クリエイター志望の新卒学生を対象とした就活支援サイト・クリ博は、全国の学生から作品を募り、その作品の選考を通じて企業からオファーが受け取れる「ポートフォリオオンライン選考会」を通年で定期的に開催している。

本記事ではポートフォリオオンライン選考会の担当者である世羅氏をお招きし、過去の実施データを元に、企業オファーの傾向や、職種ごとのオファー割合の違い、学生が重視するポイントなど、様々な観点から最新のクリエイター新卒就活事情を読み解いていく。

次回の「ポートフォリオオンライン選考会(25卒向け)」への学生のエントリー期限は9月2日(月)23:55まで、参加を希望する企業の申し込み期限は8月9日(金)までとなっている。興味のある学生、企業は、ぜひそれまでに選考会に申し込んでほしい。

記事の目次

    昨年参加企業66社。オンライン上で美芸大・専門生の作品を一挙に選考できる「ポートフォリオオンライン選考会」

    CGW:本日は、2D/3Dの新卒採用を行っている企業さんや就職活動をしている学生に向けて、データをもとに、採用事情について教えてください。

    世羅 佑希也氏

    デジタルスケープ入社8年目の営業担当。入社してから現在までゲーム/アニメ等のエンタメ業界の企業を担当。その他就活イベントの企画や、学生との面談などクリ博の担当者として包括的に求職者と企業のマッチングのサポートを行なっている

    世羅:デジタルスケープの世羅佑希也と申します。クリ博で運営している「ポートフォリオオンライン選考会」の担当を務めています。

    CGW:改めてクリ博がどういうものなのかについてご説明ください。

    世羅:クリ博とは「クリエイター志望の新卒学生向けに特化したスカウトサービス」です。デザイナーやエンジニア、プログラマーなどクリエイター系の職種を目指す学生の皆さんに登録をしていただいて、その作品などを判断基準として企業からオファーがもらえるといったサービスです。

    クリ博ダイレクトHP

    CGW:「ポートフォリオンライン選考会」とはどういったものなんでしょうか?

    世羅:主にデザイナー志望の学生向けの施策です。学生に作品を提出いただいて、集まった作品を、参加企業の方々で一斉選考していただくといった内容になっています。そして学生の作品を気に入った企業があれば、その学生に対して就職のオファーを出していただけるようになっています。

    また、選考は全てオンライン上で完結するようになっています。2025卒の【2D/3D/UI】を対象にした「ポートフォリオオンライン選考会 」Vol.3には、IMAGICA GEEQ、Cygames、グラスホッパー・マニファクチュア、クリーチャーズ、コロプラ、セガ、トゥエンティイレブン、ポリゴンマジックグループなど多数の企業にご参加いただきました。

    またゲームプログラマー向けの選考会「ゲームプログラマーオンライン」も開催しています。こちらはゲーム開発作品が選考されます。

    CGW:開催頻度はどれくらいなのでしょうか?

    世羅:3ヶ月に1回、年に4回の頻度で開催しています。また、一度だけではなく、複数回の参加も可能となっています。

    CGW:「ポートフォリオンライン選考会」には現在どれくらいの企業が参加しているのでしょうか?また、参加企業のジャンルとしてはどういったところが多いのでしょうか?

    世羅:昨年度の実績では、年間で66社に参加していただけました。企業の分類でいうと、ゲーム関連企業が多いですね。ゲームのCG制作をしている企業、コンシューマゲームを作っている企業、ソーシャルゲームを作っているような企業、といったところが全体の7割程度を占めています。

    また、ゲーム業界以外の企業の参加も、徐々に増えつつあるといった状況です。ゲーム業界だけでなく、映像業界、アニメ業界、それから非エンタメ系の、例えば建築系などの企業にもどんどん参加していただきたいと考えています。

    変化する採用ニーズと参加学生の傾向

    CGW:オンライン選考会を通じて当初の志望と違う分野の企業に就職する学生はいますか?

    世羅:はい、そもそも学生のポートフォリオ作品と、志望先の分野が若干ずれているということもありますし、また作品が評価されてオファーを受けることで、それまで志望していなかった業界に興味を持って就職していくといった事例もあるようです。特に、2Dから3Dへ転向していく学生が多い印象です。

    ※25卒向け6月開催分結果

    CGW:複数回参加することで徐々に自分の志望を絞り込んでいくという使い方をされる学生もいるんでしょうか?

    世羅:はい、そういった活用をする学生もいらっしゃるようです。過去のデータによると、7割は年間を通じて一度しか参加しないのですが、3割は複数回参加しています。企業からのフィードバックをもらいながら、スキルアップをして再度チャレンジする学生もいます。

    CGW:まず、オファー件数の多い学校の種別や学科の傾向、地域差などはあるのでしょうか?

    世羅:基本的には学科で差が出るといったことはありません。

    ただ2Dですと、どうしても美大の学生のほうが、よりデッサンなどの基礎的な画力が高いので、オファーがかかりやすいという傾向はあります。一方で3Dはどうしても3Dツールを使っているかどうかの部分で作品のアウトプットが変わってしまうので、専門学生が有利になるといった点はあるようです。

    CGW:エントリー者の属性データを拝見しますと、専門学校が69%、大学生が28%となっています。一口に大学といっても色んな種類があると思います。その内訳はどのようになっているのでしょうか?

    世羅:大学生は、全国の芸術系大学からご参加いただいています。理工系の学生は、それほど多くないです。

    ※25卒向け6月開催分結果

    CGW:それでは逆に、企業からオファーを受けた学生の属性では偏りはありますか?

    世羅:特になかったと思います。年度ごとに作品の色が変わってくるので、この年はこのあたりが人気だな、ということはありますが。

    CGW:地域差はどうでしょうか?

    世羅:実は、地域差はほとんどないんです。もちろん割合として東京が多いといったことはあるんですが、応募もオファーも全国的に分散していて、全国でチャンスはあるという風に捉えています。

    CGW:職種ごとのオファー件数に差はありますか?

    世羅:その点については、かなり差があります。たとえば2Dの職種は、実際に企業さんに就職して仕事をされている方は少なく、フリーが多いという状況があります。なので、職種で言えばイラストレーターなどはオファーが少なくなりがちです。志望者数でいえば2Dのほうが多いのですが、オファー数で言うと3Dのほうが出やすいですね。

    特に3Dのモーションやエフェクトといった職種は需要が高くて人材が枯渇しているので、オファーを大量にもらう学生がいたりもします。


    実際のオファー件数ランキングを見ても、大体トップ3にはモーションが入って来ます。モーションだと、参加した学生の約30%がオファーをもらうというような結果が出ています。また、エフェクトはそもそもの志望学生の人数が少なくてオファー件数ランキングの上位にはならないんですが、学生一人あたりのオファー件数はかなり多くなっています。

    このあたりの職種は企業側のニーズも年々高まってきていて、かつては中途採用が多かったんですが、人材が枯渇していて新卒採用も増えてきているので、学生にとってはさらにチャンスが広がっているといった状況です。

    CGW:それぞれオファーを受ける割合で言うとどれくらいになりますか?

    世羅:2Dのイラストレーターが10%前半、3DCGモデラーが20%前後、エフェクトやモーションは30%を超えます。学生が志望する職種と、企業のニーズに乖離があるという印象ですね。

    CGW:企業からのオファーの時期で偏りはありますか?

    世羅:まず前提として、それぞれの企業ごとの就活スケジュールによって決まってしまうところが大きいんですが、傾向としては、ゲーム業界だとコンシューマー系とソーシャルゲーム系で少し動きに違いがあります。

    ソーシャルゲーム系は、三年生の夏のインターンぐらいの時期から動いている企業が一定数いらっしゃいますね。たとえばソーシャルゲームのUIデザイナーだと、早めのタイミングでオファーを出されていることが非常に多いです。

    また、3D系の学生はどうしても作品の制作に時間がかかってしまうので、3月や6月といった後ろの時期でオファー件数が増えていくという傾向があります。映像系でもVFX系とアニメ系で違いはあって、VFX系は一般的な就活と同じで3月くらいから動いているケースが多いですが、アニメ系企業のオファーは特に遅くて、6月以降になることもよくあります。

    CGW:平均的なオファー件数はどれくらいでしょうか?

    世羅:オファー対象者のみでの平均オファー数は、1.5~2件くらいです。また、ボリュームゾーンとして一番多いのは1件の方なんです。幅広い方にオファーが出ている傾向があって、オファーがあまり被らないというのはいい傾向だと考えています。

    CGW:最終的に就職が決まるには、やはり作品のクオリティが重要なのでしょうか?

    世羅:作品の良し悪しだけで決まるわけではないという印象です。作品的には当落線上だったものが、面接を経て評価が引っ繰り返るということもよく聞きます。作品の制作能力だけでなく、コミュニケーション能力なども含めて、個人のポテンシャルを見てもらえるという点は、新卒の就活ならではだと思います。

    CGW:それでは、次は学生側の視点についてうかがいます。オファーを受けた学生が重視していた点はどのようなところなのでしょうか?

    世羅:学生へのアンケート結果を集計すると、ごく一般的なことを希望する方が多いなという印象です。自分が希望する業務内容であること、志望している職種、業界であること、などですね。

    一方で、「オファーがあった企業を知っていましたか」という質問については、多くの方が「知らなかった」と回答しています。クリ博には大小限らず数多くの企業にご参加いただいていますし、中には一部の業界人しか知らないような企業も数多くあるので、オファーを受けて初めてその企業を知るというケースも多いようです。

    CGW:そう考えると、学生だけでなく、企業にとってもチャンスがありますね。

    世羅:仰る通りで、一般的な知名度はなくてもお仕事でのアピールポイントが凄くあるといった企業は多いので、そういった企業の魅力を学生に気付いてもらうきっかけにもなればと思っています。

    CGW:直近で実施される選考会の締め切りはいつになるのでしょうか?

    世羅ポートフォリオオンライン選考会 Vol.4(25卒)への学生のエントリー、提出〆切は、9月2日(月)23:55まで、参加を希望する企業の申し込み期限は8月9日(金)までとなっていますので、興味のある学生さま、企業さまは、ぜひそれまでにお申し込み頂きたいです。

    ポートフォリオオンライン選考会 Vol.4(25卒)

    CGW:今回はありがとうございました。

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    TEXT_オムライス駆
    EDIT_中川裕介(CGWORLD