系のPCは、そのほとんどがマウスコンピューターのDAIVシリーズとのこと。数あるPCの中で、DAIVを選んだ理由は何でしょうか。
喜藤:DAIVは、コロナ禍でリモートワークに移行するタイミングで導入するようになったのですが、その際は社員の自宅用PCとして導入したことから、購入台数がそれなりに多くなりました。そのため、高コストパフォーマンスという点に魅力を感じてDAIVを選びました。
CGW:実際の使用感などで、気に入った点などはありましたか?
阿閉:本体の重量が軽いうえに、上部に取っ手、下部にキャスターを備えている点はとても嬉しかったですね。イベントなどで持ち運ぶことも多いため、非常に助かっています。
スパイスが購入した「DAIV Z9」のポイント
スパイスではこれまでに多数のDAIVシリーズを導入しており、その中の1つに挙げられるのがDAIV Z9である。DAIV Z9は、インテル第12世代CPUのハイエンドモデルである「インテル Core i7-12900 プロセッサー」やミドルクラスのGPU「GeForce RTX 3070」、64GBのメモリを搭載するデスクトップPC。
そのままのスペックでも幅広い業務を快適にこなせる高い性能を備えるが、スパイスではストレージをNVMe接続2TB SSDに強化することで、さらに作業効率を上げている。
DAIV Z9
- 価格
約35万円
- CPU
インテル Core i9-12900 プロセッサー(16コア【Pコア 8、Eコア 8】 / 24スレッド / Pコア 2.40GHz、Eコア 1.80GHz / TB時最大5.10GHz【Pコア 5.10GHz、Eコア 3.80GHz】 / 30MBキャッシュ)
- GPU
GeForce RTX 3070
- メモリ
64GB【32GB×2】
- ストレージ
NWVe接続 2TB SSD
- OS
Windows 11 Pro 64bit
問い合わせ
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6636-4323(平日:9~12時/13時~18時、土日祝:9~20時)
TEL(個人):03-6636-4321(9時~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/store/brand/daiv/
TEXT_近藤寿成(スプール)、EDIT_小倉理生