4月27日(水)にオンライン開催された「CGWORLD METAVERSE DAY」では、3DCGを日々利用する企業やCGアーティストを招き、メタバースの現在と今後の可能性、メタバース向けコンテンツの制作方法などについて講演が行われた。今回は、REALITY、ミラティブ、三越伊勢丹&クラフターによる4つのセッションをダイジェスト形式でレポートする。

記事の目次

    「CGWORLD METAVERSE DAY」
    日時:4月27日(水)13:00〜17:00
    会場:オンライン配信
    主催:CGWORLD、株式会社ボーンデジタル
    開催協力:オートデスク株式会社
    ※アーカイブ視聴は以下のURLから(要申し込み)
    cgworld.jp/special/metaverseday/

    日本発、グローバルメタバースで創出される新たなクリエイター・エコノミー by REALITY

    最初のセッションでは、「メタバースの未来〜リアルタイムアバターコミュニケーションとクリエイター経済圏〜」と題して、REALITY株式会社代表取締役のDJ RIO氏が登壇し、メタバースプラットフォームREALITYの取り組みについて講演が行われた。

    REALITYは、自社サービスを通じてメタバースの開発や運営を行うBtoC事業の「REALITY」と、法人に対してメタバース構築などを支援するBtoB事業の「REALTY XR cloud」の2つの事業がある。

    REALITYに関してDJ RIO氏は、「REALITYはスマホさえあればメタバース空間を利用できる点が特徴です。また、グローバル化も進んでおり、全世界63の国と地域、12言語でサービスを提供しています。最近ではメタバースブームで色々なプラットフォームが生まれていますが、毎日のように使ってもらえるプラットフォームとしては珍しいのではないかと考えています」と語った。

    グローバルな成長が著しいREALITY

    DJ RIO氏の言う通り、REALITYはアクティブユーザーの平均滞在時間が170分、視聴者数に対する配信者数が38%となるなど、空間内の活動は極めて活発だ。ユーザー分布も海外が85%と、グローバル展開を見せながら大幅に成長していることが覗える。

    メタバースはその定義を巡って多くの議論が交わされているが、DJ RIO氏によると、REALTYの考えるメタバースとは、①リアルタイムでアバター同士のコミュニケーションができること、②ユーザーの手によって想像・拡張される空間であること、③空間内でお金を稼げるクリエイター・エコノミーがあること、の3つの要素がある空間だという。

    実際に、メタバースはクリエイター・エコノミーの活動を支えるという意味では、システムというよりはコミュニティの役割を果たしている。

    今後、デザイナーや建築家のような従来のスキルがメタバース空間で活かされる機会が増えそうだ。

    アニメ調のアバターを土台に、メタバースに配慮した表現を by REALITY

    続いて、REALITY株式会社のアバターチーム アートディレクターのK725氏、Unityチーム マネージャーのようてん氏が登壇し、2つ目のセッション「メタバースで必要とされるアバターデザインとは」が行われた。

    K725氏によると、メタバースを利用する10代、20代は国内外問わずアニメに親しんでおり、アニメ絵柄に抵抗がないという。そのため、アニメ調のアセットをそのまま活かしながら、カスタマイズ性の向上やポータビリティの強化をしていくことにしている。

    また、メタバース内で自分自身が動いていることと実感できるように、自分の表情に合わせて鏡のように動くフェイシャルの実装が必要不可欠だ。そのため、REALITYのアバターは、ユーザーがどんなに動いても破綻しないように調整されている。

    REALITYでは、上半身に身に付けられるアイテムが細かく動くことも大きな特徴だ。

    「CGアーティストが特に気を遣っている点は、身に付けるアイテムによってアバターが様々な動きをするように細かな設定を行なっていることです。特にリリース初期は上半身しか画面に映らないアプリだったので、揺れものの表現は特に重要な要素でした。ゲーム業界の方が見ると驚かれるかもしれませんが、アイテムが揺れる方がユーザーも楽しいだろうということで、あえてアイテムが激し目に揺れるように設定しています」(K725氏)。

    終盤では、ようてん氏によりREALITYの歴史について解説がなされた。

    2018年8月にリリースされたREALITYは、当初「REALITY Studio」と呼ばれるVTuber番組の視聴専用アプリとして歩みをスタートさせた。

    その後、後発のアバター配信アプリ「REALITY Avatar」と2019年3月に統合される。

    問題だったのは、REALITY StudioのシステムはUnreal Engineベースであったのに対し、REALITY AvatarはUnityでアバターをつくっていた点だ。両者のコンバートが必要になり、最終的にVRMを利用することになった。

    「VRMは人型3Dアバターデータを扱うことに特化したファイルフォーマットです。そもそも、VTuberの方がうちのスタジオに来て配信をつくっていくという流れがあり、VTuberの方がいらっしゃる際はVRMである可能性が多かったので、中間フォーマットとして自然に採用する流れになりました」(ようてん氏)。

    アバターはコミュニティを支える重要な要素、個性がないと使ってもらえない by ミラティブ

    続いて、「スマホ版メタバース「Mirrativ」ゲーム配信コミュニティから生まれたアバター文化を作る3D技術」として、株式会社ミラティブ 3Dデザインチーム マネージャーの下原雄大氏が登壇した。

    「Mirrativ」では、スマホで誰でも簡単にゲーム配信ができることが人気となり、現在ではスマホゲーム配信者数でNo.1を記録している。ユーザーは「エモモ」と呼ばれるアバターを作成し、ヘアスタイルや衣装などを様々にコーディネートすることができるほか、配信者と視聴者で一緒にイベントに参加したり、アバターで集合写真を撮影したりといったコミュニケーションも楽しめる。

    Mirrativはゲーム配信を中核として、「友だちの家でいっしょにゲームを遊んでいるようなコミュニティ空間をバーチャル上につくる」ことをコンセプトとしている。そこからさらに進んだ未来として「ゲームとライブ配信が融合した世界」を想定しており、Mirrativ内に配信機能とゲームが密に連携した「ライブゲーム」というMirrativ上で起動するゲームを実装し、独自のスマホ版メタバース創出を目指しているという。

    下原氏によると、ゲーム配信サービスであるMirrativがアバターを利用するようになった背景には、VTuberの存在が大きいという。

    「Mirrativのリリースは2015年頃ですが、その当時はアバターの機能はなく、画面をミラーリングしてゲーム配信をするだけのアプリでした。しかし、実際は顔出しをしないで雑談をする配信も多く、また、VTuberブームの時期ににじさんじさんの1期生がMirrativを使って配信をしてくれたということもあり、アバターの開発を始めることになりました」(下原氏)。

    メタバースアバターに重要な要素は「クオリティ」、「個性」、「バリエーション」の3つだと下原氏は語る。「かわいいアバターでなければ、利用者も使わないし喜ばれません。そういう意味では、クオリティとデザインが非常に重要になってきます。また、アバターはコミュニティ文化なので、みんなが同じようなアバターでは盛り上がりません。十人十色となるように個性やバリエーションも重要です」(下原氏)。

    Mirrativのアバターはその3点を重視しつつ、ミラティブの社風である「早く作って早く出し、ユーザーの反応を見て改善する」スタイルで制作されている。

    ▲Mirrativのアバター制作フロー

    制作フローはテーマ決めから始まり、3D制作、クリエイティブ制作、リリース、ふり返りまでをスピーディに回している。3D制作はUnityを使用し、デザイナーが揺れものやマテリアルの設定まで担当しているとのこと。

    ▲アバター制作フローの一部。揺れものは少々オーバーな動きをつけるように工夫している

    また、バリエーションに富んだ衣装をつくるために、衣装デザイナーのやりたいことをできる限り実現しつつ効率も意識した制作フローを実践。

    例えばアバターの目は指定の範囲内であれば自由にデザイン可能であり、衣装の袖などは必要に応じて自由にボーンを追加することもできる。シェーダもシンプルな構造のままでリッチな見た目を実現できるよう、3種類の影を組み合わせたり、アドオンでマップを追加することで表現の幅を広げることも可能だ。

    ここまでの内容を踏まえて、下原氏はこれからのメタバース時代に求められる3Dスキルについて言及。「ハイクオリティで個性的なモデルをつくれる能力」として純粋な造形力と3Dでは難しい表現や造形をアイデアで実現できる能力、「クオリティ・個性・バリエーションを実現できるアバター構造をつくれる能力」としてワークフローを構築できる能力、拡張性のある3Dの仕様を策定できる能力、アバターに適したシェーダを書く能力を挙げ、それぞれの能力を身につけるための手段についても紹介した。

    リアルとバーチャルをつなげる「バーチャル伊勢丹」、現地撮影で短期間の制作を実現 by 三越伊勢丹&クラフター

    冒頭で紹介された「バーチャル伊勢丹」のショートムービー

    4つ目のセッションでは、「バーチャル伊勢丹ができるまで」として、株式会社三越伊勢丹のプランニングスタッフ丸山 透氏、マネージャーの池田英生氏、株式会社クラフター執行役員の川島英憲氏が登壇した。

    「バーチャル伊勢丹」は三越伊勢丹が提供するスマートフォン向けアプリ「REV WORLDS(レヴ ワールズ)」のことで、仮想空間内でいつでも新宿を中心とした仮想都市にアクセスすることができるサービスだ。

    冒頭では、「REV WORLDS」の様子がショートムービーで紹介された。映像内のバーチャル伊勢丹では、様々なブランドショップが立ち並んでおり、ユーザーはショップの近くにいくとショップのECサイトにアクセスし、アバターの着せ替え衣服を購入することができる。

    プロジェクトのベータ版は2021年3月にスタートしているが、前身となるモック版の制作は2020年10月。クラフターに依頼し、約3か月でモックが完成した。

    正式版がリリースされてからは活発な動きを続け、2021年12月には伊勢丹で行うクリスマスイベントをバーチャル空間で実装、2022年3月には小学校とコラボして未来のファッションに関するコンテストを実施するなど、活動の幅を広げてきた。

    REV WORLDSのリリースからこれまでの歩み

    REV WORLDSでは、2DにPhotoshopAfter Effects、モデリングに3ds MaxMayaBlender、ゲームエンジンにUnityが採用されている。

    3ds Maxについては、キャラクターのセットアップやアセットのパブリッシュ、各種自動化ツールShotGridとの連携など、幅広く活用されており、制作にあたってなくてはならない存在だという。

    セッション後半では、クラフターの川島氏による「アセットのつくりはじめ方」についての解説があった。

    今回のプロジェクトは制作期間が限られる中でのスタートだったため、アセットづくりには工夫が必要だったという。

    「時間がない中で広い店内や什器を再現するには、通常のやり方では時間がない。そこで、営業終了時の実店舗を360度カメラで撮影し、Unityでウォークスルーアプリを作成し、それをモデラーさんに渡しています。僕と同じような壁にぶち当たる方も今後いらっしゃると思いますが、特にモバイル環境を前提としたあまりポリゴン数が多くないものをつくりたいときは参考になるかなと思います」(川島氏)。

    店内を360度カメラで撮影
    伊勢丹マップの全体像

    以上、合計4時間以上に及ぶ「CGWORLD METAVERSE DAY」の各セッションをダイジェストでお届けした。各セッションの最後では、ライブ中にコメントで多数の質問が寄せられるなど、熱気を帯びたイベントとなった。

    TEXT_江連良介 / Ryosuke Ezure
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada