常に変化する社会や人の心をとらえ、そのとき、その場で最高に面白いLIVE体験を創るLATEGRA(ラテグラ)。2016年のニコニコ超会議での初演以来、進化し続ける超歌舞伎と、北京冬季五輪に向けて開幕した「相約北京」(北京で会いましょう)国際芸術祭の開会式での洛天依(ルォ・テンイ)による「Time to Shine」のステージを事例に、その真価を紐解く。なお、本記事は「超歌舞伎篇」と「洛天依「Time to Shine」篇」に分けてお届けする。
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※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol.284(2022年4月号)掲載の「LATEGRAが創るLIVE体験 面白きこともなき世を面白く 超歌舞伎/洛天依「Time to Shine」」を再編集したものです。
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洛天依「Time to Shine」
デビュー10周年を迎える中国のバーチャルシンガー 洛天依が歌う、2022年北京冬季五輪の公式テーマソング。「相約北京」五輪文化祭・第22回「相約北京」国際芸術祭の開会式(2022年1月6日)で披露された「Time to Shine」のステージは以下で視聴できる。
www.bilibili.com/video/BV1wU4y1F7XL?share_source=copy_web
一新した3Dモデルによる洛天依の「Time to Shine」
臨機応変に最善策を練り五輪の仕事へとつなげてきた
超歌舞伎の初演より数ヶ月先行して始まった洛天依のLIVE案件は、ここ1年で大きく飛躍した。「CCTVの仕事が増え、中国を代表するバーチャルシンガーになりました。NHKの紅白歌合戦に相当する番組に出るようになったと言えばわかりやすいと思います」(藤谷氏)。CG制作スタッフは、超歌舞伎や洛天依をはじめ様々なLIVE案件に携わってきたため、過去の案件で得た知見が次の案件に活かされる好循環が生じているという。「回数をこなす中で、中国のお客さんが好む演出がわかってきました。例えば大がかりな舞台転換があると喜んでもらえるので、歌舞伎の『怪談乳房榎』の本水(本物の水を使った滝の表現)をヒントにした演出を洛天依のLIVEに取り入れたりしています。自然現象をベースにした演出や、理屈ではなく感性に訴えるアーティスティックな演出も受けが良いですね」(高橋氏)。
一方で、予想外の理由でリテイクが出ることもあるので、柔軟性とタフさが不可欠だという。「中国案件は予算規模が大きく、様々なことを試せる楽しさがあります。ただし、日本の常識では予測できない、中国ならではのリテイクへの対応が本番直前まで付いてまわるという大変さもあります」(高橋氏)。最初の頃はリテイクの度に一喜一憂していたが、近頃は最初のアイデアの上をいくものを提案したいと思うようになったという。
「Time to Shine」のステージは歌唱パートが約4分、MCも含めると約6分の案件で、1.5ヶ月ほどで制作している。本番は会場の透過スクリーンに洛天依のプリレンダー映像を映しつつ、収録映像にはリアルタイムレンダリングした洛天依のARを合成した。「モーションキャプチャを11月後半に行い、モデリング・アニメーション・演出は同時並行で12月中に終わらせ、1月6日に本番というスケジュールでした。ステージの図面が届いたのは本番1週間前でしたね。ARはギリギリまで調整できますが、今回はプリレンダーも必要だったので、タイトめのスケジュールになりました」と加藤氏は語る。洛天依のLIVE案件ではこういった進行がよくあるので、それでも動揺することはなかったという。モデリングは藤谷氏と八木治郎氏、アニメーションは増渕氏と衛祥氏が担っており、彼らだから可能なスピードだと高橋氏は語る。
キャラクターモデラー・八木治郎氏
アニメーター・衛祥氏
「ここにいるメンバーは “できます” と言ってから実現方法を考えるような人たちです。臨機応変に最善策を練り、クライアントとファンの期待に応え、次の案件につなげてきました。海を渡って仕事をするのは楽ではないですが、心を込めて育ててきた洛天依が五輪の仕事を担うまでに成長したことには、言い尽くせない嬉しさがありますね」(藤谷氏)。
<1>VOCALOID 5のリリースに合わせ、3Dモデルを一新
<2>北京冬季五輪をテーマにした演出
<3>中国語の発音を再現するモーフターゲット
代表的なモーフターゲット
増渕氏のリクエストで追加されたモーフターゲット
フェイシャルの基本的なワークフロー
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月刊『CGWORLD +digitalvideo』vol.284(2022年4月号)
特集:実践!メタバース
定価:1,540円(税込)
判型:A4ワイド
総ページ数:128
発売日:2022年3月10日
TEXT&EDIT_尾形美幸(CGWORLD)/Miyuki Ogata
EDIT_山田桃子/Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充/Mitsuru Hirota