“Unreal Engine専門”を標榜し、古くから界隈をリードし盛り上げてきたヒストリア。ここでは同社がリリースしたUnreal Engine 5の早期アクセス版で作成した、技術デモを兼ねた短編ゲームを例に、Unreal Engine 5の実力や開発で得た知見、現状の課題などについて話を聞いた。

※本記事は月刊『CGWORLD + digital video』vol.288(2022年8月号)掲載の特集『Unreal Engine 5とつくる未来』から一部抜粋、再編集したものです。

記事の目次

    Information

    Unreal Engine専門のゲームやデジタルコンテンツの企画・開発・販売会社。非エンターテインメント分野のブランド、ヒストリア・エンタープライズをもつ。Unreal Engine学習向け作品コンテスト「UE5ぷちコン」主催。
    historia.co.jp

    「The Market of Light」
    historia.co.jp/tmol/

    UE5の所感とオープンワールドへの期待感

    ――まずは自己紹介からお願いします。

    佐々木:株式会社ヒストリア代表の佐々木です。Unreal Engine歴は14年ほどになります。 もともとエンジニア上がりであることから、プロデュースやディレクションだけでなくテクニカルまで含めた範囲を幅広く見ております。

    佐々木 瞬

    代表取締役・プロデューサー・ディレクター
    株式会社ヒストリア

    真茅:エンタープライズ部門のアーティスト・真茅と申します。バックボーンは建築分野ですが、現在は自動車業界をはじめとするノンゲーム案件全般を担当しています。

    真茅健一

    ヒストリア・エンタープライズ アーティスト
    株式会社ヒストリア

    ――株式会社ヒストリアはUnreal Engine専門の開発会社とのことですが、会社概要を教えていただけますか?

    佐々木:私たちは2013年の設立以来、Unreal Engine一本で業務を行なっているソフトウェア会社です。ゲーム事業の代表作としては『Caligula2/カリギュラ2』や『ジョジョの奇妙な冒険 ラストサバイバー』、最近では『ライブアライブ』のHD-2Dリメイクの開発も担当しました。一方、エンタープライズ事業としてノンゲーム案件も広く取り扱っています。自動車業界や建築業界、リアルタイム3DCGを活用した映像制作や製造業、情報処理などの分野で100以上のプロジェクトに関わってきました。

    ――Unreal Engine 5(以下、UE5)は早期アクセス版が登場してから約1年経ちます。世界で最速のUE5技術デモゲームである『The Market of Light』もリリースされているヒストリアはすでにかなりの知見をおもちだと思いますが、まずはUE4からUE5への移行について全般的な感想をお聞かせください。


    真茅:まずは早期アクセス版についてですが、「思ったよりも安定して動作した」というのが率直な感想でした。画づくりの部分に関しては、むしろLumenやNaniteといった新機能が使えることで選択肢が増えて良い環境になっています。「UE4でできていたのに、アップデートでできなくなった」という部分もアーティスト目線では少なく、早期アクセスの時点で非常にポジティブな印象をもっていました。一方、当時は設定コマンドなどが隠されていた部分もあり、細かな調整が難しい部分もありました。ただ、このあたりも正式版でエディットしやすいパラメータとして表に出てきたので、全体として実に「かゆいところに手が届く」いいアップデートだと感じています。


    佐々木:UE5は、UE4をベースに新機能が追加され、さらにエディタも整ったというイメージのゲームエンジンです。つまり、使用感はほとんど変わりません。UE4を仕事で使っていた方であれば、UE5も問題なく触れるだろうと思います。また、UE5で強化された部分として、Megascansをはじめとしたライブラリの充実やNanite、Lumenにより、フォトリアル表現に強くなったと感じています。新しいエフェクトツールNiagaraやコントロールリグなどはUE4の後期にはすでに使えるようになっていたので、新機能という部分でも地続きである印象をもっています。

    ――あくまでベースの部分はUE4を踏襲しながら、その上にNaniteやLumenなどの技術が新機能として載っているという印象ですね。フォトリアル表現に強いUE5で、今後どういった作品や表現が実現できると考えていますか?


    佐々木:オープンワールド開発に関する技術が数多く入ってきており、従来であれば自分たちでがんばって設計・開発すべき部分がエンジンとして大きくサポートされるようになりました。私たちの立場から期待するのは、これまでは大規模な組織でなければつくることが難しかったオープンワールド系の作品が、世の中のプロシージャルなながれとリンクして、小規模開発や個人クリエイターまで降りてくるのではないかという部分です。

    新時代のワークフローを切り拓くNaniteの威力

    ――一般的なゲーム開発のワークフローも大きく変化することになるのでしょうか。

    佐々木:はい。特にNaniteは、ワークフローを革新する力をもっています。Naniteはポリゴンをストリーミングで読み込む技術で、無段階のLODのような感覚で使える機能です。ゲーム開発におけるアセット制作の大きなの課題のひとつは、「制作したモデルをエンジンに最適化した上で実装する」という部分でしたが、Naniteを使うことによって映画クオリティのアセットをリダクションすることなくそのままゲームエンジンに載せることができるようになりました。例えば、グレーボックス(プリミティブを配置したプロトタイプ)の雰囲気をもう少し盛ってみよう、といったときにもMegascansの高品質メッシュを気兼ねなくインポートして使えるようになりました。

    真茅:従来は「プリレンダー用のポリゴン数が多いアセットを入れてみよう」という発想そのものがありませんでした。リダクションの手間もかかりますし、そもそも普通にインポートしただけでは重くて動作が快適でなくなります。しかし、Nanite登場以降のUE開発は「試しに入れてみよう」ができるようになりました。プロトタイプ制作用のメッシュ作成ツールもUE5に統合されているので、エンジニアがいなくてもできる範囲がどんどん広がっているように感じています。

    ――NaniteとMegascansをプロトタイプ制作に活かすというのは意外でした。


    佐々木:当然、大規模開発におけるNaniteも非常に強力です。特に、UE5はHoudiniとのシナジーに展望を感じています。 先ほどオープンワールドにも言及しましたが、「広い世界をつくる」というところに時代が向かっている感覚があります。今はHoudini側で制作したアセットを、Naniteによって「素早くゲームに入れることができる」状況になりました。自動生成ロジックさえしっかりできていれば、早い段階でコンテンツとして見えるものが出来上がる状況になっています。Houdiniだけでなく、プロシージャルモデリング全般との相性が圧倒的に上がっている印象です。

    ――これらの新機能について、真茅さんが専門とするエンタープライズ事業ではどのように活かされるのでしょうか。

    真茅:私の場合はCADデータをFBXに変換したデータを支給いただくことが多いですが、変換したCADデータによってはシーンデータそのものが非常に大きくなります。最適化に非常に手間がかかることも多いですが、こういったケースでNaniteが有効に働くのではないかと考えています。Unreal Engineをノンゲーム分野で使うことは一般的になってきていますし、開発側もそれをしっかり認識しておりますので、CADとの連携もおおいに期待できます。

    ――一方において、開発に使用するPCスペックも、GPU性能などはそれなりのレベルを要求されそうです。


    佐々木:当社の場合はRTX 3070かRTX 3070Ti搭載機が多いですが、動かすだけであればRTX 2070などでも問題ない場合が多いです。むしろ今はストレージ側が問題になりがちで、公式デモである『古代の谷』なども100GBを超えていますし、開発にハイポリメッシュを多用するとなると、当然その分だけ総容量が増えてしまいます。トータルでコンテンツとして仕上げる場合、まだまだ容量を気にするケースが多いので、そういう中で気兼ねなく使うには容量の制限が残っている感覚はありますね。ただ、これはUnreal Engine関係なく、世の中全般の課題とも言えます。

    UE5のためのコンテンツ『The Market of Light』

    ――ここからはUE5の技術デモを兼ねた短編ゲーム『The Market of Light』の事例についてお聞かせください。

    佐々木:『The Market of Light』は、小さなホタルとなったプレイヤーが市場の中を探索する内容の短編ゲームです。野菜の入ったカゴやテーブルの下、時には排水口の中にまで入り込み、市場の中に隠された輝く玉を探し出すゲームで、現在Steamから無料ダウンロード可能です。リリース日は2021年9月28日で、UE5正式版リリースより半年以上前に世に出たSteam環境向けUE5コンテンツとなります。

    ――プロジェクトの発端について教えてください。

    佐々木:UE5の発表は今から約2年前、2020年5月でした。新機能の数々に対して、とにかく「これはすごいぞ!」と感激したと共に、Unreal Engine専門の会社としていち早くツールに触れ、世界に通用するコンテンツを誰よりも早く出したいと思いました。「ちょっと試してみた」というレベルの技術デモではなく、コンテンツとして成立するものを、NaniteやLumenといった新機能をふんだんに使って制作する。そういった挑戦的な意味合いの強いプロジェクトでした。もうひとつ、UE5が出るという“お祭り感”を盛り上げたいという思惑もありました。UE4リリース時もそうでしたが、クリエイターみんなが新発表に湧いて、知見を共有し合って、やがてコミュニティを形成していくのが非常に楽しかった記憶があります。本作には、あの盛り上がり再来の一助になりたいという想いが込められています。また、Unreal Engineが無償化したときの『Kite Demo』に憧れていたこともあり、単なる技術デモではなくしっかりメッセージ性をもたせた作品をつくることを意識しました。

    ――本作の舞台は西洋風の明るい市場です。また、プレイヤーもホタルという、非常に小さな存在となっています。企画の成り立ちについて教えてください。

    佐々木:本作のコンセプトは「遠くからどこまでも近づける感動」です。以前の案件で、「どこまでも対象に近づけること」の面白さに気づく機会がありました。ゲーム開発を長く続けるうちに、壁やオブジェクトは“近づいたらぼやけるもの”ということを当たり前のように考えてしまっていたんです。しかし、実際にはこれが実在感を削ぐ原因になっていました。Naniteとバーチャルテクスチャリングを使えば、対象のスキャンの精度に応じてどこまでも近づいていける。このことを企画の核として、NaniteだけでなくLumenなど新機能を網羅的に使った作品をつくることを考えました。

    真茅:Naniteの威力を100%発揮するためには、精巧なモデルが必要です。アセット制作においてはフォトスキャンしやすい対象でなければならず、日常的に手に入れやすいものをメインにすべきと考えました。「Megascansを多用する」「手に入れやすいものを対象にする」というところから逆算して、それなら野菜などがたくさん並んでいる市場が良いだろうということでシーンを想定していきました。

    佐々木:時代的にも明るい作品をつくりたかったということもあり、彩度の高いイタリア風の市場をモチーフにしています。Unreal Engineのデモリールは暗めの映像が多いので、見え方としての差別化も意識しました。

    どこまでも対象に近づける感動

    市場の例。色とりどりの野菜や果物が並ぶお店からカメラが寄っていくと、リンゴのデコボコした形状やみずみずしい質感まで見えてくる
    噴水広場の例。石像に寄っていくと、石の経年劣化や風雨にさらされた汚れなども見て取れる

    明るい雰囲気を意図したデモ

    Nanite、Lumen、Megascansなど、UE5の目玉機能の活用を意識すると、どうしても公式のデモと似たような暗いシチュエーションが多くなってしまう。それらとの差別化と、コロナ禍による世間の重い空気感を払拭するべく、イタリアの市場をモチーフとした明るい雰囲気のデモへと舵が切られた

    Naniteを最大限活かせるアセットワーク

    ――新機能を網羅的に使うということでワークフローも一般的なゲーム開発から進化しているのではと思いますが、どういった点が特徴でしたか?

    佐々木:Nanite時代のアセット制作は、なにか工夫をしなければコストが非常に大きくなってしまいます。「どこまでも近づけるアセット」というのはつまり、どこまでも精巧で高品質なアセットということです。映画用アセットなど、使えるアセットの幅が広がる一方において、ヒーローアセットや不足するアセットをどのように用意するのかが課題となりました。大量のハイポリメッシュを用意するために現実的に採ることができる選択肢は、「プロシージャル技術を用いた量産体制」「Megascansなどのアセットを利用」の2通りです。今回はMegascansの無償化のながれもあり、高品質なアセットを上手く流用しながらシーンをつくっていくことを目指しました。

    真茅:「われわれのモデリング力を見せてやる!」というコンセプトではなく、あくまで新機能の検証デモですから、なるべく制作する対象を減らす必要がありました。市場の中央に位置する噴水や緑色の窓枠などはフルスクラッチで制作した3Dモデルですが、そのほかのほぼ全てのモデルにMegascansを活用しています。ここまでMegascansを活用したシーンはないのではないかと思えるほど、かなりの部分に用いていますね。プリレンダーや映画用アセットがどういった規模感のものかというと、例えば今回使用したラズベリーのモデルは1粒750万ポリゴンです。

    ――たった1粒で750万ポリゴンというのは驚きです。これを大量に配置して、問題なく動作するものなのでしょうか?

    真茅:Naniteがない頃であれば、ラズベリーを1箱分表示させただけで1.16fpsしか出ておらず、ほぼフリーズ状態でした。しかし、Naniteを有効にしただけで一気に120.04fpsで動作するようになりました。これだけでNaniteの威力がおわかりいただけると思いますが、私たちもこれがきっかけで「このプロジェクトは絶対にいける」と確信をもつに至りました。

    佐々木:まさにながれが変わった瞬間でしたね。ここからは逆転の発想で、もともと高品質なMegascansをさらに加工して「限界まで近づける仕様」を目指しました。

    真茅:具体的な例として、野菜などを入れるカゴはもともと4万ポリゴン程度のモデルでした。従来のワークフローであれば、エンジンにインポートする前にリダクションを行う必要があります。しかし、本作では逆にポリゴンを118万ポリゴンまで分割し、近づいた時に違和感がないよう角の面取りを行いました。大変な作業をしてローポリ化・最適化するのではなく、逆にクオリティアップをするという方向性に変わっています。また、ナスなどの野菜にはトライコームという微細な産毛が生えています。プロジェクト初期のルックデヴではトライコームをUE5のHair機能を使って表現していましたが、これも全てNaniteメッシュにしたほうがはるかに描画負荷が低かったため、白い点のような部分まで含めて全て実メッシュになっています。

    佐々木:マテリアルの種別によってNaniteにできるものと難しいものがありますが、基本的には全てのアセットをNaniteメッシュにした方がメリットがあります。Lumenやバーチャルシャドウマップなどを使う上でも描画負荷が軽くなりますので、Naniteを使用するワークフローではできる限り有効化するのがよさそうです。

    Naniteで超ハイポリゴンのデータをテスト

    1粒750万ポリゴンにもなるプリレンダー用のラズベリーモデル
    • NaniteなしでUE5に配置した状態。約1fpsしか出ていない
    • Naniteを有効にしてUE5に配置した状態。こちらは約120fps出ていることがわかる

    プリレンダー用アセットとMegascansアセットのカスタマイズ

    メッシュやテクスチャに制限のないNaniteの活用にあたっては、従来のリダクションや最適化とは真逆のアプローチが取られた

    • プリレンダー用のカゴのアセット。4万ポリゴンながら面取りがされていないため、寄ったときに角が目立ってしまう
    • 分割数を増やしてベベルをかけたもの。ローポリで作成しなおすより素早くクオリティアップできる
    実際のシーン
    Megascansのナスアセット。寄ったときのために、表面の産毛(トライコーム)や傷などを追加したい
    • ZBrushでヘタを追加し、産毛をNaniteメッシュ化
    • 表面にディテールテクスチャを追加したもの

    Lumenの間接光で活気と温かみを感じるコンテンツへ

    ――本作は日中から夜へと時間が移り変わると共にライティングが自然に変わっていきます。これも非常に現代的な演出であるように思いますが、これはLumenによるものでしょうか。

    真茅:その通りです。本作のライティングはLumenなしでは成立しませんでした。昼間の明るい雰囲気から美しい夜景にシームレスに移り変わる部分は強く意識して制作しています。

    佐々木:あたかもポストエフェクトによって彩度が上がっているように見えますが、本作の明るい見た目はLumenの間接光の設定によるものです。物理的な正しさは失われますが、間接光を意図的に強めることで活気と温かみを感じるコンテンツにしたかったため、画づくりを優先させました。

    真茅:一方、技術的な課題も残されています。間接光の調整などをはじめ、そのままLumenを有効化するだけではこの見た目になりません。また、最適化にも苦労がありました。Lumenのサンプルファイルは、太陽が唯一の光源になっているものがほとんどです。しかし、市場の夜景でお祭りのような雰囲気を演出するには、様々な光源が必要になります。シャドウベイクができない分ライトが増えたときのシャドウ負荷がネックになりました。こうした場合はシャドウを消して処理負荷軽減を図るのが常套手段ですが、これもMegascansがリアルすぎて違和感になってしまう。安易にシャドウをOFFにするわけにもいかないため、地道にライトの数を減らすなどの調整を行いました。

    LumenによるリアルタイムGIの効果

    LumenはリアルタイムGIを実装しているため、明るい昼間から暗い夜までの照明効果をシームレスに美しく表現できる。また本作独特の明るい雰囲気を強調するため、昼間のライティングではDirectional LightのIndirect Lighting Intensityを「1」→「15」に設定している
    • デフォルトの状態
    • 間接光の影響を強めた状態

    ――シャドウについてもUE5ならではの表現になっていますね。

    真茅:シャドウの話題で言えば、UE5から搭載された「バーチャルシャドウマップ」は外せません。これまでの「ゲームエンジンっぽい画」は、アンビエントオクルージョンの感じとシャドウの落ち方に特徴がありました。バーチャルシャドウマップを用いることで、ボケつつパリッとしたシャドウが出せるようになります。UE5世代から「ビジュアルの印象が変わった」「世代が次に進んだ」という印象を受ける方も多いと思いますが、それはこのバーチャルシャドウマップの恩恵も大きいかと思います。

    ――シャドウベイクなど既存のライティング手法との兼ね合いについては余地があると。その意味では、今回は早期アクセス版での開発でしたが、正式版がリリースされたことで改善された部分や、逆に困った部分などはありましたか?

    真茅:本作もUE5.0.2(2022年6月時点での最新版)へ移行を行いましたが、中身はほぼ壊れていませんでした。ブループリントが少し外れていたり、噴水周りの発光が強まったりといった細かな問題はありましたが、逆に言えば本当にその程度で、たいした変化なく移行できています。正直、Lumenなどの見た目は結構変わるのかなと身構えていましたが、パッと見の印象は同じでしたね。

    バーチャルシャドウマップの表現力

    バーチャルシャドウマップはレイトレーシングシャドウに近い高品質のシャドウマップで、シャープかつボケの入った影を表現できる

    • バーチャルシャドウマップOFF
    • バーチャルシャドウマップON
    • バーチャルシャドウマップOFF
    • バーチャルシャドウマップON

    バーチャルシャドウマップの描画負荷問題

    Lumenは複数のライトによるGIにも対応しているが、ベイクできないため非常に処理が重い

    本作の市場のような多くの光源があるシチュエーションでは、それらのシャドウの負荷がネックとなる
    • バーチャルシャドウマップON
    • バーチャルシャドウマップOFF。OFFの状態だとアセットにリアリティがある分、全体の違和感が目立ってしまうため、ライトの数を減らしたり、カットシーンや蛍目線のときはバーチャルシャドウマップをOFFにするなどして対応した

    ――本作の今後の展開など、ユーザーに向けてのメッセージはありますか?

    佐々木:本作はUE5の1つのリファレンスとして、現在の技術で可能なことを示せればと思ってつくりました。マシンスペックに問題のない方はぜひSteamからダウンロードして、お手元で動かしてみてください。「リアルタイムもここまできたか」ということを、CGクリエイターの方であれば理解していただけるはずです。映像を見るのではなく、自分の手で操作していただくとより実感していただけます。また、写実的なフィールドが1つ完成していることもあり、今後は社内におけるフォトリアルな表現の検証の土台として使おうと思っています。

    真茅:本作は世界一小さくなれるUE5コンテンツとしてユニークなものとなっておりますので、ぜひ多くの方に遊んでいただきたいです。また、明るい展望として、Lumenの設定は正式版では非常に使いやすくなっていました。「リアルタイムGIを使うならLumenを使ってください」というのがEpic Gamesからのメッセージだと思っていますので、今後のアップデートでさらに優れたGIとして活用ができるはずです。

    UE専門開発会社・ヒストリアが手がけるノンゲーム向け技術デモ「Cutting-Edge Test Drive」(近日公開)に続く

    TEXT_神山大輝(NINE GATES STUDIO)
    EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada